Takeda's Report

備忘録的に研究の個人的メモなどをおくようにしています.どんどん忘れやすくなっているので.

図書館という「悪魔」の誘惑

2010年01月04日 | ライブラリサービス
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
新年一つ目の書き込みなので、ちょっとした年頭の所感を書きます。

私は縁あって学術コンテンツサービス研究開発センター長なる仕事を今しています。これはNIIの学術コンテンツサービスの強化や新規開発などを先導するという位置づけのセンターです。
NIIの学術コンテンツサービスのかなりの部分は大学図書館との連携や学会の協力によるもので、いわば「仮想学術図書館」(Virtual Academic Library)として機能しています。NIIは自身で図書や雑誌を管理しているわけではないので、「図書館」ではなくて「仮想図書館」なわけです。
ところが、近年、図書館のデジタル化が急速に進んでいます。デジタル化という意味ではどこの大学図書館も仮想図書館になりつつあります。その変化は急速であり、5-10年後の大学図書館には稀少書をのぞけば本がないなんていうも十分あり得るようになっています。
図書館のデジタル化はNIIにとっても大きな変革を迫っています。デジタル化によって、もとより「仮想学術図書館」であるNIIは新しい役割、より重要な役割を果たすことが求められています。NIIのこれまでの役割も基本的に情報サービスでありすでにデジタル図書館であったわけですが、デジタル化の急速な発展によって、単にこれまでのサービスの延長線上ではなく、新しいサービスを提供していかなければならないと思っています。このセンターは単にNIIのサービスの向上といったものではなく日本の学術情報流通において十分な貢献をしなければならないと思っています。
私はこれまでいろいろな分野の研究をしてきましたが、図書館の世界はまだまだ未知の領域です。しかし、図書館というのは研究者にとって抗しがたい誘惑があります。図書館の問題にコミットするというのは、「巨人の肩の上に立つ」研究者にとって、名誉なことです。私はリアルの図書館での情報収集の最後の世代でしょうか。学生の時は、研究情報の収集のためによく図書館に通っていました。その意味で図書館の大切であることが身にしみてわかっています。研究者にとって図書館は貴重なものであり、その将来に多少でも貢献できればうれしいと思っています。
とはいえ、普通の研究者にとって図書館は手段であって目的ではないので、それを目的とするとはどういうことなのかはこれから勉強していきたいと思います。
ともあれ、今後、NIIの学術コンテンツサービスの向上を通じて日本のデジタルライブラリの世界に貢献していきたいと思っています。

INTERNATIONAL DIGITAL LIBRARY R&D MEETING 参加記

2009年12月19日 | ライブラリサービス
11月30日-12月1日にInternatioal Digital Library R&D Meetingなるものに参加してきました。スタンフォード大学の図書館および学術情報資源部門の長であるMichael Keller氏が企画したもので、オープンな会議ではなく招待ベースのクローズドな会議です。
このミーティングには各国を代表する公共図書館およびアメリカのDigital Libraryが盛んな大学から人が参加していました。参加した各国の公共図書館は以下の通りです。Bibliotheca Alexandrina(エジプト)、National Library of Sweden(スエーデン)、Deutsche Nationalbibliothek(ドイツ)、Bibliothèque national de France(フランス)、The British Library(英国)、Det Kongelige Bibliotek(デンマーク)、The European Library & Europeana(EU), National Library of China(中国)、Koninklijke Bibliotheek(オランダ)、National Library of Norway(ノルウエー)。大学関係はUniversity of Minnesota、University of Michigan、Johns Hopkins University、University of Illinois at Urbana-Champaign、Emory University、Bryn Mawr College、University of Michigan、University of Virginia、California Digital Library(米)、Universidad de Alicante(スペイン)、Tan Tao University(ベトナム)、Alexandria University(エジプト)。日本からNIIの学術コンテンツサービス研究開発センターから私とi2k氏、連想情報学研究開発センターからは高野氏ほか2名が参加しました。国立国会図書館から参加がないのが寂しいところです。全体で60人、24機関だそうです。

こんだけの人々を集めて何をしたかといういうと、基本的にブレインストーミングです。会議は会議マネージメントの会社の人が仕切っていました。これがSilicon Vally 流だそうです。World Cafeという方式だそうです。World Cafeの説明はこんあところです。日本でも翻訳本があるようですね。
まずは参加者が提出した概要からキーワードのリストがつくられいてその中からいくつかのトピックスを「どのように私たちがこれをできるだろうか」といった疑問をつくり、数人でテーブルを囲んで議論をするというものです。疑問としては「どのようにcollective curationをサポートできるか」「どのように協調を技術的にサポートする仕組みをどうつくるか」など。
さらに2日目は道具を使って間が手いることを表現するといったことを行った。
特に結論らしいものはありません。最終レポートはでています。興味のあるかたはご覧下さい。

12/2はStanford Digital Libraryを推進しているTom Cramer氏を訪問して、Stanford Digital Libraryの方針と現状についての議論を行った。とくにSDLではDeposit & Management, Preservation, Discovery & Deliveryという3つの構成要素から書籍から科学データまで多様なデジタルリソースに対するサービスを統合的に組み立てていることが興味深かったです。NIIでもサービスをこういう風にrestructuringできるといいですけどね。

Stanfordはとても寒かったです。摂氏4,5度というあの辺としてはありえない寒さで、実際に歴史的寒さ(過去最低気温に近い)だったようです。