チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その23

2013-03-31 16:32:45 | ADHDとともに「君の星座」
 やっぱりハルカは、変だと思うわ・・・

「ご家庭ではどんなしつけをされてるんですか!」
「それを聞かれる前に、先生、本当に何でもおっしゃってください!ハルカが園でどうしてるのか!」
「・・・・・。」
年中組になって半ばになっても、先生方の態度は変わらず。授業参観も欠かさず行ってるけど・・・皆よりふた周りぐらい小さい体。制服もだぶだぶ。教室の中でも運動場でも、皆についていくこと自体が難しそうな感じに見て取れる。
「知能が低いんでしょうか?」
「いえ、むしろ高いんです。」 
 やっぱり、三月生まれだからなのかしら?それにしても・・・今更遅いけど、これだけ色々あると、三歳から幼稚園に入れなければよかったって、主人と二人で後悔した。今日は全員、保護者お迎えの降園日。
「ハルカ!ハルカ!どこへ行くの!」
もう!またちょろちょろ走り回って!他の子達は皆、じっとお母さんのそばにいるのに。先生方はこれをおかしいとおっしゃってるのかしら?
 だけど、うちの子は駄目なはずない。だって、この子にはすばらしい才能があるのよ。この頃、しっかり一人で歩けるようになったナオキと一緒に、子供向けのテレビ番組を見てることがあるんだけど、
「ハルカ、すごい!むちゃくちゃ上手じゃない!」
テレビに合わせて歌っている、その歌がものすごく上手なのよ。
「ほら、もう一度歌ってごらんよ!」
「いや!」
ハルカは何故か嫌がるけど、この子の音感は本当にすごい。ほら、こうしてピアノの音を出すだけで、
「ド、ミ、ソ!」
和音でも何でも、音を当てるのよ。
 私とカツヤさんは見合い結婚だったんだけど、二人とも音楽、それもクラシックが好きって言うのが決定打だった。私はこうして、ピアノも弾けるし・・・その私たちの子ども、それも娘がずば抜けた才能の持ち主だなんて!本当にうれしかったわ。
「ハルカ、ピアノ弾いてみない?」
「いや!」
「さっきの歌、もう一回聞かせてよ。」
「いや!」
万年反抗期みたいな子だし、これはいつもの事。ひょっとしたら、恥ずかしいのかしら?フフフ。
 そう思っていたけどこの子、物心つく前から音が出るおもちゃを嫌がったわ。得意なことのはずなのに。だけど、得意なことが嫌いなはずないもの。私、必ず子の、この才能を伸ばしてやりたいわ。
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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その22

2013-03-30 19:33:50 | ADHDとともに「君の星座」
 なかなか、仕事探しに移行しない現実に、慣れっこにもなったのか諦めたのか。今日の報告を聞きながらも、
「ある意味、ありがたいところね。就職してからのことも考えてくださるって。」
「就職してからも、色々フォローあるんだって。」
せっかく就職しても、早期にやめてしまう。これも今の時代の問題。だから、定着するまでフォローするんだってセキモトさんから教えてもらった。
「まあ、ありがたいことは積極的に利用させてもらうとして、ハルカ。お前としてはどうなんだ?」
「え?」
「こういう仕事したいとか、いい加減自分で決められないのか?もう、六つも仕事してきただろ?」
「そうよ!カウンセラーさんにばかり頼らなくても。」
それが自分でわかったら、そんなところになんかいかない!どうしてそれがわからないのか!
 だいたい、昔からそうだったじゃない!アホとかバカとか能無しとか・・・何かにつけてなじってきたくせに!私が将来こうなりたいと言ったら、「お前にそんな仕事できない!」って、全部切り捨ててきたじゃない!そんな私に、夢なんか持てる?考える余裕なんて・・・
「黙ってないで、何とか答えたらどうなんだ!」
お父さんの言葉をさえぎるように、お母さんが、
「ハルカ、あなたはね、そんなにできない子に思わないのよ。もうちょっとがんばったら!」
気持ちを切り替えたらしいお父さんが、
「なぁ、公務員試験受けないか?」
公務員を目指さないか?
 私も、公務員の職場にいた事がある。だけど・・・
「昔からな、体の弱い人とかも結構いて。わしの若い頃なんか、午後から椅子を並べて寝てる人なんかもいたものさ。ちゃんと給料も・・・」
「!・・・もう聞き飽きたわ!そんな話!」
いつもいつも、何かあったらすぐ「昔は」って!今はもう、昔じゃない!公務員さんだって、そんな気楽にやってる人なんかいなかったもん!
「だいたい私が、そんな難しい試験通るわけないじゃない!」
そうだよ、今までどれだけ馬鹿にしてきたんだよ!中学受験させられたのも、お前は高校入試なんかとても通らないからだって言ってたの、あんたらだろ?
 今度は、お母さんから。
「才能を生かす道ってのも、考えられないの?ほら、ハルカは耳がいいし、ピアノの調律士はどう?専門学校に行けばなれるし。」
「嫌!」
私、音楽は嫌って何回も言ってるのに。
「本当に・・・ハルカってものすごく変わってるわ。いっぱい才能があるのに、どれも生かそうとしないなんて。英語もそうだったわ。学校の先生ができるっておっしゃってたのに、それを伸ばそうともしなかった。ハルカ、あんたは自分の才能を捨ててるのよ!」
バシィィィ!
 

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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その21

2013-03-29 14:58:03 | ADHDとともに「君の星座」
 待ちわびた、職業カウンセリングの日。
「こんにちは。」
いつも変わらない、穏やかな笑顔のセキモトさん。
「こんにちは。心理の予約、キャンセルしたんだって?」
当たり前なんだろうけど、しっかり伝わっていた。
「はい。親に反対されたんです。すみません。」
これ以上の理由は、ここでは言わないでおこう。せっかくつないでくださった、セキモトさんに失礼だもの。
 だけど親って、どこの家でもそんなものなのかな?
「ここに来てる人たちもね、親がたまたま自分の人生うまく行ってたために、うまくいかない自分の気持ちをわかってもらえないって言う相談、結構あるんだよ。」
そうなんだ。その辺はある意味うちも一緒だな。
「特に母なんか、すごく仕事ができるタイプだったみたいんです。働いていたのは、独身の間だけだったみたいですけど・・・」
確かに、私の目から見てても、お母さんはすごくできる人だと思う。何事もてきぱきしてるし。
「ちょっと、そそっかしい人でもあるんですけどね。」
「ハハハハハハ。」
 父は・・・弟は・・・何か、「私の家族紹介」みたいになってきた。これでいいのかというぐらい仕事探しの話から脱線してる気がして。
「あの、本題なんですけど。」
意識して話を戻す。
「私の、人間関係の問題なんです。」
親に、心理のカウンセリングを反対された以上、セキモトさんと解決していくしかない。
「うん・・・」
パワハラの話とかはしてきたけど、
「大体昔から、変わってるとか言われていました。学校時代は友達もいませんでしたし、職場でもだんだん、みんなから疎まれて・・・それなりに優しい人もいたんですけど。」
どうしよう、涙が出てきた。働いてからの事だけじゃなく、もっと小さい時から、そして、今の事。次から次からこみ上げてくる悲しさと悔しさ・・・
 顔を上げる気がするまで、何分かかっただろうか?
「・・・すみません。」
「ううん。まあ、ツキシロさんの状況はよくわかった。だから、次こそ傷つかないように、充分に対策練っていかなくちゃ、ね。履歴書はあれでいいし、あと、職務経歴書も用意しようか。ツキシロさんの興味や関心ももっと整理しないといけないし・・・そろそろ時間だし、次回は?」
「はい、また来週この曜日でお願いします。ありがとうございました。」

 
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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その20

2013-03-28 19:19:09 | ADHDとともに「君の星座」
 希望の糸を、断ち切られてしまった。がっくりして眠り、また目覚めた朝。
『ブルルルルル!』
お気に入りのアニメソングと共に、ケータイのバイブレーダー。目覚まし時計と一緒にこれも鳴らしている。私なりの、朝寝坊防止対策だ。ベッドから腕を伸ばして、止める。
「おはよう。眠れた?」
寝起きもよくないけど、寝つきもよくない。それが、私。いつも親の心配の元、無職の間も生活のリズムだけは狂わないように気をつけているつもり。
 仕事のカウンセリングは週に一回。それ以外の日をどう過ごすか。これが課題だな。私、これといって趣味もないし、友達もない。そうだ、友達・・・。
 私には友達がない。証拠に、携帯のメモリも家族と、病院とかジョブサポートセンターとか、若干のお出かけ先のみ。友達なんて、中学の時からいない。

『みんなと遊びなさいよ。』
『そのほうが楽しいよ。』
『ほら、みんなのところに行きなさいよ!』

どうして?私、みんなと遊びたくない。そんなことしても楽しくないもん。どうしてみんなと一緒にいたら楽しいなんて決め付けられるの?一人でも楽しい事いっぱいあるのに。自室、引き出しの中に置いている、携帯ゲーム機を手に取った。だけど・・・

『キャハハハハハ!』
『もう!ハルカちゃんってば!』
『ねえ、私たちの友情は!』
『永遠だよ!』
また明日ね!

ほんの短い時期だけど、私にも友達がいた時代があった。やっぱり楽しいと思っていた。幸せだった。今だって思うもん。あの時みたいな友達がいたら・・・
 私、別に友達が欲しくないわけじゃない。人と関わりたくないわけじゃない。むしろ、関わりたい方かもしれない。一人でいるほうが好きっていうのは本当なのに。時々自分でも思う。いったいどっちなんだろうって。だけど、これだけは本当。いい加減な、悪い友達なら、いっそう友達なんかいないほうがいい。
 お茶を飲もうともう一度、下のリビングへ降りていった。
「ハルカ、ちょっとこれ見てごらん。」
何?結婚相談所のコマーシャルじゃない!
「お母さんね、ハルカみたいなタイプは、家庭に入ったほうがむいてると思うのよ。仕事探しも大事だけど、結婚も真剣に考えない?」
もう、何回も聞かされてるし、現実見合いもしたけれど、私には結婚なんて無理。見ず知らずのよその男の人と一緒に家庭を築くなんて大変なこと、私にできるはずない。
 
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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その19

2013-03-27 18:41:43 | ADHDとともに「君の星座」
 カウンセリングに行けど、なかなか前に進まない現状。
「で、今日は今までの整理で終わったの?」
「ううん、面接の準備とか、就職してからの人間関係の相談も。」
イライラし始めている両親も、この一言を聞いて少し、しゅんとなった。
 人間関係、これこそが私の人生最大の問題。
「お前、別に、普通におはようとか失礼しますとか言ってるだろ?」
「言ってるよ。」
「じゃあ、それでいいんじゃないのか?」
それができれば許されるような世の中じゃないのが、今の時代。時々思うんだ。うちのお父さんお母さん、自分たちと今の時代はぜんぜん違うってのがわかってない。だから私もこういう話をする時、腹が立ってくる。
「ハルカって、家で見てたら全然普通に思うのよ。」
 私は何がおかしいのか、何がいけないのか。むしろ、教えて欲しいのはこちらのほう。
「あんたは、幼稚園の先生から・・・」
「もう!やめてよそんな話!」
大嫌いだった幼稚園、その関連の話なんか聞きたくもないし、思い出さされたくもない。あ、そんな事より。私は姿勢を正して、今日の話を伝えはじめた。
「あの、それでね今日、カウンセラーさんにその相談したら、心理面のカウンセリングも受けないかって。あのセンターの中にそういうカウンセラーさんもいるんだって。」
それで、予約も取ってもらって。
 とたん、お父さん、お母さんのの顔色が変わった。
「なんて事してきたの!」
「取り消せ!そんなもの!」
え?どうして?
「そんなところに相談に行ったら、働けないようにされる!」
そんな・・・これからのための相談なのに。
「ね、ハルカ。そんなの断りなさい。仕事探しの相談だけならいいけどね、そんな相談は絶対に行っちゃ駄目。もう働けない人ってことにされて、仕事を紹介してもらえなくなるわよ!」
 そんな事はないと思うし、むしろ、積極的に利用してうまくいくようにしていくべきだと思うけど、いくら言ったってわかってくれる人たちではない。
「・・・わかった。」
私は渋々電話を取り、キャンセルの連絡を入れた。




 
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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その18

2013-03-26 19:04:30 | ADHDとともに「君の星座」
 実は、履歴書や面接というより、私が本当に困ってるのは職場でのコミュニケーション。就職してからの人付き合いともいえるかもしれない。キャリアカウンセリングの時間。
「働いてからの問題でもないんですけど、私、ずっと人付き合いで苦労してるんです。どこに行っても喧嘩になって、それこそ、パワハラにも・・・」
うんうん。セキモトさんは静かにうなづきながら、卓上のパソコンを私のほうに向けて、検索を始めた。
「えーと、コミュニケーション・・・」
辞書サイトが出てきた。
「うーん。」
こういう国語的な意味を知りたいんじゃないんだけどね・・・たぶん、セキモトさんも理解してくださってる。答えようのない質問を私がしてしまったものだから・・・
 要するに、他人を相手に、いかににうまく立ち回るのかということ。人の輪の中で、どうやって生きていくのか。
「昔から集団が大嫌いなんです。学校なんか最悪でした。ある意味一番楽だったのは大学ですね。友達作れも言われませんし、クラスってのもないし、放っておいてもらえるし。」
しかも大学では、部活もサークルもしなかった。
「高校までは本当にうっとうしかったです。親も、先生も、部活部活って。勉強しないで部活やれってんのかって、頭にきましたよ。」
就職という、これからのことを考えるためのカウンセリングなのに、こんな過去の話持ち出していいのかと思うけど、静かに聞いてもらえた。
「うん。将来を考えるためにね、過去を整理するってとても大事なことなんだよ。でも、その話からすると、大人になってからのほうが人生楽になったんじゃない?」
「いえ、全然そんなことないですよ。ほら、学生の間は誰とも付き合わずに一人でいますって通じますけど、社会人となると・・・」
 別に、付き合うのが嫌なわけじゃない。忘年会とかも、誘われれば行くし。
「それだけできてたら上等だと思うよ。」
何を困ってるのか、読み取れない感じのセキモトさん。
「私も努力してるんですけど、どういうわけかこじれるんです。誤解されたり。私、仕事も一生懸命やってるんです。それなのに努力しないとか、もっとがんばれとか・・・」
涙声の私を見ながら、ちょっとした提案を振られた。
「うーん、なんでだろうね?そうだ、ツキシロさん、もう一つね、心理のカウンセリング受けてみない?」
「え?」
「ここにはね、必要に応じて心理カウンセリングも受けられるんだよ。僕らキャリアカウンセラーが必要と認めた人だけ申し込めるんだけど。」
そんなのあるんだ!へー、とことんありがたいな!
「じゃ、お願いできませんでしょうか?」
「わかった!予約しておこうね。・・・空いてる日、教えてもらえるかな?」


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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その17

2013-03-25 18:53:58 | ADHDとともに「君の星座」
 なるほどね!
「さすがは専門家ね!」
お母さんもそう思うみたい。仕事を辞めた理由のこと。数ある理由の中から、一番差し支えのない事を話せ。
『やめた職場の悪口は、絶対言わないようにね。』
おっしゃるとおりなんだけど、やっぱり腹立つ!絶対面接でその不満が噴出しそうで・・・頭の中を、今まで六つの職場の出来事がぐるぐると回り始めた。

しかたないです。期限付きですから。
もう、こんな職場いたくない!
ずっとここで働きたかったのに・・・
『君は、外で働くのは難しいんじゃないのか?』

 どうしよう、今、目の前みたいにリアル。また冷や汗が出てきた。どこの職場でも嫌な思いばっかり!どいつもこいつも!チクショウ、チクショウ・・・私、昔から人間関係は苦労ばっかりだ。そういえば、カウンセリングでも出てきたけど、コミュニケーションって何だろう?人とお話しすること・・・

 ハルカ、四歳。
「ウワァァァァァーン!」
「ちょっと!どうしたの、何があったの!」
「先生、あのね、ハルカちゃんがね、私をたたいた。ウワァァァァーン!」
幼稚園の教室で、同じクラスの女の子と、積み木か何かで遊んでいた時だったと思う。私が先に使っていたのに、相手が変なルールを勝手に作って、それで私のを無理やり取り上げたんだ。で、カッとなった私は、相手に手を上げてしまい・・・
 明らかに、悪いのは相手のほうだった。それなのに。
「ツキシロさん!どうしてそんな乱暴ばっかりするの!」
幼稚園の先生は鬼みたいな顔で私を怒った。相手の言い分ばっかり信用して、私が何を言おうと信じてくれなかった。
「だから・・・!・・・・ちゃんが!・・・」
 幼稚園バスがお迎え場所に。
「え!す、すみません、申し訳ありません・・・」
先生にずっと謝っていたお母さん。だけど、
「ハルカ!どうしてお友達をたたいたの!」
そのお母さんすら、私の言い分を聞こうともしてくれなかった。

 幼心にも、大人って酷いって思った記憶。私が口がたたないばっかりに。あーあ。お話し上手な人間に生まれてきたかった。それだけでも、人生ずいぶん変わっていたと思う。
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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その16

2013-03-24 19:19:29 | ADHDとともに「君の星座」
 新緑も深まると、新年度のムードは消え、すっかり日常の雰囲気に。そんな中で春から放り出されたまま、何も見つけられない自分が情けなくて。今日はまたジョブサポートセンターの面談日。
「ツキシロさん!」
セキモトさんに呼ばれる。仕事の相談でもカウンセラーさんでも、こうして、人の声を聴くとものすごくほっとする。カウンセリングスペースへ。
「こんにちは、お世話になります。」
「こんにちは。いい天気になったね。」
「本当ですね、街中の人が皆半袖で。」
はじめは何か、世間話みたい。
 続いて、今日はセキモトさんから話を振られた。
「ツキシロさん!あなたはよく本を読むでしょう!」
「え!・・・ハハ、実は全然なんです。よくそう思われてるんですけどね。」
「ハハハハハ。うん!ツキシロさん、ちゃんとコミュニケーション取れてる!」
コミュニケーションが取れる。私にとって、これほど嬉しい言葉はなかった。だって、どこの職場に行っても、君はコミュニケーションが取れないって言われてきたから。
 就職に向けてのカウンセリングなんだけど、結構雑談とか世間話っぽい話題が多い。さあ、ここからが本題。
「あの、履歴書と面接の相談なんですけど。」
まず、これを突破しない事には、就職も何もないから。で、一番引っかかるのは。
「一番始めに働いていた、この職場の事なんです。」
別に、普通の事務仕事だけど、
「面接でも、この部分でどよめきが起きるぐらいにびっくりされるんですよ。」
「前から言ってたね。」
「はい。もう、履歴書には書かないほうがいいでしょうか?」
うーん、と考え込みながら、私の履歴書を見ているセキモトさん。
「いや、これはね、書いておこう。」
そのほうが、いいの?
「ここはね、あなたが大学を卒業して、すぐ次の四月一日から行ってるからね。書いておいたほうが有利だ。」
なるほど!学校を出たら、すぐ次の四月一日から就職していなければならない。これはこの国のおかしいところだと思うけど。
 それと、
「じゃあ、面接ではここを辞めた理由をどう言ったらいいでしょうか?」
私の質問に、
「そうだね、それだけど・・・辞めた理由ってね、一つじゃないんだ。いくつもの理由が重なって辞めるに至るわけだ。だからね、その数ある理由の中で、言っても差し支えないことを一つだけ言えばいい。ツキシロさん、辞めた理由全部言ってごらん。」
「な、何でもいいんですか?」
「もちろん!」
まずはパワハラ、仕事が合わなかった、ずっといられる職場じゃなかった・・・
「それと、やっぱり図書館で働きたかった。」
「よし!これからはそれ言うようにしよう!」


 
 

 
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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その15

2013-03-23 18:56:36 | ADHDとともに「君の星座」
 夜。
「で、ハルカ。今日のカウンセリングはどうだったの?」
三人の食卓で、お母さんから話を振られる。
「え?うん、前に言われてた、あの、こういう仕事は嫌って言うリストを持っていって・・・」
話し始めてもつっかえるばっかり。私、昔からしゃべるの下手なんだ。一時間もあるカウンセリングで話した内容を、うまくまとめるなんてできない。
「うーん、大体はわかった。だけどハルカ、もうちょっと系統立てて話ができないか?」
不満そうなお父さん。
 カウンセラーさんって、どんな人?
「男の人で、五十歳ぐらいだと思う。」
あまり詳しく知らないけど、キャリアカウンセラーって資格があって、一度でも働いた経験がないとなれないお仕事なんだって!
 また無職になって、家にいる時間が多いから、家事を分担している。で、夕食後のお皿洗いは私がしてるんだけど・・・全体を拭いて、最後はごみ出し。やれやれ、やっと終わった。勝手口から帰ってきた時。
「ちょっと、ハルカ!ちゃんと見なさいよ!」
お母さんが指差す、シンク横の調理台に一つの鍋。
「え?」
「どうして洗ってないの?ここにあるのちゃんと見えてるのに!」
ああ、それ、洗わなくちゃいけなかったんだ。
「蓋してあったから、何か入ってると思ったの!洗うものだったら、初めからそう言ってよ!」
怒り声で言う私に、
「あのね、そういうのは、言われなくても気を利かせてするものなの。ハルカ、職場でどうだったの?ちゃんとやってたの?結構抜けてたんじゃない?心配になるわ!」
いつもいつも、しからればっかり!血液が逆流するぐらい、怒りがこみ上げてきた。
 ハローワーク。今日は第一回目の失業保険認定日。窓口に受給者証とこの一ヶ月の就職活動状況を提出して、ソファに掛けて待つ。あーあ、ここにももう、何回も来ている。こんな手続きに慣れっこというもの恥ずかしい。でも、相変わらず、認定を待ってる人多いなぁ・・・それだけ景気が悪いということなのか?
『認定終わりました、順番にお呼びします。』
これでおしまい。あとは、銀行に振り込まれるのを待つ。えっと、今月は・・・ここから保険料を引くと、かなり厳しいな。まあ、もともとそんなに稼いでなかったからだけど。
 これまた満員の求人検索パソコン。見て帰れなくはなかったけど、あえて見ないことにした。まだ、ジョブサポートセンターでの相談を、始めたところだから。

 

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ADHDとともに「君の星座」第2章 羅針盤はどこに その14

2013-03-22 18:59:08 | ADHDとともに「君の星座」
 それしかないのかな?正直なところ、実際、私、事務できない。失敗ばっかりするんだ。
『おい!またやってんのか!』
うう、思い出したくない。憂鬱な気持ちで帰りのバス、何とか座れる座席があって、静かに目を閉じる。ブロロロロ・・・

 ハルカ、四歳。
「あんたなんか、私でなくちゃ育てられないわよ!よそにもっと上手に育てられる人がいるんなら、その人のところに行きなさいよ!」
もう!ナオキはこんなに育てやすいのに!
 「あ!そんなことしちゃいけないでしょ!」
「言うこときないんだったら、先生にいうよ!」
同じクラスの頭一つ大きい皆から、毎日のように命令されて。
「ツキシロさん!ちゃんとこっちを向いて!いつもあなただけですよ、一人だけ違う事してるの!ほら、ソワソワしない!」
 わたし、いっしょうけんめいあわせてるもん。
「ハルカちゃん、おかあさんごっこしよう。」
「はーい、これからお絵かきの時間ですよ。」
ちゃんと先生の言うことも聞いて・・・それなのに、
「ゲラゲラゲラゲラゲラ!」
「赤ちゃんは幼稚園にくるな!」
幼稚園のグラウンド。泥が団子に、砂粒が米粒に。どうしてみんな遊ばなきゃいけないの?ひとりのほうがずっと楽しいのに。もう嫌。幼稚園嫌い、幼稚園嫌い!
 解放されて夕方。家の前の道路で遊んでいた時。キキー!保育園のバス到着。お向かいのユキコちゃんが行ってるんだ。
「ただいまー!」
保育園って、好きな服で行っていいんだ。いいな、私はいつもスカートばっかり辛抱してはかなくちゃいけないのに。
「ねえ、お母さん。幼稚園ってどうして同じ服きていかなくちゃいけないの?」
「だって、幼稚園は制服って決まってるもの!」
 この頃からかもしれない。やっぱり、ハルカは変わってると思うようになってきたのは。
「・・・うん、ハルカ、そう言うのよ。だけど、制服が嫌って、何でしょうね?」
「ふーん。皆と同じの方がいいのにな。」
皆と同じ服を着る。これほど安心で楽で、幸せな事はないのに。どうしてこの子は外れようとするの?わがままなのかしら?それとも、プライドが高いのかしら?






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