Takeda's Report

備忘録的に研究の個人的メモなどをおくようにしています.どんどん忘れやすくなっているので.

uxTV2008参加記

2008年10月30日 | 会議参加記
First International Conference on Designing Interactive User Experiences for TV and Video(uxTV2008)
なる会議で出席してきました.
主目的は産総研の濱崎氏と共同で研究した「初音ミク」動画制作における社会ネットワーク分析の発表のためです.世界初公開,たぶん「Hatsune Miku」なんてタイトルのついた学術発表も世界初じゃないでしょうか.この研究は個人的にはすごく面白いと思っています.

それはそれとしてこの会議の感想です.
この会議のテーマは一言でいえば「Interactive TVの未来を考える」といったところです.半分ぐらいは現状のiTVをどうユーザがつかえるようにするかといった話でした.ユーザビリティの研究ですね.逆にいうとどの国でもiTVは使えてないということですね.:-) :-)
のこりは近未来のiTVの提案が主で,Web系のVideoの発表はそう多くはありませんでした.我々の発表の受けもいまいちで,客層はちょっと違うかなと感じました.

招待講演は,Tivoの人(Elissa Lee),インタラクティブデザインの大御所(Dale Herigstad),ユーザビリティの大御所(Jakob Nielsen), YouTubeの人(Gunthar Hartwig)でした.
Tivoがなぜ受けいれられたかという点の話は興味深かったです.Tivoは徹底的に普通のユーザのためのインタフェースを考えてきた,その結果だというのは説得力がありました.テレビは何かをしながら(ながら見)が多いこと,そのときはbackground noiseになっているなど,ユーザのふるまいをちゃんと理解した上でデザインしているようです.
DaleのTalkはただひたすらすばらしいITVのためのインタフェースデザインを見
せられて感嘆していました.
YouTubeのGunthar Hartwigの話は肩透かし.YouTubeのスケール感はよくわかっ
たけど,一般的にわかること以上のことはありませんでした.一言だけ,NicoNicoに言及していました.なんでかコンテキストはわからなかったけど.

Jakob NielsenはTVとWebの違いを極めて端的に見せてくれました.要は受動的と能動的の違い.彼はWebのユーザビリティの経験から,Web上のビデオはWeb的にならないといけないと指摘しました(勝手に再生されるVideoとか論外).
+---------------------------------------------+
Dimensions of Difference
+---------------+-------------+---------------+
         TV      Web
Audience     Mass     Niche
Base Usability  Turn it on  Figure it out
Technology    Weak     Powerful
User Experinece  Passive   Active
Flow       Linear    Hypertext
Ownership     MSM     Everyone
Production Values High     Low
+---------------+-------------+---------------+
(Nielsenのスライドより)

しかし,,逆にWebがTVに近づけるのかといえば,それをしてしまうとWebの良さが消えてしまう.そう考えるとITVの未来は暗いわけです.ユーザがTVモードにいるときにできることは限られているわけです.Tivoの人の話にあったようにながら見をしているひとにITVとかありえないわけで,それがTVならば,ITVはテレビになりえないというトートロジーになってしまうわけですね.いろいろな高機能なITVの提案もむなしく思えてしまいます.

出口はあるのでしょうか.

少なくとも既存のTVプログラムのスタイルでITV化することはメリットはなさそうです.そうではなくてTVプログラム制作自体がインタラクティブであるとき意味があると思います.一つの発表でmobile deviceでインタラクティブでビデオを作ろうというのがありました.その発表自体はその入口で終始していておもしろいものではありませんが.たぶんその辺がbreak throughなんじゃないかと思います.一つのイベントでみんながいろいろな視点でビデオをとる.それを自分の見たいように再構成してみる.いままでもスポーツ中継のマルチカメラをユーザが切り替えられるというITVがありましたが,プロがとっている以上プロの編集にかなうものはなくあんまり意味がない.そうではなくてアマチュアのビデオを集めてみるときなどインタラクティブ性が必要になるじゃないかな.そう今は既存のTVプログラムに
インタラクティブ性をつけるのは「必要」じゃないですよね.
たとえば,たとえばですよね,運動会でたくさんのビデオが四方八方からとっている状況を考えてみましょう.これをShareしていろいろな角度からインタラクティブに運動会がみれたら楽しいじゃないですか.どうですか.Sonyさん,こんなHanyCamをつくりませんか.GPS,方位センサ,姿勢センサ,WLAN付きのHandyCam.

総じて言えば,既存のTVの延長としてのITVもありえないし,WebのTV化もありえない,ITVが存在しうるとするなら,それは第3のモードをつくらないといけないということですよね.

それはさておき,この会議に日本からの参加者は我々だけでした.韓国からは
Samsungの人やテレビ局(MBS)の人が来ていました.SamsungはIrelandの大学の
研究にもお金をだしていました.日本にもかりそめにもITVはあるわけなんです
が,これでいいでしょうかね.日本の家電メーカーもテレビ局もこういうことこ
ろに来てもっと「我々ならこんな楽しい未来TVがあるよ」と,みせてほしいもの
です(たとえうまくいかないとしても :-)).