原子力発電の代替エネルギー確保などを目的に休耕田や耕作放棄地などを活用して、全国各地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の設置が相次いでいる。その稼働で課題となっているのが、日照を遮る雑草だ。除草剤の散布や防草シートの敷設などの対策も講じられているが、企業によっては発電量の維持とコスト削減を兼ね、羊やダチョウに似た豪州原産の鳥・エミューといった草食動物の放し飼いに取り組んでいる。
ウールの総合メーカーとして知られ、繊維産業の発展に寄与してきた毛織物の大手「ニッケ」(大阪市中央区)は、兵庫県稲美町と明石市にかけて広がるゴルフ場跡地約22万平方メートルに太陽光パネル約5万5千枚を設置した「ニッケまちなか発電所明石土山」を開設。10月1日から一部稼働を始め、来年2月の完成時には総出力が一般家庭約3850世帯分に相当する1万6800キロワットになる見込みだ。
メガソーラーが設置される広大な敷地では放っておくと草が伸び、太陽光パネルを覆って影をつくり、発電量に影響が出る恐れがある。このため、雑草対策として除草剤の散布や防草シートの敷設、コンクリートで地面を覆う措置などがとられるが、地面をコンクリートで覆うと放射した熱でパネルが暖められ、発電効率が低下するという。
そこでニッケは防草シートのほか、メガソーラーの敷地のうち約1万5千平方メートルを区切って羊3頭を放し飼いすることを計画。羊がパネルに上がったり、ひづめでパネルを割るなどの懸念があったが、今年5~6月に試験的に放牧してみたところ、パネルの上に乗ったり、配線のケーブルをかじったりするようなトラブルもなかったため、放し飼いを決めた。
試算によると、羊のいる場所を草刈り機などを使って除草した場合、人件費などで年間200万~300万円かかるといい、大幅な経費削減が期待できる。羊は六甲山牧場(神戸市)から無償で譲り受けた。3頭で十分だとみるが、様子を見て増やすかどうかは検討する。
同社の創業者、川西清兵衛(せいべい)は早くから羊の飼育に関心を持ち、明石の国有林を5500円で落札し、明治45年に「日本毛織土山緬羊飼育場」を開設した。その後、牛の飼育に切り替えられ、昭和30年代まで牛の牧場として利用された。さらにその後はゴルフ場が整備され、メガソーラーはその跡地に設置された。
同社総務法務広報室は「うちは毛織物の会社でもあり、マスコットキャラクターも羊。そもそも、あそこは羊と縁があるところだった」と説明。ソーラーパネルが広がる無機質な空間に、羊が放牧されることによる癒し効果も強調する。朝夕の羊の厩舎(きゅうしゃ)からの出し入れや清掃などは近くの住民に手伝ってもらうなど、地域住民との交流も生まれており、同社は地元の小中学校の児童、生徒らの施設見学なども予定している。
一方、太陽光パネルの機能維持のため、羊以外の動物に目をつけたところもある。大分県宇佐市の塩田跡地約2万平方メートルで今年6月、メガソーラーの稼働を始めた石油製品の販売・卸売業の「大分石油」(大分市)だ。ニッケ同様に人手による除草では時間と費用がかかるとして、エミュー6羽とヤギ2頭を7月から放し飼いしている。
同社新エネルギー部は「ダチョウは気性が荒く、比較的おとなしいエミューを飼うことにした」という。エミューは熊本県高森町のダチョウ牧場から通常より安く、6羽を計20万円で購入した。
放し飼いは、フェンスの隙間がない敷地の4分の1に当たる場所で行っているが、将来は全体で行うことも視野に入れており、成長したエミューを食肉として販売することも検討している。環境にやさしく、発電量の維持と経費削減につながる-。メガソーラー事業と草食動物という一見、ミスマッチな取り合わせは、今後ますます注目されそうだ。
ウールの総合メーカーとして知られ、繊維産業の発展に寄与してきた毛織物の大手「ニッケ」(大阪市中央区)は、兵庫県稲美町と明石市にかけて広がるゴルフ場跡地約22万平方メートルに太陽光パネル約5万5千枚を設置した「ニッケまちなか発電所明石土山」を開設。10月1日から一部稼働を始め、来年2月の完成時には総出力が一般家庭約3850世帯分に相当する1万6800キロワットになる見込みだ。
メガソーラーが設置される広大な敷地では放っておくと草が伸び、太陽光パネルを覆って影をつくり、発電量に影響が出る恐れがある。このため、雑草対策として除草剤の散布や防草シートの敷設、コンクリートで地面を覆う措置などがとられるが、地面をコンクリートで覆うと放射した熱でパネルが暖められ、発電効率が低下するという。
そこでニッケは防草シートのほか、メガソーラーの敷地のうち約1万5千平方メートルを区切って羊3頭を放し飼いすることを計画。羊がパネルに上がったり、ひづめでパネルを割るなどの懸念があったが、今年5~6月に試験的に放牧してみたところ、パネルの上に乗ったり、配線のケーブルをかじったりするようなトラブルもなかったため、放し飼いを決めた。
試算によると、羊のいる場所を草刈り機などを使って除草した場合、人件費などで年間200万~300万円かかるといい、大幅な経費削減が期待できる。羊は六甲山牧場(神戸市)から無償で譲り受けた。3頭で十分だとみるが、様子を見て増やすかどうかは検討する。
同社の創業者、川西清兵衛(せいべい)は早くから羊の飼育に関心を持ち、明石の国有林を5500円で落札し、明治45年に「日本毛織土山緬羊飼育場」を開設した。その後、牛の飼育に切り替えられ、昭和30年代まで牛の牧場として利用された。さらにその後はゴルフ場が整備され、メガソーラーはその跡地に設置された。
同社総務法務広報室は「うちは毛織物の会社でもあり、マスコットキャラクターも羊。そもそも、あそこは羊と縁があるところだった」と説明。ソーラーパネルが広がる無機質な空間に、羊が放牧されることによる癒し効果も強調する。朝夕の羊の厩舎(きゅうしゃ)からの出し入れや清掃などは近くの住民に手伝ってもらうなど、地域住民との交流も生まれており、同社は地元の小中学校の児童、生徒らの施設見学なども予定している。
一方、太陽光パネルの機能維持のため、羊以外の動物に目をつけたところもある。大分県宇佐市の塩田跡地約2万平方メートルで今年6月、メガソーラーの稼働を始めた石油製品の販売・卸売業の「大分石油」(大分市)だ。ニッケ同様に人手による除草では時間と費用がかかるとして、エミュー6羽とヤギ2頭を7月から放し飼いしている。
同社新エネルギー部は「ダチョウは気性が荒く、比較的おとなしいエミューを飼うことにした」という。エミューは熊本県高森町のダチョウ牧場から通常より安く、6羽を計20万円で購入した。
放し飼いは、フェンスの隙間がない敷地の4分の1に当たる場所で行っているが、将来は全体で行うことも視野に入れており、成長したエミューを食肉として販売することも検討している。環境にやさしく、発電量の維持と経費削減につながる-。メガソーラー事業と草食動物という一見、ミスマッチな取り合わせは、今後ますます注目されそうだ。