Takeda's Report

備忘録的に研究の個人的メモなどをおくようにしています.どんどん忘れやすくなっているので.

Webの進化とエージェント (7/7) 参考文献

2006年10月05日 | 解説記事
(1) Tim Berners-Lee, James Handler, and Ora Lassila, The Semantic Web. Scientific American, May 2001.
(2) Dan Brickley, R.V. Guha, eds., RDF Vocabulary Description Language 1.0: RDF Schema, W3C Recommendation, 10 February 2004
(3) Deborah L. McGuinness and Frank van Harmelen eds., OWL Web Ontology Language Overview, W3C Recommendation, 10 Feb 2004.
(4) White, J. E., Telescript technology: The foundation for the electronic marketplace. White paper, General Magic, Inc., 1995.
(5) Tim Finin, Yannis Labrou, and James Mayfield,  KQML as an agent communication language, Proceedings of the 3rd International Conference on Information and Knowledge Management (CIKM'94), 1995
(6) Tim O'Reilly, What Is Web 2.0 Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software, 2005 http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html (Last visited on October 4, 2006)
(7) R. Ichise, H. Takeda and S. Honiden: Integrating Multiple Internet Directories by Instance-based Learning, in Proceedings of the Eighteenth International Joint Conference on Artificial Intelligence, (IJCAI-03), pp. 22–28, 2003.
(8) Max Völkel, Malte Kiesel, Sebastian Schaffert, Björn Decker and Eyal Oren, Semantic Wiki State of The Art Paper, 2005, http://wiki.ontoworld.org/wiki/
Semantic_Wiki_State_of_The_Art_Paper (Last visited on October 4, 2006)
(9) Peter Mika. Ontologies are us: A unified model of social networks and semantics. Proceedings of the 4th International Semantic Web Conference (ISWC 2005), LNCS 3729, Springer-Verlag, 2005.
(10) Y. Matsuo, J. Mori, M. Hamasaki, K. Ishida, T. Nishimura, H. Takeda, K. Hasida and M. Ishizuka: POLYPHONET: An Advanced Social Network Extraction System from the Web, in Proceedings of the 15th International Conference on World Wide Web (WWW2006), pp. 397–406, Edinburgh, Scotland (2006), ACM Press

Webの進化とエージェント (6/7) おわりに

2006年10月05日 | 解説記事
本稿では,Webの進化の方向とエージェント技術の係わり合いについて論じた.関連技術を十分にカバーしているとはいないし,仮定に基づく議論も多く,粗雑な議論であることは否めない.しかし,Webの急速な発展の中,将来を見越した議論が研究者に必要であると考えて,あえてこのような形で述べさせてもらった.これをもとに多少とも議論が起これば幸いである.

Webの進化とエージェント (5/7) 社会としてのWebとエージェント

2006年10月05日 | 解説記事
社会としてのWebにおいてエージェント技術は重要な役割を果たすことが期待されている.そそもそも先にあげたWeb空間の特徴は実空間に身体をもつ我々に合わないのである.我々は情報を永続的に記憶したり,大量の情報を扱うこともできないし,ましてや多重や並列に処理することもできない.このギャップは増える一方である.ここに必要なのはまさに代理人としてのエージェントである.
また,社会の要素自身がWeb化するということは我々がインタラクション可能なWeb上の存在物にならないといけない.この意味でもエージェントが必要である.このエージェントは必要に応じてWeb空間のどこへでもいってインタラクションを行うであろう.
社会としてのWebという視点から見れば,セマンティックWebは社会環境の構築である.すなわち,我々の生活環境や文化をWeb上に構築する仕組みを提供する.一方,エージェント技術は社会インフラストラクチャーの構築である.その社会環境の中で人々が実際に活動できるような仕組みを提供する.社会としてのWebは両方の取り組みが必要とされる.


Webの進化とエージェント (4/7) 社会としてのWeb

2006年10月05日 | 解説記事
Web2.0は現在のWebのスナップショットである.それではWebは今後どんな方向へ進化していくのであろうか.
端的にいってしまえば,「Webは社会化」するであろう.Web 2.0の言い方にならえば,「社会としてのWeb」ということになる.「Webの社会化」とは,我々が日常生活している基盤である社会がWeb上に乗ってしまうということである.実空間で行っていたことがWeb空間上で行うようになるということである.この10年で我々の生活の一部は確実にWeb上へ移されてきた.その傾向は今後むしろ加速していくであろう.すなわち,社会そのものが大部分Web上へ移動してしまうというわけである.
このためには社会に存在するあらゆる要素がWeb上になければならない.人,もの,人やものの関係,社会的活動(生活,教育,ビジネス),コミュニティ,組織,ルール,モラル,法律,犯罪,政治,等々である.社会という視点からみてみると,現在のWebはまだまだその端緒についたばかりだということがわかる.やっと,大勢の人(といっても人口の何割かでしかない),人間関係のほんのすこしの部分,社会的活動のほんのすこしの部分等々.これらの要素はこれから次々と「Web化」されていくであろう.
そうするとWebの様相は大きく変わっていくであろう.Webは今に比べればずっと複雑な構造をもつことになる.Webが普及した理由はWeb文書とリンクといった構造の単純さであり,この特徴はWebはなくなりはしないが,社会的な要素を取り扱うためにはそれだけは済まず,社会のもつ複雑な構造を取り込まないといけない .
とはいえ,現在の社会がそのままWebに移し変えられるわけではない.実空間上の社会はその空間のもつ制約のなかで形成されたものであり,一方Web空間は別の制約をもっている.したがって異なった社会の実現の仕方になるはずである.
Web空間の特徴としては以下のものをあげることができる.まずデータの特徴しては
・ 複製可能
・ 再利用可能
・ 永続性
がある.複製可能と再利用可能はデジタルデータの一般的特徴であるが,最後の永続性は少し趣が異なる.確かにデジタルデータは劣化しないという面では永続的であるが,実際に永続的に存在し続けるかは別問題である.Web上の情報は消去が簡単で紙文書より永続性がないという言い方をする人もいるが,現在の傾向からするとむしろ逆で,一度Web上に現れた情報はどこかに保存され,ずっと残りうる .そうすると,量は単調的に増え続けるだろう.
プロセスとしての特徴は
・ 時間非依存
・ 空間非依存
・ 多重化可能
・ 並列化可能
・ 量非依存
などが挙げられる.時間や空間に依存しないということははじめからのWebの特徴である.さらに近年の計算機の普及によってあまねくPCがおかれるようになり,多重化や並列化が容易になっている.さらにはGoogleが示したように,近年のPCの低廉化によって計算資源が潤沢になり,実質的に情報の量に依存しなくなりつつある.
このようなデータ(情報)の取り扱いあるいはデータの処理は実空間ではできなったわけである.当然,このような特徴をもつWeb上の社会は今までの社会とは異なる仕組みをもつであろう.
たとえば,Web上の取り扱いで混沌とした状況にある著作権問題も,そもそも実空間のための仕組みを複製可能・再利用可能という異なる性質をもつWebに適用しようとすることによって生じている問題である.
こういうことが沢山生じつつ,社会としてのWebが形成されていくであろう.
ただし,すべてがWebに移行するわけではない.我々は実空間に身体を持ち,依然として実空間で生活し続けるわけである.したがって,一部はWeb空間で一部は実空間でという生活であり,それが今よりずっとWebの比重が増えるということである.

Webの進化とエージェント (3/7) Web2.0とエージェント技術

2006年10月05日 | 解説記事
多くのエージェント技術ではエージェントが実行あるいは通信する環境を普及させて,そのプラットホームの中でエージェントが活動するということを想定している.しかし,このような環境を普及させることは大変なことであり,それがエージェント技術普及のネックになっている.基本的にhttpとhtmlしかないWebに加えれば,はるかに高度な機能を提供しうるエージェント技術であっても,普及しなければ真価が発揮できない.もっともWebの利用者もこのWebの“低機能”性に満足していてわけではない.しかし,すでに普及しているWebを捨てるのではなく,その上に新しい機能を構築しようとしている.それがソフトウエアアーキテクチャとしてのWeb2.0である.
Web2.0の特徴のうち, 単一デバイスを超えたソフトウエア(5)はコンピュータから携帯機器いたる様々な機器を連携させるソフトウエアを指している.これはまさにエージェントによって達成したかったことである.しかし,実現の方法論が異なる.新たなプラットホームを構築してその上に載せるのではなくて,最低限Webであるということだけを基盤に,その上に用途に応じて様々な方法で連携を実現している.
その実現方法の一つが高い拡張性とコスト効率 (3)というフレーズに代表され,具体的にはajaxやAPIの公開といったものである.一般に独自の方法で連携といったシステムを作った場合,ユーザを囲い込む方向になりやすい.しかし,ユーザの囲い込みはWebの公開性の原則にも合わないし,またビジネス的にWebの巨大さに対応できないし,さらには技術的にもWebの日々の進歩についていくことができない.
代わりにソフトウエアそのものの公開やソフトウエアAPIを公開することで,多くの人にソースやデータを自由に利用してもらうことで,利用者の拡大とソフトウエアの発展を同時に達成しようとしている.結果として多様な利用方法が開拓されたり,新しい技術が追加されるという柔軟性の高い仕組みとなっている.
現在のajaxやAPI公開でできることは固定的な連携など,エージェント技術からみれば基本的な機能である.柔軟な連携や自律性など,エージェントが提供しうる機能は多い.今後は,エージェント研究で出てきた技術は一旦解体されWeb上に再構築されると思われる.

Webの進化とエージェント (2/7) Web2.0とセマンティックWeb

2006年10月05日 | 解説記事
セマンティックWebは元来のWebがそうであったように基本的には情報共有に関する技術である.その方法論としては情報共有の抽象度を挙げて知識共有として発展させることで,高度な情報共有を可能とすることを目標としている.知識を共有する仕組みを提供することで高度な情報共有が実現できると考えており,実際,オントロジー言語RDFSやOWLが制定されてきた.
一方,Web2.0もWebの発展形であるので,情報共有を実現している.Web2.0の特徴のうち,2と6から極めてWeb2.0は多数の人々が能動的に参加することで成立するものであることがわかる.そしてその実現の仕組みとしてはサービスであり(1),固定的な仕組みではなく,ダイナミックに実現されるもの(3)である.すなわち,大規模性,インタラクティブ性,可変性を持つ情報共有を実現しようとしているわけである.
両者は大規模情報共有を実現しようという点においては同じであるが,その注目点は異なる.ある意味,大規模情報共有とは矛盾を内包しているともいえる.情報を共有しようとしているわけであるから,統一された情報交換のフォーマットがなければならない.しかし,大規模性になればなるほど多様な情報共有をみとめていかないといけない.
セマンティックWebは情報の標準化に主に注視して,それを発展させようとしている.ある意味,極めてオーソドックスに情報共有の問題に取り組んでいる.
一方,Web2.0は大規模性に注目している.大規模性はもちろん大量であるということがまず問題になる.が,単に量が多いというだけでは留まらない,というのがポイントである.大規模さが生み出すいわば“創発”的現象(集合知)を積極的に利用すべきであるし,それを可能とするようなフレキシブルな仕組み(高い拡張性)を提供すべきと考えているわけである.
すなわち,両者は補完的である.セマンティックWebは共有の基盤構築に集中しているが,大規模性がもたらす問題は看過している.一方,Web2.0は大規模性やそこからくる多様性を重視するが,共有基盤には注目しない.しかし,安定した大規模知識共有は両方の要素が必要である.
セマンティックWebのほうから多様性,分散性を取り込むような研究も現れている.
セマンティックWebにおいてもオントロジーは分散的に開発・利用されると考えられている.そのためにオントロジーのマッピング,アライメント,統合といったものが盛んに研究されている.例えば,Yahoo!ディレクトリのような巨大オントロジーを自動的にマッピングする仕組みを提案などもある[7].
またオントロジーを協調して構築するというものも盛んに研究されている.ことに近年,wikiを拡張して,Semantic Wiki[8]として,オントロジーやオントロジーによるタギングを共同で行う環境として使う動きが盛んである.
さらにオントロジーをWebデータから自動構築するという試みもある.Mikaはfolksonomyからオントロジーを作るという試みを行っている[9].ここではdel.icio.usのタグに上位下位関係を児童発見することを行っている.
オントロジーではないが,人間関係をWebから自動構築するという試みもある[10].Webの信頼性を考えるには人間関係は重要な要素であり,それをWebから抽出している.

Webの進化とエージェント (1/7) はじめに

2006年10月05日 | 解説記事
以下は2001年5月号のScientific American誌に載ったTim Berners-Lee他の記事の冒頭である[1].

電話が鳴ったとき,娯楽システムからビートルズの“We Can Work It Out”が流れていた.Peteは電話で出たとき,彼の電話は音量調整を持っている他のローカルデバイスすべての音量を下げるようメッセージを出して,音を低くした.彼の妹,Lucyが医師の部屋から電話をかけていた.「お母さんは専門家に診察してもらい,物理治療を続けてなくてはいけないのよ.2週に1回ぐらいね.これから私のエージェントにアポイントメントを取ってもらうわ.」Peteはすぐに車での送り迎えを請け負った.
医師の部屋で,Lucyは彼女のハンドヘルドのWeb Browserを通して,エージェントに教示していた.エージェントはすぐに医師のエージェントから母親の処方箋に関する情報を入手していた.そしてこのサービスを提供する提供者をいくつか調べ,加入している保険でカバーでき,母親の家から半径20マイル以内で信頼できる評価サービスにおいて優秀と評価されている提供者を探した.次に提供者の可能なアポイントメントの時間(個々の提供者のエージェントが提供)とPeteとLucyのスケジュールのすりあわせをはじめた...

これがセマンティックWebが実現する未来のWebというわけである.ここにはWeb上のエージェント,エージェント間メッセージング,エージェント検索,Webの信頼性,エージェント間でのネゴシエーションなど,様々な技術要素が含まれている.Tim Berners-LeeはいわばセマンティックWebにWebの未来を仮託したわけである.
これから5年以上経った.セマンティックWebはどうなったであろうか.あるいはWebそのものはどうなったであろうか.
Tim Berners-LeeがdirectorであるWebの標準化団体であるWorld Wide Web Consortium(W3C)ではワーキンググループなどを作ってセマンティックWebの推進を行ってきた.ここではRDF (Resource Description Framework) , RDF Schema [2], OWL (Web Ontology Language)[3]といった言語を策定してきた.また研究コミュニティは上記のような言語の開発やその処理系,それを使ったアプリケーションなどを開発してきた.その結果,Web上の情報にメタデータとして意味を付加する仕組みを構築されている.
さらにWeb上のサービスを標準化するWebサービスと結合して,Webサービスに意味を付加する仕組みが提案,開発されている.
セマンティックWebの歩みは期待外れのものであったかもしれないが ,確実に基盤を整えつつある.
ただし,セマンティックWebの技術はRDFなど部分的なものは世の中で使われるようになったが,これぞセマンティックWebというアプリケーションはなかなか生まれなかった.すなわち,セマンティックWebが研究室をなかなか出られなかった
一方,エージェント技術もまたなかなか研究室をでることができなかった.1990年代にはモバイルエージェント言語Telescript[4]が,エージェントコミュニケーション言語としてはKQML[5]が開発されて,エージェントを利用したアプリケーションが普及するかと思えたが,Webの劇的な普及の前に霞んでしまった.その後もWebと連動して動作できるJavaベースのモバイルエージェントも数々開発されてきたが,大規模な利用にいたっていない.
この間にも,Webは次々と変化して言った.この最近の変化をTim O’Reillyは“Web 2.0”と名づけた.この名づけは絶妙で多くの人が使う概念となった.過去のWebがバージョン1なら,今のWebはバージョン2であるというわけである.ソフトウエアのバージョン1とバージョン2では論理的な進展があるわけではないが,なんらかの性能向上や使いやすさでの進歩がある(と期待されている).今のWebはそんな状態であるというわけである.
彼の記事[6]によれば、Web2.0とはまずWebをプラットフォームとして位置づけることである.これはある意味当然のことなのであるが,あえてその価値を再認識せよということである.次に利用者のモデルとしては「情報の自己コントロール」であるとする.すなわち情報利用者は情報提供者に一方的に従属するといったモデルではなく,相互に関係しあいかつ自立した利用者ということを想定している.特徴的な要素としては
(1) パッケージソフトウエアではなくてサービス
(2) 参加のアーキテクチャ
(3) 高い拡張性とコスト効率
(4) 再構成可能なデータソースとデータの変換
(5) 単一デバイスを超えたソフトウエア
(6) 集合知の活用
を挙げている。また,代表的なサービスとしては
1. Folksonomy (例 del.icio.us, Flickr)
2. 豊かなユーザ経験 (例 Gmail, Google Map, AJAX)
3. ユーザの貢献 (例 PageRank, eBey, Amazon)
4. Long tail (ex. AdSense)
5. 公開ではなくて参加(ex. Blogs)
6. ラディカルな信頼 (ex. Wikipedia)
7. ラディカルな分散化 (例 BitTorrent)
この個々の特徴やその具体化されたサービスなどWeb2.0の詳細については元記事を参照されたい。
それではWeb 2.0の出現はセマンティックWebもエージェント技術も不要であるということであろうか.
確かにWeb 2.0においては,セマンティックWebもエージェント技術でも看過されていた側面を露にしたという点で大いに評価できる.しかし,それによって,他の技術が不要になるのではなくて,相補的な関係であると考えるべきであろう.以下ではWeb 2.0とセマンティックWeb, エージェントの関係を詳しく見ていくことにする.

Webの進化とエージェント (0/7)

2006年10月05日 | 解説記事
また解説的記事を書いたのでUPします.
Webの進化シリーズ第2弾?とでもいうものです.
これはJAWSの中で行われるパネル:「エージェントの社会的インパクト」用の原稿として書いたものです.今回はJAWSで僕と阪大の土方さんで「Webとエージェント」というオーガナイズドセッション」をやります.このパネルのこのOSとリンクしています.OSのほうも時間が余りそうなので,話をするかもしれません.
諸般の事情で時間がとれず,書きっぱなしな原稿ですね.
そうそう前回あたりから意図的に文体を変えています.論文スタイルというよりは口語体で書くように心がけています.論文スタイルは密度が高くていいといえばいいのだけど,こういう話題には向かないかなと思って.