今年はコンペティション作品をそこそこ(12本)観たので、
勝手に受賞予想なんかをしてみようかと。
全作品観てる映画ファンも結構いるのだろうし、
堅実な映画鑑賞眼を有した方の予想に比すれば落書レベルですが、
賞味期限のある落書を公にぶちまける!というのもブログの醍醐味かな、
等と都合の好い拡大解釈に便乗する休日昼下がり。
コンペでは『風水』『黒い四角』『未熟な犯罪者』の3作品を観ていません。
別にアジア映画が苦手という訳ではないのですが(むしろ好きです)、
スケジュールの都合と、アジア映画なら観る機会ありそうという無根拠憶測で、
見逃してしまいました。なかでも、評判の高かった『風水』を観なかったことを後悔。
というわけで、以下の予測に上記3作品は(基本的に)含まれておりません。
予想するにあたって「台風の目」となるのはやはり『フラッシュバックメモリーズ3D』。
先ほど発表された観客賞は予想通り獲得しましたが、審査結果ではどうなるか!?
個人的には揺さぶられ度ぶっちぎりNo.1だったので、勿論グランプリ受賞!
なら嬉しいことは嬉しいですが、作品が作品なだけに、正直それは困難とも思え、
「コンペ作品に入っている」という事実自体がある意味「栄誉」であると考えるなら、
無冠であったとしても(積極的な)当然かとも思える部分もあります。
が、観客の熱狂ぶりを考えた場合、何らかの賞が与えられるだろうとは思います。
そう考えると、審査員特別賞・監督賞・芸術貢献賞あたりが有力かと。
作風からすれば芸術貢献賞あたりが妥当(というか無難)な気もしますが、
賞のランク(?)的に物足りなさも感じるので、監督賞として松江監督自身を賞賛!
と行きたいところですが、作品の性質上、監督だけにスポット当てるのはやや躊躇われ、
そうなると二等賞(なのかな?)にあたる審査員特別賞あたりが有力ではないかな、と。
あまりズバ抜けた作品がないように思われる今年のコンペラインナップからすれば、
グランプリもあり得なくはないと思うものの、『フラッシュ~』にグランプリ授与するのは
かなり冒険というか、東京国際映画祭コンペの新たな方向性を(結果的に)示す訳で、
『フラッシュ~』がグランプリを獲得するようなコンペの方向性は素晴らしいと思う反面、
昨年の『最強のふたり』からの流れを考えると、単なる無節操として一蹴される怖れも。
ということで、『フラッシュバックメモリーズ3D』は審査員特別賞で我慢します(笑)
※受賞結果を踏まえてのコメントを付け足しました。
そうなると芸術貢献賞は、
技術的な手法のアイディアが作風と見事な有機性を持ち得た『NO』か、
表現方法においてオリジナリティを模索し藻掻いた『イエロー』あたりに授与されそう。
『NO』は既にカンヌの監督週間でグランプリを獲得していたりもするので、
作品の未熟な側面にこそニックの今後への期待を託すことにして、『イエロー』。
(昨年同賞受賞の『デタッチメント』とも位置づけ的に似た枠に収まる印象だし)
受賞結果:『テセウスの船』
芸術性重視には傾かなかった今回の受賞結果において、
やはり芸術貢献賞というだけあって、ちょっとした前衛性を出したかったようですね。
確かに映画的な美はそれなりに漂っていましたが、個人的にはそこまで・・・。
まぁ、監督へのエール的意味合いが色濃いのではと理解します。
今年のコンペ作品は男優よりも女優の存在感が遙かに上回っていた。
主演した女優の強烈な個性を堪能できたのは、
『天と地の間のどこか』、『ハンナ・アーレント』、『イエロー』。
迷った挙げ句に異論回避策として『メイジーの知ったこと』の
メイジー役(オナタ・アプリール)に与えてしまうという手もなくはないだろうが、
さすがに自覚的な演技とは別のところで瑞々しさを湛えていただけに、それは違和感。
体当たりな側面を評価するなら『天と地の間のどこか』のネスリハン・アタギュル、
技巧と円熟の賜物への賞賛なら『ハンナ・アーレント』のバルバラ・スコヴァ。
他の賞とのバランスも考慮して決まりそうだから、その2作が他の賞にからむなら
W受賞を避けるか、もしくはグランプリに選ぶならまとめて授与してしまうか。
女優賞は興味深い。
受賞結果:ネスリハン・アタギュル(『天と地の間のどこか』)
これだけだよ、当たった(かすった?)の。やってることがやってることだけに、
敢闘賞的に授けたくなるが、それだけじゃなく彼女の表情は本当に焼きつくインパクト。
造形的にも実は意外と特徴的なつくりの気もするし、今後の活躍が楽しみ。
一方で、男優賞は混戦というか、存在感にやや欠けるというか。
それなりの「個性」を画面から放ったのは『アクセッション』や
『ティモール島アタンブア39℃』の主演男性なわけだが、男優賞という感じでもない。
いっそのこと『フラッシュ~』のGOMAさんにあげてしまう!という手もなくはないが、
おそらく他の賞で讃えるだろうから、ここは普通に俳優に授けておきそう。
となると、来日もしたソーレン・マリン(『シージャック』)か、
とにかく終始作品の顔であった『NO』のガエル・ガルシア・ベルナルあたりかな。
脚本賞があれば獲得してそうな『シージャック』に与える枠に不足していそうだし、
ソーレン・マリンに落ち着きそうかな。(勿論、演技も素晴らしかったと思います。)
受賞結果:ソ・ヨンジュ(『未熟な犯罪者』)
まさか未見の『未熟な犯罪者』が二冠とは・・・。
粗製濫造傾向が高まりつつあっても、秀逸な韓国映画は一定数生み出され、
だからわざわざ東京国際映画祭に出品しようっていう韓国作品は微妙なのでは?
等というテキトーな憶測で観賞を見送ったというのが正直なところでした。
観ていないので何とも言えない。が、女優賞にしても男優賞にしても、
ヤング・ゼネレーションに期待!な選択は嬉しくもある。
監督賞を予想するのが最も難しい。
功労賞的意味合いを含ませるなら『ハンナ・アーレント』のマルガレーテ・フォン・トロッタは
丁度好い(映画祭としても、それなりの権威を保てる印象だし)けれど、
ここは敢えて『ティモール島アタンブア39℃』のリリ・リザに与えて欲しいという個人的願望。
同作はワールドプレミアであったこともあるし、今後の彼の活躍を後押しする意味でも。
受賞結果:ロレーヌ・レヴィ(『もうひとりの息子』)
結局グランプリも獲得した『もうひとりの息子』が監督賞も持って行ったのか。
ちょうど今年のヴェネツィア国際映画祭では、
コンペ規定にグランプリ作品は複数受賞できないみたいな条項があったらしく、
『The Master』が金獅子から監督賞&男優賞に変更になったというエピソードが。
作品賞と監督賞が別に設けられてる以上、
監督への賞賛は既に作品賞に含まれているわけで、
作品賞として授与するには困難な、野心や挑戦を伴った作品の監督に授与を。
というのが個人的な意見だったりもするわけです。
他にも充実した内容の作品があっただけに、
2つの作品にW受賞させた結果は少し残念に思えてしまいます。
審査員特別賞は、前述の通り『フラッシュバックメモリーズ3D』ではないかと踏むが、
未見ながら高評価が聞こえてくる『風水』あたりに与えられても好さそうな枠ではある。
政治を文化に持ち込ませないためにも、あえて文化で政治的な決着をつけるというか。
いや、そう捉えられるかもしれないという困難が授けるにしろ授けぬにしろ難しい。
『風水』には女優賞あたりを授与するということもありえそう(未見で無責任な予想だが)。
受賞結果:『未熟な犯罪者』
今回の受賞結果からすると、『もうひとつの息子』と『未熟な犯罪者』の2作品が、
他のコンペ作品から図抜けていたという総評に行き当たるような結果なわけですが。
(本作は未見ながら、12本観た限りではそういった概観に私は至っておらず。)
審査委員長(ロジャー・コーマン)がよっぽどこの2作品を気に入ったのかな。
とりあえず『未熟な犯罪者』は公開されそうだから、是非観てみたい。
グランプリは、これまでの傾向(昨年の『最強のふたり』は除く)からすると、
芸術性を備え、新しい才能を感じさせる作品が選ばれるように思う。
そう考えると、質は高くも堅実すぎる『ハンナ・アーレント』や、
既にカンヌで評価済な『NO』(アカデミー外国語映画賞のチリ代表でもあるし)よりも、
『天と地の間のどこか』あたりを積極的に持ち上げてみる意義は大いにありそう。
ただ、審査員長的な好みや論理が介入してくると、全く読めそうもない。が、
『天と地の間のどこか』は、今をときめくトルコ映画への評価も兼ね、
女性への売り込みもしやすい(劇場公開の可能性あり)メリットも顧慮、
監督に壇上で直接賞を渡せるし(昨年は受賞者ほとんど不在)、
制作や配給にはヨーロッパの有力会社もついているようだし、
そうした妥当性としても絶好かと。
いや、勿論、個人的には作品としてもなかなか魅了されました。
(終盤の展開に関しては、まだ自分の中で消化不良というか保留中ではありますが)
一般的にはかなり高評価の『もうひとりの息子』や『メイジーの知ったこと』は、
個人的なツボを見事に外された(というか逆ツボにはまってしまった)為に、
予想の候補として除外前提っぽくなってしまっていますので、
そのあたりの2作が審査員団(の誰か)に見事に響いていたとすると、
随分と異なった選出になるだろうなぁ、とも思います。
というか、そもそも「予想」という客観性からの判断を心がけつつも、
やっぱり結局は主観で判別しちゃうものですね。
さて、あと1時間ちょっとで受賞結果も発表になります。
LIVE中継では観られそうにありませんが、後から「結果」に対する感想も付記します。
というか、それより書かずじまいの鑑賞記録(感想)を少しでも埋めたい…。
(参考:昨年のTIFFコンペ結果発表時の記事というか愚痴(笑)はこちら。)
2012/10/28 12:49
受賞結果:グランプリ『もうひとりの息子』
いやぁ、最も怖れていたことが(笑)
一般的には相当に好意的に受け止められていた本作。
(終映後の拍手は最も盛大だったように思う。)・・・にもかかわらず、
個人的には序盤から不穏な苦手因子を感じつつ、最終的には些か積極的にNO。
なぜ受け容れられないか、については改めて作品の感想としてまとめたいが、
役者は皆好かったし、描きたいと思っているテーマも素晴らしいとは思うが、
それを語るための材料が見事に「材料」視されてしまっているようで、
メッセージが醸造されてくるのを待てずに巧緻な逆算で物事が決まってゆく印象。
全く異なるタイプだが、前年度グランプリ『最強のふたり』と大いに通ずる苦手因子。
思えば、昨年も今年も審査委員長はプロデューサー業が主の人物。
今年なんて映画監督が二人入ってはいるが、一人は滝田洋二郎。
そう考えると、映画祭事務局が東京国際映画祭のコンペをどう見せていきたいかが
如実に見えてくる気もする。『最強のふたり』を「成功例」として倣っていく方向性!?
ウー・ニエンジェン、ニコラ・ピオヴァーニ(2007年)
フォ・ジェンチイ、セザール・シャローン(2008年)
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(委員長)、
イエジー・スコリモフスキ、カロリーヌ・シャンプティエ(2009年)、
ニール・ジョーダン(委員長)、ドメニコ・プロカッチ、ホ・ジノ、根岸吉太郎(2010年)
といった、非常に興味深い制作者たちが審査を担当していた近年だけに、
審査員の選定で微妙な大衆化を画策するというこの中途半端さは、
今後のTIFFコンペの方向性を変えていきそうに思えてならない。