チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

チコの小説連載中!完結作は「でじたる書房」より電子出版!本館「ポエムの庭」へはリンクでどうぞ!

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その2

2014-10-31 19:47:55 | 時は管理教育「この時代を」
 家庭教師の先生との勉強は、二時間。
「うん、ちゃんとわかってるから、大丈夫。」
「ありがとうございます!」
先生、ありがとうございました・・・細かい対応は、お母さんがしてくれている。実は、昨日と今日と学校を休みまして。そうだったんですか!体調ですか?いいえ。雨で気温が下がって、制服では体が冷えて・・・
「今の中学って、融通利かないんですね。私たちの時もいろんな子いましたけど。」
「何かね、急にそうなったみたいで。ほら、キョウコの上の子が今、高校二年ですけど、あの子の時と比べましてもね。」
 ありがとうございました・・・家庭教師の先生を見送ったら、プルルルル!私が電話に出る。
「はい、ツチヤ商店です。・・・あ、ユウちゃん?うん、私、キョウコです。」
『体調、大丈夫?二日休みだったから、心配になってさ。』
「ありがとう。体は大丈夫なんだけどね。」
ユウちゃんに続いて、マコトちゃんからも電話がかかってきた。
「いい友達持ったわよね、キョウコ。」
「うん。」
お母さんの言う通り。ユウちゃん、マコトちゃん、本当に私の親友だよ。
 キョウコちゃんは心臓が悪いから・・・病気だから・・・物心がついた時から、どこへ行っても配慮してもらってきた。ずっとずっとそうだったから、私の中ではそうされることが普通なのかもしれなかったのかもだけど、学校とか行くようになって、やっぱり、
『普通の子と同じようにさせてほしい。』
できないこともあるんだって、わかってる。それでも、できる限り普通の子と同じように生きたい。
 そう長くしゃべってないのに、もう、こんな時間。
「キョウコ、早く風呂に入ってしまえ。明日は学校、行くだろ?」
「うん、ありがとう。」
着替えを持って、お風呂場へ。私の体には、たくさんの傷がある。手術の跡・・・

小学校に上がる前の、就学時検診の時。
キョウコさんですが、それだけ配慮事項が多いとなると・・・学校としましては、養護学校をお勧めします。
先生、何とかこちらの学校でお願いできませんか?キョウコも普通の子と同じように過ごしたいと思いますので。
『普通学級で大丈夫ですよ。診断書が必要なら、いくらでも書きますよ。』
お医者さんもそういってくださった。
コメント (5)

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その1

2014-10-30 19:50:29 | 時は管理教育「この時代を」
 ザァァァァー。キョウコの自宅。お母さんとの横で、伝票の整理を手伝いながら。
「よく降るわね。お父さんもコウスケも大丈夫かしら?キョウコ、寒くない?」
「うん。」
あーあ。結局、二日続けて学校を休んだ。理由は、申し訳ないけど、学校の制服が寒いから。私には、心臓病がある。

オギャァ、オギャァ。わー、色の白い子だわ、綺麗な子だな!主人と喜んでいられたのも、つかの間。生まれたその日の夜に、お医者様から呼び出されて。
『お嬢さんの心臓に、障害があるのがわかりました。』
まさか!私も主人も頭の中が真っ白になった。だって、まさか重い病気を抱えた子が生まれるなんて。上のコウスケは元気な子だったから、二人目も元気な子が生まれると思っていた!

 キョウコは本当に、商売も家事もよく手伝ってくれる。何回も入院して、手術もして。生活に制限もあって、普通の子よりずっとしんどいはずなのに。
「あ、お客さん来た。私が行く!」
よく気も利いて。
「領収書一冊と、ボールペンが一本、売れたよ。」
「ありがとう、キョウコ。あ、そうだ、今日は、家庭教師の先生が来られる日よね。」
 私、中学生になってから、週に三日、家庭教師の先生に来てもらってるんだ。数学、英語、国語、理科、社会。いわゆる、主要五科目。小学校の時は学校の宿題とユウちゃんから教えてもらった通信教育でやっていけたけど、中学はそうもいかない。だけど、私は心臓のことがあって、とても塾通いはできない。
 日が暮れて、お父さんが御用伺いと納品から帰ってきて、
「ただいま。キョウコ、今日は家庭教師の先生の日だろ、先に食べとけ。」
いつもは、もっと帰りの遅いお兄ちゃんも待って、一緒に食べるんだけど。

こんばんは。

はーい。夜七時半。家庭教師の先生が来た。
「こんばんは、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、お願いします。」
大学生のお姉さんにお願いしていて、この先生には数学と英語を教えてもらっている。この先生と、もう一人、国語、理科、社会を教えてもらってる先生。そのおかげで、この間の中間テストは全部満点だった。
 
 

コメント (2)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その15

2014-10-29 19:41:57 | 時は管理教育「この時代を」
 規則は守るべきもの。だけど、守りたくても守れない人もいるものなのだと。休憩時間、
「ねえ、マコトちゃん。キョウコちゃん、大丈夫かな?帰りに私、寄ってこようかな?」
私の横で、相変わらずのジャージ姿で、また、校則違反を口にしているユウちゃん。下校時は寄り道せず、まっすぐ家に帰る。校則にあったはず!・・・ユウちゃんの思いやりであることは、充分わかってるんだけど。
「そうだね・・・私も、家に帰ったら電話してみるわ。」
キョウコちゃん、本当に大丈夫かな?
 
あら!中学の制服?
へぇ、夏服って、そんなのになったんだ。かわいいわね。
中学生らしいくていいわ。清楚で控えめで。地味なほうがいいわよ。

 日が流れるにつれて、気温は高くなり。
「暑い!暑すぎ!」
下敷きで必死にあおいでみてもまだ暑い。
「おい、やめとけって。第一ボタン外すの。」
「そうだよ、また呼び出されるぞ。」
そして、梅雨が始まり。
「寒い!雨降ると冷えるよね。」
「うんうん。下も、スカートだからさ。」
そんな皆の様子を見ながら、ユウちゃんは、
「気温に合わせて服を選んじゃいけないって、おかしすぎる!ほら!キョウコちゃんが学校に来れなくなってる!」
 そうしているうちに、体育の授業も水泳が始まった。ほら、女の子には事情があって・・・
「先生、すみません。」
何人かまとまって、体育のホリイ先生のところへ連絡帳を持って。
『生理ですので水泳の授業を見学させてください。』
急に怖い顔になるホリイ先生。
「お前ら!こんなの休む理由になると思ってるのか!」
 女子更衣室。水着に着替える皆の中で、ユウちゃんが、
「マコトちゃん、先生の言うこと聞かなくていいんじゃないの?体のことだよ?」
すごく心配してくれている。でも・・・
「先生が言うんだから。言うこと聞かなくちゃ。・・・ユウちゃん、そろそろ時間。行こう。」

コメント (4)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その14

2014-10-28 19:31:17 | 時は管理教育「この時代を」
 私が驚いたのは、キョウコちゃんが欠席ってことじゃない。だって、キョウコちゃん、
『明日は検査があるから、休むね。』
いつも言っていくもん。私たち、友達だから。私とユウちゃんに黙って休むなんてことはまずない。
「寒いからだよ!寒いのに、六月だからって半袖ってさ!」
「ユウちゃん!教室で言うことじゃないわよ!」
学校でそれを言っちゃいけないと思う。ユウちゃんは、いい子ではいたくないのかもしれないけど。

いい子・・・

「この英短文の意味は・・・」
特に意識はしてなかったけど、私、ずっと、勉強は一生懸命することが当たり前、大人の言うことはきちんと聞いて当たり前、そう思ってきた。それは、ユウちゃんやキョウコちゃんと出会ってからも。だけど、この頃、私があたりまえって思ってきたことは、本当は間違ってるんじゃないかって。
「アヤセさん!聞いてますか!」
「あ、はい!・・・すみません。」
しまった。私が、授業中に全然違う考え事してしまうなんて。
 授業時間中の、職員室。待機中の教員数名。お茶の入ったマグカップを手に、
「やれやれ。授業が始まると、本当に静かですよね。」
「ホッとしますよ。ここの子たちは、授業を抜け出す子はいませんしね。」
「そうそう。エスケープとかやられたら、たまらんよ。」
少し、話題変わって。
「あの、一年一組でしたっけ?女子で・・・」
「ああ、タカクラか?」
「あの子、教室で授業受けてるんですか?」
制服を着ずにジャージで通し、続いて、三年間退部、転部は許されないのに、陸上部を勝手一方的に退部した。
「ああ。会議でな、あれ以上、別室に隔離すると、教育を受ける権利を奪ったってなるからな、授業は教室で受けさせることになったんだよ。」
「そうなんですか。」
「しかし、権利権利ってな。校則も守れん奴にさ。でも、よく考えたらタカクラ、何で制服を着るとか、部活を続けるとか、当たり前のことを受け入れられんのかな?」



 

コメント (3)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その13

2014-10-27 19:08:14 | 時は管理教育「この時代を」
 今日は六月一日。
『はい!今朝の気温は十五度。雨の影響で平年より寒いですが、今日から、職場も学校も、一気に夏服に衣替えですね!』
今、ニュースで言ってるとおり、今朝は本当に梅雨冷で。ツチヤ家の居間。
「行ってきます!」
高校の制服すっかり夏服のお兄ちゃん、部活の練習がるからいつも朝早く、大きなお弁当を持って出かけていく。
「行ってらっしゃい。・・・あらら、もうパンがないわね。キョウコ、何食べる?」
「昨日、菓子パンを取っておいたから、それでいいよ、食器棚の上に・・・」
「あらあら。しっかりしてるわね。それはそうと、キョウコ、今日から夏服だけど大丈夫?カーディガン持っていく?」
 通学路を、誰と一緒でもなく歩くマコト。確かに今日は寒いわ。腕に鳥肌が出てるけど、こんなものは動いていれば体が温まって消える!うちの中学は今日から衣替え。だから、寒くても何でも、今日から夏服!何?あそこの人、まだブレザーなんか羽織って!正門では、恒例の服装検査。
「誰だ!冬服来てる奴は!今日から一斉に夏服だぞ!家に帰って着替えて、出直して来い!」
力づくで追い返されている、ブレザーを着ている子や冬物の時期のズボンやスカートの子。・・・それと、これも恒例になっている朝の景色。一年、今、何組かな?同じ小学校出身の子で、女の子、カワダっていう子なんだけど。
「おい、そのパーマは何だ!」
「私はパーマじゃありません!生まれつきなんです!」
先生、
「ストレートパーマ当てて来いって、何回も行っただろ!」
カワダさんを突き飛ばした。
 パーマ当てるなって言っておいて、天然パーマならストレートパーマは当てろって変だよね・・・正門でのチェックをパスした子は皆、いろんなこと言いながら歩いている。
「おはよう!」
半袖だけど、やっぱりジャージのユウちゃん。この時間に教室にいるってことは、陸上部には行っていないってこと。だけど、私はもう何も言わない。先生たちが考えてるだろうし。
「あのさ、マコトちゃん。今日はキョウコちゃん休みだって。」
「え?」 
コメント (3)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その12

2014-10-26 19:16:30 | 時は管理教育「この時代を」
 相手が去ってから、体を起こし、急いで学校の外に出るマコト。・・・通学路から離れちゃいけないけど、なるべく、人が歩いていない道へ。小学校の時から、こういうことはあった。

・・・いじめ?

だから、私は一人のほうが気楽。一人のほうがいい。
「ただいま。」
「おっかえりー!」
相変わらず明るい、うちのお母さん。
「どうだった?クラブ、久しぶりだったでしょ?」
いかにも、楽しいでしょ?と押し付けてくる言い方。
「あ、着替えてくる。」
 バタン!部屋に一人になると、ほっとした。制服から私服に着替える前に、バイオリンのケースを開ける・・・よかった。弦、切られてない。おばあちゃんからもらったお小遣いで直したけど・・・あーあ。部活ってお金も減っていく。そのまま椅子に掛けて、頭を抱える。こうしていると、いろんな思い出が頭をクルクルと回り始めるのよ。
『マコトちゃんの悪口言うな!』
小学校時代のユウちゃん、よく私を助けてくれた・・・やっぱり私、ユウちゃんをどこかで頼りにして、尊敬しているんだと思う。
 夜七時、第一中学校小会議室。
「一年生の先生方、お疲れ様です。学年会議を始めたいと思います。」
今日の議題は主に、先日の中間テストの結果について。各教科担当から報告の後。
「今年の一年生は、なかなか優秀ですね!」 
「心配な子もいますけどね。」
うんうん。
「一番すごいのは、一組のアヤセ。」
「そうそう、全教科満点ですよね!」
一組の女子では、タカクラやツチヤや・・・何人かいるけれど、アヤセが話題に上がるのは。
「あの子は本当にいい子ですよ。」
「そうですよね、模範生ですよね。他の生徒には本当に見習ってほしいですよ、クロダ先生。」
「そうですね。」
会議だから笑って返しているけど、担任としては疑問に感じることも多いわ。あの子、あんなにいい子なのに、学級委員長に選ばれるわけでもない。教室では孤立しているのよ。

  
コメント (2)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その11

2014-10-25 19:34:22 | 時は管理教育「この時代を」
 今日はここまで!お疲れ様でした。吹奏楽部も練習終わり。他のメンバーが楽譜や楽器を片付ける中、一人、活動時間中一度も開けないバイオリンのケースを持って退室するマコト。廊下を一人で歩きながら・・・私、悲しくなんかない。悲しくなんかない・・・泣いてなんかいない。泣いてなんかいない。
『中学では、新しい友達いないの?』
・・・。私だって焦ってるのに。
『勉強ばっかりできてもダメよ。友達ができないと。』
『人と関わらないのは暗い証拠!』
 大人はみんなそういうけど、私、努力している。部活は、学校の規則だから、だけど、それだって、友達を作りなさいって学校が意図して決めている規則でしょ?だから・・・
『中学で友達ができなかったら、一生友達はないぞ。』
わかってる!私も、努力してるでしょ!
『努力なんか、いくらしても認められないぞ。結果を出さないと大人は認められないぞ。』
 うちの学校は体育系の部活に入ってる人のほうが圧倒的に多いからかな?部活が終わって校舎の中を歩いていて、誰かとすれ違うってほとんどない。すれ違っても、そのほとんどは女子生徒。

ケラケラケラケラ!

誰?廊下の柱の陰から現れたのは、女の子が五人!
「何してるの?」
皆、同じクラスの子、陸上部じゃないの?この人たち。どうして今、こんなところにいるの・・・立ちすくんでいる私に、一人が近づいてきて。
「あんた、いつも何かっこつけんの?」
もう一人が離れたところから。
「先生のペットみたいに!何かっこつけてんの、あんた!」
膝の後ろを不意打ちで蹴られて。
「!」
言葉も出ない間に、後ろ向きに倒されて。起き上がる間もないまま、
「これ以上、かっこつけてたら、もっとひどい目に遭わせるから。覚えときな、優等生!」

 

コメント (5)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その10

2014-10-24 19:51:31 | 時は管理教育「この時代を」
 ユウちゃん、部活もやめたの?制服も着てこない上に・・・キョウコちゃんの話を聞いて、ショックを受けているマコト。ユウちゃんとは、小学校で出会って・・・そう、転校してきて、クラス替えがあって、友達がなかった私に、初めて声をかけてくれたのがユウちゃん。
『ドッヂボールやろう!』
ちょっと男の子みたいだけど、すごく元気で活発で。人に馴染みにくい私を、ぐいぐい引っ張ってくれて。でも、心臓が悪いキョウコちゃんのために、教室で遊べることを考えてくれたり、とても優しいところもあって。中学に入ってからは、規則を守らないって腹立ててばっかり、喧嘩ばっかりだけど、本当は・・・
 ところでユウちゃん、教室にいないけど、学校には来てるのかな?一時間目、数学。
「テストを返します。」
え!もう返ってくるの?淡々と答案を返すタシロ先生。クラスメイトの反応はいろいろ。
「アヤセ。」
点数は、百点。
 同じ頃、職員室。ドアの向こうで、母親一人と校長、教頭、女性担任。
「この度は本当に申し訳ありません。何度も言い聞かせていますけど、本人はもう・・・」
泣きそうな声で話すユウの母親に、担任のクロダ先生、
「わかりました。とりあえず、学校としましては、授業はジャージのままでもとりあえず受けさせることにしました。中間テストは別室で受けてもらいました。」
それは、中間テストまでの対応。今日からはまた、別室で自習させている。理由は言うまでもない。
『陸上部をやめる!』
 本人を問い詰めても、反発されるだけだろう。子どものことは、保護者が一番知っている。
「部活をやめるってことは、親の私たちもびっくりしました。まさか部活をやめたいっていうなんて・・・何かあったの?って聞いても、ユウは何も答えてくれませんし。」
要するに、いじめ?
「部活動ではそのようなこと、起こるはずないですけどね。学校としても、いじめにあう子が出ないように全員部活動を義務付けてるわけですし。」
 放課後。今日は吹奏楽部も茶道部も活動がある。
「途中まで行こうか。」
キョウコちゃんと途中まで一緒に・・・別れて、マコトは音楽室へ。
「よろしくお願いします。」
きちんと挨拶もしてるのに。誰からも返事はなし。
「はい!今日は全員合わせます!」
だけど、私。だけど・・・私、入部してから一回も、楽譜もらったことない。


  




コメント (7)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その9

2014-10-23 19:31:24 | 時は管理教育「この時代を」
マコトちゃんは、本当にいい子です。
勉強もよくできるし。
学校やクラスの役目も、進んで引き受けて。
掃除も一生懸命やってくれていますよ。

 そうよ、私は何も間違っちゃいない。先生も、お父さんもお母さんも、私をほめてるじゃない。だから、何一つ間違っちゃいない。また、月曜日。出発時間が、お父さんと一緒になった。
「あなた・・・」
「うん。今日から出張でね。こっちからのほうが近いから。しかし、暑いな。」
「そろそろ半袖、送るわ。」
「そうだな。頼むよ。今日も半袖でいいぐらいだけどな。まだ五月だし、辛抱するよ。」
お父さんの言う通り。学校も夏服は六月一日から。それまでは冬服。
「では、行ってきます。」
 ブロロロロ・・・一台、住宅街を走る車。キョウコの送り迎えもすっかり日課になったわ。
「キョウコ、大丈夫?」
今年は早く暑くなって。キョウコ、冬服の制服じゃ暑くてつらそうなのよ。
「今だけでも、ブレザー脱いでおいたら?お母さん、また学校に言おうか?」
「ううん、辛抱する。もうちょっとだし。」
「・・・いいの?ほんとに!学校ももうちょっと柔軟になってくれないとね!」
 一年一組の教室。マコト、到着。あ、キョウコちゃん来てる。
「おはよう!」
キョウコちゃん、しんどいのかな?顔も赤いし。
「大丈夫?」
「うん。」
だけど、規則だから。キョウコちゃんだって辛抱してるのに!そこへ、キョウコちゃんがこっそり耳打ちしてきた。
「あのさ、マコトちゃん、ユウちゃん、陸上部辞めたの知ってる?」
「え?」
ユウちゃん・・・今、ここにはいない。学校に来てないの?違う部屋にいるの?だいたい部活って、一年で決めたら三年間続けなくちゃいけないって言われてたでしょ?
 何て言うんだろう?頭の中が真っ白。ベルが鳴ったのも気づかなくて、
「おい!朝礼!日直は誰だ?今日は服装検査!終わったら廊下に整列!」
クロダ先生の声で我に返った。






コメント (3)

時は管理教育「この時代を」第4章 マコトの誠実 その8

2014-10-22 19:06:29 | 時は管理教育「この時代を」
 マンションのリビング。まだお昼にも早すぎる時間。
「テスト、お疲れ様。終わってよかったわね。でも、ユウちゃん、心配ね。」
「ユウちゃんなんかどうでもいい!」
「ちょっと!そんなに冷たいの?マコトは!友達を心配するとか、しないの?」
心配とかじゃない。校則破ったんだから、ユウちゃんが悪いじゃない?でも・・・帰りにキョウコちゃんから言われたこと。
『もうちょっと、柔軟に生きたほうがいいよ。』
どういう意味なの?
 言われたことはその通りに守れ。自分の意見なんか通るところじゃないよ、社会っていうのは。上から言われたことだけ、聞いていたらいいんだ・・・私はお父さんから、ずっとそう聞かされてきた。考えたら、キョウコちゃんのおうちはお商売だし、ユウちゃんとこも公務員さんだし。こういうことはわからないのかもしれないな。
 翌日、日曜日。
「ただいま。」
お父さんが、単身赴任先から帰ってきた。
「おかえり!」
おかえりおかえり。どう?一人で不便でしょ。ちょっと痩せた?いやいや・・・うれしそうなお母さん。私も、うれしくないわけじゃない。だって離れて暮らしてるんだもん。
「マコト、元気にしてたか?ちょっと、背が伸びたか?」
そうね。今は身長が伸びてるかな?だけど、まだ女の子の体にはなってきてないのよね。
 お昼ご飯は、外に食べに行くことになった。どこがいい?そうね、あそこのレストラン、どうかしら?相談しながら、お出かけの準備。お父さんが驚いて、
「そろそろ出かけよう。・・・あれ?マコト、制服?」
「当たり前でしょ?学校の規則!」
フォローするようにお母さんが、
「フフフ。マコトはとてもまじめなのよ。」
 校則はきちんと守り、勉強も部活も休まず取り組んで。レストランを目指して歩く親子三人。
「マコト、なかなか優秀じゃないか。」
「そうね、心配したけど、本当に良かったわ。」
「そうだな、何一つ心配ないな。離れて暮らしてるし、マコトのことを心配しない日はないよ。それだけに、よかった。」

 

コメント (4)