Takeda's Report

備忘録的に研究の個人的メモなどをおくようにしています.どんどん忘れやすくなっているので.

Webのこれまでとこれから (4/5)

2006年12月29日 | 解説記事
6.社会としてのWebの特徴
社会としてのWebということは,社会に存在するあらゆる要素がWeb上になければならない.人,もの,人やものの関係,社会的活動(生活,教育,ビジネス),コミュニティ,組織,ルール,モラル,法律,犯罪,政治,等々である.社会という視点からみてみると,現在のWebはまだまだその端緒についたばかりだということがわかる.やっと,大勢の人(といっても人口の何割かでしかない),人間関係のほんのすこしの部分,社会的活動のほんのすこしの部分等々.これらの要素はこれから次々と「Web化」されていくであろう.
そうするとWebの様相は大きく変わっていくであろう.Webは今に比べればずっと複雑な構造をもつことになる.Webが普及した理由はWeb文書とリンクといった構造の単純さであり,この特徴はWebからなくなりはしないが,社会的な要素を取り扱うためにはそれだけは済まず,社会のもつ複雑な構造を取り込まないといけない.
そのような世界を想像しがたいかもしれない.しかし,すでにそのような世界は存在している.多くのオンラインゲームの中には既に多数の人々が毎日のように参加して,日夜“生活”している.ある種の社会が形成されているといえよう.図5に示すようにReutersのような実空間の企業が参加もするようになっている .
この中では人々の間のコミュニケーションはもとよりコミュニティの形成,商品売買といった社会活動まで行わなわれている.さらには“犯罪”“不正”も行われるようになっている.集団での待ち伏せといったゲーム世界内の不正から,システムの不備をついた不正アクセスといったサイバー空間ならではの不正,それがRMT(リアルマネートレード)という形で実空間の社会とのかかわりを持つ不正と多様である.このような混沌とした世界が我々がこれから生きるであろう社会である.
さてそのような社会としてのWebはどのような性質を持つのであろうか.現在の社会がそのままWebに移し変えられるわけではない.実空間上の社会はその空間のもつ制約のなかで形成されたものであり,一方Web空間は別の制約をもっている.したがって異なった社会の実現の仕方になるはずである.
Web空間の特徴としては以下のものをあげることができる.まずデータの特徴しては,複製可能,再利用可能,永続性がある.複製可能と再利用可能はデジタルデータの一般的特徴である.永続性は新しい特徴である.Web上の情報は消去が簡単で紙文書より永続性がないようみえるが,現在の傾向からするとむしろ逆で,一度Web上に現れた情報はどこかに保存され,ずっと残りうる .プロセスとしての特徴は,時間非依存,空間非依存,多重化可能,並列化可能,量非依存などが挙げられる.時間や空間に依存しないということははじめからのWebの特徴である.さらに近年の計算機の普及によって多重化や並列化が容易になっている.さらにはGoogleが示したように,近年の計算機の低廉化によって計算資源が潤沢になり,実質的に情報の量に依存しなくなりつつある.
このような情報の取り扱いは実空間ではできなったわけである.当然,このような性質をもつWeb上の社会は実空間の性質に基づく今までの社会とは異なる仕組みをもつであろう.


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