チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その43

2012-08-31 19:01:58 | 福祉の現場から「希望の樹」
 雇用関係は、ある程度、雇う方の感情を入れても問題ないのかもしれないけど、利用者さんに対しては・・・
「ああーううー」
どんなに大変でも、手がかかっても、引き受けますって言った以上、
「ゲホン!ゲホン!」
「あ、ごめん!」
たとえ、完ぺきじゃなくても、その命を絶対安全にお預かりしなけりゃいけないんじゃないの?それを気に入らないという理由で、因縁をつけて追い出そうなんて。
 出て行けって言われる人間の気持ち、わかる?何も悪い事してないのに、追いだされる人間の気持ち、わかる?
『退学していただきます。』
うう・・・!ついさっきの事みたいに、眼前に現れる風景。
「どうしたの?タマキちゃん。」
「あ、いえ、大丈夫です。すみません。」
所長さんは一体、誰に、どんな人にここにいてほしいんだろう?
 あっという間に七月。
「今日は、七夕の短冊を飾る、笹を取りに行きましょう。」
所長さんの提案だ。この辺は山だし。竹やぶはいくらでもあるから。送迎車に、同行可能な利用者さんも乗ってもらって、レッツゴー!・・・短冊に皆の願い、叶うといいね。
「えーと、会議の時にお話してました、モリシタさんの自閉症勉強会ですが、七月十二日の夕方六時から行います。」
 その当日。暮れかけの時間、施設に集まるスタッフさん。
「こんばんは、お邪魔します。」
「ヨウスケがお世話になってる施設の人よ。一緒に聞きたいって来られたのよ。」
そこへ、ご主人のソウタ先生もやってきて。
「こんばんは!」
「やあ、こんばんは。今日はお手伝いで。」
会場は畳スペース。そこのテレビをプロジェクターにするべく、パソコンとテレビをつないでいる。今日の講師、モリシタさんも到着。資料を配るとか、お茶を出すとか手伝って、
「それでは時間ですので、始めます。モリシタさん、よろしくお願いします。」
パチパチパチパチパチ!
 ずっと自閉症支援に関わってきた人だって聞いてるけど、どんな話が出てくるのかな?パラパラと資料をめくる。
「では始めに、自閉症の定義からお話しさせていただきます。」
熱心にメモを取る人、ただひたすら聞いてる人。私にとっては、この辺はもう知ってる話だな。
「自閉症の方に有効なのは、視覚的支援です。しかし、これは何も特別な事ではなく、健常者だって利用してるものです。トイレに男女の表示があったり、カレンダーやスケジュール帳を使ったり・・・」
なるほど。視覚支援を特別だと思う事はないわけだ。
 続いて、モリシタさんの働かれてる施設で、実際行われてる支援の紹介。そして、
「それでは最後に。」
支援のプロとしての意識を持て。自信がないのなら、辞める事も、転職も悪い事ではない・・・
 勉強会終了。
「お疲れさまでした!」
急にざわつく施設。あー、終わった終わった。勉強になりましたね。まあ、良かったですね。向こうの方で、サカキさんとモリシタさん、所長さんが何やら話をしている。・・・何だろう?あまり穏やかな感じじゃないな。
「あんたの思う通りにはしない!」
最後に、モリシタさんに向かって吐き出した、所長さんの言葉にびっくりしたのは言うまでもなかった。




 

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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その42

2012-08-30 19:51:04 | 福祉の現場から「希望の樹」
 もう!その話ばっかりかよ!紙とサカキさん、交互に視線を動かす。他の利用者さんの事は、放ったらかしみたい!
「彼女の支援だけでなく、今後のためにもなりますし、一度、ここで自閉症の勉強会をやりたいと思います。」
所長さんが続いて、
「講師は、サカキさんのお知り合いで、前働いてられたところの同僚だったモリシタさん、皆さんもご存じだと思います。日時はまた打ち合わせしてお知らせしますので、よろしくお願いします。」
 これにて、終了。他にもいろんな議題が出て、こんな時間になってしまった。失礼します・・・順次、解散していく。タカモリさんはお子さんの事があるから途中で抜けてるし、同じ方向に帰るのはサガワさんだけか。
「一緒に行きましょう!」
向こうから声をかけられた。夜道は怖いから、これで安心!失礼します!
「お疲れさまでした。」
「タマキさんも、お疲れさま。」
 今日の会議について、感じた事は同じみたいだ。アカリちゃんの支援についても。
「あら、もうこんな時間なのね。」
「そうなんですよ。」
「タマキちゃん、どこかで一緒に食べて帰らない?」
「あ、はい、私は大丈夫ですけど、サガワさん、ご家族は?」
「ううん、うちは主人だけだし、今日は遅くなるって言ってたし、その方がいいのよ。」
それなら!
「どこがいいですか?」
「そうね、この辺にはないし・・・タマキちゃんも私も乗り換えるし、ターミナルまで出ましょう!」
 電車の中で、お母さんに連絡を入れる。
「もうこの時間だと、あそこしかないですけど・・・」
サガワさんと一緒に、ファーストフード店に入った。
「わー、こういうの久しぶり!子供が小さい時には時々来てたけどね。」
子供みたいに嬉しそうなサガワさん。かえって、良かったかな?
 いただきまーす!ここに来るまでの道で、もうさんざん話をしたけど、
「ねえ、タマキちゃん。タカモリさんが、この春に辞めさせられたって話。」
「はい、この間の集会で出てきましたね!」
タカモリさん・・・本当に辛い事だったと思う。でも、どうしてあんな理不尽な?
「タカモリさんはね、ほら、施設には補助金が入るでしょ。その申請の仕事を毎月やってたのよ。それで所長が追いだしたのよ。」
「え!どうして?」
そんな大事な仕事をしてくれてた人を!
「そこよ。施設の収入が全部わかっちゃうでしょ。それで、タカモリさんは都合の悪い人になったのよ。所長にとってね。」
「無茶苦茶ですね。」
「そうでしょ。所長は感情で切って行く人なのよね。」
そんな・・・
「アカリちゃんの事も、所長が気に入らないって言うのが本当じゃないかしら?」
「支援しました、駄目でした、出て行っていただきますって、持っていきたいって事ですか?」
うなづくサガワさん。
「それ、とんでもないじゃないですか!」
つい、大きくなる声。
 ここでカッとなっても、仕方ないか。止めようにも、私達はアルバイト。見守る意外に何もできないのが現実。・・・お疲れさまでした。では、また木曜日に!

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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その41

2012-08-28 19:43:16 | 福祉の現場から「希望の樹」
月曜日。梅雨の晴れ間。
「おはようございます。」
また、サカキさんと所長さんだ。
「今日は彼女が来ますけど。」
「はい、頑張ってみますが。」
「どうですか?今までの感じで。」
「僕はもう、ここでの支援は難しいんじゃないかと思います。」
・・・まさか、追い出しちゃうつもり?そんな馬鹿な!こちらの気配に気づかれたらしい。ちらっとこちらを見た二人は会話を打ち切った。
「おはようございます。」
 はい、DVDですよ。写真カードを見せられてから、お気に入りの童謡タイム。
「ああーううー!」
ここに来たら毎週、いつも同じ童謡、いつも同じスタッフの介助、いつも同じ唐揚げ・・・
 他人の気持ちを正確に読みとるなんて事、相手がどんな人であってもまず、完璧に出来る事じゃない。だけど、タダ一つ確かなのは、こういう人達は、自分が不快な事にはまず辛抱する事はないという事。そう考えると、アカリちゃんは結構満足してるんじゃないだろうか。ここでの過ごしかたに。支援とは、何を持って成功とするのか。これは本当に難しい事だけど、それ以上に大切なのは・・・
 火曜日。
「あれ?こんな時間から?」
「うん、会議。晩御飯は、多分家で食べる!」
夏の明るい夕暮れ時、郊外へ向かう電車はかなり混み合っている。・・・今日はどんな話が飛び出すのかな?今からドキドキしている。
 こんばんは!
五時ちょっと回ったところ。いい時間についたな。
「あ、タマキさん、お疲れ様です。」
ヨシナガさんにサガワさん。今日、勤務の人はまだ、送迎から帰ってないみたいだ。
「こんばんは。お疲れ様です。あ、机のセッティング、やりますね。」
時間通りに、スムーズに始められるように!
 皆、予定通り集まって、五時三十分、
「皆さん、お疲れ様です。これから六月の定例会議を始めたいと思います。」
所長さんの挨拶で会議が始まった。・・・タマキさん、記録をお願いできますか?え?わかりました。
「では、この一ヶ月のヒヤリハットです。」
先月も思ったけどさ、
「ケンタロウ君のベルトが外れてました。タカオ君の服が濡れました。」
どうしてこういう、細かいどうでもいいような事を並べるのかな?聞き洩らさないよう、神経を集中しながらペンを走らせる。

月が明けたらすぐ七夕ですね。梅雨が明けたら・・・そうですね。

「暑くなりますので、利用者さんの水分摂取は今まで以上に気をつけてください。」
「続いては、利用者さんの個別支援です。」
これだ。さて、どうなる?皆の緊張も走る。
「えーと、今回もアカリちゃんの支援を中心にお話ししたいと思います。」
サカキさんが口火を切った。
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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その40

2012-08-27 19:56:11 | 福祉の現場から「希望の樹」
 お昼御飯も順次終わって、連絡帳の記入もぼちぼち。
「あ、すみません、タマキさん。来週火曜日の五時から会議がありますのでよろしくお願いします。」
「はい、ありがとうござます。」
「では、次、一緒に休憩行きましょうか。」
今日はサカタニさんとペアだ。
 休憩室。
「わー、かなり蒸し暑いですね。」
「そうですね、エアコン入れましょう。」
ピ!
「ありがとうございます、お疲れさまでした。」
「お疲れさまでした!」
どんな職場でもそうだけど、休憩時間って物凄く貴重で、いい時間だよな。ここには、嫌な人もいないし。こうしてペアで休憩するから、割と内緒の話でもできちゃう。 
 天井を仰いだまま、サカタニさんが口を開く。
「この時期、調理の人も大変ですよね。」
そうですね!
「ね!湿度が高いと、食中毒の問題が。」
そうそう、梅雨の時期から危ないんだよね。今日の調理は、ヒロノさん・・・
「すごく神経使ってられるでしょうね。何せ、抵抗力のない人達に食べさせるわけじゃないですか。」
「そうですよね。私もね、ちゃんと調理師の資格のある人を雇うべきだって言ってるんですけどね。」
私もそう思う。やっぱり、知識も経験もある人でないと。
「所長はね、お金をケチってしんどくさせてるだけなんです。」
 随分ストレートに言うんだな。でも、確かに、もう少しお金を出してくれたら、うんと楽になる事は多いと思う。
「今度の会議も、やっぱりアカリちゃんの事でしょうかね?」
「そう思いますよ。」
だけど、本当にどうして?いくら聞いても納得できないよ。
「タマキさん、アカリちゃんってどうです?支援のやり易さとして。」
うーん。
「どちらかというと、やり易い人だと思います。」
だって、自傷があるわけでも、他傷があるわけでもない。勝手に動き回って施設を出て行く事もしないし。むしろ、自分の世界を自由に楽しんで過ごしているだけなんだと思う。
「なんかもう、気の毒に思えるんです。自分の幸せを満喫してるのに、何もわかってない他人に勝手にいじくりまわされてるみたいで。」
 どうしよう・・・脳裏に、嫌な風景がフラッシュバックした。反対側に寝返って、ギュッと目を閉じる。アカリちゃんにもっと手間をかけたいのか、手がかかるから楽にやれるようにしようって思ってるのか。
「施設としての、集団活動の輪に入れようとは思ってないみたいですけどね。」
確かに、こういう支援の仕事をしてる人なら、それは思ってないだろう。診断がなくても、アカリちゃんを自閉症だと思ってるとしたら。


 
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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その39

2012-08-26 19:34:30 | 福祉の現場から「希望の樹」
 もう!はっきりしない、気分悪いなぁ!・・・私は何度か深く息をした。落ちつけ落ち着け。他の利用者さんが来る。こんな感情を、引きずっちゃいけない。
「おはようございまーす!」
到着した利用者さんを迎えに行く。
「チサトちゃん、おはよう!」
「おはよー。」
「エミさん、おはようござます。」
「ああうー!」
施設に入ってもらったら、皆さんの荷物をロッカーまで運び、開けて、連絡帳を出す。
 あれ?サカタニさんも出勤?あ、そうか、ヨシナガさんが今日、法事でどうしても来れないって言ってたからだな。
「はーい、朝の会を始めます!」
利用者さんは全員出席。だけど、いつもとはちょっぴり違う、土曜日の風景。
「さてさて、今日は何する?」
「あ、そうそう、タマキ先生。ケータイの壁紙、新しいの入れた。」
首に下げているケータイを開いて、私に見せてくれるチサトちゃん。
「わー、すごい!かわいいね!」
こんな事言ったら何だけど、私とチサトちゃんって、凄くセンスが合うと思う。
「タマキ先生と私、趣味が合うなぁ。」
ハハハハハ。本当、嬉しくなっちゃうね。
 他にも、お出かけ先で取ってきた写真とか、へー、結構あちこち行ってるんだな。母親であるタカモリさんいわく、
『あの子、朝から晩までずっとケータイと仲良しよ。』
まあ、そうなるだろうなと思う。彼女はそれを使いこなして、必要な支援を自分の力で求めたりできるんだから。支援学校の先生も言ってた。
『障害のある子供たちこそ、パソコンやケータイを利用するべきなんだ。』
って。
 ハハハハハ。こちらが盛り上がってる向こうで、重度の利用者さん達は寝かされたままだったり、車椅子のままだったり。
せいぜいテレビをつけてるぐらいで、何だか、こちらと世界が断絶されてる感じがなくもないけど、私はこれでいいんじゃないかって思う。障害の程度が違うと、理解できる事にも差があるし、下手に皆一緒にってやると、誰かが、多くの場合、窓外の軽い人に辛抱させてしまう事になってしまうもの。
 そう、あるがままに。
「ああー。」
体を揺らし、リズムを取るアズサちゃん。
「この動画知ってる?」
ケータイの画面を見せながら、いろいろ教えてくれるチサトちゃん。
「ああー!」
いけない!ヨウスケ君がエミさんを引っ張ってる!
「こら!いけません!ヨウちゃん、謝りなさい!」
「わわー。」
ごめんなさいのポーズ。こんなトラブルがあっても、スタッフがちゃんと止めるんだから。大丈夫、どんな過ごし方でも大丈夫。 


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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その38

2012-08-25 19:25:39 | 福祉の現場から「希望の樹」
所長、またお給料の金額が。明細と違うんですけど。
あ、ごめんなさい。そういう時は、来月修正しますから。

おはようございます!
「あの、すみません。アカリちゃんの支援の事ですが。」
また何かやり合ってる、サカキさんと所長さん。しかもアカリちゃんって、今日来ないし。だいたい、あのスケジュールボードも、普段アカリちゃんがここでやってる事を単純に写真張りしただけのような気がする。
 今日は珍しく、サカキさんと一緒に送迎だ。
「よろしくお願いします。珍しいですね、この組み合わせ。」
「そうですね!」
嬉しそうなサカキさん。だいたい、常勤職員さんが土曜日に出てくるってこと自体珍しいけど。
「タマキさんは、土曜日大丈夫なんですか?」
「はい。私は、お仕事がある方がありがたいんで。」
所詮、週三日の勤務。他の平日と日曜日が空いてるもん。だから、土曜勤務でもどうって事ない。
「僕はね、正直、土曜日は出たくないんです。」
「どうしてですか?」
「いや、バンドの活動してるんですよ。その練習があって。毎週じゃないですけどね。」
へぇ、それは意外!だって、丸坊主だし。まあ、それだと色々ヘアピースとかつけやすいのかな?だけど、正職員なのに、土曜日は出たくないとか!
「ツリーハウスってね、土曜日やる意味あまりない気がするんですよ。」
「え?でも、所長さんがやるって言ってるんでしょ?それがうちのポリシーだって。」
「そうなんですけどね。第一、スタッフが集まらないし。利用者さんにとっても、あまりニーズがないんじゃないかって気がするんですよ。」
その辺は、どうかわからないけど。逆に、土曜日に預かってほしいって親御さんも多いんじゃないかって気もするんだけどね。
 あ、そうだ。
「あの、アカリちゃんの事なんですけど。」
「ん?何ですか?」
こんな事聞いていいのかな?
「あの、彼女って何が問題なんですか?」
どうしよう・・・サカキさん、黙っちゃった。怒られる?
 冷や汗が出そうになった時、サカキさんが口を開いた。
「いや、問題というか。」
「アカリちゃん、何か悪い事しました?」
そうだよ、他の利用者さんの迷惑になってる?
「いえ、彼女があまりにもほったらかしにされてるんで。」
って、いつもムラタさんとアサクラさんがつきっきりじゃない。
「少しでも一人で過ごせるように、手がかからないようにするのが支援じゃないんですか?」
私が支援学校で学んできた事から言えるのは、それだよ。
「まあ、それも含めてですけど。」


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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その37

2012-08-24 19:59:15 | 福祉の現場から「希望の樹」
 わからない、わからない、あー!もう、わからない!利用者さんをどうしたいと思ってるのか!
「タマキちゃん、今日、どう思った?」
運転しながら話を振ってくるタカモリさん。
「え?」
「ほら、今日のお昼の事よ。」
あ、あの事か!
「アズサちゃんのご飯の量で色々言ってた、あれですか?」
そう!
 そもそも、利用者さんの前でスタッフが揉めるということ自体ナンセンスだけど。
「親御さんからそうしてくださいって言われた以上、親御さんの意見を通すべきですよね。」
「そうよね。・・・あきれるでしょ、あの所長。」
何と返したらいいのかな?本音を言うと、私、皆ほど所長さんに対して不信感を持っていないんだ。むしろ、不信感がないというか。だって、所長さん、日曜日に事務仕事で呼び出した日も。
『一緒にご飯行きましょうよ。』
ちゃんとその日もお給料くれるし、公私の分別があるし、それなりにスタッフをねぎらうって気持ちもある人だと思うから。
「あきれるって言うか・・・今日はちょっとびっくりしました。だって、いきなり、うちのポリシーとか言い出すし。アカリちゃんの事はあれだけサカキさんの思うようにさせてるのに。」
「そう思うでしょ!うちのチサト、土曜日以外は他のデイに行ってるんだけどね。まず、ああいう事はないわ。」
ブロロロロ・・・
 ありがとうござました!駅で降りて、電車へ急ぐ。ツリーハウス、そして、所長さん。信念があるのかないのか、全然わからないな。ああいう利用者さん達だから、思いを伝えるという事も、こちらが察して完全に読みとるという事も、かなり難しい。アカリちゃんも、ツリーハウスでどんな風に過ごしたいと思ってるのか。
『皆と一緒に遊びたいとは思ってないでしょうし。』
これは、ある程度当たってるとは思うけど。
 ありのままでいい、あるがままでいい。私はそう思うんだ。
「おはようございまーす!」
タカオ君に、お茶を飲ませるその横で
「あー!ああー!」
「どうしたの!」
「フフフ。彼はね、一人で放っておかれたくない人なのよね。」
あ、そうなんだ。私が少し相手をすると、確かに穏やかな顔になった。
 反面、このタカオ君はあまり構われたくない人で、
『何もない時は、目の届く範囲にいてもらって、一人で静かに過ごさせてあげて。』
って聞いている。一人で過ごさせてもらえるなんて・・・皆と過ごす事ばかり求められてきた、健常者の私からしたら、凄くうらやましくも思ってしまう。
 そうだよ、アカリちゃんも、こんな風に関わってあげたらいいだけなんだよ。デイサービスなんて、昼間の少しの時間預かるだけの所。安全に預かって、安全に家庭に帰す、それだけの所じゃない!
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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その36

2012-08-23 19:25:16 | 福祉の現場から「希望の樹」
 もう帰りの時間だ。検温にトイレ、利用者さんの荷物を詰めて、すぐ出発の時間だ。皆さんに乗ってもらわないと!
「アカリちゃん、帰るよ。もう起きて!」
一生懸命起こすサカキさん。アカリちゃん、ぐっすりだな。起きてくれるか?
「!」
良かった!
「あうーあー。」
寝起きって言うのは、誰でもふらついたりするものだから。特に慎重に、歩行介助をする。よいしょ!無事に、車に乗せる事も出来た。ブロロロロ・・・・
 皆、出ていった。アサクラさんは、お子さんのために、
「では、これで失礼します。」
帰ってしまうから、掃除は私とムラタさんでやる。
「では、向こうのトイレからやります!」
もう、勝手もわかって、馴れたもんだ。
 十五分ぐらいで、はい、お終い!
「お疲れさまでした。・・・コーヒー沸かしておきましょうか。」
「そうですね、お願いします。」
もうしばらく、この二人だけだ。
「今日は寝ちゃいましたね、アカリちゃん。」
「そうね。珍しい事だったわね。でも、連絡帳見てたら、だいぶお疲れかなって感じだったわよ。」
昨日は、お家の人と一緒に長時間車でお出かけだったらしい。
「で、大丈夫だったんでしょうかね?」
「うん、あの子、ドライブは好きだから。」
まあ確かに、このツリーハウスの送迎時間だけでも結構なものだと思うけど。所長さんいわく、アカリちゃんも高校部卒業後、幾つかデイサービスを利用したみたいけど、結局、何処へ行っても馴染めず。ようやく、ここに週一回と、
「あと、二日は他のデイを利用してるんですよね。」
という状況に落ち着いたらしい。
 この後は、どんどん関係ない茶話に転がって行く。ムラタさんは本当に明るくて、楽しい人だ。
「ただいまー!」
あ、所長さんとサカキさんが帰ってきた。
「おかえりなさい!」
コーヒーをコップに入れると、タカモリさん、トクダさん、アライさん、ヨシナガさん、皆、続々帰ってきた。
「お疲れさまでした。・・・皆さん、今日は?」
視線を巡らせる所長さん。今日の反省点って事だろうか?
「・・・アカリちゃん、ねぇ。」
頭を抱える所長さん。
「支援を始めて二回目でしたが、僕の感触としては、うまくいってると思いますよ。」
かなり悩んでる感じの所長さん。
「うーん。アカリちゃんも、皆と遊びたいとは思ってないでしょうし。」





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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その35

2012-08-22 19:54:09 | 福祉の現場から「希望の樹」
 利用者さんを、嫌ってる?私の体を電撃が貫いた。
「あれやらこれやら、いじくりまわして最後には、手に負えませんって、ポイッてするつもりじゃないの?」
そんな・・・。あ、時間だ。
「その辺はまた、今度の集会で話すわ。」
「そうですね。」
トントントントン!
 下の部屋に降りると、もう完全に皆、リラックスタイム。お風呂を終えて、ステレオの前で持参したカセットテープを聴いているウチダさん。
「休憩いただきます。」
替わって、男性スタッフ三人組が上がって行き、私達は仕事に復帰した。
 てるてる坊主も、今日で皆、作った事になるのかな?
「そうですね、あとは火曜日だけ来てる、リキ君だけです。あ、そうだ、タマキさん、工作はお得意ですか?」
「え?はい。」
「良かった!私、アカリちゃんの分を作ってますので、タクミ君のを作っていただけますか。」
わかりました!ムラタさんから、てるてる坊主二つ分の材料を渡された。
「タクミ君、ほら、白と黄色だよ。」
彼の目の前に、もらった端切れを提示する。わかりにくいけれど、目元から嬉しそうな表情が読みとれる。
 さてと。綿花を丸めて、くるんで・・・こういう作業は好きだけど、没頭しないようにしなきゃな。意識的にちらちらと、周囲に視線を送る。トランプで盛り上がる向こうのテーブルとこっち、完全に分離した世界になってるな。
「はい!てるてる坊主の形が出来たよ。顔は、どうする?」
模様は?
「あれ?アカリちゃん?」
ムラタさんの声に、皆の視線が集まる。・・・寝ちゃった。一人がけソファに、しっかりもたれかかって。
「あらあら、ぐっすりね。」
「本当、気持ち良さそう。」
どうしますか、畳へ?いえ、このままでも。このソファ、深いですし。所長さんはそのまま、持ってきたタオルケットを朱莉ちゃんの体にかけた。
 さてと!って感じで、向こうのテーブルへ戻った所長さん。
「皆、歌を歌いましょうか!」
ステレオのスイッチを、プチン!・・・ちょっと!ウチダさん、聴いてるんじゃないの?奥の事務室から、なにやら書類ファイルらしきものを沢山持ってきて。
「あれね、歌詞カードが入ってるんですよ。」
そうなんだ。
「はーい、何歌います?伴奏はないですけど、私、合唱やってますから。フフフフ。」
自信たっぷりに言う所長さん。
 曲が決まって、歌い出す皆さん。うー、音がずれてる!
「はい!では二番!」
※◆☆〒√~!所長さん、合唱やってるんだよね?まあ、それはそれとして、アカリちゃんが寝た途端、いきなりこんな活動を始めるなんて。何だか、凄く失礼な気がする。


 
 


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「希望の樹」第4章 ここにいて、いい人 その34

2012-08-21 13:55:43 | 福祉の現場から「希望の樹」
 お昼ごはん。綺麗に上がった、美味しそうなトンカツ。
「ご飯は・・・ナツメさんとアズサちゃんはこれで。」
かなり少なめ設定。あの二人はダイエットが必要だもの。
「ちょっと、何してるの!」
所長さん?
アズサちゃんのご飯茶わんを取り上げて、
「アズサちゃんは、普通の量で!」
炊飯器からご飯を追加しようとする所長さんに、ヨシナガさんが
「所長!アズサちゃんはご飯少なめってお家から連絡が来てるんですよ!」
 うわー、喧嘩みたいになってきた。ここは少し離れて遠くから見守る。・・・押し問答の末、所長さんが
「うちにも、うちのやり方というのがあります!」
無理やり普通の量にしてしまった。
 親御さんからの連絡が来てるのに。施設のやり方を優先させるべきなのか?
「ツジサキさん、ありがとうございます。いただきまーす!」
とんかつソースも手作りだって!
「さて、タカオ君も食べようか。」
大体、食事の時のポジションは決まってるから。すぐ斜め向かいにアカリちゃんがいる状況も同じ。
「今日はね、別個に唐揚げを買っておいてもらいました。先週みたいに食べないと困りますしね。」
と、ムラタさん。だけど今日は、調子良く食事が進んでるな。
「ツジサキさんのお料理が美味しいのよね。」
横から所長さんが。
 それも本当だと思うけど、先週の肉野菜炒めは食べなかったし。揚げ物なら受け付けるのか?と、言う事は、別に唐揚げでなくてもいいんじゃ・・・
「よしよし、もう一口!」
調子いいな、アカリちゃんもタカオ君も。
 お先に休憩いただきまーす!
「タカモリさん、お疲れさまでした。」
「お疲れさま!」
並んで横になり、二人して伸びをする。
「うーん、疲れた!・・・ねえ、昨日は楽しかったね!」
「そうですね!」
私も、ここの人達の意外な姿を知ったもの。
「ひょっとしたら、ショックだった?」
「いえ、そんな事ないですけど・・・あ、そうだ。所長さん、さっき怖かったですね。」
「ね。今更自分んとこのやり方だなんてさ。」
タカモリさんも不満なんだな。だって、アカリちゃんの支援に関しては、あれだけサカキさんのやり方を持ちこませてるんだもんね。
「結局、所長さんはどうしたいんですか?」
この、ツリーハウスを。
「うーん、息子や、他の障害児さんのために、グループホームの立ち上げまで頑張りたいとは言ってたけどね。」
 タカモリさんも、ここでは話しづらいのかもしれない。だけどなぁ、やっぱり、家族の要請は施設として守るべきじゃないのかな?逆に、施設の意向を一方的に利用者さんに押し付けるのはナンセンスだと思うし。
「所長と常勤さんは、アカリちゃんが気に入らないだけなんでしょ。」
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