チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その8

2014-03-29 19:53:47 | ADHDとともに「君の星座」
 助言のピースを集めながら、どう組んでいくのか、それは、自分の力。予約時間通り、ハローワークへ。今日はその五階にある、障害者職業センターへ。
「こんにちは・・・あ、はじめまして。今日お世話になります、ツキシロです。」
「あ、はい、どうぞ。」
大柄な女の人が出てきて、奥に案内される廊下、へぇ、なんか、作業してる人がいっぱいいる。職場みたいな雰囲気だな。キョロキョロと見ながら、
「どうぞ、こちらです。」
通されたのは、小さい会議室みたいな部屋だ。勧められて椅子にかけ、
「始めまして、適性検査を担当させていただきます、エンドウと申します。」
「ツキシロです。どうぞよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。えーと、下のツジムラさんからもある程度聞いてるんですけど、まずね、今までの職歴のこと、もう一度聞かせてもらえますか?」
 どこへ行っても、何度も同じ話を、違う人に繰り返し話してて、その内容もだんだん洗練されてきている気がする。
「そこは、基本、いい人たちばっかりでした。子育てのベテランみたいなおばちゃんがたくさんいて。」
「子育てのベテラン!」
アハハ。エンドウさんも噴出してしまったみたい。
「で、最後が医療事務。二件とも解雇だったんですね。これね、発達障害の人は例外なく失敗してるんですよ。」
 そうなんだ・・・私、一番駄目な選択してたんだな。一呼吸置いて、
「そうね・・・私たちは二、三年おきに転勤するのね。で、全国回ってるんだけど、発達障害の人は増えてますね。私が担当した人でね、三十回以上転職した人もいましたよ。」
三十回以上!
「で、その人は仕事、決まったんですか?」
「はい。手帳を取ってね、ファッションに興味がある人で、その系統のネットショップで元気に働いていますよ。」
結構決まってる人、いるんだ。
「じゃあね、ツキシロさん。趣味とか、興味あることってありますか?」
「そうですね、趣味として履歴書に書けるのはポエムを書くことだけですけど、他には、ゲームも好きですし・・・」
「あ、それ、大人気よね。うちの子どもも最近はまってるのよ。」
アハハハハ。
 エンドウさんいわく、
「私も研修で勉強したんだけど、アスペルガーやADHDの場合、一歳半検診、三歳児検診は異常なしでパスしまうのね。で、幼稚園や小学校で始めておかしいってなる。ツキシロさんが言うように、研修の先生も、中学生になったらほぼ確実に、周りの子との差を感じるようになるらしいわ。でね、手帳だけど、今のところ取る気はないのよね?」
「はい。親も反対していますし。」
「わかりました。こちらとしてもね、ツキシロさんはとても難しいケースなのね。あなたに明らかに知的障害があるとか、重い統合失調症になってるとかであれば、こちらから手帳を取りなさいって言えるんですけどね。」
障害をクローズにしてはうまくいかないし、オープンにするには迷うレベル。エンドウさんも悩んでいる。
「私も今、それをどうするかを悩んでるんです。親はさっきも言いましたけど大反対ですし。」
「障害受容に関しても?」
「全然ですね。それと、もう、就職に関しては親は立ち入らせないって決めています。」
 面談の終わり。
「わかりました。ではね、もう一度、日を改めて来室してもらえますか?」
「はい、わかりました。」
「では、予定持ってきますので、待っていてくださいね。」