お役立ち情報ブログ

日々の生活やビジネスにおいて役に立ちそうな情報を収集、公開しています。

米国の戦略拠点を縮小、ソフトバンクの誤算 シリコンバレー拠点の理想と現実

2015年02月08日 07時55分00秒 | 経済
 米シリコンバレーに構えたソフトバンクの戦略拠点が、早くも大幅な軌道修正を強いられている。

 2013年9月に開設した新オフィスは4階建てのビル2棟。携帯端末の調達や開発、ネットワーク試験、現地企業との連携など、多くの役割を担い、1000人規模が働く一大拠点にするつもりだった。

 だが現実は、孫正義社長が描いた構想に遠く及ばない。目下、拠点で働くのは90人足らず。ソフトバンクは70人弱の社員を送り込んでいるが、その大半を占め、端末開発を手掛けるプロダクト・サービス部隊が2月末までに日本に引き揚げる見通し。警備など現地で採用した総務スタッフの一部も解雇している。

 経営戦略や企画担当の人員が残るものの、入居しているグループ会社を考慮しても、30人ほどの陣容になりそうだ。ほとんどが空きスペースとなっている片方のビルでは、テナント募集が検討されているもよう。“中核拠点”で何が起きているのか。

 これには、米携帯業界4位のTモバイルUSの買収中止と、同3位で2013年に傘下に収めたスプリントの体制変更が関係している。

 ソフトバンクは当初、通信規格が共通するTモバイルを含めた3社の共同開発拠点を作ることで、コストを削減する狙いだった。そのため、Tモバイル獲得が確定するまでは、新オフィスへの本格的な投資が凍結されていた。

 だが2014年8月、規制当局の認可を得ることが難しいと判断し、買収を断念。米国の携帯市場はスプリント単独で挑むしかなくなった。そして同月、ソフトバンク傘下の端末卸会社ブライトスターの創業者で、「販売に強い才覚がある」と孫社長が太鼓判を押すマルセロ・クラウレ氏(44)が新CEOに就いた。

 クラウレCEOは「最初は様子を見るつもりだったが、4日で我慢できなくなった」と語るように、低価格プランや米アップル「アイフォーン」の長期レンタルプログラムを仕掛け、リストラも断行するなど、就任直後からフル稼働。米中西部に位置するカンザス本社では毎日1時間、幹部を集めた戦略会議を行う。

 昨年11月にはソフトバンクモバイルの宮川潤一専務が技術面の戦略を統括するナンバー2として赴任。経営の中枢がカンザス本社に集まる中で、あえて西海岸のシリコンバレーに開発拠点を構える意味合いは薄れた。結局、日米共通モデルとして投入する端末の開発も、本社の研究拠点に集約することになった。ソフトバンクのプロダクト部隊はごく少数がカンザスに移るが、多くは日本からの出張で対応する見込みだ。

 ソフトバンクグループの人事を統括する青野史寛執行役員は、一連の見直しについて、「米国の開発はマルセロがいる本社に集約すべきという判断。シリコンバレー拠点は計画と異なる面もあったものの、共同で調達コストを引き下げる取り組みはやっていく。空いた建物をどうするかは課題だが、スプリントとの経営会議も続ける」と言う。

 もっとも、米国における端末の開発体制を予定どおりに整えられなかったことで、影響も出ているようだ。2014年11月にソニーモバイルコミュニケーションズの主力機種「XperiaZ3」がソフトバンクの端末ラインナップに加わった。今年はスプリントにも投入される予定だったが、見送りになったとの話も関係者から聞かれる。

 共通モデルは日米の販売戦略に直結する重要課題。開発陣をカンザスに集約し、プロジェクトを再構築できるかどうかが、今後の競争戦略を左右することになる。

 こうした中、注目されるのがスプリントの動向だ。同社は1月8日、2014年10~12月期の契約数が96万件の純増だったと発表(上図)。クラウレCEOは前日のイベントで「ライバルがわれわれから顧客を奪うトレンドはもう終わりだ」と宣言していた。

 だが契約増の大半は、プリペイド契約と卸売り契約によるものだ。利用者単価の高いポストペイド(後払い)契約は3万件の増加にとどまる。同じ期間で、米国市場の2強であるAT&Tとベライゾンは、200万件前後の純増を達成。猛追するTモバイルも、212万件の純増を獲得するなど、ライバルは総じて好調。スプリントの実績は順調とは言いがたい。

 スプリントは2014年12月、AT&Tとベライゾンの2強から乗り換えれば同等のプランで料金を半額にするキャンペーンを繰り出すなど、今後も低価格をキーワードに攻勢に出る構えである。カンザスへの一極集中とソフトバンクの後方支援によって、どこまで巻き返せるか。両社の連携の強さがあらためて問われることになりそうだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする