脳科学のダマシオさんの「感じる脳」には、スピノザの話が沢山載っている。次の17世紀の哲学者スピノザのダマシオさん流の翻訳。現代の最新の脳科学に通じるようである。
「私は以下の真実を自明なものとみなす。すべての人間は自身の命を保存し安寧を求めるようにつくられており、人間の幸福はそうするための奮闘から生まれ、徳の基礎はこうした事実の上にある」(感じる脳 ダイヤモンド社 アントニオ・R・ダマシオ著 田中三彦訳 223P)
この考え方を基に感情(暗い感情や明るい暖かい感情)がなぜ存在するのか考えると、時にはうっとうしく感じる倫理道徳ではなく深い根源的な生命の不思議さに繋がるようだ。
感情には暗い感情も存在するが、健全な明るい感情も存在する。感情の原初の本質は暗い感情(ストレス)かもしれないが、決してそれだけでなく明るいあたたかい感情も人が生き延びる上で大切なようだ。人は単独で生きるのではなく、何かと協力して生きるようになっていて、明るい感情(たとえば感謝心)は大切な働きをしている。
自分のことで頭がいっぱいになると、他人が馬鹿のように見え、感謝もどこかへ行ってしまう傾向があるようだ。こうしたときは精神病理的にも問題。
私のように中高年になると、誰でも苦難を一度や二度経験するようだ。私の拙い経験の中で、最大級の苦難に出会った時、自分ひとりで生き抜く術が見つからなく限界状態になったとき、最後に出会ったのが他者のありがたさ、そして感謝心だった。
自然な感謝心はロジャースの自己理論でも第一領域として、理想と現実のただなかで悩む時の脱失のカギとなる。ありがとうを馬鹿にしてはならない。
個性の美 9/10