部屋に戻ると、もう、おやつが届けられていた。
「あら、良かったわね。」
看護師さんだわ。本当にありがたいわ。ユイは濡れた入浴セットの後始末を終わらせると、早速食べ始めた。
「ユイ、美味しい?・・・あのね、さっきお医者さんと話をしてたんだけど、あと三日ぐらいで退院できそうなんだって。・・・ユイ、聞こえてる?」
無視してるみたいだけど、ちゃんと聞こえてるわよね?
退院・・・おやつのバームクーヘンを咀嚼しながら、ユイはその単語ばかり反芻していた。家に帰れるんだ。ここにいても、もう、退屈だし。宿題も終わらせちゃったから、家に帰ってもやる事はないけど。
でも、それはそれで辛いか。本当に、これからどうするんだろう?どうしたらいいんだろう?
『退学して、よその中学を探す?』
お母さんの言う事も、一つの方法かもしれないけど、実際そうしたとして、どうなんだろうな。厳しい学校、自由な学校、勉強に熱心な学校、部活動で有名な学校・・・中学受験の前に、お母さんと一緒に幾つか学校説明会に行ったけど、本当に学校って、色々あるんだなぁって思った。
進学する先の学校は、一つしか選べない。二つの学校に並行して通いながら、良い方を選ぶなんて事も出来ない。入学する前に、少ない情報の中から、何処へ行くのがいいか判断するより仕方がない。今の学校に決めたのも、重々考えた上だったはず。お母さん達だって・・・。
で、結局のところ、学校って何のために行くのかな?
「お茶、入れておくわね。」
お母さんがついでくれたお茶を飲み込んで、口の中を綺麗にしながら、ユイはさらに思考を深めていった。
勉強するために、友達を作るために、部活動をするために、働く事を猶予され、若い時代を謳歌するために。今と言う時を充実させるために。
『中学に落ちたら、お前らの人生真っ暗だぞ!』
『いい学校、いい会社!』
小学校時代、進学塾で繰り返し言われた言葉。そう、学校へ行くのは、未来のためでもあるんだ。これからの人生を、良く歩むために。
良い人生にするために必要なものは、きっと一つには絞れないんだと思うけど、そのために、小学校の時からあれだけ頑張ってきたのは事実。もし、今の学校をやめるとなると、その努力を全て水の泡にする事になる。
そんな事、本当にできる?私、出来ないと思う。そんな事したら、過去の自分に申し訳が立たないもの。過去の自分に、報いるためにも・・・。
「ユイ、どうしたの?」
お母さんの声かけを無視して、考え込む。私・・・これからの私のために、今の私は何をするべきなのだろう?
「あら、良かったわね。」
看護師さんだわ。本当にありがたいわ。ユイは濡れた入浴セットの後始末を終わらせると、早速食べ始めた。
「ユイ、美味しい?・・・あのね、さっきお医者さんと話をしてたんだけど、あと三日ぐらいで退院できそうなんだって。・・・ユイ、聞こえてる?」
無視してるみたいだけど、ちゃんと聞こえてるわよね?
退院・・・おやつのバームクーヘンを咀嚼しながら、ユイはその単語ばかり反芻していた。家に帰れるんだ。ここにいても、もう、退屈だし。宿題も終わらせちゃったから、家に帰ってもやる事はないけど。
でも、それはそれで辛いか。本当に、これからどうするんだろう?どうしたらいいんだろう?
『退学して、よその中学を探す?』
お母さんの言う事も、一つの方法かもしれないけど、実際そうしたとして、どうなんだろうな。厳しい学校、自由な学校、勉強に熱心な学校、部活動で有名な学校・・・中学受験の前に、お母さんと一緒に幾つか学校説明会に行ったけど、本当に学校って、色々あるんだなぁって思った。
進学する先の学校は、一つしか選べない。二つの学校に並行して通いながら、良い方を選ぶなんて事も出来ない。入学する前に、少ない情報の中から、何処へ行くのがいいか判断するより仕方がない。今の学校に決めたのも、重々考えた上だったはず。お母さん達だって・・・。
で、結局のところ、学校って何のために行くのかな?
「お茶、入れておくわね。」
お母さんがついでくれたお茶を飲み込んで、口の中を綺麗にしながら、ユイはさらに思考を深めていった。
勉強するために、友達を作るために、部活動をするために、働く事を猶予され、若い時代を謳歌するために。今と言う時を充実させるために。
『中学に落ちたら、お前らの人生真っ暗だぞ!』
『いい学校、いい会社!』
小学校時代、進学塾で繰り返し言われた言葉。そう、学校へ行くのは、未来のためでもあるんだ。これからの人生を、良く歩むために。
良い人生にするために必要なものは、きっと一つには絞れないんだと思うけど、そのために、小学校の時からあれだけ頑張ってきたのは事実。もし、今の学校をやめるとなると、その努力を全て水の泡にする事になる。
そんな事、本当にできる?私、出来ないと思う。そんな事したら、過去の自分に申し訳が立たないもの。過去の自分に、報いるためにも・・・。
「ユイ、どうしたの?」
お母さんの声かけを無視して、考え込む。私・・・これからの私のために、今の私は何をするべきなのだろう?