■秋は年金保険料値上げの季節
街のウインドウがいっせいに冬支度に変わる季節。
「新しいコートもほしいけど、最近、なぜかお金がすぐなくなっちゃうからなあ」と嘆いているあなた。その実感は正しい!
新聞やテレビでは「景気がよくなってる」という声を聞くけれど、それって一部の企業だけ。社員の数は減ったまま、仕事の量は増えたまま、それでも給料は上がらないまま――という会社が多いはず。周囲を見回しても、給料が増えて羽振りのいい人なんてみつからないのが現実では?
そんな中で、着々と値上がりしているのが社会保険料。特に、毎年コンスタントに上がっているのが厚生年金保険料だ。
会社員が加入している厚生年金の保険料は、2004年から2017年にかけて毎年0.354%ずつ上がることが決まっている。保険料が改訂されるのは毎年10月の給与からで、2013年10月からの保険料率は月収(4~6月の給与に基づいて計算した標準報酬月額)の16.766%から17.12%に上昇する。
「給料の17%!」あまりの多さにひっくり返りそうだけど、厚生年金保険料は半分を会社が負担するので自己負担は半分の8.56%。表のように月収30万円の人なら、10月からの保険料は月2万5680円で前年より531円のアップ。「大したことない」と思ってはいけない。少しずつでも毎年上がっているから、2009年からの4年に合わせて月2124円値上がりしたことになる。
社会保険料のもう1つの柱が健康保険料。勤務している会社によって加入する健康保険組合は異なるが、どこも保険料が上昇傾向にあるのは同じ。おもに中小企業が加入している協会けんぽを例をとれば、今年度の保険料は据え置きだった。とはいえ、表のように2009年度の保険料と較べると、月収30万円の人ならこの4年間で月2685円もアップしている(東京都の例)。ちなみに、健康保険料も自己負担と同額を会社が負担していることも頭にいれておこう。
この2つの保険料を合わせただけでも、4年間で月に約5000円の負担増。給料が上がらない中で毎月、自由に使えるお金が5000円減っていれば、給料日前に苦しくなるのも無理はない。厚生年金保険料は今後、少なくとも2017年までは上がり続けるので、月収30万円が同じならあと2124円アップするのは間違いない。
さらに、40歳以上の人には健康保険料に介護保険料が上乗せされる。表のケースで現在40歳以上なら、2013年10月以降の介護保険料は月2325円。そろそろ大台が近づいてきた人は、心しておいたほうがいいかも……。
■消費税が上がったら年20万円も負担増!?
私たちのフトコロを苦しめるのは社会保険料だけではない。税金だって着々と上がっている。
今年1月から所得税が上がっていることを知っているだろうか? 今年から2037年まで、所得税の2.1%が復興特別税として上乗せされる。給与から天引きされる所得税額も今年1月から上がっているはずだ。年収500万円程度で独身の人なら、所得税は年間で3000円弱の増税になる見込み。また、住民税についても2014年6月から10年間、こちらは年収に関係なく毎年1000円が上乗せになる。
このほか、子どものいる家庭では、2010年の子ども手当導入以来、所得税・住民税の年少扶養控除廃止、児童手当の復活、といったスッタモンダに巻き込まれたはず。大和総研の試算によれば、この一連の騒動による影響で、小学生の子ども2人がいる家庭では、2011年から2013年の間に年間12万円(収入が多くて所得制限を受ける家庭では年24万円)の負担増になっているという(大和総研『社会保障・税一体改革による家計への影響試算』より)。
そして、迫っているのが消費税の増税だ。
政府は、消費税を2014年4月から8%に値上げすると発表、2015年10月からは10%に増税しようと目論んでいる。といわれても、どれだけ生活が苦しくなるのかピンとこないのが普通。そこで、毎月いくら負担が増えるか計算してみると――。
消費支出10万円に対して、消費税3%アップなら負担増は3000円、5%アップなら負担増は5000円。住宅の家賃には消費税がかからないから、手取り額から貯金額と家賃を引いて、毎月どれぐらい使っているかを考えればざっくり計算できる。もし毎月15万円使っているなら、食品などに軽減税率の適用がないとすれば、消費税が10%にアップしたときの負担増は月7500円だ。
これらの社会保険料アップや増税を全部合わせると、いったいどれだけ負担が増える? 前述の大和総研による調査では、2011年と2016年を比較した場合の負担増は、30代独身の場合だと年収500万円の人で年間約20万円、年収800万円の人で年間約31万円。40歳以上共働きで小学生の子ども2人の場合だと、年収800万円家庭で年間約45万円、年収1000万円家庭で年間約53万円にのぼると試算している。
会社員は社会保険料や税金を給料から天引きされているため、ジワジワ増えていても気づいていない人が多いのでは? でも、実際に消費税が上がれば、財布から出て行く税金の重さをイヤでも実感することになるのは間違いない。その前に、給与明細をじっくりと見て、自分自身の社会保険料や税金をきちんと認識しておこう。
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マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。
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(マネージャーナリスト 有山典子)
街のウインドウがいっせいに冬支度に変わる季節。
「新しいコートもほしいけど、最近、なぜかお金がすぐなくなっちゃうからなあ」と嘆いているあなた。その実感は正しい!
新聞やテレビでは「景気がよくなってる」という声を聞くけれど、それって一部の企業だけ。社員の数は減ったまま、仕事の量は増えたまま、それでも給料は上がらないまま――という会社が多いはず。周囲を見回しても、給料が増えて羽振りのいい人なんてみつからないのが現実では?
そんな中で、着々と値上がりしているのが社会保険料。特に、毎年コンスタントに上がっているのが厚生年金保険料だ。
会社員が加入している厚生年金の保険料は、2004年から2017年にかけて毎年0.354%ずつ上がることが決まっている。保険料が改訂されるのは毎年10月の給与からで、2013年10月からの保険料率は月収(4~6月の給与に基づいて計算した標準報酬月額)の16.766%から17.12%に上昇する。
「給料の17%!」あまりの多さにひっくり返りそうだけど、厚生年金保険料は半分を会社が負担するので自己負担は半分の8.56%。表のように月収30万円の人なら、10月からの保険料は月2万5680円で前年より531円のアップ。「大したことない」と思ってはいけない。少しずつでも毎年上がっているから、2009年からの4年に合わせて月2124円値上がりしたことになる。
社会保険料のもう1つの柱が健康保険料。勤務している会社によって加入する健康保険組合は異なるが、どこも保険料が上昇傾向にあるのは同じ。おもに中小企業が加入している協会けんぽを例をとれば、今年度の保険料は据え置きだった。とはいえ、表のように2009年度の保険料と較べると、月収30万円の人ならこの4年間で月2685円もアップしている(東京都の例)。ちなみに、健康保険料も自己負担と同額を会社が負担していることも頭にいれておこう。
この2つの保険料を合わせただけでも、4年間で月に約5000円の負担増。給料が上がらない中で毎月、自由に使えるお金が5000円減っていれば、給料日前に苦しくなるのも無理はない。厚生年金保険料は今後、少なくとも2017年までは上がり続けるので、月収30万円が同じならあと2124円アップするのは間違いない。
さらに、40歳以上の人には健康保険料に介護保険料が上乗せされる。表のケースで現在40歳以上なら、2013年10月以降の介護保険料は月2325円。そろそろ大台が近づいてきた人は、心しておいたほうがいいかも……。
■消費税が上がったら年20万円も負担増!?
私たちのフトコロを苦しめるのは社会保険料だけではない。税金だって着々と上がっている。
今年1月から所得税が上がっていることを知っているだろうか? 今年から2037年まで、所得税の2.1%が復興特別税として上乗せされる。給与から天引きされる所得税額も今年1月から上がっているはずだ。年収500万円程度で独身の人なら、所得税は年間で3000円弱の増税になる見込み。また、住民税についても2014年6月から10年間、こちらは年収に関係なく毎年1000円が上乗せになる。
このほか、子どものいる家庭では、2010年の子ども手当導入以来、所得税・住民税の年少扶養控除廃止、児童手当の復活、といったスッタモンダに巻き込まれたはず。大和総研の試算によれば、この一連の騒動による影響で、小学生の子ども2人がいる家庭では、2011年から2013年の間に年間12万円(収入が多くて所得制限を受ける家庭では年24万円)の負担増になっているという(大和総研『社会保障・税一体改革による家計への影響試算』より)。
そして、迫っているのが消費税の増税だ。
政府は、消費税を2014年4月から8%に値上げすると発表、2015年10月からは10%に増税しようと目論んでいる。といわれても、どれだけ生活が苦しくなるのかピンとこないのが普通。そこで、毎月いくら負担が増えるか計算してみると――。
消費支出10万円に対して、消費税3%アップなら負担増は3000円、5%アップなら負担増は5000円。住宅の家賃には消費税がかからないから、手取り額から貯金額と家賃を引いて、毎月どれぐらい使っているかを考えればざっくり計算できる。もし毎月15万円使っているなら、食品などに軽減税率の適用がないとすれば、消費税が10%にアップしたときの負担増は月7500円だ。
これらの社会保険料アップや増税を全部合わせると、いったいどれだけ負担が増える? 前述の大和総研による調査では、2011年と2016年を比較した場合の負担増は、30代独身の場合だと年収500万円の人で年間約20万円、年収800万円の人で年間約31万円。40歳以上共働きで小学生の子ども2人の場合だと、年収800万円家庭で年間約45万円、年収1000万円家庭で年間約53万円にのぼると試算している。
会社員は社会保険料や税金を給料から天引きされているため、ジワジワ増えていても気づいていない人が多いのでは? でも、実際に消費税が上がれば、財布から出て行く税金の重さをイヤでも実感することになるのは間違いない。その前に、給与明細をじっくりと見て、自分自身の社会保険料や税金をきちんと認識しておこう。
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マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。
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(マネージャーナリスト 有山典子)