チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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時は管理教育「この時代を」第1章 時が止まればいいのに その2

2014-07-31 19:18:19 | 時は管理教育「この時代を」
 『中学になったら、どうするの?』
この後、帰りの時間までずっと、マコトちゃんの言葉が突き刺さっていた。さようなら!帰りの会が終わってランドセルを背負う。正門まで一緒に歩いて、
「じゃ、また明日!」
 ツチヤキョウコの家。
「ただいま。」
「お、お帰り!キョウコ。」
お店からお父さんの声。うちは文具屋をやってるんだ。一階の後ろと二階がうちの家。家のほうからお母さんが、
「お帰り、キョウコ。寒くなかった?」
「うん、大丈夫。」
「よかった!おやつ、あるわよ。三時四十分には出かけましょうね。」
今日はこれから、病院に行くんだ。周りの人は大変だねって言うけど、生まれてからずっとそうだったから、私にとっては生活の一部。入院や手術だって、今まで何回も。
 アヤセマコトの家。うちはマンション、エントランスで、ピンポン!
『はいはい、おかえり~♪』
スピーカー越しのお母さんの声、自動ドアが開いてさらに進んで居室へ。
「ただいま。」
「おかえり!どうだった?」
「うん。」
「もう!まともに返事しなさいよ!」
お父さんは単身赴任。私、一人っ子だし。お母さんは家に一人の時間が長いからかな?でも、もうあまり構わないで欲しい。
「えーと、今日は塾だったわね?」
「うん。」
 タカクラユウの家。広い庭のある少し古い民家。
「ただいま!」
「おかえり!・・・ちょっと、そこ開けてくれる?」
ドアを開けると、洗濯物をたくさん抱えるお母さんが、よいしょ!と。
「おやつあるわよ。あ、そうだ、通信教育の教材!次のが来てるわよ。」
「ありがとう。」
がつがつとおやつを食べてるその横で、お母さんは仏壇に手を合わせている。私のお兄ちゃんらしいんだ。私が生まれる直前に病気で亡くなったって聞いている。
 お父さんは?今日は遅いんだって。もう一度手を洗って、一緒に洗濯物をたたんで過ごす。
「はい!ユウのジーパンよ。男の子みたいな服ばっかりね!自分ものは自分で片付けなさい。もうすぐ中学生になるんだから。」
中学生!その言葉を聞くと血の気が引く。顔色が変わったの、お母さんに悟られたかな?・・・中学だよ、つまり、制服。スカートはかなくちゃいけなくなるんだ!





 
 
 
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時は管理教育「この時代を」第1章 時が止まればいいのに その1

2014-07-29 21:04:19 | 時は管理教育「この時代を」
 キーンコーンカーンコーン・・・仲良し同士でお手紙のやり取りを楽しんだ授業が終わり。一気ににぎやかになる教室。次は体育だ。
「じゃ、また後でね。」
「うん!」
キョウコちゃんは保健室で自習。体育はいつも見学なんだけど、特に夏と冬は気温の問題で一緒に出てこない。だから、この間の始業式も。・・・あれ?
「マコトちゃん、見学するの?」
「うん・・・ちょっと、ね。」
それなら!
 毎年この時期と言えば持久走、マコトちゃんと一緒に皆がもがいている様子を遠目に眺めている。あっちにもう一つ、女子のグループが見学している。
「で、ユウちゃん。何で見学するの?」
「え?・・・面倒くさいし。」
マコトちゃん、かなりあきれた顔で、
「それだけ?真面目にやりなさいよ。体操服持って来てたでしょ?」
「いいじゃない、別に!」
いつもこんな感じで、マコトちゃんに説教されている。マコトちゃん、しっかりしてるんだ。頭いいし物凄く真面目。ある意味、正反対の私。
「何言ってるの。ユウちゃん、足が速いのに。」
まあね・・・だけど、運動会のリレーは六年間ずっと補欠だったし。
 運動場をぐるぐる走っている皆。そろそろバテてる子も。コンクリートの上で仰向けになって空を見ていると・・・ん?
「ユウちゃん!マエダ君ってかっこいいよね!」
飛び起きて、
「うんうん!」
マエダ君がいいって言う女子、多いんだけど、私・・・今、走っていったコモリ君。物凄くきれいな目。肩まで伸びてる髪がサラサラと風に流れて・・・何年生の時か、授業参観日にお母さんたちが女の子?って後ろでひそひそ言ってたらしい。今でもそう見えなくないけど。それでも皆が冷やかしたりしないのは、コモリ君の事情を知っているから。コモリ君は小さい時、頭を大怪我して傷跡が残ったんだ。それを隠すために髪を長くしてるんだって。
 そんなコモリ君に見とれているところに、マコトちゃんから不意打ちされた。
「ユウちゃん。中学になったら、どうするの?」
 
 
 
 
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時は管理教育「この時代を」序章 新しい時代の始まり

2014-07-27 21:06:45 | 時は管理教育「この時代を」
『一行は、湖の向こう岸にあるゲラサ人の地方に着いた。イエスが舟から上がられるとすぐに、汚れた霊に取りつかれた人が墓場からやって来た。この人は墓場を住まいとしており、もはや、だれも、鎖を用いてさえつなぎとめておくことはできなかった。これまでにも度々足枷や鎖で縛られたが、鎖は引きちぎり足枷は砕いてしまい、だれも彼を縛っておくことはできなかったのである。』*


パシャ!パシャ、パシャ!・・・一九八九年・・・パシャ!パシャ!パシャ!・・・一月七日・・・パシャ!
『新しい元号は、平成。』
パシャ!パシャパシャパシャ!

 さあ、いよいよ三学期!うー、寒い!ジャンパーのファスナーを、上まできちんと閉めて。
「行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい。」
門を開けたらレッツゴー!同じく登校途中の子達をぐんぐん追い越していく。髪が短いから、毛糸の帽子、かぶってきてよかったよ。この冬休みにおばあちゃんが編んでくれたんだ。あ、私は「タカクラ ユウ」。小学六年生。中身がカタカタ音を立てている、このランドセルももう少しでお別れか・・・。
 六年二組の教室。
「キョウコちゃん、おはよー!」
「あ、おはよう。久しぶり!」
苗字はツチヤっていうんだ。身長は私と同じぐらい。学校から家が近くて。私たち三人で一番早く来てる。本当は教室で上着を着ちゃいけないんだけど、ものすごい厚着でジャンパーまで着たままなのは、キョウコちゃんは生まれつきの心臓病で気温の変化に弱いから、特別許可をもらってるわけ。
「おはよー。」
この子はマコトちゃん。アヤセマコトちゃん。背が高いからかな?髪も長くて雰囲気も大人っぽい。よく中学生と間違えられてる。年賀状ありがとね、ううん。クリスマスどうだった?お年玉は?
「おーい!座れ!ベル鳴ったぞ!」
ドタドタドタドタ!
 点呼の後、運動場へ。三学期の始業式だ。
『一年が始まり、三学期が始まりました・・・』
校長の話、いつも長すぎ!でさ。うんうん。キャハハハハ!
『おい!そこ!聞いてるのか?きちんと並べ!』
 ようやく始業式終了。
『六年生、前にならえ!駆け足!』
先生の号令で駆け足。
「寒かったね!」
「うん!教室も暖かくないけどね!」
 その暖かくない教室に全員が揃ったら、今度は宿題や書類の回収。そして、担任、ヤマダ先生のお話。
「今日から三学期。この一年の、小学校六年間の締めくくりの大事な時期だぞ。今年は一九八九年、新しい年になって、皆、知ってるな?」
「知ってる!平成!」
「その通り!歴史で勉強したように、昭和には大きな戦争があったな?君たちのおじいさんおばあさん、お父さんお母さんががんばって今の豊かで平和な社会になった、そんな時代すごい時代が幕を下ろした。君たちは今、歴史が変わる真っ只中にいる!」
なんかすごい・・・真剣に聞いてしまう。
「三月には卒業式、小学校時代という君たちの歴史に幕が下りるんだ。四月には中学校時代という新しい歴史の幕を開けられるよう、真剣にがんばれ!」
 

*新共同訳聖書より引用。新約聖書「マルコによる福音書」第5章1節から4節。
 

 

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ホッと一息

2014-07-24 19:29:26 | ADHDとともに「君の星座」
チコです。
ADHDとともに「君の星座」、一年半にわたる連載にお付き合いいただき、ほんとうにありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。

近年社会問題になっている発達障害。チコも学校講師の仕事をしてこの障害について知識を得ました。
本屋さんに足を運び、文献を探せど、ほとんど自閉症のお話で、ADHDについては皆無
では、チコが書こう!と思って書き出した作品でした。

本作では、主人公ハルカの現在と、誕生から学齢期という二つの時間軸を同時に動かしていくという
新しいチャレンジをしました。

お話がぐちゃぐちゃになるのでは?と心配しましたが、書き上げた作品を読むと、それなりにまとまっていて
よかったと自己満足しています。

発達障害で今、最も苦しんでいるのは成人世代です。どうか、この障害のことを覚え、お祈りください。
「君の星座」が当事者の長い葛藤を読者の皆さんに体験していただけるもので会ったら幸いです。

また、次回作も頑張ります。
よろしくお願いします。


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ADHDとともに「君の星座」最終章 終わりのない神話

2014-07-22 19:39:03 | ADHDとともに「君の星座」
 採用だ・・・ついに決まった!大急ぎで下の部屋へ駆け下りていく。リビングにはお母さんが。
「お母さん、アルバイトの採用、決まったよ!」
お父さんも、
「それはよかったな!わしも嬉しい。」
障害者手帳を取って障害を明かし、一般枠のアルバイトに採用が決まったんだ。
「よかったわ、本当によかったわ!」
お母さんも涙を浮かべて。おじいちゃんも仕事が決まったことを察しているみたい。我が家に明るい光が一気に満ちていく。
 あ、そうだ、電話しなくちゃ!嬉しい報告をどんどん伝えていく。ハローワークのツジムラさんから。
『おめでとうございます!本当によかったです。これからもがんばってくださいね。困ったときはいつでも相談くださいね。』
発達障害者支援センターのイワキさん。
『おめでとう!うん、よかったね!』
「ありがとうございます。本当、昨日お会いしたところなのに急展開で。」
そして、ジョブサポートセンターのムライさん。
『わざわざご報告ありがとうございます。本当によかったです・・・私、その求人知っていますよ。物凄く応募が殺到したみたいで。そんな中から選ばれるって本当にすごいことですよ。本当におめでとうございます。』
こころのクリニックのドクターには、今度の診察日まで報告できないけど、喜んでもらえるよ、きっと。
 これから行く仕事は、ネットゲームのバグを見つける仕事。週三日で勤務する。次の日。
「行ってきます!」
出勤スタイルで朝から飛び出していった。出勤なんてもう、一年半ぶり!嬉しくて嬉しくて。バス停を目指す道には桜が・・・つぼみは一つ膨らむと、次々と花を咲かせていく。そうだよ、私だって自信はすぐに取り戻せるよ。きっと、それほど時間はかからずに、フルタイムの仕事探しに入っていける。その先には障害枠で仕事に定着し、本当に自立する日が待ってるんだ。
 到着したバスに乗り込むと、中には小学生の絵がたくさん展示されている。そうだったよな・・・マイちゃん・・・今は、天国にいる教え子。あの子に出会ったからこそ、私は自分を知ることが出来た。私に発達障害があることを。

ADHD・・・注意欠陥多動性障害。
それは、私に与えられた星。
その星ゆえに、苦難を運命づけられた星座。
たとえ小さくても、私という星座は、
この社会で確実に輝いている。

だから、描いていこう。どこまでも・・・終わりのない神話を。
 
 
 




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ADHDとともに「君の星座」第14章 鋼鉄の意志を その35

2014-07-21 19:23:35 | ADHDとともに「君の星座」
 発達障害者支援センターに行ったその次の日。その昼下がり。
「ちょっと上に行ってくる。」
階段を上がって自室へ。家にいても結構疲れるんだよね。おじいちゃんの相手だけじゃなく、ほら、就職活動していて、その返事が気になって。あーあ。返事が来るまで本当に落ち着かない。
 やっぱり四月だな。冷暖房なしのこの自室もそんなに寒くない。またお仲間が増えたぬいぐるみたち。私の友達・・・トモダチ・・・仲間・・・味方・・・
『ツキシロさんって、重要な時にいい人に出会っているわね。』
ジョブサポートセンターの、保健師マツウラさんから言われたっけ。確かに、人との出会いは偶然。だけど、理解を得るために自分は相当に奔走してきたと思う。そうでなかったら?
 大学四回生の時。もしあの時、学生センターに相談に行かなかったら?ゼミの先生に、うつ病であることを打ち明けなかったら?考えなくてもわかるよ。あのまま卒業できず留年になって、下手したらそのまま最悪の道に・・・私、ゼミの先生の言うとおりだったと思うんだ。就職活動できなくて、次の春から行き先がなくても、四年で卒業して絶対によかった。まあ、実際は卒業してすぐ働くことになったんだけど・・・それも、お父さんのコネだった。
 だらしないけど、眠くて仕方ない。ベッドに入ってそのままうとうと寝入ってしまった・・・

これからどうなるのかな?
障害を明かして働くんだよ。
一般枠でそれを明かして、どうなるだろう?

必要な遠回りだよ
今、週に五日って働ける?
自信を取り戻さないと・・・

私が社会で生きるためには
障害者手帳が必要
お父さんもお母さんも
どのぐらいわかってくれたかな?

 寝返りを打ったか?
「?」
ケータイから聞きなれない効果音。何だろうな・・・着信のお知らせ?この番号、県内だ!ひょっとして・・・飛び起きて、即、電話を掛け返した。プルルルル。
『はい。』
やっぱり!この間面接に行ったネットゲームのデバックの会社!
「あの、こんにちは。私、先日面接でお世話になりました、ツキシロです。お電話いただきましたでしょうか?」
『はい、そうです。こちらこそ先日はお疲れ様でした。お返事遅くなりましてすみません、採用とさせていただきます。』
「あ、ありがとうございます!」








 
 
 
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ADHDとともに「君の星座」第14章 鋼鉄の意志を その34

2014-07-20 19:44:23 | ADHDとともに「君の星座」
 ハルカ、二十二歳。大学四回生。
 教育実習が終わり、夏休みが終わり・・・死にたい、死にたい、死にたい・・・どんどん加速。もう、体が苦しい。どうしたらいいの?学生センターに駆け込んだ私は、精神科の受診を勧められ。
「うつ、ですね。」
まさか、こんなことになるとは思わなかった。
 小学校時代の進学塾で言われた言葉・・・精神科に行ったら?・・・その言葉が実現。就職活動できてないし・・・お前なんか就職できない・・・これも実現確定。このまま放っておいたら!もらった薬も飲んでいるけど、効いているのかいないのか!
「やっぱり、休学しようと思うんです。」
「それは駄目ですよ。」
「卒業論文が全然書けないんですよ。」
「今の状態、そのままゼミの先生にお話して御覧なさいよ。」
 卒業論文の個別中間チェックが始まった。重大な事情だから、その期間の一番に行く。・・・どうだろうな?こんな話、通じるんだろうか?でも、お医者さんの言葉を信じて・・・はい、どうぞ。先生の研究室へ。
「あ、ツキシロ君。」
先生、びっくりしてる。でも、ただ事ではないことを察知されているみたいで。
「すみません・・・実は、相談なんです。実は、今年の春から夜が寝られなくなりまして、それで、夏頃から勉強が手につかなくなりまして、学生センターで精神科を紹介されたんです。」
「なるほど・・・卒業論文がもう、手につかないと言う状態か?」
「はい。」
 先生、うつについて詳しいんだろうか?するすると相談が進んでいく。
「うん、状況はわかった。いつもゼミで言ってるけど、とにかく、卒業だけはしてしまったほうがいい。留年はいかん。あれは親も大学も受験生も、皆迷惑するんだ。単位は後、どれだけ残ってる?」
「卒業論文と、必須科目が一つ、後は教職の単位が・・・」
「わかった。じゃあな、卒業の単位だけは揃えて。教職は卒業してから科目履修だけで来る方法があるから。卒業論文だけど、どの程度できてる?」
持参した原稿、資料を見てもらう。
「・・・・うん、よく書けてるわ。よし、大学院の子をサポートにつけるから、それで完成させてしまったらいい。」
「ありがとうございます。」
「心配するな。君は真面目だから、がんばりすぎたんだろう。就職は卒業してから探す方法もあるから。今は、卒業だけ考えて、な。」 

 
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ADHDとともに「君の星座」第14章 鋼鉄の意志を その33

2014-07-19 19:29:24 | ADHDとともに「君の星座」
 アルバイト探し。方針が固まって動き出してからは、ハローワークのツジムラさんともうまくかみ合うようになって。応募するものの、採用には・・・。四月が目の前になって、焦りが増していく。
 今日は、発達障害者支援センター。先月と同じく、お母さん同伴。私が頼んだんじゃない。お母さんが勝手に。まあ、お母さん自身の不安のためだ。
「こんにちは、お世話になります。」
もう、慣れっこな感じのイワキさん。すみません、連絡もしないで。いえいえ・・・
 まずは、私からメモを差し出す。
「現在の、就職活動の状況です。」
公立学校図書室が不合格だった、ほか、二件が書類審査待ち。そして、面接に行ったゲームの検査の仕事。これが現在結果待ち。
「うんうん・・・これ、預かっていいかな?」
「はい。」
 やっぱりというか、今日はお母さんのカウンセリングみたいになり。一生懸命答えているイワキさん。
「うん、就職ってのはね。必ずしも能力だけで採用しているわけでもないんですよ。例えば、職場の人員構成的に男性のほうがよかったとかね。」
私はもう、何回も聞いてきた話だけど、なるほどって顔のお母さん。
「うちのセンターもそうなんですよ。男性でないと対応できない利用者さんもいますからね。男性スタッフがほしいんですけど、男性の募集が本当にないんです。」
そうなんだ。
 世間一般の仕事の話から、私個人について。
「小さい時から育てにくい子だとは思っていましたが、本当にもう、親としましては・・・まさかこの子に障害があるだなんて。それで仕事がうまく行かないなんて思いもしませんでして。」
「いえ。すんだことは仕方がないですから。ハルカさんみたいなタイプは、当たりだせばどんどん上昇していかれるんだと思うんですけどね。」
「でも私、ずっと下向きの負のスパイラルばっかりですよ。」

歩み出したけれど、これを上に向けるには、どんな道を進めばいいのだろう?

「ひょっとしたら、ハルカのためと思いながら、親の私がしたい仕事を押し付けてきただけなのかしら・・・」
お母さんがこんなこと言うの初めてだ。
「あ、そうだ、イワキさん。母の前で言いにくいんですけどね、二月の面接会の前の日に母が、障害者手帳なんか取らさなくても、一緒に老人ホームに入れたらいいって。」
「アハハハハ!」
「え?あら、そんなこと言ったかしら?ウフフフフ。」
 ありがとうございました・・・面談の最後、またお母さんがイワキさんに質問をぶつけた。
「あの、時間としてはこれで標準なのでしょうか?」
「はい。発達障害の場合、診断、自己分析、障害者手帳、ジョブマッチング、の順で時間がかかっていくんです。大体皆さん、ここを利用して就職まで一年ぐらいかかられます。ここの利用者さんで、障害者手帳を取って就職していかれた皆さん、一件も苦情は来ていません。本当にうまく行かれていますよ。」
 

 
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ADHDとともに「君の星座」第14章 鋼鉄の意志を その32

2014-07-18 19:41:09 | ADHDとともに「君の星座」
 現在のところ、書類審査中が一件。この間、面接に行った学校図書室の仕事は、不採用の返事が来た。仕方ない。内容的にも、それほど惜しい仕事じゃないし。とにかく、次だ、次!決まるまで・・・
『この求人は、ツキシロさんにいいお仕事だと思います。』
よかった。
「ありがとうございます。では、また紹介状を取りに伺います・・・」
 とうとう、三月二十一日。
「おめでとう、ハルカ。」
「うん・・・ありがとう。」
また誕生日が来て、私は三十四歳に。もう、四年も流れたんだ。発達障害に気づいた日から・・・小さいケーキを家族で味わいながら・・・で、実際の診断まで一年半。診断から手帳申請まで一年二ヶ月。手帳申請から今まで四ヵ月。仕方なかったんだし、親を責める気はないけれど、覚悟を固めてくれない間に、ずいぶん惜しいことをしてきた。去年の夏、障害者手帳なしでハローワークに通っていたあの頃だって。
『ツキシロさんにどうかな?って求人、ちょこちょこあったのよ!もちろんフルタイムで正社員でね。あなたは手帳がないから、紹介できなかったのよ!』
 次の日。もう、前に進むしかないんだ。スーツを着て面接に出陣する。今度のはネットゲームのバグを見つける仕事。こんな求人、始めて見たよ。このQ県にもそんな会社があったなんて。あ、ここだ。始めまして・・・ソファに掛けて書類に記入を求められ。奥の重そうなドアから、やたらと気楽な服装の男性が出てきた。
「始めまして。本日は面接にお越しいただきありがとうございました。」
「こちらこそ始めまして。どうぞよろしくお願いします。あの、私は発達障害を抱えておりまして・・・」
私の説明書。履歴書、ハローワークの紹介状とお渡しする。
「えーと、ゲームはどのぐらいされてますか?好きなジャンルは?・・・パソコンは出来ますか?」
「はい。」
「オッケーです。では、他の方も面接こられますので、一週間ぐらいお時間いただきましてお返事させていただきます。」
 どうだっただろうな?趣味の話みたいな、やたらとお気楽な面接だったけど。だけど、就職活動ってそれだけで疲れる。働きたくて活動しているのに、受け入れられるって保証は全くないし。しかも今回は、障害があることを申告しながら、一般枠の面接を受けてるんだよ。
 こころのクリニックにて。
「あの、先生。働けって、もう言わないでください。私、仕事探していますから。でも、受け入れられないんです・・・」
「はい。」
ドクターはどことなく、申し訳なさそうな目をしていた。
 
 
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ADHDとともに「君の星座」第14章 鋼鉄の意志を その31

2014-07-17 13:06:07 | ADHDとともに「君の星座」
 ハローワークに、発達障害者支援センター、ジョブサポートセンターの助言を受けて、ハルカは生き生きと求職活動している。親の私たちはもう、完全に手を引いているから、どんな仕事に応募しているのかもわからないし不安だけど・・・でも、もうハルカの思う仕事に行かせるほうがいいのかもしれない。親はもう、祈るだけで・・・
 決まるまで、次から次へと当たっていく。そうすると、また違う求人が見えてくる。今日は報告を兼ねてハローワークのツジムラさんのところへ。この間の、学校図書室の面接。
「すみません。あれ、ちょっとまずいこと言ってしまいました。」
「いえいえ。それは仕方ないですよ。」
失敗から学ぶ、そういうことだってある。その失敗を次に生かしていけばいいだけのことだもの。
「あ、それと、次に申し込みたい求人ですけど・・・」
 前進している。私の就職活動は確実に前進している。コートから軽いジャケットへ。今日は、ジョブサポートセンター。
「あら!もうすぐ誕生日じゃない?」
「そうなんです。」
「おめでとうございます。」
保健師マツウラさん。
「あ、ありがとうございます。」
そうだよ、もうすぐ三十四歳になっちゃうんだよ、私。
「正直焦りますよ。就職って歳を取るほど不利じゃないですか。」
 そんなことないわよ、って慰めの返事が返ってくるのは、ここでは当たり前みたいなこと。
「気にしちゃいけないんですよね。年齢なんて。」
「そうよ。年齢じゃないのよ、就職って。」
「自分にその仕事が出来るか、ですよね。」
当たり前のことを何度も確認し、何回も自分に言い聞かせる。私はそのためにここに来ている気もして。
 おじいさんはどうしてるの?元気にしています。私たちが負けそうなぐらい。ワハハハ。
「ツキシロさん、ずいぶん表情がよくなったわよ。」
同じこと、ムライさんからも言われた。
『始めてお会いした頃と比べると、物凄く表情がよくなられましたよ。』
そうかもしれないな・・・診断を受けること、自己分析すること、そして、障害者手帳を取ること・・・重大な問題はもう、全部クリアしたんだから。
『障害者手帳を取る決心をするだけでも、何年もかかってしまう人もいるんですよ。』




 

 
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