チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その10

2014-03-31 19:48:06 | ADHDとともに「君の星座」
 ハルカ、十六歳、高校二年生。
 春休み。恐怖の修学旅行に行って帰ってきた。行ってよかったのかな?まあ、旅行と言えば旅行だし、その間、特に嫌なことも言われなかったし。よいしょ!おじいちゃんおばあちゃんからもらったお小遣いで、お土産もいっぱい買いましたよ。春休みの間に両方のおじいちゃんおばあちゃんに会いに行ったり、訪ねてこられたり。
「おじいちゃん、おばあちゃん、修学旅行のお土産です!」
「まあまあ!こんなにたくさん!ありがとう、無理させちゃったみたいね。」
「ううん。」
見て回った地域の名物を一つずつ買ってきたんだ。食べるものばっかりだけど、変に置物とかより喜ばれるかもって思って。
 同じく、修学旅行だった中学生のナオキも。これまた張り切って買ってきたね!
「僕からもお土産です。おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう。」
「ありがとう!またたくさんのご馳走!」
物凄く喜ばれたみたいだ。
 宿題もない、しばしの休息期間。高校二年生最後の成績は、不安を感じはするけれど、私なりのがんばり方、成績アップのための戦略も練れたし。
 さて、今日は声楽のレッスンへ。
『ピンポン!』
はーい!いつも明るいクロサキ先生。
「こ、こんにちは。あの、しゅ、修学旅行に行ってきました・・・これ、お土産です。」
「わぁ!ありがとう!」
よかった・・・すごく大きい人だし、何と言っても大人だもん。やっぱり怖い。
 だけど、親しみを感じているのは事実。安らぎを感じているのも。わかるもん、この先生の中にある、本当の優しい心が。鈍いって言われる私だけど、それはすごくわかる。
「エヘヘ。」
「あら?かわいいぬいぐるみ!どうしたの?」
「買ってもらっちゃいました。おじいちゃんに。」
「よかったわね。」
ソファに掛けたまま、お互いの膝に、ぬいぐるみを置き合いっこしたりして。甘えていると言えば、甘えてるんだよね。でも、先生に支えられていることは、私の真実。
 誕生日を迎え、私は十七歳に。四月、学校が始まったら高校三年生。大学への推薦を掛けて、勉強・・・ううん、それ以上に、暴力沙汰は絶対に起こしちゃ駄目なんだ。絶対に辛抱しないと。たとえ、同級生から殴られても。
 
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その9

2014-03-30 19:46:02 | ADHDとともに「君の星座」
 帰りに、下のハローワークに立ち寄るように言われて。
「ツジムラさん、ありがとうございました。終わりました、はい。また後日もう一度と言うことで・・・」
失礼します。わ、もうこんな時間なの?三時間もしゃべってたんだ!
 とりあえず、今日は帰ろう。無駄にお金使いたくもないし。ブロロロロ・・・さっきの、エンドウさんの言葉を反芻している。
『検査の後ね、ケース会議をするのね。私とあなたと、ツジムラさんと、支援センターのイワキさんも交えて。ご両親も同席していただけないかしら?ご両親も一緒に考えていただきたいんだけど。』
いやいや、絶対に一緒には考えられない。うちの両親は。何を言っても自分たちの意向を押し付けてくるだけで。で、行き詰って今回、障害者登録って話になったら大喧嘩。それからもう、一ヶ月以上決裂している。だけど、この方がいい。どうせわかってくれないなら、距離をとったほうが。そのほうが、自分にとっていい進路を見出せる。
 次の週の同じ曜日、また、障害者職業センター。
「こんにちは、お願いします。」
エンドウさんに、今日は前回とはまた違う部屋に連れて行かれて。向かい合わせに掛ける。
「それではですね、ツキシロさん。今日は、適性検査をさせていただきます。」
「はい、よろしくお願いします。」
まず、冊子みたいなのを渡されて、算数とか国語とか・・・
「はい、そこまで!」
ストップウォッチを止めるエンドウさん。ここでシャーペンを置いて終了。
 他にも、作業みたいな検査もあって。部品を組み立てたり、分解したり、そして、仕分けの作業かな?
「このカゴに入ってる札は、一つ一つ番号が振ってあります。で、棚に書いてある番号のところに入れていって。ちょっと私、検査の道具とって来るから。やっててくれますか?」
ストップウォッチを押して退室するエンドウさん。ここは一人で黙々と作業する。
 雑談みたいなことも途中にあって、検査の内容も、だんだん、実務に近いものになって行き。そういや、こういうの、事務系の職場でやったことある。うーん、あまり好きじゃないな、これ。
「休憩しなくていい?」
「はい!」
「じゃあね、パソコンの入力。」
これもタイムを計り。
「で、これ。どんどん法則が変わっていくのね。どう変わっているか考えながら、答えを選んでくれるかな?」
言葉で具体的に示されないけど、ルールが変わっていくってあれ。どんどん正解、進んでいく問題。
「わかる?こういうの。」
「はい、よくわかりますよ。」
「それはすごいわ。発達障害の人ってね、こういうのがわからない人が多いのよ。」
 前回の面接と同じ、検査終了まで三時間。
「ありがとうございました。」
「お疲れ様でした。では、これから採点、評価しますので、終わったらケース会議の連絡しますね。今月中には出来ますから。」
「わかりました!よろしくお願いします!」
 


 
 
 
 
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その8

2014-03-29 19:53:47 | ADHDとともに「君の星座」
 助言のピースを集めながら、どう組んでいくのか、それは、自分の力。予約時間通り、ハローワークへ。今日はその五階にある、障害者職業センターへ。
「こんにちは・・・あ、はじめまして。今日お世話になります、ツキシロです。」
「あ、はい、どうぞ。」
大柄な女の人が出てきて、奥に案内される廊下、へぇ、なんか、作業してる人がいっぱいいる。職場みたいな雰囲気だな。キョロキョロと見ながら、
「どうぞ、こちらです。」
通されたのは、小さい会議室みたいな部屋だ。勧められて椅子にかけ、
「始めまして、適性検査を担当させていただきます、エンドウと申します。」
「ツキシロです。どうぞよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。えーと、下のツジムラさんからもある程度聞いてるんですけど、まずね、今までの職歴のこと、もう一度聞かせてもらえますか?」
 どこへ行っても、何度も同じ話を、違う人に繰り返し話してて、その内容もだんだん洗練されてきている気がする。
「そこは、基本、いい人たちばっかりでした。子育てのベテランみたいなおばちゃんがたくさんいて。」
「子育てのベテラン!」
アハハ。エンドウさんも噴出してしまったみたい。
「で、最後が医療事務。二件とも解雇だったんですね。これね、発達障害の人は例外なく失敗してるんですよ。」
 そうなんだ・・・私、一番駄目な選択してたんだな。一呼吸置いて、
「そうね・・・私たちは二、三年おきに転勤するのね。で、全国回ってるんだけど、発達障害の人は増えてますね。私が担当した人でね、三十回以上転職した人もいましたよ。」
三十回以上!
「で、その人は仕事、決まったんですか?」
「はい。手帳を取ってね、ファッションに興味がある人で、その系統のネットショップで元気に働いていますよ。」
結構決まってる人、いるんだ。
「じゃあね、ツキシロさん。趣味とか、興味あることってありますか?」
「そうですね、趣味として履歴書に書けるのはポエムを書くことだけですけど、他には、ゲームも好きですし・・・」
「あ、それ、大人気よね。うちの子どもも最近はまってるのよ。」
アハハハハ。
 エンドウさんいわく、
「私も研修で勉強したんだけど、アスペルガーやADHDの場合、一歳半検診、三歳児検診は異常なしでパスしまうのね。で、幼稚園や小学校で始めておかしいってなる。ツキシロさんが言うように、研修の先生も、中学生になったらほぼ確実に、周りの子との差を感じるようになるらしいわ。でね、手帳だけど、今のところ取る気はないのよね?」
「はい。親も反対していますし。」
「わかりました。こちらとしてもね、ツキシロさんはとても難しいケースなのね。あなたに明らかに知的障害があるとか、重い統合失調症になってるとかであれば、こちらから手帳を取りなさいって言えるんですけどね。」
障害をクローズにしてはうまくいかないし、オープンにするには迷うレベル。エンドウさんも悩んでいる。
「私も今、それをどうするかを悩んでるんです。親はさっきも言いましたけど大反対ですし。」
「障害受容に関しても?」
「全然ですね。それと、もう、就職に関しては親は立ち入らせないって決めています。」
 面談の終わり。
「わかりました。ではね、もう一度、日を改めて来室してもらえますか?」
「はい、わかりました。」
「では、予定持ってきますので、待っていてくださいね。」
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その7

2014-03-28 19:48:52 | ADHDとともに「君の星座」
 空気が読めない、対人スキルが未熟、言われたことにすぐ言い返せない、言葉遣いが下手。
「これって、ADHDでもあるんですね。」
ジョブサポートセンターの、保健師マツウラさんと。勉強すればするほど、知ることがいっぱい出てくる。
「講師の時は、講習も自閉症の話ばっかりだったんですよね。実際に、検査で上がってくるお子さんも自閉症ばっかり。ADHDって本当にいないんですよね。でも、いろいろ勉強してわかってきました。わかりにくいんですよね、ADHDって。ほら、誰にでもこういうことってあるじゃないですか。自閉症、学習障害と合併する人が多いとしても・・・・」
「うーん、そうね。」
保健師マツウラさんも、なるほどって顔してる。そして、懐かしそうに。
「私が保健所で乳児検診担当してた時は、そういう障害の定義もなかったものね。」
そうでしたね。
 ここから、過去の振り返り。
「私、幼稚園から問題児でしょ?まあ、高校ぐらいの時はこちらもちょっと大人だし、先生もいい人がちょっとだけいたしましでしたけど、何回児童相談所に連れて行くって言われたかわからないぐらいですよ。」
「それは辛かったでしょうね。でもね、ツキシロさん、二十年前の児童相談所なら、行かないほうがよかったと思うわよ。今でこそ発達障害の定義があるけど、」
「あの当時はない、ですものね!」
「そう!」
「下手に相談に行ったら、無理に勉強させて難しい学校にやったことがいけないから、学校を辞めさせなさいってなったかもですよね!」
これは私が今、ひらめいたようなことだけど、要するに、相談機関に相談に行ったところで、必ずしも適切な助言をもらえるとは限らないと言うこと。
 ここで始めてお世話になった、セキモトさんの時に思った。カウンセリングって、ああしたら、とか、こうしたら、とか言ってもらえるものではない。自分で答えを出すことを、手伝ってもらっているだけなんだと。
「ツキシロさんは、自分でちゃんと答えを見つけていくし。本当に偉いわ。」
「そんなことないですよ。」
私、かなり助けてもらってるもん。そうでなければここまでこれなかった。
「あさっては、ハローワークの適性検査に行くんです。」
「そうなのね、がんばって!」
「ありがとうございます。」
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その6

2014-03-27 20:03:44 | ADHDとともに「君の星座」
 今日のカウンセリングは、進んだのか進まなかったのか・・・だけど、そうだよ、ムライさんの言うとおりだよ。
『今までの仕事は合わなかったんですね。』
そのとおり!合わなかったから切られた、続かなかった。
 何食わぬ顔で家に帰る。・・・・!ドクターが注意してくれてから、やらなくなったけどさ!去年の秋の終わりごろ、ジョブサポートセンターでキャリアカウンセリングを受けて帰って来たら、五時間も六時間も怒鳴り散らして!全く!うちの親は私に働いて欲しいのか、引きこもってほしいのかわからない!そのまま自室に上がって、またパソコンを開けた。
 私に向いてる仕事って何なのかな?今までの経緯から考えると、事務は出来ない、これは確定。教師も出来ない、これも確定。じゃあ、受付の仕事は?・・・そうだその職場にいた時、よく言われたよ。
『もっとよそで働いたら?』
『こんな所にいたら、ツキシロさん、もったいないよ。』
一見、持ち上げてるような言い方に聞こえるけど、あれはウソ。仕事の能力がないから出て行けというのが、その言葉の裏の本当の意味だ。いくら話が苦手な私でも、そのぐらいは見抜けるんだぞ!
 じゃあ、私、何が出来る?・・・ネットの情報は信用するなって、発達障害者支援センターのイワキさんにも言われたけど、でも、今はそれしか情報を得る手段もなく。
『ADHD 就職』
『ADHD 仕事 むいている』
『ADHD 仕事 むいていない』
どんどん検索していくと、へぇ、少ないながらも、それなりの情報は出てるんだな。
 要するに、ADHDを持つ人はアクティブで自由な発想を持つ人たち、と言うことになるんだ。で、

『ADHD当事者にとって、一番の鬼門は事務職』

一瞬ドキッとした。だって、私が感じていたとおりだよ、これ。不注意特性があるため、整理能力に乏しく、結果、事務仕事は向かないとなるらしい。
 一つ横から用事を言われると、当然今やっていた仕事がストップする。で、その用事が終わると、それまでやっていた仕事に戻れなくなる。複数の仕事を言い渡されると、どれを優先すべきかわからなくなる。先延ばし傾向があって、いつまでも仕事が終わらない・・・挙げられている実例。私はどれに当てはまるかはわからないけど。
『むしろ、新聞記者やジャーナリストなど、変化に富んだ仕事にむいています。』
そうなんだ!
『営業マン、教師として活躍する人も多いです。』
 

  
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その5

2014-03-26 19:29:00 | ADHDとともに「君の星座」
 社会人になってから、大嫌いになったゴールデンウィーク。それが終わると心の底からほっとするよ。働いていた時は、非正規ゆえに休日があると給料減。失職中は求職活動できず・・・この十年、平和にこの時期を過ごせたことなんてあっただろうか。
 ジョブサポートセンター。今回は、ムライさん。保健師マツウラさんのカウンセリングより先にキャリアのカウンセリングが取れるなんて、ここしばらくなかったことだな。
「こんにちは、お世話になります。」
特に大きな動きといってはないけれど、前回お世話になった時から今日までに、
「連休の前に、ハローワークの障害者窓口に登録しにいくのと、こころのクリニックの集団療法の一回目がありました。で、連休の谷間の日に、発達障害者支援センターの面接がありまして・・・」
「たくさん大事なことをこなされてきたんですね。ツキシロさんは行動力がおありですものね。」
 行動力がある・・・そういってほめられたのは初めてかもしれない。
「ありがとうございます。行動力・・・うーん、あまりそういう評価受けたことないんですよ。むしろ、早くしなさいってね。」
アハハ。でも、私は周りの大人が言うほどのんびり屋でも、ぐずぐずしている子でもない。
「私なりのペースがあるのに、いつも遅い遅いってお尻ひっぱたかれて、腹立ちましたよ。そんなに周りの子より遅れてるってことありませんって。」
アハハハハ。この辺は、私が三月生まれだと言う問題もあるかもしれない。ほら、四月生まれの子となら、十一ヶ月も月例差がある。自分の年齢月齢としたら普通でも、そういうこと比較すると遅く感じられてしまったのかも。
「でも、そこを乗り越えて、がんばってこられたんですから。それだけでもご立派ですよ。」
「いえ。」
 それが今、こんな結果になってるんだから。乗り越えたとはいえないと思う。その理由が、障害のせいだとしても。
「私、何なら出来るのかな?って思うんですよ。これだけ失敗するともう、できることはないんじゃないかって。」
はぁ・・・
「その辺をゆっくり、整理していきましょうか。要するに、今までのお仕事はあわなかったんですね。」
なるほど!合わなかった!確かにそういう割り切り方はあるかもしれない。障害がなくても、仕事の合う、合わない葉誰にでもあるもんね!
 残り時間で、ちょっとでも整理していく。
「医療事務はね、私、子どもの時からこれは出来ないだろうなって思ってたんです。どうやって処方箋とか間違えずに出せるのかな?って不思議に思っていましたから。」
「わかりました。そんな感じで、ちょっとずつ整理していきましょう。必ずできることはありますから、ね。」
 
 
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その4

2014-03-25 19:31:52 | ADHDとともに「君の星座」
 黄金週間だからかな?ゲームセンターも、
『クレーンゲーム、本日全て百円です!』
いろいろサービスやってる。今日も、家にはいたくなくて、ふらふら出てきた。やっぱり、お客さん多いな。メダルゲームも満席。
 で、クレーンゲームを見て回る。
「あー!」
「もうちょっとだよ!もう一回やろ!」
どうかな?・・・二回、三回、設定が厳しい目なのかな?あ、落ちた。人のことながらよかった。私もほしいプライズあるんだけど、ちょっとあれは、取りにくいかな?
 もう一度、メダルゲームのコーナーに戻った。満席の中、ゲームの様子を見てるだけでも面白い。失業中で、当面仕事は探し始められないから、出来るだけお金は使わないでいる。
『うん、金銭、時間、身辺管理がきちんとできる。これは素晴らしいことです。不注意のある人は、これが出来ない人が多いんですよ。』
ドクターが言ってたけど。そういう意味では、ADHDの症状は当てはまらない気がする。ADHDには、不注意優位型、衝動多動型、混合型とあるんだけど・・・
 私、どれになるんだろうか?・・・人を殴った記憶・・・中学から暴力沙汰はやめたけど、むしろ、私は乱暴者と言われたことが多かった。他には、気分がころころ変わるとか。不注意って指摘されたことはなかったし、それで困ったこともない。

ブルルル!

ケータイにメールが来た。お母さんか。はん!一年半も診断を遅らせた挙句、二回も解雇なんて目にあわせた!でも・・・
『おじいちゃんが外食に行こうって言っている。ハルカも来れるね?』
おじいちゃんの御用か。じゃあ。
『わかりました、現地に行きます。』
急いでゲームセンターを出る。おじいちゃんは何も悪くない。お出かけなら、手があったほうがいいし。行こう!
 地下鉄に飛び乗って、現地に急行した。
「あ、ハルカが来た!」
ホテルのロビー。お父さんとお母さんが、車椅子のおじいちゃんとお店の前にいる。おじいちゃんのリクエストで、和食のいいお店へ。
 おじいちゃんとだけ、時々言葉を交わしながら、綺麗なお料理を味わう。コースの最後の、たけのこご飯。
「ハルカ、残ってるし、食べたら?」
お母さんの言葉に、ジェスチャーでおじいちゃんのほうに勧めるように促す。
「おじいちゃん、たけのこは固いから。お母さんたちももう入らないし。ハルカが食べて。」
じゃあ、さらえますか。
  

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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その3

2014-03-24 16:34:00 | ADHDとともに「君の星座」
 ハルカ、十六歳、高校二年生。
 学校では、誰とも仲良くないし、口も利かないけど、無視されてるわけではない。
『バシィ!』
いきなり殴られたり、時々、親しげに話しかけられては、
「あんたは、芸能人になって、やめて、漫画家になって、それもやめて、で、最後はフリーター。」
「いい加減にしろ!」
冗談だとしても酷すぎる!人の将来なんか見えるのか、あんた!一発蹴りを入れたら、相手は離れていった。
 まだ小学校までは楽しい部分もあったけど、中学以降は本当にそう思う。学校って、勉強だけだったら楽なのに。
「いつまでゲームしてるの!勉強しなさい!」
わ!お母さん!その勉強も好きじゃないけどさ。あーあ。
 だんだん寒くなってきて、もっと憂鬱な行事が近づいてきた。そう、修学旅行。春休みに行くんだけどさ。もう、冬休み前から、ホームルームの時間はその話し合いばっかりで。
「今日は、四日目のホテルの部屋決めをします。」
係の子が話し合いの進行をしているけど、上の空。皆、黒板に名前を書きにいくけど・・・担任が、
「えーっと、皆、書いたか?・・・ツキシロさん!」
書きにも行かなかった私の名前が呼ばれる。当たり前だけど。
 嫌々の顔をしている私を、半ば心配そうに見ているグループがあった。手招きしている。
「・・・・。」
「ツキシロさん!・・・ほら、名前書いて。」
結局担任に促されて、招かれたグループのところに名前を書いた。
 家に帰っても、ぐずぐず言ってる。
「大体さ、何が楽しくてあんなの行かなくちゃ行けないの?」
「そりゃ、思い出作りよ。小学校の時は楽しかったって言ってたじゃない。」
「まあ、そうだけどさ・・・」
中学から一緒の学校の連中とと気が合わない。それもあるけど、実は、中学の修学旅行ですごく嫌な思いして・・・本当にうかつだった。まさか、自分があんな秘密のものを落としてるなんて。
『やらしー!ゲラゲラゲラゲラ!』
年齢と共に変化を迎えた体。皆、もっと小さいのをしてるのに、私だけ・・・ブラジャーが大きすぎる!物凄くショックだったんだ。
 ふいに、お父さんの前でも言えてしまった。
「私、修学旅行、行きたくない。」
「・・・。ハルカ、それは行っておいた方がいい。行かなかったら、自分はそれにもいけなかったって、将来、後悔するぞ。」


 
 

 
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その2

2014-03-23 19:49:23 | ADHDとともに「君の星座」
 世間はゴールデンウィークか。飛び石のその平日、発達障害者支援センターの面談日を迎えた。こちらの面談は月に一回だけど、この一ヶ月、ハローワークの登録のことで、ずいぶんイワキさんのお世話になっていた。
「こんにちは。」
だから、あまり久しぶりにあったという感じもなく。
「この間は、ありがとうございました。」
「いえいえ。とりあえずよかったですね。親御さんとは?」
相変わらず、柔らかい口調のイワキさん。この間のハローワークで口を利いてないことを話していたからだろうか。
「相変わらずですよ。口利く気もしないです。昨日、服の入れ替えしてたら、母が話しかけてきましたけどね、無視しましたよ。」
 親のことはちょっと横に置いといて、今日相談したいのは、
「あの、障害者手帳のことなんですけど。ほら、この間、ハローワークでも言われましたけど、やっぱり、取ったほうがいいんでしょうか?」
「うーん、そうだね。先月の面談の時もお話しましたけど、就職のために取ってる人もたくさんいますよ。」
守秘義務があるだろうし、あまり突っ込んで聞けないけど。
「で、どうでしょうか?発達障害をオープンにして、うまくいってるもんですか?」
 本当のところ、どうなんだろう?ジョブサポートセンターの人は、皆、いいことしか言わない。でも、デメリットは?
「本当にないんですか?私も聞いてるんですけど、精神の手帳って、殆どメリットがないって。」
そう。雇用についても、現在のところ、雇用義務まではつかない。
「障害者枠で就職しても、クビにならないってことではないわけでしょ?」
「まあ、そうですね。・・・あ、ちょっと待ってくださいね。」
 退室したイワキさんは、冊子を持って戻ってきた。
「うちでわかる範囲でしかないので、もうしわけないですけど・・・これは、Q県が障害者手帳を取った人に渡している冊子です。」
中には、それで受けられるサービスのことがいろいろ書いてある。
「うーん、就労については、これだけですね。」
障害者用のパソコン教室と、ハローワークの障害者窓口の話。
 なんか、あまり参考にならないな。
「私、働いてなかったわけじゃないですし・・・それなりに身につけたスキルもありますし・・・どうでしょうね?どれだけ有利に働くか。っていうか、親なんですよ。」
親が、認めてくれない。
「僕もよく聞きますよ。実際、僕の担当している利用者さんも。本人は認めているのに親が認めないって人たち。このセンターはね、家庭訪問もよくやってるんですよ。実際、僕もよく行きます。」
「そうなんですね・・・」
そういう意味では、私はまだ幸せかもしれない。うちは両親が、こころのクリニックに来てくれたし、お母さんはこのセンターにも一緒に来てくれた。
 本当に、どうするべきなのかな・・・そんなことを悩みながら、雑談に発展してしまい、
「では、時間ですのでまた来月に。それまでに、適性検査ありますよね。」
「はい。」
「その結果が出たら、また連絡来ますから。ケース会議に僕も同席します。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
 
 
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ADHDとともに「君の星座」第12章 揺れて揺れて その1

2014-03-22 19:28:51 | ADHDとともに「君の星座」
 夜、もう結構な時間だけど、交通費を節約するために、わざわざ遠いバス停まで歩いてきている。こころのクリニックの集団療法だったんだ。今日は、その初回。四月も終わりとなると、結構暖かいけど、バスが来るまでバス停が見えるゲームセンターのドアの向こうで待たせてもらう。ふぅ・・・ま、よかったな。
 今日の集団療法に集まったのは、十二人。二十代から最高齢の人が五十歳。男性のほうが多かったのは、発達障害ってのはそもそも、男性のほうが多いからだろうな。そのわりには結構女の子もいて・・・自己紹介があったけど、今日来てた人の半分は、何だかのかたちで働いてる人だった。ばっちりビジネススタイルの男性もいたし、仕事で遅れてきましたって人もいて・・・
 二月に自分で探していった、当事者会でも思ったけど、ああして、ああいう場で話をしていると、全く普通の人たちなんだよね。何がおかしいって、正直全然わからない。お洒落な人もいるし、よくしゃべる人もいる。
『僕はパソコンが得意です。』
『車は乗れないです。』
『趣味で小説書いています。』
そうそう、私とよく似ているところがいっぱい。
『服を買えって言われるのが嫌!』
『人が多いのが耐えられなくて、家族とも一緒にいられないです。』
『音が苦手で、大きい声が嫌なんです。』
もう、この辺になったら、私とそっくり!
 障害名はわからなかったけど、それはそのほうがいいと思う。話がそれにとらわれてしまってよくないと思うし。でも、もうちょっと知りたかったな。働いてる人たちがどんな仕事をしてるのか、障害を明かしているのか、明かしていないのか。障害者手帳を取っているのか・・・ 
 よいしょ!そろそろ、半袖の服に入れ替えておこう。致し方なく、下の部屋で服の入れ替えをしているところに、お母さんが声を掛けてきた。
「ハルカ、この間デパートで服を買ってきたんだけど、ちょっと私には可愛すぎてね。ハルカ、来てくれない?」
「・・・・。」
シーズンオフの服を入れた衣装袋を持って、そそくさと立ち去る。
「何?まだ口利いてくれないの?」
 
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