チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その24

2012-12-31 16:55:23 | 福祉の現場から「希望の樹」
 どう言う事なんだよ!
『正職員ならね、お風呂も介助も全部やってもらわないと。』
私にはそう言って、話を覆したくせに。で、今の三人組には何もさせてないわけ?
『重度さんを看てたら、疲れるからね。』
正職員の条件は体力があること、って言ってなかったっけ?無茶苦茶だ。あまりにも酷過ぎる!そういう使い方がありなら、私だって正職員に出来たわけじゃない!
 こうして見渡してたら、イマサトさんは朝からでーんと座ってケータイばっかりいじってるし、ナカヤマさんは事務長してたなんて肩書きだけ、パソコンもロクにできない。そして、モトイさんは
「おいこら!」
利用者さんにきつい言葉を、
「あの所長、馬鹿だね!ハハハハ!」
所長の悪口を平気で吐いてる。働かない人がいい思いして、一生懸命尽くしてきた人間は飯炊き当番に陥れられ侮辱されるのか。

『所長はね、調理担当者を全員一掃するつもりなのよ。』

ヒロノさん・・・
 うう!顔の肌が引きつる!これ、完全にここの仕事のせいだ。
『正職員で来ないか?』
散々たぶらかしておいて!所長、あんたって人は!・・・顔を水で冷やしてこよう。バシャ!バシャ!私が調理のボランティアで顔が腫れる事故に遭ったの、知ってるくせに!知っててやったら犯罪だぞ!
 利用者さんの食事が始まった。ふぅ。疲れたというより、アレルギーで目の前が真っ暗になってしゃがみこむ。他の曜日の担当者さんは、普通に洗剤使ってるから。多分、それが残留していて・・・
「あ!やめてください!」
お皿洗いをしてくれているタカモリさんを止める。だって、普通の洗剤でやってるから。
「え?あ、ごめん!」
気を利かせてくれてるんだってのはよくわかってる。でも、私の場合は・・・
「洗剤で具合が悪くなるんです。だから、全部私がやります。」
その方がいい。いや、そうするしかない。自分の身を守るためには。本当は、辞めるのが一番良い方法。でも、無職になるデメリットが。
 お皿を一人、黙々と洗いながら・・・この頃は二時半まで体が持たなくなってきた。今日もこれをすべて洗い遂げられるかどうか。辞めたい。こんなところ早く辞めたい。時給を下げられ、勤務日を減らされ、病気にまでされて。もう、私は持たない。
 
 
 
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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その23

2012-12-30 15:43:04 | 福祉の現場から「希望の樹」
 翌朝、一番に。・・・つながった!
「あの、リンドウでしょうか?始めまして。私、ヤマモトと申します。ツリーハウスのイマサトさんから、貴社で募集を出されてるとお聞きしまして・・・」
無愛想な言い方で、
『あー、その件ですか。あのね、うちは事業そのものが先行き不透明で、新しい職員を入れるかどうかも。たとえ採用してもバイトか正職員かわかりません!』
上っ面だけのお礼を言って、ガチャン!何それ、そんないい加減なところを紹介したわけ?
 今日は勤務だ。
「行ってきます。」
嫌々無理やり乗り込む電車の中。もう、完全にキレた!・・・あ、ちょっと待てよ?
『あの、タマキさん?』
あの時、どうして所長と一緒にイマサトさんが?あの話もイマサトさんからだった。
 野菜、それから、肉。えーと、顔が熱を持ってきた。ジャー。何度も中断しながら何とか作り上げたお昼ごはん。
「ちょうど歯が生える頃にね、固いものを噛む練習をしないと、一生噛まないようになるのよ。この子もね、チャンスはあったと思うけど、多分、逃してしまったのね。」
ユキ君の介助をしながら、語るタカモリさん。そこを通りがかった時、
「あの、連絡・・・」
「はい、聞いています。」
 アフターファイブ。怒りの会メンバー、施設近くの喫茶店に集合。ヒロノさん退職による、緊急集会。
「ヒロノさん、無事退職おめでとうございます!」
「ありがとう!」
水のグラスで乾杯!本当にお疲れさまでした。
「で、どうだったんですか?」
記者会見張りの、インタビューの始まり。
「実はあの日ね・・・・」
夜、いきなり所長に電話して、退職を告げたんだって。
「所長の圧力に負けましたって言ったらね?」
タカモリさんがこれを受けて、
「で、所長がね、私に電話してきたのよ。私は圧力なんかかけないって証明してくれってさ。」
何それ!散々圧力掛けてる癖にさ。自分が辞めさせた人間に泣きつくの?ハハハハハハ!
 お茶を飲みながら、会話は弾む。
「すっきりしたでしょう、ヒロノさん。」
「うん、もうすっきりよ。」
次は、私達の番。皆、いつどうやって辞めていくか。私も・・・
「タマキちゃん、今、辛くない?調理の仕事。」
 ブロロロロ・・・帰りはタカモリさんの車で駅まで。
「所長、この頃正職の人達にお風呂させてないわね。」
何だって!
「重度さんのお世話をしてたらね、疲れるから、お風呂までしていただかなくて結構です、って。」
「ちょっと!本当ですか、それ!」
後部座席から、思わず乗り出す。
「うん、本当なのよ。」
「へー、何それ!」
あまりにもショックで、背もたれにバンと背中を打ちつけた。
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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その22

2012-12-29 12:52:49 | 福祉の現場から「希望の樹」
 えーと。まだかな?所長からの連絡は。さっきメールしたのに。それを聞かなきゃ、何も始まらない。
「タマキ、結局問い合わせるの?」
「うん。」
だって、聞いてみないと何もわからないし、何よりも、紹介された以上、一度は自分から直接問い合わせるのが礼儀だと思う。だから!・・・もう!まだ来ない。所長からの連絡を待ってるんだけど、何時になったらくれるの?

プルルルル!
「はい、タカモリです。」
『あ、タカモリさん?あの、もしもし?ホシオカです。』
所長?一体何の用?
「あの、何かご用でしょうか?」
切羽詰まった声で
『タカモリさん、お願い、助けてもらえないでしょうか?』
「助けるって?えー、な、何ですか?」
一緒にこっちまで声が上ずってしまうけど、どうせろくな事じゃないんでしょう?見え見えよ。
『私が、私が圧力をかけてるって、言ってくるのよ!』
だからどうしろって?
『タカモリさんお願い、証人になって!』
「何の、です?」
『私は圧力をかけたりしない人間だっていう証人に!』
そんな事か。何、馬鹿言ってんの?この人。私に対して散々圧力をかけて、辞めさせた過去があるじゃない!
 こんな人の味方なんか、絶対にしない。
「・・・・・・。」
『お願い!タカモリさん!』
「・・・・・・。」
いくら言っても無駄よ。一度クビを切った恨みは深いわ!誰が助けてやるもんか。あんたなんか!
「・・・・・・。」

 もう!遅いな。いつになったら・・・ブルルルルル。来た!飛びつくようにケータイを取り、開いたら。え?ヒロノさん?
『こんばんは。私、ヒロノは先ほど、所長にツリーハウスを退職する旨を電話で伝えました。すっきりしました。また集会で話しましょう。』
辞めるの!いや、それはむしろめでたい話だけど、やっぱり、仲間が辞めると聞くとびっくりする。あ、返信しなきゃ。
『こんばんは。無事に退職おめでとうございます・・・』
ヒロノさん、良かった。さて、私も一日も早く辞められるように動かないと。あ、そうだ、皆さんに緊急集会のお知らせも・・・その途中で、ピピー!結局、所長から、紹介された事業所リンドウの電話番号を伝えるメールが来たのは、この日の夜遅くだった。

 

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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その21

2012-12-28 19:05:35 | 福祉の現場から「希望の樹」
 まさか・・・仕事を紹介してもらえた!ちょうど探しているところに、凄くいいタイミング!
「タマキちゃん、よかったね!」
と、サガワさんが。
「リンドウでしょ?支援学校から高校生が実習に行ってるところね。うちのチサトもちょうど卒業の頃に実習でお世話になったところなのよ。だから、全然怪しい所じゃないし、集まってる利用者さんも殆ど介助要らないし、ここより楽だと思うよ。」
タカモリさんも。
 イマサトさんは、私が直接そちらに問い合わせを入れろって。
「すみません、あちらの電話番号は?」
「ああ、所長に伝えとくから、所長から聞いてくれ。」
それならケータイの番号は、伝えとかなくていいかな?
 今日は心軽く帰宅。
「ただいま!」
「おかえり。あら?今日は嬉しそうじゃない。」
「あのね、ツリーハウスで、仕事を紹介してもらって。」
「え!・・・で、どんなところなの?」
「福祉関連なんだけど、身体障害者向けの作業所。」
「ちょっと!またそんなところに?!」
「だって、仕事だよ。こっちから連絡入れてって話なんだけど、まだ番号聞いてなくて。所長にメール入れなくちゃ・・」
 本当の所、どんな仕事なのか、どんな職場なのか分からないし、直接聞いてみるしかない。それに、もっとそういう職場の実情を知りたいのなら、就労支援センターで聞いてみる方法もある。いいタイミングで、明日、福祉コーナーの予約が取れてるし。
「こんにちは。」
この間お会いした、福祉の仕事専門の女性カウンセラーさん。もう、二回目だからお互いに緊張もない。
「こんにちは。どうですか?あれから。」
 うまくいかない近況報告と共に、
「あの、実は、今の職場の人から仕事を紹介されたんです。」
イマサトさんから紹介された、障害者作業所の仕事。
「うんうん、なるほど・・・・」
カウンセラーさんは相槌を打ちながらゆっくり聞いてくださって、
「多分そこね、B型の事業所ね。」
「って、どういうところなんですか?」
「働く人と雇用契約を結ぶんじゃなくって、あくまでもリハビリや訓練のために利用する事業所よ。」
そうなんだ。もう一つ、障害者と雇用契約をして社員とする所はA型というらしい。
「いずれにしてもね、作業所系は介護以上にお給料も安いわよ。」
 そんなところなんだ・・・
「わかりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。ま、一度そこは、電話で確認はした方がいいわね。人を入れる気があるかどうかもわからないし。まだ具体的に何も聞いてないんでしょ?」
はい。・・・やっぱり、そうするべきか。
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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その20

2012-12-27 19:08:15 | 福祉の現場から「希望の樹」
 何だ!コミュニケーションって、所長が一方的に言いたい事言っただけじゃない!イマサトさん三人組に、完全に支配されちゃってさ!それも、私の意思確認というより、一方的に言いたい事を言い放っただけじゃない!・・・今も、畳のスペースで。
「・・・・!」
「・・・?」
イマサトさんと所長、二人立ち話をしてるけど。
 体の拒絶反応に耐えながら、お皿洗いを完遂するべく踏ん張ってる。腕まで赤くなってきて、これ、確実にアレルギー起こしてるよ。もう、真剣に次の仕事を獲得しなくちゃ。正社員の仕事を。一日も早くここをやめないと、心も体も持たない!

プルルルル!
『はい。ツリーハウス、ホシオカです。』
「あの、ヒロノですけど。」
『・・・・!』
無視を貫く気か!今月の給与明細、またおかしいから聞こうと電話したのに!
「先月もこうだったじゃないですか!もういい加減困ります!今度こそ正式な明細いただけます?」

 やっとお昼ごはんが始まった。介助がないと、わりとゆっくり食事が出来る事だけが幸いか。
「ごちそうさま。タマキさん、ありがとう。」
どんどん山積みになって行く洗い物。これ見てるといつも憂鬱。・・・絶対このせいだ。それまで、全身の肌がすべすべでつやつやだったのに、これをさせられた途端、明らかに腫れている。自分の石鹸を持ち込めば大丈夫と思ったけど、やっぱり・・・
「ユキ君!唾吹きやめろ!」
バタン!ああ!またあんな事して、あの三人組!・・・私が調理じゃなかったら、飛んでいってでも助けるのに。
 もう駄目だ・・・また目が回って、キッチンの床にしゃがみ、顔を伏せていた時、
「タマキさん。」
ゆっくり顔を上げると、所長!ちょっとちょっとっという感じで、
「あの、今、いいかな?」
はい。立ちあがると、横にイマサトさんがいる。
「あの、タマキさんね。」
え?用事があるのはイマサトさん?
「あのね。わしの知り合いで、身体障害者の作業所やってるのがいて、今、人を募集してるんだ。まあ、ここより障害の程度も軽い人だし、楽だと思うし、タマキさん、どうだ?」



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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その19

2012-12-26 19:10:49 | 福祉の現場から「希望の樹」
 仕事はなく。家からも離れたく、でも、金もなく・・・。今日は就労センターのカウンセリング。その後、ラッキーな事にカツラギ先生との約束にこぎつけて。
「こんにちは!」
「こんにちは、お久しぶり!うん、元気な顔してる。良かったわ。」
実はメールで、親と揉めた話を書いたんだ。
「すみません、心配おかけしまして。」
 いつもの喫茶スペース。アイスコーヒーをご馳走になりながら、
「相談どうだった?仕事探しはうまくいきそう?」
「なかなか、うまくいかないんですよ。」
ため息交じりに愚痴っぽい話をこぼす。
「ま、何でも適当に器用にこなせる人もいるけど、それが出来ないから何もできないって事はないんじゃないかな?不器用だからこそ、出来る事もあると思うし。・・・タマキちゃん。大丈夫。あなた、賢いし。ちゃんと人生を切り開けるわよ。」
カツラギ先生・・・いつも励ましていただいて。
 また、嫌なツリーハウスの仕事。最近、所長によるスタッフの個別面談が行われている。いや、イマサトさん三人組が言い出したんだよ。所長はスタッフとコミュニケーションを図るべきだってさ。で、二階の休憩室に呼び出されて。
「タマキさん。どう?ここの仕事は。」
「え、まあ。」
嫌とは、言わしてくれないんだろ?
「三月から全部調理をしてもらってるわけだけど・・・」
所長のいいわけが始まった。
「料理のレパートリーもね。あれでも充分なんだけど、もっと増やしてくれないかな?毎回生姜とニンニクをたっぷり使った料理にして。ほら、皆体が不自由でしょ?そういうもの食べて体を温めてほしいのよね。」
 ここから所長の独壇場。
「レシピ考えにくいなら、メニューのパターンを決めておいて、ローテーションでするようにしようか?」
そんな!私、考えます!しかし所長は一方的に、
「えーと、八宝菜、野菜いため、それから・・・」
メモを取り出して、ローテーションメニューを決め始めた。
「こうしといたら楽でしょ?」
ニヤニヤしながら・・・こいつ、一方的に馬鹿にしてる!
「こう言う施設もね、年々利用者さんの取り合いなのよ。うちはね、手料理を売りにしてる。手料理が食べられるから利用者さんが集まるのよ!タカオ君もよそがあるのに内にほぼ毎日来てるのは、その為よ!」
だから!そう思うなら、ちゃんとした調理師さんを雇ったらどうなんだ!
「タマキさんもね、そういう気持ちでやってほしいの。」
 そんなの無理です。一体何考えてるのか、この馬鹿。
「あの、私。」
やっとこちらのお話タイム。
「今、ここは週二日。仕事の内容も経済的にも六十歳までやっていくにはとても無理です。私がもう主婦ならそれでもいいんですけど、独身ですから。かけもちの仕事の方がかえって見つけにくいですし、今、就労相談に行ってるところです。」
「うーん。なるほどね。うちもタマキさんは週二日しか使えないし。何よりタマキさんの人生だからね。あ、辞める時は一か月前にね!」


 
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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その18

2012-12-25 19:13:16 | 福祉の現場から「希望の樹」
 夜が明けて・・・夕べの衣服のまま床から上がる。うう・・・かなりアザが出来ている。ブロロロロ。
『次は、ショッピングモールです。』
あ、降りなくちゃ。
 無駄に大きな荷物を持って、始発のバスで出てきた。まだ、まだらな車通り。どうしよう?電車は動いてるけど、今言ったって向こうにはコンビニすらないし。ここのファーストフード店に入って過ごすのも・・・あ、メール。
『タマキ、大丈夫?』
お母さん。今日は仕事だと知ってるんだし、特に返信はしないでおこう。
 蹴られた体の傷以上に、心の傷。職場でも家でも傷つけられて。ベンチに腰掛けたまま、顔を覆い伏せた。私、これからどうなるの?一生このまま脱却できなかったら・・・顔をあげて、数少ない行きかう人を観察しながら。親って、どうしてわかってくれないのかな?どうしてできない事を強要するのかな?時間・・・そろそろ行こうか?電車は、いつもの時間のに乗る。ガタン、ゴトン。家も地獄、仕事も地獄・・・
 やれやれ。九時二十五分。
「おはようございます。」
エプロンをつけて、手を洗って。冷蔵庫、保存食品の引き出しを、調理記録ノートを見てメニューを考える。その間に、
「おはようございます。」
ムラタさんとか、介助のスタッフさんが来る。私も、介助に戻りたい。戻してほしい。だって・・・
 ほら。この頃、顔の皮膚がはがれてきている。同じく、首も、手のあかぎれも。だんだん酷くなってきてる。こんな体で調理なんかしてたら。だいたい所長は知ってるのか?アレルギー体質の人に調理の仕事をさせたら、食中毒のリスクが何倍も上がってしまうことを。もし、そうなったらそれこそ、利用者さんにとって迷惑じゃない!
「お疲れさま。今日は何作ってるの?」
来やがった、この馬鹿所長!
「味付けは出来るだけ濃く、しっかりね。」
とっくの前からだけど、完全に呆れている。薄味に馴れさせるのが基本でしょ?もし、今まで受け付けてた味を受け付けなくなりました、なんてクレームが来たらどうする?ちらっと居室を見る。最近、あの子はガンガン太ってきている。逆にあの子は極端に痩せてきてる・・・。
 所長は私を馬鹿にしている。休日も、大事な予定もキャンセルして、ここの仕事を助けてきた人間を。うう・・・目の前が真っ暗。顔と首の肌が熱を持つ感覚も伴って、床に崩れるように座りこんだ。
 午後二時半。
「失礼します。」
真っ直ぐに家にも戻りたくないから、そのまま繁華街に出た。
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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その17

2012-12-24 19:19:47 | 福祉の現場から「希望の樹」
働く。何のために?
生活のために。お金のために。
それがないと、そうしないと生きられないから。

だから、働いている。
今だって、一生懸命に。
だけど、このままではとても食べるに足りないから
一生やって行けないから。

だから、現実的な仕事にありつこうと。
かなり厳しい現実だと自覚しながらも、探してるんじゃない!

 そのはずなのに。
「タマキ!やめとけ!」
「あなたはまだ独身なのよ!」
要するに、自分の子供の世話もした事ないのに、という意味。
「お前がもう、結婚もしていて、五十も過ぎていたらそういう仕事もいいだろう。だけどな、お前・・・わしらは断固反対する!」
反対も賛成も、
「だって、それしかないじゃない!」
「ないって、真剣に探してる?タマキ、あんたはいつも努力が足りないのよ!」
 努力・・・!いつもいつもそればっかり!いい加減カチンと来た。いくら探しても、私にできる仕事で雇用にむすびつくのは介護しかない。それが、現実。
「事務職はないの!」
一番求人減ってるし、
「そんなの、私できないよ!」
「はん!できない?私よりいい大学も出てるのに?」
馬鹿にした次は褒めちぎる、結局は馬鹿にしていたぶっている。いくら親でもそれはないだろう!
 基本的に、手を出したりしない。口は立たないから、言い返しもしない。
「何か言ったらどうなの?」
「・・・・・」
「何か言いなさいよ!」
私は何をしたって、両親にはかなわない。立ちつくしながら、小刻みに震えてくる。

『バシィィィン!』

お父さんの掌が、私の左頬に飛んだ。少し体がぶれたけど、倒れはしない。
「ちょっと、あなた!やめてよ!」
立ちつくした私の前で、繰り広げられるやりとり。
「いや、もうわしはこんな奴許さん!」
叩きのめす!
 そのまま蹴り倒され、床へ。

アホ!馬鹿!感謝も!謙虚さも!知能も!なーんにもないこの大馬鹿!

サッカーボールのように執拗に蹴られる、そんな一晩の幕が明けた。





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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その16

2012-12-23 19:23:33 | 福祉の現場から「希望の樹」
所長にきちんと言って、正しい給与明細貰わなくちゃ!貰って連休が明けたら、労働局に訴えるわ!

ヒロノさん、タカモリさん、サガワさん・・・そして、私。皆、それぞれに酷い目に遭ってる。私にも、知ってるくせにしてはいけない仕事をパワーで押しつけて。あ、また頬のひび割れ面積が。だんだん広くなってきてる。
 さて、連休だ。肌が腫れるリスクはなくなるけど、仕事がない・・・アルバイトは一日働いていくら。連休がある五月は、がくっと収入が減る。
『行楽日和の今日、見てください!このにぎわい!』
遊園地の様子を伝えるテレビ番組。もういいよ、そんなの!
 連休消えろ、連休去れ、連休なくなれ!仕事はないし、求人情報も入ってこない!もういらない、もういらない!・・・こういう気持ちを打破するためにも、正社員にならないと。正社員になれば、今みたいな酷い目にあわされる事もない。正社員の仕事、正社員の仕事・・・

ほら、こんなの出てるわよ。
うん・・・。
もう!見るぐらい見たらどうなの!
わかったわかった!
どうせ、私に出来っこない求人ばっかり探してくるくせに!

 親にも、時々思う事がある。うちの両親は私を馬鹿にしてるのか、それとも・・・あー!わからない!一方ではできるできる、一方ではお前は出来が悪いから何もできない。
『この脳なしが!肉体労働でもしとけ』
コノヤロウ・・・

 やっと連休が終わり。
「行ってきます。」
バッグにエプロンを押しこんで重い足取りで出かけていく。つなぎの仕事があるだけでもありがたいと思わなきゃいけないんだろうけど、もう、心も体も限界だよ。
「タマキちゃん、おはよう。ねえ、今日は何作るの?」
怒りの会メンバーの、温かい心だけで、何とか自分を支えている。えーと、野菜まで切れた。・・・う、顔と首の肌が!熱を持って、水気がどんどん抜けていく。潤さなくちゃ。洗面台で顔を洗い、化粧水をつけて・・・

所長。
はい、何でしょうか?
ここの職場の空気に、合わない人間がいる!
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「希望の樹」第10章 新たなる支配者 その15

2012-12-22 14:17:33 | 福祉の現場から「希望の樹」
 『良かったわ、カツラギ先生の演奏を聴かせていただけて。』
そんな文面に引き続き、あの馬鹿所長!夫婦そろって失礼すぎるわよね!
「所長さんのご主人は、タマキがそうして歌を披露してるのが煙たかったんじゃない?」
ちょっと、お母さん!ソウタ先生は、わざわざ年休取ってたんだよ!・・・先生方も私も、一か月前から準備してきたんだ。それなのに失礼だ、あまりにも失礼すぎる!
 そのまま、四月、怒りの会定例会。
「本当に、所長には呆れたわ!楽譜くださいとか!」
ヒロノさんの怒り。
「ソウタさんも、何考えてんのか!」
続いて、タカモリさんも・・・あの日、ソウタ先生にそのまま訓練会に引きずり込まれてた。
「勤務じゃなかったのにね、その日は!」
サガワさんも、たまらなくなったのか。
 所長は、人間の値打ちをわかってない!
「だいたい、有名な音楽学部ってだけでも相当なものじゃないですか。ね、サガワさん。」
一番事情が分かる人だから、振ってみる。
「え!うん、そうね。」
サガワさん、謙虚な人だからちょっと恥ずかしそうな顔だけど。さらに、海外のコンテストで入賞したなんて人・・・。
 いずれにしても、楽譜くださいは確かに失礼すぎる。だって、演奏より、楽譜に書かれてる事の方が素晴らしかったって意味になるじゃない?幸い、先生達は怒ってなかったけど・・・・
 それ以上に今、重大な事件が!
「ユキ君ですけど、どうですか?」
「うん、ずっとあの三人がさ。この間なんか、帰る時に、車に載せないで施設に放置したのよ!」

「そんな、めちゃくちゃ危ないじゃないですか!」
「そうよね!」
 やっぱりとんでもない三人組だ。所長が止めに入ってないのはとっくに知っている。
「どうしてユキ君がターゲットになったんでしょうね?」
「ああ、それはアカリちゃんと一緒よ。あの子は能力が高いから。」
能力の高い子が虐待に遭う・・・不思議な話だけど、これが、障害者世界の現実。ユキ君を助けたい、皆同じ思い。なのに出来ない。その歯がゆさも同じ。
 利用者だけでなく、
「あのね、私、どう計算しても四月の給与明細の勤務時間数が、実際のと合わないのよ!」
ヒロノさんの被害報告。それは、うっかりミスではない!
「もう、見え見えのウソばっかり!」
所長はわざとやってる!我々スタッフも、虐待されている!
「あー!早く辞めたい!私なんか、一回クビにしたのに呼び戻されたのよ。今度こそね、自分から辞めるって言う!」
私も早く辞めたい。サガワさんも・・・早く辞めたい!早く辞めたい!
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