チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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時は管理教育「この時代を」第8章 戦いの始まり その1

2014-12-30 16:10:11 | 時は管理教育「この時代を」
 コケコッコー!近所の鶏の声が聞こえる。まだ、太陽もギラギラ、草木も青々の九月一日。
「おはよう。キョウコ。」
そもそも朝が早いツチヤキョウコの家に、夏休みボケなんて言葉はない。すでに、制服に着替えているキョウコ。お母さんが、
「久しぶりに学校ね。」
「でも、週に一回は部活で行ってたから。」
「そうね。キョウコ、制服、暑くない?」
「うん・・・」
正直に言うと暑い。制服って夏は暑く、冬は寒くできてるって皆も言ってる。だから、心臓病って事情のある私以外にもそう感じている人はいると思う。

『校則を変えよう!』

 その言葉の主、ユウ。自室で荷物の確認をしながら。あーあ、今日から学校だよ。・・・。壁にお母さんが架けた、制服に背を向けて、夏の体操服に着替える。朝ごはんを食べて、
「ユウ!またそんな格好して!」
「制服を着ろ!制服を!」
お父さんもお母さんも!私、何を言われてもこれで行くからね!こんなこと間違ってる!私が、学校を変えてやる!
 同じデザインの靴に制服、同じ長さの頭髪、揃って丸刈りの男の子たち。同じに揃えられた人間の塊が、どんどん膨らんでいく。正門では、やっぱり服装検査やっている。わ!何?あの先生、ニシダ先生。確か、国語の先生で二年生の担任。金属バット持ってる!
「お前!夏休みあったのに何やってたんだ!頭を刈ってこんか!頭を!」
少し髪が伸びたままの男の子の頭をつかんで引きずり回し、次の女の子、あの、生まれつき髪が茶色い、いつもの子だ。
「黒く染めて来い!黒く!」
「だから、生まれつきなんです!証明書も出しています!」
何を言っても胸ぐらをつかみ、ゆすり続ける先生。あんまりだよ、そんなの酷過ぎるよ!証明書も提出してるんでしょ?
 新学期になっても、学校指定とはいえ体操服登校を貫いてきた私。絶対に殴られる。それは覚悟してる。先生、
「タカクラ、制服は?」
「・・・・。知りません。」
「知らないはずないだろ?制服は!」
バシィィィ!ビンタをはられる。だけど、こんなことでは私は負けない!
「学校がここまで個人的な問題に口出しするって、おかしすぎないですか!」
絶句する先生。周りにいる生徒の注目が集まってるのを感じながら。
「偉そうにばっかり言うな!」
ユウはその場で、先生二人に滅多打ちにされた。




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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その25

2014-12-28 19:14:43 | 時は管理教育「この時代を」
 荷物に手を取られながら、夕方の街を駆けていくユウ。わかってない!大人って何もわかってない!部活なんて、皆が楽しいと思ってやってないのに!朝も練習、昼も練習、夜も練習。
『おい!あと十周走れ!』
ひたすらしごかれて、しごかれて。私は学校指定の靴のせいで大けが。あと少しで二度とは知れない足になるところだった。あんなの、健全な心身の育成のためじゃない!

部活動は、勝つためのもの。

部活なんて、試合に勝つためのものなんだよ!皆が皆、その道で生きていけるわけじゃないのに!
 息が切れてきたから、走るのをやめて歩く。右手に持ってる大きな紙袋。中身は学校指定の肌着。肌着だけでこの量だよ?ふざけてる!お母さん、私が小学校の時はデパートのバーゲンで、必要な一枚か二枚だけ買って。それなのに、中学は校則のせいでこれだけ買わせる!
『真っ白で柄なしってお店にないのよね。学校で売ってくれるから助かるわ。』
さっき、お母さんが言ってたこと。それって、学校があえて売っていないもの指定して、学校で買わせるように仕向けてるだけじゃない?制服の時も思ったけど、お母さん、一万円札たくさん出してた。高いものを大量に買わせるなんて!
 私が家に帰ってきて、一五分ほどしてお母さんが帰ってきた。
「ただいま。ちょっと、ユウ?靴をそろえなさい。」
「あ、ごめんなさい。」
玄関まで直しに行く。
「もう!いきなり走り出して。いくら腹が立ったからって、感情をストレースに出すのは良くないわよ。」
 腹が立ったんじゃなくて、正義感。お母さん、中学はおかしいって思わないのかな?
「あら?こんな時間ね。夕ご飯作らなくちゃね。ユウ、手伝ってくれる?」
野菜を切ったり、手伝いながら・・・校則を変えなくちゃ。何としても変えなくちゃ!あんなの、皆を殺していく!
『先生がね、規則だからブレザーは着ないで過ごしなさいって。』
キョウコちゃんなんか、直で命に係わるんだよ!それに、私も・・・型にはまれなんて、間違ってる!
 一日一日、夏休み終了のカウントダウン。とうとう、九月一日。アヤセマコトの家。キッチンで朝食の準備をする母親。マコトも今日から新学期ね。今日はまだ、お弁当がないから楽だわ。あら?マコト、起きてこないわね。いつもはきっちり起きてくるのに。夏休みだったから、リズムが狂ったのかな?起こしに行きましょう。ドアをノック。
「マコト、マコト!」
反応なし。ドアを開ける。
「マコト!」
どうしたの!こんな時間なのに、まだベッドで横になってるって!


 
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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その24

2014-12-26 19:54:28 | 時は管理教育「この時代を」
 ツクツクホウシの鳴き声・・・夏休みもあと一週間で終わる。新学期に先駆けて、今日は中学校で指定の肌着や学用品の販売がある。娘を連れて出かける母親。全く、うちのユウは!本当なら学校に行くんだから制服でないといけないのに!一人、私服で堂々と歩いている。それも、男の子みたいな恰好で。本当にこの子は、どこまで自分を押し通すのかしら?
「こんなこと、学校が間違ってる!下着まで学校指定なんて!」
「ユウ、そうでもしないとね、学校がもうからないでしょ?学校だってお金がいるもの。」
「それならさ、こんな、ちまちました商売しないで、ドカンとお金持ちに寄付してもらったらいいじゃない!」
だいたい、制服は経済的に貧しい生徒に配慮するためにあるって言ってたのに、それじゃ、お金のない人から巻き上げてることになるじゃない?矛盾ばっかり!
 久しぶりに見た中学校。正門から入ってすぐの通路で、業者さんがお店を出していた。
「キョウコちゃんのお父さんは来られてないわね。」
今日は、体操服の販売はないからね。通学靴に体育館用の上靴に、靴下にパンツにブラジャーまで。全部、柄なしの真っ白なもの。
「男の子はこちら、女の子はあちらです。」
たくさんのお母さんが買いだめしている。
「女の子なんだけど、うちの子最近、伸び盛りで。」
こんな話を聞くと、真剣に羨ましい。
「ユウは・・・まず、靴下はもうちょっといるわよね。ブラジャーもいるでしょ?」
「いらない!」
「何言ってるの!みっともないわよ!・・・すみません、靴下を二パック、ブラジャーを三枚ください。あと、パンツも・・・」
 紙袋に入れてもらった商品を持って、母親と学校を出るユウ。
「必要なものは、学校で売ってくれるし。お店を探さなくていいから助かるわ。」
お母さん、能天気に言ってるけど、結局高いものかわされてるだけな気がする。靴下なんて一足百円でも買えるところあるよ。一番嫌なのは、ブラジャー・・・他のお母さんたち、あまり買ってなかったな。皆は身長が伸びてるのに、私だけ、こんなところばっかり大きくなって!
 皆と同じ服を着るってやっぱり嫌だよ。自分の体格が、どれだけ皆と違うかわかりすぎてしまうし。外の歩道では、サッカー部と陸上部がランニングをしている。
「ユウ、見てごらんなさい?みんな一生懸命してるでしょ?中学の間は、ああして部活に打ち込むべきものなの。そうでないと・・・」
「どうして?部活してたら何で健全って言えるの?お母さん知らないだけだよ!」
「ユウ!」
走り出す背中、泣いてるいるようにも見えた。
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時は管理教育「この時代を」第6章 真夏の子どもたち その23

2014-12-25 11:21:35 | 時は管理教育「この時代を」
 夕方、ユウちゃんが帰って行って、それからずっと考え込んでいる。食事の手伝いの間も夕食中も。そうだよね、人間は一人ひとり、違っている。キョウコちゃん、病気も個性だよ。病院の先生もいつも言ってる。私は心臓病を持っている。それが、皆と違うところ。薬や手術をしても、皆と同じように、運動したり寒いところで過ごしたりはできない。だけど、それは悪いってことにはならないよね?
「キョウコ、どうしたの?」
食事中、お母さんに声をかけられた。
「え?何でもないよ?」
そうだよ。この社会にはいろんな人がいる。いろんな人が一緒に生きている。だけど、皆が同じになって生きてるわけじゃない。
『それなのに、中学生はみんな同じじゃないといけないってって。そんなの可笑しすぎるでしょ?』
ユウちゃんの言う通り。どう考えても、おかしいのは学校のほうだよ。確かに、校則を変えなくちゃ。何だかの方法で。
 男子は男子として同じに。女子は女子として同じに。中学生は中学生として皆同じに。・・・第一中学校、会議室。これから八月定例会議。学内で生徒たちが毎日部活に来ているように、教職員も忙しく働いている。
「やれやれ。子どもは休みでも、こっちは仕事だからな。」
「部活の指導ももっといきたいんですけどね。年休も取りたいですし。」
「ま、部活は放っておいて大丈夫だよ。あれをやらしておけば、問題はおきんよ。」 
定刻となり、
「先生方、お疲れ様です。これから八月定例会議を始めたいと思います。」
 この学校の会議は、普段からあっさりしたものだけど。
「では、九月の月間予定からお話します。一日に始業式、月末には体育祭、また、十月には文化祭がありますので、各ホームルームでは、それに向けた準備をはじめさせてください。」
一学期が終わって新入生もすっかり中学生になるはずなのに。
「続いては、気にかかる生徒の指導についてです。」
一年一組のタカクラユウ。あいつの話は必ず会議に出る。ジャージ登校を貫き、陸上部も抜け出し。性同一性障害なんですか?いや、それは言車も判断できませんと。じゃあ、何だあいつは?
「で、新学期もジャージできたら、どうしますか?」
「・・・。授業は教室で受けさせましょう。教育を受ける権利の侵害になりますので。」
「権利ばっかり主張するなって言っても、こればっかりは仕方ないですよね。」
「うん。しかしなぁ。こういうややこしいのは困るんだよな。権利ばっかり主張するなって教えてる身としてさ。」
 雑談みたいな会議を軌道修正して、
「先生方、新学期から、校則違反者への指導はますます厳しくお願いします。学校の秩序が乱れませんよう。」
 
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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その22

2014-12-23 20:22:32 | 時は管理教育「この時代を」
 チリリリリン!住宅街を走るユウの自転車。お盆も終わって夏休みもあと十日。だけどまだまだ暑いね!キョウコちゃんの家に到着。お店の邪魔にならないところに、自転車を止めさせてもらって。
「こんにちは!」
おうちのほうへ。キョウコちゃんが出迎えてくれて、
「ユウちゃん、こんにちは!」
「キョウコちゃん!よかった、元気そうで。」
田舎のお土産を渡そうと思ったら、キョウコちゃん、熱が出たって聞いたから。大変だったね。ううん、よくあることよ。
 擦りガラスの向こうで、キョウコちゃんがお茶の準備をしてくれているのがわかる。キョウコちゃんは本当にすごい。すごく行き届いて、何でもよく気が付いて。
「お待たせ!」
「ありがとう、いただきます。」
冷たい麦茶に、何でもないお菓子でもきれいに盛り付けてある。
「今日ね、お父さんもお母さんもお商売の用事でいないんだ。お兄ちゃんも部活だし・・・そうだ、ユウちゃん、宿題終わった?」
「うん、あとは読書感想文だけ。」
 中学生になって、勉強が特別厳しくなったとは思わない。変わったのは規則の面。
「小学校も規則はあったけど、中学みたいに理不尽じゃなかったよね。一人一人に配慮してたし。」
だから、キョウコちゃんもごく普通の小学校生活を送れた。それが、中学校ときたら、何の配慮もしないで。
「いや、何もしてくれてないことはないよ。」
と、キョウコちゃん。
「キョウコちゃん、無理してない?」
 キョウコちゃんが学校の無配慮のせいで苦しんでるの、よく知ってるから。そして、制服部活動を完全拒否した私。
「ユウちゃん。私は、それで正解だと思うよ。」
「そう?」
「だって、あんなの誰が考えてもおかしいもん。女の子は全員スカートって。スカート履いてない先生も多いじゃない。うちのお兄ちゃんだけど、本当はもうサッカーはできないってお医者さんに言われてるんだよ。」
これは初耳だった。中学ですでに悪くしてたんだって。要するに、部活で酷使して体を壊した。
 体を壊したら何の意味もない。心が壊れたら、それこそおしまい。
「人間には個性があるよね?皆がすんなり受け入れられることって多くないと思うんだ。私、制服が皆に受け入れられる服って思わない。制服にしなくても、地味な人は地味だよね?」
これに対し、キョウコちゃんが、
「そうだよね。制服を嫌がる人を、どうして個性ってしてしまうのかな?型にはまらない人を悪い人っていうのもおかしいよね。」
 そして、マコトちゃんのこと。悪口じゃないよ、この頃様子がおかしい。キョウコちゃんが、
「この間お土産もらった時、びっくりしたよ。あんな顔のマコトちゃん初めて。心配だよね。塾には来てるの?」
真面目で何事にも忠実。それがマコトちゃんの長所だけど。
「何があったか知らないけど、マコトちゃん、相当につらそうだよ!」
何とかしないと。学校のせいで、皆つぶれてしまう。
「ねえ、キョウコちゃん、校則を変えない?」
「え?そんなのできるの?」
「わからないよ。だけど、できそうなことから、私たちから、やってみようよ!」

 
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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その21

2014-12-22 19:01:16 | 時は管理教育「この時代を」
 アヤセマコトのマンション。
「部屋で勉強してくる。」
椅子を立つ制服姿のマコト。お母さん、コーヒーのマグを置いて、びっくりしたように立ち上がって、
「え?帰ってきたばっかりなのに?お茶ぐらい飲まないの?」
今さっき、吹奏楽部の合宿から帰ってきたんだ。三泊四日の合宿で・・・
 バタン!旅行バッグも部屋に引き込む。ここで片づけてしまおう。これは洗濯物、洗面用具、別に、荷物にトラブルがあったわけじゃない。話したくないだけ。合宿のことを。朝から晩まで、食事の時間以外はおおよそ練習なんだけど、練習なんだけど。
『ランニング、合宿の、この建物の周囲を三週、始め!』
いつもの部活の時間と同じように、この活動以外は私はそこにいない状態で。
練習の群れの後ろ、とりあえず、バイオリンを出して。楽譜をもらえてないから、ひたすらバイオリンの人の演奏を聞いて、音を合わせて弾いていた。何回も聴いていたら、楽譜なんかなくても覚えられるもん。だけど・・・
『こら!バイオリン!やり直し!』
指導の先生、怒りっぱなしだった。でも、私は周り人から特に何も言われず。
 食事の時間も、お風呂も、寝る前の部屋での時間も。誰とも話さなかった。それは気楽だったと言えばそうだけど、
『アハハハハ!』
レクリエーションの時間も私は蚊帳の外。別に、それでいいんだけど。
『マコト、友達は?』
『部活は楽しくないの?』
大人は絶対に聞く。聞いてくる。
 制服も、洗濯に回さなくちゃ。合宿の洗濯物と一緒に持って、さっと洗濯場へ行って、また部屋に戻った。お母さんと顔を合わせたら、絶対にいろいろ聞かれるから。本棚に体をぶつけた時、
『ガタン!』
落ちてきたものは、この間、お母さんの実家に行った時に、部活の皆にあげなさいって持たせてもらった、お菓子の缶。結局、渡せないままなんだ。どうしよう、本当にどうしよう・・・・
 トントン!ドアをノックする音。何?
「はい。」
お母さんはドア越しに、
「マコト。明後日から、お父さんの田舎に行くから。その準備もしておきなさいね。」
「はい、わかった。」
 
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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その20

2014-12-20 18:52:03 | 時は管理教育「この時代を」
 自室のベッドで休んでいるキョウコ。子ども部屋にエアコンは入れないって方針だったらしいけど、心臓病の私のために特別、お父さんとお母さんが取り付けてくれた。だから、こんな夏の昼間でも快適。今、熱は何度かな?電子体温計に手を伸ばす。ガチャ!
「キョウコ、具合はどう?」
お母さんだ。
「ありがとう。今、熱を測ってる。」
ピピピ、ピピピ。三十七度五分。
「まだ平熱には戻ってないわね。ま、お茶飲みなさいよ。」
お母さん、ガラスボトルの麦茶をコップに注いでくれた。水分補給はお医者さんから言われてるから、普段からたくさん目に飲んでいるんだけど。今日は熱があるから、もっと。
 昨日、週に一回の茶道部の練習に行ってて、その時からおかしいと思ってたら。お母さんが迎えに来てくれた時に、熱だって気が付いて。
「お昼ご飯はどう?食べられそう?まだ時間があるし、そのころにもう一回声かけるわ。ゆっくり休みなさいね。」
麦茶を置いて、お母さんは出て行った。乱れた髪を手で整えて、もう一度横になる。心臓が悪いとね、感染にも弱くって。こうして熱を出すこともよくあることなの。
 ビニール張りの天井を見つめている・・・お兄ちゃんは今日も朝から高校のサッカー部。マコトちゃんも吹奏楽部。夏休み中も皆、毎日毎日部活に行っている。中学に入った頃は、部活に打ち込めない自分が情けないと思ってたけど、中学校の現実を見てからは、むしろ、あんなに部活部活っておかしいっていう気持ちになってきて。
『私、陸上部辞める!』
ユウちゃん、本当にそれで正解だよ。うちのお兄ちゃんも、もう足を痛めてしまって、お医者さんからサッカーを辞めるように言われてるぐらいだから。せっかく健康に生まれてきて、部活で体を壊させられるなんて、おかしすぎるよ。
 文化系だって、似たようなもんだと思う。もっとやりたいこと、やらなくちゃいけないこと、皆あるのに。そうだ、マコトちゃん。この間、お土産もらった時、変な顔してた。あれから会ってないけど、どうしてるのかな?

 
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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その19

2014-12-18 19:15:29 | 時は管理教育「この時代を」
 買い物したものを持って、おばあちゃんと一緒に家まで歩いて帰る。その後は、お母さんも一緒に三人で夕食を作って、
「うん!おいしい!ユウちゃん、お料理も上手だな!」
おじいちゃんも喜んでくれて。そして、寝る時間。大きい和室をふすまで区切って、お父さんはその向こうに、私はお母さんと同じ部屋に。
「アハハハハ!ユウ、おばあちゃん、そんなこと言ってたの?」
「うん。」
「アハハハハ、そんな話、始めて聞いたわ。」
横になったまま、大笑いしているお母さん。ユウ、布団の上で寝返りを打って、
「そうだったの?でもさ、学校って、おばあちゃんの時代から変な校則あったんだね。」
「そうね。でも、おばあちゃん、やめておいてほしいわ。孫に自分のやんちゃ話するの。」
「ううん。」
 常夜灯だけが点る和室。お母さん、お父さんの寝息が聞こえる。ユウ、一人天井を仰いで・・・おばあちゃんが学校行ってた頃って、まだ、第二次大戦がはじまる前だから、女学校。昔も今も、学校って何も変わってないってことなのかな?
 キョウコの家。自営業の家って、本当に忙しい。お店を閉めたら、今日の売り上げを計算して・・・
「えーと、今、これ、発注掛けてるんだったか?」
「はい。あそこの事務所から注文あった分ね。私が電話しておいたわよ。」
「そうか、すまん。」
やっとお店の仕事を終えて、時計を見たら夜の十一時。主人、伸びをして、
「あー。終わった終わった。お前もお疲れさん。いつも苦労かける。」
「いいえ。私は大丈夫よ。それより、コウスケ、遅いわね。」
 いつもより遅いな。大丈夫かしら?・・・心配していたそこへ、玄関が開く音。
「ただいま。」
コウスケ、やっと帰ってきた。玄関への出迎えは母親の私が行く。
「お帰り。遅かったわね。」
サッカー部の練習で、夏休みでも朝早くから夜は九時まで学校で練習している。いつにも増して疲れてる様子のコウスケ。
「今日はどうしたの?」
「いや、ちょっと話し合いがあって・・・あの、食べるものある?」
あるわよ・・・受け取ったお弁当箱を持って、急いで台所へ、冷蔵庫に夕食の残りとご飯がある。がつがつとお箸をすすめるコウスケ。こんなことが毎日。体壊さないかしら?親として心配だわ。
「ねえ、コウスケ。一日ぐらい、部活休めないの?」
「無理。」
「そんな・・・体壊すわよ。」
部活ばっかりやってたって、食べていけるわけじゃないわよ。うちみたいに自営業なら、跡を継がせるってこともできるけど。
「お母さん、キョウコは?」
「ん?キョウコね、夕方から熱出したのよ。」




 

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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その18

2014-12-16 19:51:44 | 時は管理教育「この時代を」
 美容室から帰ってきたユウ。あらあら。ずいぶん短くしたのね。うん、伸びすぎてたから。まあいいけど、口だけは優しいお母さんの視線が突き刺さる。それはそれとして、明日からお父さんもお盆休み。一家三人で泊りがけで、お母さんのお里帰りに行くから、
「ユウも、ちゃんと荷物用意しなさいね。忘れても大丈夫だけど、困ることもあるから。」
「わかってる!」
旅行の用意とか、そんなことは一人でできる。旅行鞄を出して、着替えにシャンプーも・・・あーあ。一方では自主性なんてない、一方では自分でやれ。どっちなのか。
 次の日、車に荷物とお土産を積み込んで、
「さ、行くぞ。」
お父さんの運転で出発。お母さんの実家はここから二時間ぐらい。だから、お正月とかお盆とかにしか会えない。久しぶりだな、嬉しいな。ついに高速道路。
「わー!すごい飛ばしてる!お父さん、今何キロぐらい?」
「九十キロだよ。」
その、うちの車を追い越していく車もたくさん。高速道路って、車がビュンビュン走るから大好き!予定通り、お母さんの実家に到着。おじいちゃんとおばあちゃん!
「おかえり!よく来たね!」
 お母さんの実家に行ったら、私はいつも、おばあちゃんの手伝いをしている。で、今日は近所へ日用の買い物のお手伝い。
「ありがとうね、ユウちゃん。」
「ううん、どういたしまして。」
「フフフ。ユウちゃん、しっかりしたわね。背も高くなって。」
私のほうを見るおばあちゃん。いつの間にか、おばあちゃんより背が高くなってた。
「まだ、お母さんよりは小さいよ。クラスでも背の順で前のほう。」
 ショッピングモールのフードコートで、おばあちゃんがソフトクリームをごちそうしてくれた。
「ここの、おいしいでしょう。」
「うん!」
大きいテレビでは高校野球の中継。
「ねえ、おばあちゃん。うちの中学、校則校則っておかしすぎてさ。」
「うんうん!おばあちゃんもテレビで聞いてるよ。よそのお孫さんのお話も。」
おばあちゃんのほうがわかってくれそう。私もついつい口調が荒くなる。
「毎週服装検査と持ち物検査があって、制服とか髪とか、校則と一ミリくるってたら先生に死ぬほど殴られるんだよ!私の友達なんか、病気で必要な薬を取り上げられて。部活だって朝から晩まで。あんなの精神論、勝つためだけ!だから私、陸上部辞めた。」
静かに聞いてくれているおばあちゃん。
「ユウちゃんの言う事、よくわかるわ。ユウちゃんの考えのほうが正しいと思うわよ。スポーツだって、体を壊したら意味ないものね。おばあちゃんもね、女学校の時、髪は伸ばして、二つに分けて三つ編みでお下げにしないといけないって規則があってね。でも、夏は暑いでしょ?短く切っていったのよ。そうしたら、先生に怒られてね。」
アハハハハハ!

 
 
 
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時は管理教育「この時代を」第7章 真夏の子どもたち その17

2014-12-15 09:58:58 | 時は管理教育「この時代を」
 もうすぐお盆になるし。近所のお店もお休みになるから、今のうちに行ってしまう。
「はい。美容室代ね。」
「ありがとう。」
 自転車に乗って少し離れた商店街へ。新しい建物だけど、ここのおじさんとおばさんにはもう、小さい時からお世話になってる。ドアを開けて、
「こんにちは。」
「はーい、いらっしゃい!あ、タカクラさんね。大きくなったね。いつも通りでいいかな?」
 すっぽりかぶるビニールエプロンをつけてもらって、頭をシャワーで流してもらって。大きい鏡の前に掛けさせてもらうと、
「だいぶ伸びたね。」
本当にその通り。前髪も目に入りそう、耳もすっかりかぶってる。後ろも多分・・・
「ちょっと短めにしてください。」
「わかりました!」
チョキチョキチョキ・・・
 別にね、髪形ってこだわってない。短いほうが楽だから、かな?いや、自分らしいっていうほうがあってるのかも。大人は怒るけど。
『ユウちゃんって男の子?』
『えー!そんなこといったら、ユウちゃん傷つくよ!』
『あ、ごめん。』
私、小さい時から髪を伸ばしたことないんだ。
「タカクラさん。」
うとうとしていたのに、美容師さんのおばさんに声を変えかけられて目が覚めた。
「第一中学って、校則厳しいの?」
「そうですね。変に細かすぎますよね。」
「やっぱりそうなのね。ここに来る子、皆、だいたい同じこと言うわ。」
だいたいって、たぶんそれは、全員が変だと思ってるってことだと思う。
「ありがとう!」
切るだけだから早いね。四十分で終わった。
 自転車に乗ると、切りたての整った髪の隙間を、すいすいと風が通っていく。そうそう、男の子たちなんて、全員丸刈りだもんね。あんなのもっとかわいそうだよ。髪だって無駄に生えてるわけじゃないのに。
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