遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

外国で働くということ

2009-11-30 22:39:07 | たわごと
月曜日は研究室で土・日・月の新聞(北陸中日新聞)をまとめて見ます。その中で日曜の社会面に知ってる人が出ていました。この不景気で外国人労働者がどれだけ苦労しているか社会問題として提起している記事です。彼はブラジル人で、日本に来てから11回も職を転々としていると彼の職歴が表になって掲載されていました。かつて具のないみそ汁を奥さんと分け合って日本でがんばってきたエピソードが紹介され、写真の中で彼はいつもの柔和な笑顔で家族と食卓を込んでいます。温かい写真でした。もちろん、記事はこの日本の現状を憂う内容で、ジャーナリズムとして光を当てるべきテーマを取り上げていると思います。でも、懇意にしている人がこういう話題で出てると気持ちが違いますね。

戦後すぐ、僕の叔父はブラジルヘ家族を連れて移民しました。彼が日本に一時帰国した時、ちょうど日本の子供が病原性大腸菌O157に感染して深刻な社会問題になってました。「日本の子供は弱いのう」と、日に焼けた明るい顔で笑いながら、泥水をすすりながら農場で頑張ってきた昔話をしてくれたことを思い出しました。外国で働いて生きていくことは半端なことではありません。

僕も弟も外国の大学で働いた経験があります。弟は日本の会社から給料をもらってのことですから、あっちで雇われていた僕から見るとぬるい感じがしますが、それはそれで苦労はあったでしょう。当時の彼は欧州の大学で働いていたのに博士号を持ってなかったのですから(今彼は持っています)。研究の世界では博士号を持っていないと『対等な人』として扱われません。
アジアで博士号を認めてもらえている国は日本だけです。アジアの他国でとった博士号に対しては『格下』とされます。対等の水準にないという評価です。最近は、韓国やシンガポール、台湾、中国のトップクラスの大学ならそこそこ認めてもらえるだろうと想像しますが、『日本』でとった博士号はどこの日本の大学でもだいたいOKでしょう(甘いかな?)。この日本の高等教育の水準に対する国際的信用は、明治の時代から先人達が差別や侮辱に耐え、正直に実力を証明して欧米諸国に認めさせてきた財産なのです。どの国の社会にも差別や階級というものはあります。今の自分のポジションが当たり前のものとして考えていると、あっという間に見下され惨めなポジションに追い落とされるでしょう。今の政府の大学教育と科学に対する無知無理解は、この長年かけて築いてきた財産をどんどん目減りさせるような気がします。「何故一番じゃないといけないんですか?二番じゃ駄目なんですか?」なんて問いが公然とまかり通るようでは三流国にもなれないと思うよ。今のスパコン開発はダメダメだけどね。

本日のお酒:土佐鶴 本醸造
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