地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

ワヤン・ゴレッ

2013年04月07日 | Weblog
インドネシアの伝統芸能で影絵人形劇の人形はワヤン・クリッ(Wayang Kulit)と呼ばれるものだが(http://blog.goo.ne.jp/hikkikkih/e/a9acd82eb936922737c25cd8da438d46)、影絵じゃない人形劇の人形はワヤン・ゴレッ(Wayang Golek)である。

Wayang Golekのショーがあるというので、車で1時間もかけて北ジャカルタまで観に行った。
なにやら有名な人形師のおじさんが演じてくれるそう。


向かった先はその人形師のおじさんの自宅。
いかにもと言った感じで人形がたくさんあるが、家自体はごく普通の民家。










その民家の玄関先にプラスチックの椅子を並べて、おじさん自らが人形劇を実演してくれた。




そのすぐ横の狭苦しいスペースで楽器の生演奏。





このように色んな種類の人形があるが、人形遣いはおじさん1人だけなので、一度に操れる人形は多くて2体。








登場人物が3人以上いるときは、残りの人形は持ち手の棒をグサッと土台に刺して、ただじっとしている。


インドネシアのWayang Golek自体は100年以上の歴史があるみたいだけど、このおじさん本人は、日本の文楽にインスピレーションを受けて人形を作り始めたと言っている。
何度も大阪に出向いて、文楽の人形師さんから頭の作り方を教えてもらったとも言っていた。

えーっと、確かに人形の頭自体はとても精巧にできている。

例えばこんな、オバマとユドヨノの人形なんかもよくできている。




しかし、日本の文楽とは決定的な違いが多々あるんだよなあ…。
よそ様の伝統文化にあれこれ口出ししてはいけないと思いつつ、完成度というかなんというか、、、疑問が残る。

まず、ストーリーがよく分からない。
一応どこかの王様が外部からの侵入者と戦うという設定らしいが、今一つストーリー性に欠ける。
影絵人形劇を観たときもそうだったけど、やたらと人形同士が殴り合ったり蹴りあったりするシーンばかりである。

次に、伝統的な衣装を身に着けて出てくる人形は美しいけど、普通にチェックのシャツを着ている人形も出てきたりする。
このお話の時代設定は一体いつなんですか?

結構グロテスクな顔の人形も登場する。
まあ、それはそれで悪役なら仕方ないのかもしれないけど、戦ったときにそのグロテスクな顔が割れて中から目玉が飛び出したりするのはいかがなものか。

さらには戦った後の人形がゲロを吐く設定もいかがなものか。
口からラーメンとか飛び出すし。

観客の大半は西洋人なので、基本、ドン引き。


影絵芝居もこの人形芝居も昔からインドネシアでは夜通し演じられてきたものである。
なのでちゃんとしたストーリーもあるはず。
だけど観光客向けに1~2時間で演じるものは、変にウケを狙って下品にしてあるようでどうにも解せない。
どうでもいいオバマとユドヨノを登場させたりもするし。

おじさん、日本の文楽から学んだんであれば、もうちょっと品格のある伝統芸能にしてください!
これならまだベトナムの水上人形劇の方が好感が持てる。


さらには、「インドネシアの人形劇の歴史ってどれぐらい古いんですか?」と質問しても、「めちゃめちゃ古いよ。イスラムが来るより前だから」としか答えてくれない。
素人ならまだしも、国で人形劇の第一人者と呼ばれてるぐらいなら、そこんとこもうちょっときちんと答えて頂けませんかね?

あと、人形を立たせるときは自然素材でできた台にグサッと持ち手の棒を刺すのだけれど、時々刺しにくそうにしてたりする。

…。
毎度のことなんだから、最初からきちんと刺しやすい穴を開けといたらどうですか?

影絵人形劇の時も、たくさんある影絵人形を取り出しやすいようには設置せずに、使ったらどんどん山積み。
なので、ストーリーの途中で人形使いさんが重なり合った人形の中から次の場面で使うものを探すみたいな場面が多々見られる。
「観ているお客様本位ではない」と言うのがインドネシアの基本だ。

元々屋外で演じる、気取らない大衆娯楽だったのかもしれないけど、日本人の感覚からいえば、それにしてもいろんなことが雑すぎる。
人形も殴り合い、蹴りあいばかりだし、普段からおじさんやスタッフの人形の扱いは全く丁寧ではないので、人形も衣装も傷んだり汚れたりしやすい。
「心を込める」とか「心を入れる」ってのは、インドネシアにはないことなのかな?



観劇後はおじさんの自宅内に入り、お菓子などふるまわれる。




家中おびただしい数の人形が飾られていて、圧巻。






ちなみにこれ、クレヨンしんちゃんらしいです…。





ここに飾られている人形は購入することもでき、西洋人は結構人形好きみたいで次々と買い求めていた。
意外とお安くて、1体1,500円ぐらい。

結構古い感じの人形もあるのに、そんなに気前よく売り払っちゃっていいのかなと思っていたら、こういう100年は経っていると思われる人形は売ってくれないらしい。




動物バージョンもあり、




珍しい馬に乗ったバージョンもある。(ちょっとピンぼけ)




トペン(お面)もたくさんあって、さながら博物館のよう。




チェスはおもしろいかも。





私はワヤン・ゴレッではなく、こちらのワヤン・スクッ(Wayang Suket)を買った。




ナチュラル素材で編んである、影絵芝居の人形だ。
何の素材かはネットで調べてもよく分からないが、「草」である。
以下のサイトにちょっと説明があるけど、rumputはインドネシア語の辞書で調べても「草」とか「雑草」としか出ていない。
http://hanajoss.exblog.jp/d2011-03-07/

すでに持っているカラフルなワヤン・クリッとはまた違った味わいで、好き。





西洋人たちがわれもわれもと人形を買い求めたので、この日1日だけでもかなりの儲けになっただろうな。



この日、もう3か月も前に制作してまだ返してもらえていなかった陶芸作品がようやく手元に返ってきた。

ちゃんと箱に入れてくれている。




こちら、私が作ったゆがんだ小鉢。



先方で色をつけていい感じに仕上げてくれていた。


カメさんも色を塗ってくれている。




ありがたいのだけれど、ちょっと気になるのは、せっかく裏に名前を彫っていたのに、勝手に全部消されて番号が振られていたこと…。


あと、おまけでチョウチョと貝殻の小物をつけてくれていた。






それにしても、もうインドネシアの人形劇はいいかな。。。