水谷修講演会レポート
---
10月1日に長岡市立坂之上小学校で行われた
水谷修先生の講演会のレポートです。
長文です。
水谷先生の子ども達に向けるやさしい表情=「やさしさ」と
子ども達を蝕む夜の世界、薬物、大人達と戦ってきた
「厳しさ」の対比が印象的でした。
「法は守るためにあるんです」
と静かに、厳しく言う言い方は、実に厳しく、
真剣勝負してきた水谷先生の姿勢がうかがえます。
レポートと言いながら、川上の主観を混ぜても
つまらない文章になるので、以下、講演の要旨を
ざっくり、ところによっては詳細にまとめてみました。
話の「枕」の部分など、カットした部分もあります。
ちなみに録音、ビデオが不可でしたので、前から4列目に
座り、ノートになぐり書きしていったメモから起こた文です。
よって、細部が多少違うかもしれません。ご了承下さい。
詳しくは水谷先生の著書を読んでください。(笑
なお、個々のエピソードに登場する子ども達の氏名は
イニシャルにいたしました。
---
長岡蒼柴ライオンズクラブ主催、
市民公開講座 夜回り先生 水谷修講演会
「いま、子ども達は…」
~夜回り先生からのメッセージ~
---
さて、水谷は皆さんとは違う「夜の世界」に生きる人間です。
今夜はこの後、新潟で講演会をします。夜は古町で夜回りを
します。水谷が歩いていくと、街の角角に立っている客引き、
呼び込み達が、携帯で連絡を取り合い、あちこちで姿を隠す。
皆さんは美しい自然、太陽の下で生きている。
夜の世界は違います。
横浜市立港高校に赴任してから、夜の生活が始まりました。
学校が終わると23時。
「早く家に帰れ」と自校の子ども達に呼びかけることから
始まった。
そして「昼の世界に戻れ」と言って、夜の世界と戦っている。
1000人以上の人を逮捕させている。
新潟では、中学校の教諭が卒業した女子生徒と淫行していた。
「見せしめ」「さらし者」にするため、授業中に逮捕させた。
子どもを傷つけた大人は許さない。
水谷はそういう男です。
---
夜の世界は真っ暗な世界です。
子ども達、明るくてきれいで、楽しそうと思う人いるか?
じゃぁ、朝行って見てごらん。
夜の街は、朝見てみると、みな偽物です。
ゴミだらけ、腐ったニオイ、薄っぺらな看板。
夜の街は嘘の街だ。
---
大人に聞きます。
子どもにかけた言葉で、温かい、美しい、やさしい言葉と、
ひどい、きつい言葉、どちらが多かったでしょう?
なぜですか?皆さんの子どもそんなに悪い子ですか?
じゃ、子ども達に聞きます。
親に誉められた回数と、叱られた回数とどっちが多いですか?
えぇ?きょうは長岡の不良ばっかりが集まっているのか?
---
大人はイライラしている。
経済の回復は地方はまだまだです。
「和を以って貴しと為す」は、今は昔です。
父は会社でイライラ。家に帰ってイライラは母親に。
子は母にイライラし、母は子にイライラする。
かけがえのない子どもに、イライラをぶつける…。
子どもはどうしたらいいのか。
父は外でお酒でも飲んでなんとかなるだろう。
母親も外に出てなんとかできる。
昼の学校、夜の家庭しかない子ども達には、逃げ場所がない。
子どもは追い込まれ、自分が悪いんだと責める。
薬に走るか、リストカット、援助交際。
これが、子どもを追い込む理由です。
夜の子ども達に。
それが、6年前から変わってきました。
講演会で出会った子ども。夜の世界の子ではない。
どこから見ても普通の子が「リストカット」していた。
ちなみに、かつて新潟ではリストカッターが多かった。
それが2年前の中越地震で減りました。
助け合って、生き残って、リストカッターは減った。
リストカットしてる人のいない学校は少ないのです。
地方ほどリストカットは多い。
夜遊びに行こうにも、街が遠く夜遊びができないから。
すると、夜遊びできないから暗い部屋に閉じこもり、
手首を切る。
あるいは医者に行って薬を処方してもらい、
多量に飲むOD(オーバードーズ)
「夜眠れない子ども達」と呼んでいる。
このうち95%は女子、5%が男子。
男の子は要注意です。我慢に我慢を重ねているから。
自分の子どもを調べるには、午前2時の子どもの様子を
そっと覗いてみることです。
寝ていたら大丈夫。家にいない、眠れないようだったら注意。
---
大人は1日50個は子ども達に、やさしい温かい美しい言葉を
かけてあげてほしい。
この一言がどれだけ子どもの命を助けるか。
○○好きだよ。でもいい。
「好きだよ」が照れるなら、なんでも良いから
「○○してありがとう」でも。
小・中・高の先生は、早速職員会議を開いて
1日10個は子ども達が誉めてもらえるようにしてほしい。
学校で、家庭でやさしい美しい温かい言葉で、子ども達を
おおってあげてほしい。
そうすれば、非行、犯罪、心の病にはならない。
なったとしても浅く済みます。
子ども達も、その温かい美しいやさしい言葉を受けたら
親に返すんだぞ。
---
転機は福岡の一人の少年との出会いから。
当時も夜回りはしていたが、夜回りでは夜の部屋で
一人でいる子ども達には会えないのです。
どうしたらいいか。
基本的には信用していないが、テレビ、マスコミの
力を借りるしかなかった。
そして、それらのメディアを通じて、水谷が君たちの存在、
苦しみに気付いたぞと発信した。
水谷のスタンスは、
「今までのことはいいんだよ。ただし、命を落とすのはダメ。」
そして、水谷の仲間の法、警察、精神科医などの仲間で
取り組んできたが、残念ながら、この日まで16名の命は
救えなかった。
水谷を手伝い、子ども達にメールを返す仕事を手伝ってくれた
仲間も、耐えきれず去っていった。
「自分たちだけでは無理だよ」と。
---
小学4年生の男の子の話。
電話で
「これから死ぬんだ。
水谷先生、本当にいたんだ。じゃこれから死ぬ…。」
最初はリストカットを覚えたが、今はヒモで首を絞めている。
お尻はカチカチ山。パチンコで負けた親の腹いせに、
タバコの火を押しつけられ、それを耐え続けてきた。
学校でもいじめに遭っている。しかし、先生に言ったら、
「いじめられるおまえが悪い」と言われた。
「誰か信用できる大人はいないか?」
「ばあちゃん校長先生ならいるよ。やさしいんだよ。」
翌日校長先生に伝えて、校長先生は彼の話を聞いて
抱きしめた。そして、水谷と約束をした。
・彼を家に戻さないこと。
・県の児童相談所に電話して彼を施設に移すように。
・転校させてほしい
・校長は自分自身を処分すること
子どものいじめで責任をとった大人はまったくいない。
その意味で責任をとってほしい。
校長は、彼を自分の養子にした。
---
5年前横浜の定時制高校時代、
クラスでイタリア製の財布の盗難があった。
すぐに目撃した生徒が「盗ったのを見た」と。
その目撃された生徒と二人きりになり、
罪を問いただすこともできた。
しかし、「見てまた戻したんだよな。」と話した。
しまった…と思った。
誰が悪いのか。盗った人だろうか?
否。担任だ。
「「管理責任者 水谷」と書いてあるだろう。盗った子に罪はない。」
クラスの子ども達にはそう話し、水谷のお金と職員から集めた
ポケットマネーで弁償した。
お金に困っていることを打ち明けられない「人間関係」を
作っていなかった自分が悪かったのだ。
子どもを追い込むことも可能だが、
あのとき子どもを追い込んでいたら、その子は居られなくなっただろう。
子どもは不完全だからこそ、子ども。
失敗するし、過ちもする。
だから許していくのだ。
少年法の考え方もそこにある。
子どもの過去も、今も、許す。
「いいんだよ。
やったことはしょうがない。
でも罪は償おう。」
過去は許して、「いいんだよ」と認めて、
これからを心のゆとりを持って生きてほしい。
---
子どもに忍び寄る最大の魔の手は「薬物」。
今は、第三次覚醒剤濫用期にある。
特徴的なのは、薬物史上初めて、10代の子ども達に
使用者がいること。
子どもの非行は、集団です。
大人と違い、子どもの薬物汚染は面で拡がる。
子どもの5割が薬物汚染の危険にさらされている。
長岡も例外ではない。
市内のすべての高校でも薬物の危険が近付いている。
1位は新津、2位は新潟、豊栄、3位は長岡、4位が上越。
市内すべての高校から、薬物の相談が来ています。
決して他人事ではないのです。
---
少年Mの話。
Mは母子家庭で、シンナーを吸っていた。
母は寝たきりで、8か月一銭もない生活をした。
貧しかった。
でも、心ある大人は誰も気付かなかった。
給食の残りを給食室からもらい、
「公園で飼っている犬にやるんだ」と言って、
家に持ち帰っては、母親と食べて、飢えをしのいだ。
しかし、気付いたのはいじめっ子。
給食室からもらってきたパンを地面にまき、靴で踏みつけた。
それでもMは黙って拾って、そのパンを持ち帰り、
砂を落として、隣の部屋の人から借りた砂糖と牛乳で、
フレンチトーストを作り、母親と食べた。
それを守ったのは横浜で暴走族の親分格だったT。
MはTに着いて、暴走族に入り、シンナーにはまった。
しかし、見つかって連れ戻されると、シンナーをやめるために、
水谷の家に来た。そして、夜回りを手伝うほどに。
しかし、また実家に帰ると、またシンナーに手を出し、
つかまって戻るを3か月繰り返した。
ある日、水谷に新聞の切り抜きを持ってきて、
「シンナーをやめるには、水谷先生ではダメだ。
病院の治療が必要なんだ」と言った。
しかし、それに怒りを覚えた水谷は、「家に行ってもいいか」と
いうMに嘘を言って帰してしまった。
その時言った「きょうの水谷先生つめてーな」が
最後の言葉になった。
その夜、最後のシンナーにする「サヨナラシンナー」をしたMは、
フラッと車道に出たのだろう。車に轢かれ、即死した。
Mの母親から斎場で、骨の箸渡しを一緒にと頼まれた。
しかし、シンナーは有機溶剤。Mの骨まで溶かしていた。
骨はもろく、ことごとく崩れていた。
ようやく大きめのかけらを見つけて、母親と持ち上げた骨は
箸の間で、もろく砕けて落ちた。
「シンナーがにくい。シンナーがにくい。」と母は泣いた。
その後、Mが切り抜きで持ってきた「せりがや病院」に行った。
病院の医師は穏やかに話を聞いてくれたが、最後に
「水谷先生、あんたが殺したんだよ」と厳しく言った。
「シンナーは依存症。病気です。」
病気は愛では治らない。
タバコでさえやめられないのに、その何倍も強い薬物が
愛の力で勝てるわけがない。
---
薬物・ドラッグについて。
薬物とは、簡潔に言うと
1.やるとやめられないもの
2.やると捕まるもの=法で制限されているもの
アルコールも、タバコも制限薬物です。
大阪で、大学生に飲酒させた教員を通報し、逮捕させました。
地元、新潟大学は、飲酒のワーストです。
法は守るためにあるんです。
また、処方薬を他人にあげることも、薬事法違反です。
薬は毒です。「毒を以て毒を制す」の言葉の通り。
むき出しの薬を子どもの手の届くところ、見えるところに
出しておくのも、薬物への意識の低さからです。
人前で化粧することと人前で薬を飲むこと、
どちらがみっともないと思いますか?
化粧はブスだから。(水谷先生の発言です)
一方、薬を飲むことは自分の弱いことを人に見せること。
諸外国では、人に薬を飲むところを見せないのがマナー。
人前で薬を飲むのは、日本と中国だけ。
本物の薬物教育が必要です。
---
薬物には二面性がある。
快と死。心の死と、肉体の死。
薬物はどこから入ってくるのでしょう。
外国人、暴力団、そして最近は知人・仲間・先輩から。
逃れる方法は
1.話題を変える。
2.壊れたレコード作戦。同じことを繰り返す。
3.3D作戦。
だって…、でも…、どうして…を繰り返す。
4.逃げる。
道の明るい、広い、人のいるにぎやかな方へ逃げる。
薬物に誘われるとき、周りには親も大人もいない。
---
Aという少女の話。
5年前、モーテルに連れ込まれそうになった少女を助けた。
中学3年だった。
男子学生による強姦から、彼女は中1で夜の世界に入っていた。
売春からHIVに感染。
それから人に移そうと8か月間売春を繰り返した。
エイズは発症。やがて、枯れ枝のようになって病院に。
「すべての講演で、わたしのことを話して」と約束した。
「人の美しさは、髪や服や色じゃない。心だ。
夜の世界には来ないで。昼の世界にいて。」
そして、Aは亡くなりました。
父は、その苦しむ様子に、死後
「良かったな、A。楽になったな。」と涙を流した。
Aの死は、凄惨で、むごい死だった。
---
子ども達、おまえ達の中にある尊い花の種を
一生かけて咲かせるんだ。
おまえ達は、夜の世界には来るな。
Aのことを思ってくれ。
一人の大人に裏切られたら、10人の大人に訴えるんだ。
そしたら助けてくれる。
人は人との直接のかかわり合いの中でしか成長できない。
大人にお願いです。
夜の世界の子どもを恐れないで。
本当は、どの子もあったかい父母の家で、あったかい学校で
育ちたいんです。
政府は、「家庭を軸に」と言っているが、どうだろうか。
ひどい家に育った子にとって、家は安らげる場所ではない。
すべての子を支えるのは、大人の仕事です。
子どもに必要なのは、姿形の見えない大人ではなく、
一人の人間としての大人です。
下を向く小学生が居たら、声をかけてほしい。
・8・3運動をしましょうよ
大人は8時、3時の子どもの登下校時に外に立って
子どもを見守ってあげましょうよ。
・子どもは、お年寄りに「やさしさ」をあげてください。
そういう街にしていってほしい。
皆さんの仕事は、きょう話したことを生かしていくこと。
そして、街を変えていってください。■
---
以上が、およそ90分間の講演のまとめです。
いかがでしょう。
あまりにも水谷先生の話が早いため、
ここに書ききれないもっと細かいエピソードもありました。
前に書いたことも、メモには残っていなくても、
当日聞いて覚えていたことです。
講演を聴いて、わたし達に、じゃぁ何ができるのか。
自分は何をしていったらいいのか。
水谷先生と、もっと話をして、いろいろなことを
聞いてみたくなりました。
しかし、その答えは、講演の中で話されているように、
子ども達に、やさしい温かい美しい言葉をかけて、
誉めて、過ちは許してあげることが大切なんだなと
思っています。
薬物の危険も、親子で、学校で、真剣に薬物教育を
していかなくてはいけない。
子どもを支え、守るのは大人の責任です。
どれも印象的な言葉ですが、
最も印象的だったのは、
「子どもは不完全だから子ども。
失敗するし、過ちもする。
だから許していくんです。
子どもの過去もすべて許すんです。
いいんだよ。
やったことはしょうがない。
でも罪は償おう。」
---
Change!! IKUEI!!
by 川上
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10月1日に長岡市立坂之上小学校で行われた
水谷修先生の講演会のレポートです。
長文です。
水谷先生の子ども達に向けるやさしい表情=「やさしさ」と
子ども達を蝕む夜の世界、薬物、大人達と戦ってきた
「厳しさ」の対比が印象的でした。
「法は守るためにあるんです」
と静かに、厳しく言う言い方は、実に厳しく、
真剣勝負してきた水谷先生の姿勢がうかがえます。
レポートと言いながら、川上の主観を混ぜても
つまらない文章になるので、以下、講演の要旨を
ざっくり、ところによっては詳細にまとめてみました。
話の「枕」の部分など、カットした部分もあります。
ちなみに録音、ビデオが不可でしたので、前から4列目に
座り、ノートになぐり書きしていったメモから起こた文です。
よって、細部が多少違うかもしれません。ご了承下さい。
詳しくは水谷先生の著書を読んでください。(笑
なお、個々のエピソードに登場する子ども達の氏名は
イニシャルにいたしました。
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長岡蒼柴ライオンズクラブ主催、
市民公開講座 夜回り先生 水谷修講演会
「いま、子ども達は…」
~夜回り先生からのメッセージ~
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さて、水谷は皆さんとは違う「夜の世界」に生きる人間です。
今夜はこの後、新潟で講演会をします。夜は古町で夜回りを
します。水谷が歩いていくと、街の角角に立っている客引き、
呼び込み達が、携帯で連絡を取り合い、あちこちで姿を隠す。
皆さんは美しい自然、太陽の下で生きている。
夜の世界は違います。
横浜市立港高校に赴任してから、夜の生活が始まりました。
学校が終わると23時。
「早く家に帰れ」と自校の子ども達に呼びかけることから
始まった。
そして「昼の世界に戻れ」と言って、夜の世界と戦っている。
1000人以上の人を逮捕させている。
新潟では、中学校の教諭が卒業した女子生徒と淫行していた。
「見せしめ」「さらし者」にするため、授業中に逮捕させた。
子どもを傷つけた大人は許さない。
水谷はそういう男です。
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夜の世界は真っ暗な世界です。
子ども達、明るくてきれいで、楽しそうと思う人いるか?
じゃぁ、朝行って見てごらん。
夜の街は、朝見てみると、みな偽物です。
ゴミだらけ、腐ったニオイ、薄っぺらな看板。
夜の街は嘘の街だ。
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大人に聞きます。
子どもにかけた言葉で、温かい、美しい、やさしい言葉と、
ひどい、きつい言葉、どちらが多かったでしょう?
なぜですか?皆さんの子どもそんなに悪い子ですか?
じゃ、子ども達に聞きます。
親に誉められた回数と、叱られた回数とどっちが多いですか?
えぇ?きょうは長岡の不良ばっかりが集まっているのか?
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大人はイライラしている。
経済の回復は地方はまだまだです。
「和を以って貴しと為す」は、今は昔です。
父は会社でイライラ。家に帰ってイライラは母親に。
子は母にイライラし、母は子にイライラする。
かけがえのない子どもに、イライラをぶつける…。
子どもはどうしたらいいのか。
父は外でお酒でも飲んでなんとかなるだろう。
母親も外に出てなんとかできる。
昼の学校、夜の家庭しかない子ども達には、逃げ場所がない。
子どもは追い込まれ、自分が悪いんだと責める。
薬に走るか、リストカット、援助交際。
これが、子どもを追い込む理由です。
夜の子ども達に。
それが、6年前から変わってきました。
講演会で出会った子ども。夜の世界の子ではない。
どこから見ても普通の子が「リストカット」していた。
ちなみに、かつて新潟ではリストカッターが多かった。
それが2年前の中越地震で減りました。
助け合って、生き残って、リストカッターは減った。
リストカットしてる人のいない学校は少ないのです。
地方ほどリストカットは多い。
夜遊びに行こうにも、街が遠く夜遊びができないから。
すると、夜遊びできないから暗い部屋に閉じこもり、
手首を切る。
あるいは医者に行って薬を処方してもらい、
多量に飲むOD(オーバードーズ)
「夜眠れない子ども達」と呼んでいる。
このうち95%は女子、5%が男子。
男の子は要注意です。我慢に我慢を重ねているから。
自分の子どもを調べるには、午前2時の子どもの様子を
そっと覗いてみることです。
寝ていたら大丈夫。家にいない、眠れないようだったら注意。
---
大人は1日50個は子ども達に、やさしい温かい美しい言葉を
かけてあげてほしい。
この一言がどれだけ子どもの命を助けるか。
○○好きだよ。でもいい。
「好きだよ」が照れるなら、なんでも良いから
「○○してありがとう」でも。
小・中・高の先生は、早速職員会議を開いて
1日10個は子ども達が誉めてもらえるようにしてほしい。
学校で、家庭でやさしい美しい温かい言葉で、子ども達を
おおってあげてほしい。
そうすれば、非行、犯罪、心の病にはならない。
なったとしても浅く済みます。
子ども達も、その温かい美しいやさしい言葉を受けたら
親に返すんだぞ。
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転機は福岡の一人の少年との出会いから。
当時も夜回りはしていたが、夜回りでは夜の部屋で
一人でいる子ども達には会えないのです。
どうしたらいいか。
基本的には信用していないが、テレビ、マスコミの
力を借りるしかなかった。
そして、それらのメディアを通じて、水谷が君たちの存在、
苦しみに気付いたぞと発信した。
水谷のスタンスは、
「今までのことはいいんだよ。ただし、命を落とすのはダメ。」
そして、水谷の仲間の法、警察、精神科医などの仲間で
取り組んできたが、残念ながら、この日まで16名の命は
救えなかった。
水谷を手伝い、子ども達にメールを返す仕事を手伝ってくれた
仲間も、耐えきれず去っていった。
「自分たちだけでは無理だよ」と。
---
小学4年生の男の子の話。
電話で
「これから死ぬんだ。
水谷先生、本当にいたんだ。じゃこれから死ぬ…。」
最初はリストカットを覚えたが、今はヒモで首を絞めている。
お尻はカチカチ山。パチンコで負けた親の腹いせに、
タバコの火を押しつけられ、それを耐え続けてきた。
学校でもいじめに遭っている。しかし、先生に言ったら、
「いじめられるおまえが悪い」と言われた。
「誰か信用できる大人はいないか?」
「ばあちゃん校長先生ならいるよ。やさしいんだよ。」
翌日校長先生に伝えて、校長先生は彼の話を聞いて
抱きしめた。そして、水谷と約束をした。
・彼を家に戻さないこと。
・県の児童相談所に電話して彼を施設に移すように。
・転校させてほしい
・校長は自分自身を処分すること
子どものいじめで責任をとった大人はまったくいない。
その意味で責任をとってほしい。
校長は、彼を自分の養子にした。
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5年前横浜の定時制高校時代、
クラスでイタリア製の財布の盗難があった。
すぐに目撃した生徒が「盗ったのを見た」と。
その目撃された生徒と二人きりになり、
罪を問いただすこともできた。
しかし、「見てまた戻したんだよな。」と話した。
しまった…と思った。
誰が悪いのか。盗った人だろうか?
否。担任だ。
「「管理責任者 水谷」と書いてあるだろう。盗った子に罪はない。」
クラスの子ども達にはそう話し、水谷のお金と職員から集めた
ポケットマネーで弁償した。
お金に困っていることを打ち明けられない「人間関係」を
作っていなかった自分が悪かったのだ。
子どもを追い込むことも可能だが、
あのとき子どもを追い込んでいたら、その子は居られなくなっただろう。
子どもは不完全だからこそ、子ども。
失敗するし、過ちもする。
だから許していくのだ。
少年法の考え方もそこにある。
子どもの過去も、今も、許す。
「いいんだよ。
やったことはしょうがない。
でも罪は償おう。」
過去は許して、「いいんだよ」と認めて、
これからを心のゆとりを持って生きてほしい。
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子どもに忍び寄る最大の魔の手は「薬物」。
今は、第三次覚醒剤濫用期にある。
特徴的なのは、薬物史上初めて、10代の子ども達に
使用者がいること。
子どもの非行は、集団です。
大人と違い、子どもの薬物汚染は面で拡がる。
子どもの5割が薬物汚染の危険にさらされている。
長岡も例外ではない。
市内のすべての高校でも薬物の危険が近付いている。
1位は新津、2位は新潟、豊栄、3位は長岡、4位が上越。
市内すべての高校から、薬物の相談が来ています。
決して他人事ではないのです。
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少年Mの話。
Mは母子家庭で、シンナーを吸っていた。
母は寝たきりで、8か月一銭もない生活をした。
貧しかった。
でも、心ある大人は誰も気付かなかった。
給食の残りを給食室からもらい、
「公園で飼っている犬にやるんだ」と言って、
家に持ち帰っては、母親と食べて、飢えをしのいだ。
しかし、気付いたのはいじめっ子。
給食室からもらってきたパンを地面にまき、靴で踏みつけた。
それでもMは黙って拾って、そのパンを持ち帰り、
砂を落として、隣の部屋の人から借りた砂糖と牛乳で、
フレンチトーストを作り、母親と食べた。
それを守ったのは横浜で暴走族の親分格だったT。
MはTに着いて、暴走族に入り、シンナーにはまった。
しかし、見つかって連れ戻されると、シンナーをやめるために、
水谷の家に来た。そして、夜回りを手伝うほどに。
しかし、また実家に帰ると、またシンナーに手を出し、
つかまって戻るを3か月繰り返した。
ある日、水谷に新聞の切り抜きを持ってきて、
「シンナーをやめるには、水谷先生ではダメだ。
病院の治療が必要なんだ」と言った。
しかし、それに怒りを覚えた水谷は、「家に行ってもいいか」と
いうMに嘘を言って帰してしまった。
その時言った「きょうの水谷先生つめてーな」が
最後の言葉になった。
その夜、最後のシンナーにする「サヨナラシンナー」をしたMは、
フラッと車道に出たのだろう。車に轢かれ、即死した。
Mの母親から斎場で、骨の箸渡しを一緒にと頼まれた。
しかし、シンナーは有機溶剤。Mの骨まで溶かしていた。
骨はもろく、ことごとく崩れていた。
ようやく大きめのかけらを見つけて、母親と持ち上げた骨は
箸の間で、もろく砕けて落ちた。
「シンナーがにくい。シンナーがにくい。」と母は泣いた。
その後、Mが切り抜きで持ってきた「せりがや病院」に行った。
病院の医師は穏やかに話を聞いてくれたが、最後に
「水谷先生、あんたが殺したんだよ」と厳しく言った。
「シンナーは依存症。病気です。」
病気は愛では治らない。
タバコでさえやめられないのに、その何倍も強い薬物が
愛の力で勝てるわけがない。
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薬物・ドラッグについて。
薬物とは、簡潔に言うと
1.やるとやめられないもの
2.やると捕まるもの=法で制限されているもの
アルコールも、タバコも制限薬物です。
大阪で、大学生に飲酒させた教員を通報し、逮捕させました。
地元、新潟大学は、飲酒のワーストです。
法は守るためにあるんです。
また、処方薬を他人にあげることも、薬事法違反です。
薬は毒です。「毒を以て毒を制す」の言葉の通り。
むき出しの薬を子どもの手の届くところ、見えるところに
出しておくのも、薬物への意識の低さからです。
人前で化粧することと人前で薬を飲むこと、
どちらがみっともないと思いますか?
化粧はブスだから。(水谷先生の発言です)
一方、薬を飲むことは自分の弱いことを人に見せること。
諸外国では、人に薬を飲むところを見せないのがマナー。
人前で薬を飲むのは、日本と中国だけ。
本物の薬物教育が必要です。
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薬物には二面性がある。
快と死。心の死と、肉体の死。
薬物はどこから入ってくるのでしょう。
外国人、暴力団、そして最近は知人・仲間・先輩から。
逃れる方法は
1.話題を変える。
2.壊れたレコード作戦。同じことを繰り返す。
3.3D作戦。
だって…、でも…、どうして…を繰り返す。
4.逃げる。
道の明るい、広い、人のいるにぎやかな方へ逃げる。
薬物に誘われるとき、周りには親も大人もいない。
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Aという少女の話。
5年前、モーテルに連れ込まれそうになった少女を助けた。
中学3年だった。
男子学生による強姦から、彼女は中1で夜の世界に入っていた。
売春からHIVに感染。
それから人に移そうと8か月間売春を繰り返した。
エイズは発症。やがて、枯れ枝のようになって病院に。
「すべての講演で、わたしのことを話して」と約束した。
「人の美しさは、髪や服や色じゃない。心だ。
夜の世界には来ないで。昼の世界にいて。」
そして、Aは亡くなりました。
父は、その苦しむ様子に、死後
「良かったな、A。楽になったな。」と涙を流した。
Aの死は、凄惨で、むごい死だった。
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子ども達、おまえ達の中にある尊い花の種を
一生かけて咲かせるんだ。
おまえ達は、夜の世界には来るな。
Aのことを思ってくれ。
一人の大人に裏切られたら、10人の大人に訴えるんだ。
そしたら助けてくれる。
人は人との直接のかかわり合いの中でしか成長できない。
大人にお願いです。
夜の世界の子どもを恐れないで。
本当は、どの子もあったかい父母の家で、あったかい学校で
育ちたいんです。
政府は、「家庭を軸に」と言っているが、どうだろうか。
ひどい家に育った子にとって、家は安らげる場所ではない。
すべての子を支えるのは、大人の仕事です。
子どもに必要なのは、姿形の見えない大人ではなく、
一人の人間としての大人です。
下を向く小学生が居たら、声をかけてほしい。
・8・3運動をしましょうよ
大人は8時、3時の子どもの登下校時に外に立って
子どもを見守ってあげましょうよ。
・子どもは、お年寄りに「やさしさ」をあげてください。
そういう街にしていってほしい。
皆さんの仕事は、きょう話したことを生かしていくこと。
そして、街を変えていってください。■
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以上が、およそ90分間の講演のまとめです。
いかがでしょう。
あまりにも水谷先生の話が早いため、
ここに書ききれないもっと細かいエピソードもありました。
前に書いたことも、メモには残っていなくても、
当日聞いて覚えていたことです。
講演を聴いて、わたし達に、じゃぁ何ができるのか。
自分は何をしていったらいいのか。
水谷先生と、もっと話をして、いろいろなことを
聞いてみたくなりました。
しかし、その答えは、講演の中で話されているように、
子ども達に、やさしい温かい美しい言葉をかけて、
誉めて、過ちは許してあげることが大切なんだなと
思っています。
薬物の危険も、親子で、学校で、真剣に薬物教育を
していかなくてはいけない。
子どもを支え、守るのは大人の責任です。
どれも印象的な言葉ですが、
最も印象的だったのは、
「子どもは不完全だから子ども。
失敗するし、過ちもする。
だから許していくんです。
子どもの過去もすべて許すんです。
いいんだよ。
やったことはしょうがない。
でも罪は償おう。」
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Change!! IKUEI!!
by 川上
同じ方でしょうか?コメントありがとうございます。
というよりも、水谷先生の言葉に感動していらっしゃるご様子。わかります。同感です。
本当に、わたしも10月の講演会の時には水谷先生の言葉に息をのみ、考えさせられ、涙がこみ上げ、心を揺り動かされました。
わたしの拙いメモから書き起こして、水谷先生のお話を勝手にここに載せてしまっているんですが、一人でも多くの人に水谷先生のことを知ってもらいたいと思い書きました。
これからも、陰ながら応援していくと同時に、自分が子ども達に対して出来ることを一つでも多くしていきたいと思います。