Takeda's Report

備忘録的に研究の個人的メモなどをおくようにしています.どんどん忘れやすくなっているので.

INTERNATIONAL DIGITAL LIBRARY R&D MEETING 参加記

2009年12月19日 | ライブラリサービス
11月30日-12月1日にInternatioal Digital Library R&D Meetingなるものに参加してきました。スタンフォード大学の図書館および学術情報資源部門の長であるMichael Keller氏が企画したもので、オープンな会議ではなく招待ベースのクローズドな会議です。
このミーティングには各国を代表する公共図書館およびアメリカのDigital Libraryが盛んな大学から人が参加していました。参加した各国の公共図書館は以下の通りです。Bibliotheca Alexandrina(エジプト)、National Library of Sweden(スエーデン)、Deutsche Nationalbibliothek(ドイツ)、Bibliothèque national de France(フランス)、The British Library(英国)、Det Kongelige Bibliotek(デンマーク)、The European Library & Europeana(EU), National Library of China(中国)、Koninklijke Bibliotheek(オランダ)、National Library of Norway(ノルウエー)。大学関係はUniversity of Minnesota、University of Michigan、Johns Hopkins University、University of Illinois at Urbana-Champaign、Emory University、Bryn Mawr College、University of Michigan、University of Virginia、California Digital Library(米)、Universidad de Alicante(スペイン)、Tan Tao University(ベトナム)、Alexandria University(エジプト)。日本からNIIの学術コンテンツサービス研究開発センターから私とi2k氏、連想情報学研究開発センターからは高野氏ほか2名が参加しました。国立国会図書館から参加がないのが寂しいところです。全体で60人、24機関だそうです。

こんだけの人々を集めて何をしたかといういうと、基本的にブレインストーミングです。会議は会議マネージメントの会社の人が仕切っていました。これがSilicon Vally 流だそうです。World Cafeという方式だそうです。World Cafeの説明はこんあところです。日本でも翻訳本があるようですね。
まずは参加者が提出した概要からキーワードのリストがつくられいてその中からいくつかのトピックスを「どのように私たちがこれをできるだろうか」といった疑問をつくり、数人でテーブルを囲んで議論をするというものです。疑問としては「どのようにcollective curationをサポートできるか」「どのように協調を技術的にサポートする仕組みをどうつくるか」など。
さらに2日目は道具を使って間が手いることを表現するといったことを行った。
特に結論らしいものはありません。最終レポートはでています。興味のあるかたはご覧下さい。

12/2はStanford Digital Libraryを推進しているTom Cramer氏を訪問して、Stanford Digital Libraryの方針と現状についての議論を行った。とくにSDLではDeposit & Management, Preservation, Discovery & Deliveryという3つの構成要素から書籍から科学データまで多様なデジタルリソースに対するサービスを統合的に組み立てていることが興味深かったです。NIIでもサービスをこういう風にrestructuringできるといいですけどね。

Stanfordはとても寒かったです。摂氏4,5度というあの辺としてはありえない寒さで、実際に歴史的寒さ(過去最低気温に近い)だったようです。

ニコニコ動画と日本向きメディア

2009年12月13日 | 雑感
月曜日にASWC2009の付設ワークショップで講演をしました。話題はいつもコミュニティWebのモデルと初音ミク動画分析の話です。初音ミク話は過去2回、アメリカで発表していますが(共著者)、反応がさっぱりでした。今度はそれなりに反応がありました。ゲームの共同作成もこういう同類だろうかとか。またニコニコ動画についてもいくつか質問がありました。でもみんなアジア系のなんですよね。この会議はASIAN Semantic Web Conferenceですから、アジア系が多いのは当然ですが、会場にはそれなりにヨーロッパ系の人もいたんですけど。(もっとあとでフランスの人からメールをもらいました。)やっぱりポップ系コンテンツというだけで欧米系の*まともな*研究者は引いてしまうのかな。

そういう温度差を感じたのはこの件が初めてではありません。ブログの研究をしているときも日本と欧米でのブログに対する態度の違いに困惑しました。日本ではWeb diaryの時代からブログのメインコンテンツは日常的な事柄(「飯食った」のごとく)でした。僕らはそういった日常的なコンテンツを通じたコミュニケーションに興味がありました。
しかし、アメリカではブログはジャーナリズムの新しいジャンルとして注目されていました。実際、政治や経済においておおくの影響を及ぼすようなブロガーが出現していました。もっとも単に量だけ見ればアメリカでも日常的ブログが多数派のようです。
日本ではそういうブログもないことはないけど、量的に少ないし、そもそも社会的に影響を与えるようなブロガーはまずいないですね。これをもって日本のネットはくだらないとか遅れているという人がいますが、僕はそう思いません。それぞれのネットの利用の仕方があるんであって、優劣の比較はできないと思います。アメリカではネットに主義主張オピニオンを求めており、実際そういった世界が形成されている。日本では日常的事柄、芸能といったソフトなコンテンツがネットに求められていて、そういう世界が形成されていると。

じゃあ、日本人は主義主張オピニオンはどこに求めるいるか。レガシーメディアである新聞、雑誌、テレビだろうか。そこではたと考えてしまった。新聞の行動者の何割が新聞の社説を読んでいるだろうか?テレビの視聴者の何割が論説といった番組をみているだろうか。かなり少ないでしょう。ということは日本人はレガシーメディアにも主義主張オピニオンを求めてないということになる。

日本人はそもそもメディアに主義主張オピニオンを求めてないのか。メディアにそういう役割はないのだろうか。???。一方で政治や経済でメディアの影響はひとかたならずあることも事実である。

たぶん、問題の立て方がまちがっていたんですね。日本に主義主張オピニオンが存在しないわけでもないし、メディアを通じて主義主張オピニオンが伝達されている。日本人は*ストレートな*主義主張オピニオンを出したり受け入れる習慣がないということでしょう。
だかれ明示的な直接的に主義主張オピニオンを表明するのような記事や番組は避けられてしまう。これをメッセージ型コミュニケーションあるいはメッセージ型メディアとでもいいましょうか。

それでは、どんな風に主義主張オピニオンは伝達されているだろうか。典型的なのは、ニュースバラエティ。コメンテーターなる人々がなんだかわいわいコメントを出している。ああいい雰囲気が実は一番影響が受けやすいじゃないかな。他は新聞も1面や3面にちりばめられた一見雑多な記事の配置。記事のタイトルがこれでもかと詰め込まれた雑誌のつり広告。

共通点はなんとなく沢山あること。あたかも沢山の人があつまって喋っている/書いている、という雰囲気。集団の中にいるような雰囲気。このあたりでしょう。こういった(仮想的な)集団の語らいから、なんとなく集団の方向性を理解して受け入れる。これが日本人の主義主張オピニオンの摂取の方法なんじゃないかな。
ストレートではなくて間接的に雰囲気として伝達するのがポイントで、そのためには多人数による賑やかし雰囲気が効果的なんだと思います。あえて名前をつけるなら雰囲気型コミュニケーション、雰囲気型メディアとでもいいましょうか。

昔、吉川弘之はサービスの分類でメッセージ型とマッサージ型という分類をだしていましたが、それににてなくもないですね。

雰囲気型コミュニケーションでも主義主張オピニオンが存在しない訳ではありません。参加者全体の方向性という形で主義主張オピニオンが伝達、共有することができます。2ちゃんねるが右よりというのその例ですし、大手新聞、テレビも雰囲気として彼らの主義主張オピニオンを伝達しています。


それはネット時代のメディアでもあっても同じだと思います。そう考えると2ちゃんねるとニコニコ動画がなぜはやったかよくわかります。どちらもまさしく賑やかし的雰囲気を提供する雰囲気型メディアです。同じ場に沢山の人がいて、個々の意見はよくわからないけど、全体の雰囲気が伝わってくる環境を仕組みと参加者で作り上げています。Q&Aサイトも最近、百花繚乱的になっていい感じです。逆の例はOhMyNews日本語版。主義主張オピニオンがストレートに出ていてしかもコメントのスクリーニングをして意図的に賑やかし的雰囲気を排除していました。微妙なのが日本語版Wikipedia。日本語版が得意とするポップカルチャーはいかにも賑やかし的雰囲気ができやすいところです。一方でそれ以外のまじめな?トピックスはなかなかそういう雰囲気になれないので、盛り上がらないといった状況だと思います。

ということは日本人に受ける新しいメディアをつくるのはとにかく雰囲気型メディア、賑やかし的効果があるメディアをつくればいいわけです。で、次の雰囲気型メディアはなに?ということですが、それがすぐわかれば苦労しませんね。:-)