京大入試問題漏洩事件

１９歳予備校生逮捕＝「１人でやった」、偽計業務妨害容疑?入試問題投稿・京都府警(時事通信) - goo ニュース
この京大入試問題漏洩事件なんですが、僕は国立大学で働いていてセンター試験や二次試験の試験監督もやる立場にいるんで言いたいこともいっぱいあります。結果的に当事者が１９歳の青年だったこともあって心が痛みます。
んで、事件の展開が落ち着くまで待ってました。今はまだ落ち着いたという状況じゃないと思うのですが、昨日twitterでひと暴れしたので早めに考えをまとめておきたいのでエントリーをまとめました。

この事件が起こったときに一番心配だったのは、マスコミが騒ぎをいたずらに大きくし追いつめられた彼が最悪の行動をとらないようにということでした。彼が仙台で捕まった時に、「無事でよかった」と思いました。こういう反応は少数派だったみたいですが・・・。
こういう思いがあって、「早く自首してほしかった」とtwitterでつぶやいたら「犯罪者扱いするな」とtwitterでどなられ(?)たのです。まあ、数時間の時間差があるので僕が対象じゃなかったのかもしれませんが。僕としては、『警察に追われている者が警察に出頭する』行為を『自首』と言ったわけです。犯罪者かどうかはその後でわかること。犯罪者扱いにしたわけではありません。

最大の問題は、入学試験問題が試験時間中にYahooの板に公開されたことです。しかも答えが投稿されて、それに「ありがとうございました」というレスまでつけられていた。これが大々的に報道された。これは京都大学はスルーできない。しかし、だからといって、京都大学には捜査権がない。Yahooに投稿してきた携帯電話を特定してもらって、携帯の会社から契約者の名前を教えてもらうなんて、このご時世で簡単にいきません。警察にいわなくても他の私大と受験生の名前と解答を照合すれば「犯人」は割り出せたという意見もあるようですが、まず受験生がやったという確証もないし、こういう事件が起こるたびに他所の大学に受験者の名前や採点結果を見せ合いっこするなんてことを私大が了解するわけがないです。すでに私大は試験が終わっていて合格が発表され入学手続きに入っているはず。京大は合格発表を３月１０日に控えている。この問題を放置したままだと、京大は最悪合格者の確定さえ出来ない羽目になるかもしれません。警察力に頼らずに問題を解決する方法を選択せよというのは無理でしょう。
偽計業務妨害が容疑の名前です。『業務妨害』はわかりますね。「偽計」というのは柔かくいうと、嘘や騙しのことです。カンニングが犯罪というわけではなく、それと試験問題漏洩にまつわって起こった入試業務に対する障害が京大にとっての被害ということになるようです。動機がカンニングだっただけ。これさえも容疑としていかがなものかという意見はあるようです。ただ、素人の僕にもいいか悪いかはわかります。彼のやったことは「悪い」ことです。

京大はこの入試問題の試験時間中の漏洩がどのように行われたかが分かればいいので、やったひとが特定できてそれが未成年の子だったことが分かった時点で被害届を取り下げるべきだと考えてました。しかし法律の専門家に言わせると、被害者が取り下げても刑事事件の疑いがあれば逮捕はされるとのこと。彼が逃げていた以上、身柄の拘束はしょうがない。

それでも僕は、取り下げることで京大は問題を解決したいだけで犯人を罰したいわけではないというメッセージを世間に出せたと思います。
この件で京都大学の学長さんや副学長さんのコメントに反省や陳謝の言葉がないことが非常に残念です。問題の責任は京都大学にあります。十分な研修を行ったとほざいたそうですが、結果として出来てなかったわけですから京大の完敗です。研修は不十分だったということです。今年の京大文系の受験者は携帯電話でネットし放題の環境で試験を受けたわけです。

入試は通常の学期末の試験と違って、たいへん厳粛なものです。監督官は違反者を見つけることではなく、違反させないことが主要な役割なのです。違反させないことで受験者を守っているのです。それだけにいつもより緊張して監督にのぞみます。試験が一通り終わった時には、担当した教室の受験生達となんかすごい仕事を一緒に成し遂げた達成感を得ます。それは一方的にこっちだけの感覚でしょうけど・・・とにかく真剣勝負なのです。

彼は予備校の寮から一時行方不明になり山形県の自宅にも帰らず、親族から捜索願が出されていたそうです。ご親族はさぞ心配されたことでしょう。結局彼は携帯の電源を入れっぱなしていたために場所が特定され、仙台で捕まったそうです。最後まで携帯電話に振り回された事件でした。

本日のお酒：立山　純米大吟醸　雨晴　＋　日栄　山廃造り