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デザインの領分

2006-11-26 19:03:54 | 考える
『工芸の領分 工芸には生活感情が封印されている』(樋田豊次朗著 美学出版 2006年)という本がある。現代工芸家はもちろん、美術(絵画、彫刻、工芸、建築)でも境界線上で仕事をしている方、そしてデザイナーに是非読んでもらいたいと思う。日本のデザインの出自、特に素材デザインのDNAがよく分かる。最近、デザインと美術の境界があいまいになっている。デザインと美術の違いをきっちり分ける必要もないし、ハイブリッドは多いに結構だが、見かけは似ていてもその体質が違うものってあると思う。定義を作って縛り付けることはないが作る人は自覚しなくてはいけないように思う。美術っぽい(コンセプト性や手作り感がある)デザインと、デザインっぽい(外観に工業デザインの要素がある)美術は根本的に発想が違う。デザインはやはり他の人の生活に仕えているもので、美術は個人の仕事を指していると思う。デザインは「私は作れないけれど、自分の考えやニーズを形にしてくれている。生活に使えて楽しい、便利」、美術は「この人の仕事が好きで手元において置きたい。コンセプトや精神性みたいなものに共感を覚える」、ということではないか。日本人は実は余りコンセプト性のある美術になじみがない。それは明治以降、西洋から入ってきた考え方だからだ。一方触覚的なものに親しみを感じる気持ちは理論とは関係なく陶芸などに親しんできたDNAが自然に反応する。最近のプロダクトデザインはその辺をアフォーダンスという西洋の理論武装された理論とうまくリンクさせて、日本人が昔からもっていたDNAをくすぐっているように思える。同時に現代美術のコンセプトもからませている。この辺は今話題のプロダクトデザイナー達が実に面白い商品を出している。しかし、24日のブログに書いた家具見本市に行って、そういう若手デザイナーの現代美術的なコンセプトを楽しみながら、やはり王道は普通の使いやすいデザインの家具だなあと感じた。機能性が「デザインの領分」だからだ。その証拠と言ってはなんだが、遊び心の多いコンセプト優先型のデザイン分野の先駆けを作ったベテランプロダクトデザイナーは「デザインの原型」に回帰しようとしている。この頭の良さがデザイナーの特徴でもある。皮肉でもなんでもなくそういう頭のいい人がトップデザイナーになれる。デザイナーはそういうこともデザインしているのである。美術家は愚直に自分の道を進む。たまに、時代が彼、彼女の世界にリンクした時、日があたるのである。そして余談だが、パブリックアートをやる人にはこの2種類の人が混在しているようだ。

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