昨年同様、劇場公開された作品とは別にベスト10を選出。
映画祭や特集上映などで観たものから10本を選んでみました。
日本初公開の作品を対象にしています。
第10位 『エピローグ』(2012/アミール・マノール)
第13回東京フィルメックスにて観賞。(コンペティション部門)
第9位 『影の列車』(1997/ホセ・ルイス・ゲリン)
ホセ・ルイス・ゲリン映画祭にて観賞。
第8位 『大陸』(2011/エマヌエーレ・クリアレーゼ)
イタリア映画祭2012にて観賞。
第7位 『リアリティー』(2012/マッテオ・ガローネ)
第25回東京国際映画祭にて観賞。(ワールドシネマ部門)
第6位 『騎士の名誉』(2006/アルベルト・セラ)
カプリッチ・フィルムズ・ベスト・セレクション(日仏学院)にて観賞。
※『鳥の歌』(2008)も気分的には同じ第6位扱いです。
第5位 『3人のアンヌ』(2012/ホン・サンス)
第13回東京フィルメックスにて観賞。(特別招待作品)
第4位 『5月の後』(2012/オリヴィエ・アサイヤス)
第25回東京国際映画祭にて観賞。(ワールドシネマ部門)
第3位 『ピエタ』(2012/キム・ギドク)
第13回東京フィルメックスにて観賞。(特別招待作品)
第2位 『向かいにある夜』(2011/ラウル・ルイス)
ラウル・ルイス特集上映 フィクションの実験室(日仏学院)にて観賞。
第1位 『グッバイ・マイ・ファースト・ラヴ』(2011/ミア・ハンセン=ラブ)
[劇場公開タイトル:グッバイ・ファーストラブ]
フランス女性監督特集(日仏学院)にて観賞。
作品単体での好みのみならず、
それぞれの映画祭や特集上映に対する個人的感慨の後ろ盾の影響が強いかも。
上位5作品はどれが1位でも差し障りがない(その時の気分で変わりそうな)印象。
ミア&オリヴィエは特別だし、ラウルは格別、キム・ギドクとホン・サンスは自己新に興奮。
今年は映画祭や特集上映などでもデジタル上映の比率が急上昇。
上記10作のうち、フィルム観賞できたのは3本のみ。
『グッバイ~』、『大陸』、『影の列車』。
来年の劇場公開が決まってるのは4本。
『グッバイ・ファーストラブ』(シアターイメージフォーラム)、『ピエタ』(ル・シネマ)、
『3人のアンヌ』(シネマート新宿)、『大陸』(岩波ホール)。
(『影の列車』は、来年2・3月のJLG映画祭@下高井戸シネマで上映されます。)
公開されそうな気がするのは、『5月の後』と『リアリティー』くらいかな。
『エピローグ』はフィルメックスでのグランプリを後ろ盾にもしかしたら?
ラウル・ルイスは日本語字幕も入れて大レトロスペクティヴして欲しい・・・。
アルベルト・セラは作風的にも難しいだろうけれど、
何かしらの映画祭あたりに混入してくれないかなぁ・・・。
(その他)
昨年の300本弱から400本強へと劇場観賞本数が急増してしまった最たる原因は、
映画祭や特集上映に足繁く通ってしまったからかもしれません。
未知の才能との邂逅求め、未知の才能との純粋な対話に耽る。
そんな魅惑の映画祭や特集上映での観賞体験を貪った一年でした。
勿論、先物買いして「先見の明がある」と思われたい欲求が人一倍強いのもある(笑)
ただ、そのせいで録画したものや海外からとりよせた未公開作品などを観る時間が不足。
来年はそうした自力観賞にも力を入れていけたらな、と思います。
上記の作品以外に心に残った作品を振り返ってみると。
まず今年の最大の出会いでもあったラウル・ルイス作品群はどれもが愛おしいものでした。
ベスト10では代表して遺作を挙げましたが、『ファドの調べ』『夢の中の愛の闘い』あたりは
余裕で年間ベスト級。『ミステリーズ~』をベスト10(後篇)でどうしようかなぁ・・・。
イタリア映画祭は今年も多くの作品をフィルム上映してくれて、豊かな出会いの場。
『七つの慈しみ』では荒削りだからこそ味わえる気鋭の醍醐味を堪能しましたし、
『錆び』や『至宝』のような堅実ながらも一癖ある尖鋭に魅せられたり。
フランス映画祭ではほとんどが公開予定作品の上映になってしまい残念んだったが、
ゲスト登壇による質疑応答などは充実しており、
『わたしたちの宣戦布告』の「最強のふたり」に会えた悦びは一入。
来年はもうすこしチャレンジングなプログラミングに期待。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭では小品が多い印象ながら、
その「佳作ぶり」が妙に愛おしかったりする。そこがあの映画祭の魅力かも。
グランプリの『二番目の妻』は、『ルルドの泉で』や『ミヒャエル』などにも通ずる作風で、
中途半端にウェッティなハネケ風といった大好物群に仲間入り。
イスラエル映画の『レストレーション~修復~』は『エピローグ』とも通ずる透明感。
『真実の恋』(来年のトーキョーノーザンライツフェスティバルで上映)もよく出来てたな。
私の秋の映画祭シーズンはラテンビートから始まった。
今年は初めて横浜遠征(というほどでもないだろ)もしたりして、思い出深し。
『Estudiante』『獣たち』『マリアの選択』はベスト10に入れてもおかしくないほど好み。
『獣たち』はカルロス・レイガダスやアルベルト・セラなんかが大好きな自分は終始ツボ、
『マリアの選択』は前述のウィーン・ニューウェーヴ(勝手に命名)といった趣。
なかでも『Estudiante』の独特な語りとテンポは印象深い。再会祈願。
東京国際映画祭は、コンペとワールドシネマ部門を中心に多くの作品を観られた。
(今年は仕事のスケジュールが偶然にもTIFF仕様とでも言うほど恵まれていたもので)
コンペでは『ハンナ・アーレント』(来年、岩波ホールにて公開予定)の底力が静謐ロック、
『NO』には日本社会を相対化する数多のヒントを頂きながら、
『天と地の間のどこか』でトルコ映画の挑戦を厭わぬ気迫を浴びた。
ワールドシネマ部門は今年も充実で、『ヒア・アンド・ゼア』との邂逅は大切にしたいし、
『インポッシブル』(祝公開決定)の覚悟と根性は今年観たどの作品よりも図抜けてた。
『レイモン・ドゥパルドンのフランス日記』は、どの作品にも触れてもらえぬ琴線振動。
『闇の後の光』は絶対にベスト10入れたいレイガダスの新作だし、かなり好きだけど、
消化しきれていないのと、『ハポン』『静かな光』の感動がいまだに強烈過ぎて。
社会に対して能動的ながら芸術で語ろうとするベロッキオの矜持は益々旺盛で、
最も敬愛する監督の一人であるが彼の新作『眠れる美女』も傑作には違いないが、
映画祭での上映は納得のいく環境(というか素材)ではなかった為に、鑑賞は未完成。
東京フィルメックスは今年も強力ラインナップで(但し、特別招待作品が・・・ね)、
ホン・サンス、キム・ギドク、ワン・ビン、アピチャッポン・ウィーラセタクン、
バフマン・ゴバディ、モフセン・マフマルバフの新作が一挙に紹介されるという豪華さ。
おまけに、オムニバス映画ではペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、
そしてマノエル・ド・オリヴェイラの最新短篇にまで触れられるという。
アモス・ギタイとの過剰な蜜月には些か疑問だが、イスラエル映画傑作選における
『アバンチ・ポポロ』との出会いには感謝したい。
今年はアテネフランセ文化センターからやや足が遠退きがちだった・・・。
マルグリット・デュラス特集での場内雰囲気があまりにも苦手に思えてしまって以来、
不健康とペダンチックにまみれまくった空気に少々嫌気が差し始めたのかも。
でも、「権威に承認された」作家の作品には観客が溢れるくせに、
まだ認知されていない作家の特集上映などには人が集まらない不健全。
発見されたものを後追いするばかりじゃ面白くないだろうに。
激減したアテネ通いのなかでも、傑作との出会いはあるもので、
『ワンダ』の特別上映やモーリス・エンゲル=ルース・オーキン特集は「事件」級。
今年は本人にも何度か会えたトーマス・アルスラン特集も忘れがたい贅沢。
(それらは2012年という括りにはそぐわない気もしてベスト選出対象外だけどベスト級)
そして、今年最も充実していた、最も信頼できるシアターが東京日仏学院。
9月からの名を、アンスティチュ・フランセ東京。
『グッバイ~』をニュープリントで上映してくれたフランス女性監督特集では、
『スカイラブ』(来年3月にイメフォで公開)も『ナナ』も紹介されるべき充実作でした。
また、悲願のミア・ハンセン=ラブ処女作『すべてが許される』の観賞が叶った喜びも。
アルベルト・セラを紹介してくれたカプリッチの特集や、
ラウル・ルイスの作品群を二度に渡って上映してくれたり。
秋の特集「映画とシャンソン」ではクリストフ・オノレの2作に心酔し、
アレックス・ボーパンのライブやジャン=マルク・ラランヌの講演まで企画され、
至れり尽くせり。そして、セルジュ・ボゾンの『フランス』(2006)は本当に傑作!
即日DVDを購入(@海外Amazonマーケットプレイス)したくらい気に入りました。
そして、来年は早々に第16回カイエ・デュ・シネマ週間という必見三昧特集が!
番外編としては、森美術館で開催された「アラブ・エクスプレス展」で来日した
ジョアナ・ハッジトマス&ハリール・ジョレイジュの『完全な一日』と『私は見たい』の上映が
印象的だった(東京日仏学院との提携企画)。二人も登壇したトークショーには深い感銘を。
その内容を記事にせねばと思いつつ、結局書き上げられなかった・・・。
しかし、この『私は見たい』(カトリーヌ・ドヌーヴが破壊されたベイルートを見て回る)を
観たことが、「今更ながら」という引け目を乗り越え被災地に足を踏み入れてみる決心に。
そういった意味では、今年最も自分を現実的に動かした映画と言えるだろう。