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緑の街の水先案内人

都城市で緑の街の水先案内人として移る日々を写真と日記で綴ります。

書籍「ルーズベルトの責任」

2012年01月27日 18時53分22秒 | 政治
1月27日(金)  

 今を去る七〇年前の日米開戦はなぜ始まったか?開戦の年に、この世に生を受けて早人生も大半を過ぎてしまった身には、ある面で太平洋戦争とは歴史の彼方へすでに走り去った事と、自分を納得させれば済む問題にも見えます。まして、地方都市でのささやかな自営業者には、日々の仕事に追われて、一日が無事に終える事が何よりの至福にも思えます。

 日米戦争を幼心に意識し始めたのは、戦局も日本の負け戦が濃厚になり始めた、昭和二〇年春の頃からと思い出します。わずか四歳の身です。国鉄志布志駅は南九州輸送網の拠点でありました。鹿屋に旧海軍飛行場があり、当時の物資輸送は鉄道網で繋がった鹿屋線がメインルートと認識しています。その様な拠点駅の有る志布志町が戦争の影響を受け始めたのは、米軍艦載機グラマン戦闘機による鉄道施設への空からの攻撃でした。機銃掃射を受けて炎上する貨物列車、今でも黒い煙が目にこびり付いています。

 戦局が内地まで押し寄せるに連れて、戦火を避ける防空壕が海に向かった三〇メートル程の崖面に掘られて、戦闘機からの町民待避場所になりました。沖縄戦が終結した頃でしょうか、志布志湾に向けた防空壕では、身の安全は確保出来ないことが、情報の少ない町民でも感じ取られるようになりました。海岸線より奥地の街へと町民避難が続いて、都城盆地山間の集落へ更に避難したのは敗戦間際で有ったのでしょうか。三股小学校に旧日本陸軍兵士が集結していたのを思い出します。

 その様は風景がこの世に於ける初体験となり、今でもそれぞれの場面が記憶にこびり付いており、これからも消えることはありません。前置きが長くなりましたが、数日前にネット書店より書籍案内が有りました。案内欄へ入り込んでいきますと、書籍名「ルーズベルトの責任・上下二巻」、著者チャールズ・A・ビアード、監訳者開米潤、発行所藤原書店とあります。かなりなページ数が予想されて仕事合間で読み切るかな?そんな思いが頭をかすめましたが、自分の生きた時代を探索するに、本書の視点はかなり大きな情報が授かると、ネット注文しました。



 午前中に宅急便が届いて梱包を開き注文書籍三冊を手にしました。三冊のうち上下二巻で八五九頁におよび結構なページ数です。どの様な時間帯を読書に当てましょうか。本書帯書を引用しますと「日米開戦70年記念・幻の名著、ついに完訳・1941年12月08日(現地時間7日)、日本は遂に対米開戦に追い込まれる―。大統領ルーズベルトが、非戦を唱えながら日本を対米開戦に追い込む過程を膨大な資料を元に容赦なく暴き、48年に発刊されるも直ちに「禁書」同然に扱われ、占領下日本でも翻訳されることのなかった政治・外交史の題かの幻の遺著、遂に全訳刊行!」とあります。

 長いようで短い日米開戦七〇年の歳月。敗戦後は、戦争の全てが日本の責任で有ったが如く対米追従政策が国の基幹政策として、当然の如くして今日まで続いています。何か腑に落ちぬものを戦後も国民それぞれが感じていましたが、著者チャールズ・A・ビアードは何を解明したのか、何故本書が発禁になったか、西都城駅前の街が昭和二〇年六月に灰燼にきした根源を解明出来るか?・・・です。 

生きる上で必要なもの

2012年01月17日 18時42分32秒 | 政治
1月17日(火)  

 雨上がりの日は、陽が沈む頃になりますと、夕陽が部屋の中まで差し込んできます。何となくカラリとした日差しですが、朝日と異なり何となく荘厳と言う表現が良いのか、どこか安堵感を頂く日差しであります。時間にしても、そう長くは無くて、天からのプレゼント、健康であればこそ一日の感謝がこみ上げて来ます。また、店にお見えになるお客様様も、年配の方は会話の何処かに健康の話題があります。友人の十八番、平安な日を「いつの間にか時は過ぎて行く」とおぼろげにシャンソンの節を思う時間帯でもあります。


ホテルの三階からながめた青島の海

 本日の予定業務を午前中でこなして、午後は空いた時間とは言え、読書に夢中になる気持ちにも成れずに手頃なネット徘徊を続けます。話題性の有るのは政治のニュースやコメントですが、何とも突っ込んで考えるというか、政治ほど携わる人物の人間性が問われるものは無いと思います。目の前に歳入と言う膨大な人々の血税が有る訳ですから、政治家に邪な心が有れば、必ずや虜になる事は必定であります。その様な場面を地方にいても見てしまうものです。


リゾートホテルの敷地内

 同一人物が、永きに渡り政治に携わる事は、一長一短あり感心した事ではありません。社会が、本来の政治家とは如何にあるべきかを、示す必要があります。未だ日本の民主主義はそこまで達成していないのでしょうか。世界は広いと、その中で深く研究した訳ではありませんが、思い返しますと、インド国民がガンジーを指導者として戦った、英国へ対する独立の為の無抵抗主義はインド建国に大いに貢献したと思います。建国後のインド国民にも大きな影響を与えた事は容易に想像出来ます。また、多民族国家の複雑さはパキスタンとの分離でも理解出来ます。本来、政治家には哲学が必要で有ると今更ながら思います。ガンジーにつきましては小学校で学んだ事柄です。


河口は渡り鳥の渡来地

 政治家と哲学、その様な事を考えていましたら、今日一日で考える事は終えた気分になりました。ネットニュース徘徊のし過ぎか、戦後の日本社会は、敗戦という未曾有の体験から、何も学ばなかったのかなと思うようになって来た昨今です。しかし、取り留めがありませんが、日本のみならず世界は大きく変動するものだと、改めて感じます。その変化を確認するには現地に出向くこと、世界旅行の目的達成には健康管理も必要不可欠ですが、それでも世界を旅して感じるものは大きなものがあります。理解も早いものがあります。江戸時代、世界とは国内が大半であった頃、松尾芭蕉の「奥の細道」を思い出します。


青島の海水が温かいことを示してくれたサーファーたち

 何か浮かんだ言葉が有りますが、何でしたか?えーとです。そう、英知こそ人間に活力を与える根源では無いのか!生きていく上で、困難とは様々な形で眼前に現れいずるものです。県内の夜神楽にしろ、困難が悪役の面、鬼面で舞台に登場してきます。こうして全国各地に古より舞い継がれる民俗芸能にも、親から子へと伝えられる「困難へ立ち向かう英知」を教え諭す物語が秘められております。そうだ、英知は哲学へ通じる一歩です。


今も信仰と観光の青島

首都圏の人口膨張は続くか

2011年11月21日 18時15分49秒 | 政治
11月21日(月) 

 新木場駅まで婿の車で送ってもらい、架橋のプラットホームに上がると電車の内外ともに満員の乗客、一電車遅らせて次の停車駅JR京葉線舞浜駅へ十分後に到着します。日曜日と言えども結構な人出、次女の指示で駅前喫茶店で家族五人が合流する事に従います。その間、ディズニーランドへ向かう入場客が良く見える店外テーブルで待つ事にしました。


舞浜駅前の風見鶏

 待つこと半時程でしょうか、休日の午前中を通りすがる人々を眺めて過ごします。子ども連れもいますが、年寄りは少ないか、三〇歳代から四〇歳代にかけてが主流で、男女同じほどの人数が、世界に名を知られた大型娯楽施設へと向かっています。開店が午前十時で入場時のにぎわいでしょうか。人の流れは途切れる事がありません。


ディズニーランドの入り口

 過去に二回か三回か訪れた大型娯楽施設ですが、現在地点が何処なのか、気分の緩んだ時間帯でもあり、家族か親族に連れられてノコノコ付き添って歩いた記憶が残っています。訪問して何が起こるであろうと言う緊張感よりも、目の前に展開される娯楽シーンの連なりを楽しむ受け身の中におります。屁理屈をグダグダ申している気分になりますが、観客にとっては受け身の楽しさがディズニーランドにはあります。何かと気分的には手取り足取りして貰える娯楽施設です。


まだ舞台ではコーラスの練習中

 首都圏で大型事業が成功する事例とは、成田空港を反面教師にしますと、場所の選択としては東京湾岸沿いが一つのポイントであると見ます。当然ながら、首都圏の膨張に伴い周辺湾岸の埋立が伴うもので、時間的には十年とか数十年単位で完成するもので、気の長い年月は地方都市生活者から眺めた視点でもあります。


マイクの音量が大きくてつい立ち止まって舞台に注目します

 東京湾岸沿いとは視界も効き、意外と移動に速やかであり、開発についても言葉で上手に表現できませんが便利な面が有るのだと言う先入観が走ります。しかし、これからの災害対策がどのようになるのか?原発事故対策や地震津波対策は現実にブラックスワンが飛来した時に、何が起こるのかマイナス面が多い事だけは間違い有りません。


今年末でZEDの公演もおしまい

 少しでより良い未来を自国に願うからには、国内政治に於いてもまっとうな政治を行う政治家が求められます。例えば国民の誰が民主党政権に消費税十%アップの政策を付託したか?自民党の消費税増税公約に反対して民主党に二〇〇九年八月の衆議院選挙で票を投じたのに、野田佳彦政権はまるで国民にはお構いなしに消費税増税を行おうとしています。政権のたがが緩んでいるとしか考えられません。それと東京湾埋立地大型施設とどんな関係に有るかと問われますと、議論が長くなりまがすが、首都圏の膨張には大きく国の政治が絡んでくるのは言うまでもなくて、有る面で政治とは並みの人格では政治家がボロボロにされてしまう魔力を秘めています。


五〇年後の世界を眺める孫娘

 終の棲家として南九州の片隅で生活して、家族と言う絆に手繰り寄せられて東京湾岸沿いへ出向いて来ますと、西暦一九六〇年十一月に眺めた竹芝桟橋の光景が原風景となり、世界の人口七〇億人は何処へ行く?この流れに沿って首都圏も限り無く膨張を重ねるのか?回答は五〇年後の観察者孫娘が答えて呉れるでしょうか! 

「TPPをめぐる議論の間違い」鈴木宣弘氏(東京大学教授)

2011年10月29日 15時15分56秒 | 政治
10月29日(土) 
 朝から小雨模様、傘をにぎり散歩道を南へ、刈り入れを終えた田圃に白い円筒が並んでいます。さて、これは何か?刈り入れ後の稲わらを白い円筒に取り入れて、田圃で発酵させて牛の飼料として冬には用いる光景です?それとも稲わらを飼料稲粒もろとも白い円筒に入れ込んで発酵させているのか、微妙な違いですが、はてどちらでしょう?



 日本の農業は政府が推し進めているTPP参加を受け入れれば、どのようになるかネット検索しますと、なるほどと思われる東京大学の鈴木宣弘教授が執筆した質疑応答式の論文があります。題して、「TPPをめぐる議論の間違い ── 推進派の俗論を排す」です。「TPPを考える国民会議」のホームページに掲載されています。なお、転載許可は鈴木宣弘氏より電話で快い承諾がありました。(10月31日)

http://bit.ly/v4VE53

「TPPをめぐる議論の間違い」  鈴木宣弘氏(東京大学教授)

(1)TPPはアジア太平洋地域の貿易ルールになるから参加しないと日本が孤立する
 これは間違いである。米国は、自らはNAFTA(北米自由貿易協定)などで「米州圏」を固めつつ、アジアが米国抜きで「アジア圏」を形成することには強い懸念を表明してきた。米国が以前から提唱しているAPEC21ヵ国全体での自由貿易圏FTAAPは、その実現をめざすというよりも、ASEAN+3(日中韓)などのアジアにおける連携の試みを攪乱することが主たる目的と考えた方がわかりやすい。
 TPPの推進も、FTAAPの一里塚というよりも、ASEAN+3などのアジア圏形成を遅らせるのに好都合なのである。米国自身、「これは対中国包囲網だ。日本は中国が怖いのだから、入った方がいい」と説明している。中国も韓国もインドネシアもタイもNOといっているTPPに、もし日本が入れば、アジアは分断される。世界の成長センターであるアジアから米国が十二分に利益を得るためにも、米国が覇権を維持するにも、アジアは分断されているほうが好都合である。逆に言えば、日本が世界の成長センターとなるアジアと共に持続的発展を維持するには、ASEAN+3などの「アジア圏」の形成によって足場を固めることが極めて重要であり、それが、米国に対する拮抗力を維持しつつ、真に対等な立場で米国と友好関係を築くことにもつながる。
 TPPでは、TPPを警戒するアジア諸国とTPPに入るアジア諸国で、アジアは分断されるのだから、TPPはアジア太平洋全体のルールにはならない。ならないし、してはいけない。かりにも、TPPが拡大し、米国の利益の押しつけによってアジアのルールが決まるようなことは、アジアの利益にはならない。小規模分散錯圃の農業を含め、様々な分野で共通性のあるアジアが、その利益を将来に向けて確保できるルールはアジアが作るべきである。それをリードするのがアジアの先頭を走ってきた先進国としての日本の役割である。
すでに、ASEANは、TPPに対抗して、ASEANが主導してアジア太平洋地域の自由貿易圏を創設する方向性を提示しており、日本がTPPに入ることが、アジア圏の形成にマイナスになるとして、懸念を表明した。

(2)中国も韓国もTPPに強い関心を示しており、やがて入ってくる
 これは間違いである。韓国は、韓米で、コメなどの最低限の例外を何とか確保して合意したばかりなのに、それらもすべて明け渡すようなTPPに入る意味は考えられない。
 中国は、高関税品目も多いし、国家による規制も多いので、従来のFTAでも、難しい分野はごっそりと例外にするという大胆な柔軟性を維持して、お互いにやれるところからやりましょう、という方針を採っている。したがって、徹底した関税撤廃と独自の国内ルールの廃止を求められるTPPに参加することは、限りなく不可能に近い。
 かつ、米国自身、「これは対中国包囲網だ。」と説明している。TPPが拡大して中国が孤立して入らざるを得なくなる、というようなシナリオが描かれているのかもしれないが、とても現実的とは思えない。

(3)TPPに入らないと、韓国に先を越された日本の経済損失が取り戻せない
 これは間違いである。冷静に見れば、米国の普通自動車の関税はすでに2.5%でしかなく、現地生産も進んでいるのだから、韓国に先を越されると言っても日本の損失はわずかであろう。
 TPPによる日本にとっての経済利益が小さいことは、GTAPモデルの日本での権威である川崎研一氏の試算でも明らかである。FTAごとに日本のGDP増加率を比較すると、TPPで 0.54%、日中FTAで0.66%、日中韓FTA で0.74%、日中韓+ASEAN のFTAで1.04%となっている。つまり、日本が参加して10ヵ国でTPPを締結しても、日中2国間での自由化の利益にも及ばない。アジアにおけるFTAが日本経済の発展にいかに有効であるかということである。
 TPPによって得られる経済利益が少ないことは、推進する方々もわかっているのだろう。だから、TPPの利益としては、具体的な分野になると、投資、金融、サービス等の規制緩和がベトナム等での日本企業の展開に有利になる、というくらいの指摘しか出てこない。しかし、これは、日本も米国から攻められるわけで、その分を途上国で取り戻すと言っても、「両刃の剣」であることは明らかである。最終的に、かなり抽象的に、先述のような、「TPPがアジア太平洋地域の貿易ルールになるから、参加しないと孤立する」というような理由が語られるのである。

(4)TPP以外のFTAが具体化していないから、これしかない
 これは間違いである。実は、日中韓FTAの産官学共同研究会(事前交渉)は、2011年12月に報告書作成作業を完了し、2012年から政府間交渉に入る準備を進めている。いよいよ日中韓FTAが具体的に動き出す。TPPのような極端なゼロ関税ではなく、適切な関税と適切な国内対策の組合せによって、全加盟国が総合的に利益を得られるような妥協点を見いだせる。
 日本とEUとのFTAも、交渉の範囲を確定する予備交渉が開始されることになった。日本やアジアにとって、米国やオーストラリアといった新大陸に比べて相対的に共通性の高いEUとのFTAは真剣に検討する必要がある。EUは、適切な関税と適切な国内対策の組合せによって「強い農業」を追求する政策を実践しているので、TPPとは違い、農業についての着地点を見いだすことは可能であろう。
 このように、柔軟性を望めないのに利益は小さいTPPではなく、アジアやEUとの、柔軟性があり、かつ、日本の輸出を伸ばせる可能性も大きいFTAを促進する方向性が、日本にとって現実的で利益も大きいと思われる。ただしその場合は、米国との関係悪化を回避しつつ進めなくてはならないという非常に難しいバランスも要求される。そもそも、日本は、米国と中国という2つの大国の間で微妙なバランスを保ちつつ発展していく必要がある。米国との関係が非常に重要であることは間違いないが、TPPに傾斜しすぎるわけにはいかないのである。現実的には、TPPの動向は注視しつつ、日中韓FTAや日EU・FTAの準備を進めるという選択肢が考えられる。

(5)「TPPおばけ」で根拠のない不安を煽っている
 これは間違いである。TPPが今までのFTAと決定的に違うのは、関税撤廃などにおいて重要品目の例外扱いなどが原則的に認められない点である。また、非関税措置といわれる制度やルールの廃止や緩和、共通化も目指す。つまり、協定国の間に国境がない(シームレス)かのように、人やモノや企業活動が行き来できる経済圏を作ろうというのがTPPの目標である。
 しかも、たとえば米国企業が日本で活動するのに障害となるルールがあれば、米国企業が日本政府を訴えて賠償請求とルールを廃止させることができる条項も盛り込まれる。いわゆる「毒素条項」と呼ばれ、NAFTA(北米自由貿易協定)でも、韓米FTAでも入っている。経済政策や産業政策の自主的運営がかなりの程度制約される可能性も覚悟する必要がある。
 基本的に、米国など外国企業が日本で活動する場合に、競争条件が不利になると判断される公的介入や国内企業への優遇措置と見なされる仕組みは廃止が求められるということである。したがって、郵政民営化は当然であるし、医療における公的医療保険も許容されないということになる。
 ある面では、TPPは、EU(欧州連合)のような統合を、米豪と日本など、まったく異質な国が、数ヶ月で達成しようとしているようなものである。EUが形成されるのに費やされた60年という長い年月を考えれば、それと類似のレベルの経済統合を数ヶ月のうちに一気に達成しようというTPPの凄まじさがわかる。
 現在9カ国が参加して交渉中のTPPは、すでに2006年5月にチリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイの4ヶ国で締結されたP4協定がベースになることも忘れてはならない。日本では、TPPがどのような協定になる可能性があるのかについて、政府は「情報がない」と言って国民に何も説明していないが、このP4協定に近いものになるのだから、少なくともP4協定についてなぜもう少し国民に説明しないのかということが問われる。
 P4協定は160ページにも及ぶ英文の法律である。P4協定は、物品貿易の関税については、ほぼ全品目を対象として即時または段階的に撤廃することを規定している。また、注目されるのは、政府調達やサービス貿易における「内国民待遇」が明記されていることである。内国民待遇とは、自国民・企業と同一の条件が相手国の国民・企業にも保障されるように、規制緩和を徹底するということである。たとえば政府調達では、国レベルだけではなく地方レベルの金額の小さな公共事業の入札の公示も英文で作り、TPP加盟国から応募できるようにしなければならなくなる。サービス貿易については、金融、保険、法律、医療、建築などの各分野で、看護師、弁護士、医者等の受け入れも含まれることになるだろう。金融についてはP4 協定では除外されていたが、米国が参加して以降、交渉分野として加えられている。
 もう一つ、参照すべきは、韓米FTAである。米国は、日本がTPPの内容を考える上で、アジアとの直近のFTAとして、韓米FTAを参照してほしいと指摘している。つまり、TPPは、P4協定、韓米FTAの内容を、さらに強化するものとなるということである。韓米FTAでは、投資・サービスの原則自由化(例外だけを規定する「ネガ」方式)、「毒素条項」に加え、エンジニア・建築家・獣医師の資格・免許の相互承認の検討、郵政・共済を含む金融・保険の競争条件の内外無差別化(公的介入、優遇措置の排除)、公共事業の入札公示金額の引き下げなども入っている(「付録」参照)。これらが、強化される形で、TPPで議論されることになる。
 遺伝子組み換え食品についても、米国が安全だと科学的に証明している遺伝子組み換え食品に対する表示義務を廃止するよう我が国が求められるであろうことは、現在9ヵ国のTPP交渉の中で、オーストラリアやニュージーランドが、すでに米国から同じ要求を受けていることからわかる。
 また、以前から米国は、米国牛肉はBSE(狂牛病)検査をしっかりやっていて安全だから輸入規制はやめるよう主張している。だが、米国人の監督による米国食料市場に関するドキュメンタリー映画『フード・インク』を見てもわかるように、狂牛病の検査は十分に行われていない可能性が高い。だからこそ、日本は独自のルールを設定して国民の命を守っているのである。だが、TPP参加とともに、それは駄目だという圧力が高まる。韓国は、韓米FTAの協定の中ではなく、韓米FTAをまとめるための「お土産」として、月齢規制を緩和した(なんと日本は、10月に早々と自ら緩和表明し、服従姿勢を示し始めた)。
以上のように、根拠なしに不安を煽るような「TPPおばけ」ではなく、しっかりした根拠に基づいて、危険性を指摘しているのである。推進する方々の「アジア太平洋の貿易ルールに乗り遅れる論」「とにかく入って、いやなら脱退論」こそが、根拠のない「脅し」や意図的な詐欺である。

(6)例外は認められるから大丈夫、不調なら脱退すればよい
 最近のTPP推進議論でよく聞くのは、「とにかく入ってみて交渉すれば、例外も結構認められる。不調なら交渉途中で離脱すればよい」といった根拠のない「とにかく入ってしまえ論」である。しかし、「すべて何でもやります」という前提を宣言しないと、TPP交渉には入れない。カナダは、「乳製品の関税撤廃は無理だが、交渉に入りたい」と言って門前払いになっている(一応は「全ての品目を交渉の対象にする」と伝えたが、「乳製品の問題にカナダが真剣に取り組むという確信が持てない」という指摘が既参加国からあり、認められなかった可能性もある)。
 ただ、米国を含めた世界各国が、国内農業や食料市場を日本以上に大事に保護している。たとえば乳製品は、日本のコメに匹敵する、欧米諸国の最重要品目である。米国では、酪農は電気やガスと同じような公益事業とも言われ、絶対に海外に依存してはいけないとされている。でも、米国は戦略的だから、乳製品でさえ開放するようなふりをしてTPP交渉を始めておいて、今になって、米豪FTAで実質例外になっている砂糖と乳製品を、TPPでも米豪間で例外にしてくれと言っている。オーストラリアよりも低コストのニュージーランド生乳については、独占的販売組織(フォンティラ)を不当として、関税交渉の対象としないよう主張している。つまり、「自分より強い国からの輸入はシャットアウトして、自分より弱い国との間でゼロ関税にして輸出を増やす」という、米国には一番都合がいいことをやろうとしている。
 こうした米国のやり方にならって、「日本も早めに交渉に参加して例外を認めてもらえばいい」と言っている人がいるが、もしそれができるなら今までも苦労していなない。米国は、これまで自身のことを棚に上げて日本に要求し、それに対して日本はノーと言えた試しはない。特にTPPは、すべて何でもやると宣言してホールドアップ状態で参加しなくてはならないのだから、そう言って日本が入った途端にもう交渉の余地はないに等しい。この交渉力格差を考えておかなければならない。米国は、輸出倍増・雇用倍増を目的にTPPに臨んでいるから、日本から徹底的に利益を得ようとする。そのためには、たとえばコメを例外にすることを米国が認める可能性は小さい。交渉の途中離脱も、理論的に可能であっても、実質的には、国際信義上も、力関係からも、不可能に近い。
 また、「例外が認められる」と主張する人の例外の意味が、「コメなら関税撤廃に10年の猶予があるから、その間に準備すればよい」という場合が多い。これは例外ではない。現場を知る人なら、日本の稲作が最大限の努力をしても、生産コストを10年でカリフォルニアのような1俵3,000円に近づけることが不可能なことは自明である。現場を知らない空論は意味がない。
 なお、日豪FTAはすでに政府間交渉をしており、多くの分野で例外措置を日本側も主張しているが、その日本がTPPでは、同じオーストラリアに対して例外なしの自由化を認める、というまったく整合しない内容の交渉を同時並行的に進めることが可能なのか、この矛盾に直面する。かりに、米国の主張にならって、既存のFTA合意における例外はTPPに持ち込めるから、日豪FTAなどを既存の2国間合意を急げばよい、という見解もあるが、それではTPPというのは一体どういう実体があるのかということになる。

(7)所得補償すれば関税撤廃しても大丈夫
 「所得補償すれば関税撤廃しても大丈夫」という議論があるが、これも間違っている。現状のコメに対する戸別所得補償制度は、1俵(60kg)当たり平均生産コスト(13,700円)を常に補償するものではなく、過去3年平均価格と当該年価格との差額を補てんする変動支払いと、1,700円の固定支払いによる補てんの仕組みであるから、米価下落が続けば補てんされない「隙間」の部分が出てくる。したがって、TPPでコメ関税を10年間で撤廃することになれば、さらなる米価下落によって「隙間」の部分がますます拡大していく。
 もし、平均生産コストを全額補償する「岩盤」をコメ農家に手当すると想定すればどうなるか。たとえば、コメ関税の完全撤廃後も現在の国内生産量(約900万トン)を維持することを目標として、1俵当たり14,000円のコメ生産コストと輸入米価格3,000円との差額を補てんする場合の財政負担額を試算してみると、
《コメ関税ゼロの場合》
(14,000円-3,000円)÷60キロ× 900万トン=1.65兆円
となる。概算でも約1.7兆円にものぼる補てんを毎年コメだけに支払うのは、およそ現実的ではないだろう。牛乳・乳製品や畜産物などコメ以外の農産物に対する補てんも含めると、財政負担は少なくともこの2倍近くになる可能性がある。さらには、1兆円近くに及ぶ関税収入の喪失分も別途手当てしなくてはならないことを勘案すれば、毎年4兆円という、ほとんど不可能に近い多額の財源確保が必要となる。
 これほど膨大な財政負担を国民が許容するならば、環境税の導入、消費税の税率の引上げなどによる試算から、具体的な財源確保の裏付けを明確にし、国民に約束しなければならない。もし空手形になれば国民に大きなリスクをもたらし、世界から冷笑される戦略なき国家となりかねない。「とりあえずTPPに参加表明し、例外品目が認められなければ所得補償すればよい」といった安易な対応は許されないのである。
 一方、もしTPPが関税撤廃の例外を認める形で妥結される可能性があるならば、それを踏まえた現実的な議論の余地も生まれる。たとえば、コメの例外扱いが認められて関税率が250%とされた場合は、補てんのための財政負担額は、
《コメ関税250%の場合》
(14,000円-10,500円)÷60キロ× 900万トン=5,250億円
となる。
 ただし、以上の試算で用いた輸入米価格3,000円という仮定が低すぎるのではないかとの指摘もあるだろう。たとえば、平成22年の中国産SBS(売買同時入札方式)米の入札価格は玄米換算で8,550円に達しているので、輸入米価格を9,000円程度と見込めば、
《高い輸入米+関税ゼロの場合》
(14,000円-9,000円)÷60キロ× 900万トン=7,500億円
となる。さらに、関税撤廃を10年で行う猶予がある場合、その間の構造改革によって補てん基準の生産コストを10,000円まで引き下げられると見込めば、
《構造改革を見込んだ場合》
(10,000円-9,000円)÷60キロ× 900万トン=1,500億円
と、許容範囲の財政負担におさまることも考えられる。こうした試算が、ゼロ関税でも対応可能だという根拠として出されてくるであろう。
 しかし、福岡県稲作協議会の黒竜江省調査(2010年7月30日〜8月4日)によると、現地のコメ輸出会社が受け取っている日本向け輸出価格は1キロ当たり3.6〜3.8元(約54〜57円)、1俵当たりで約3,200〜3,400円程度であり、SBSで9,000円程度となっている現在の価格は、輸入枠があるため中国側がレント(差益)をとる形で形成された高値と判断できる。したがって、輸入枠が撤廃されればレントを維持できなくなることを考えると、輸入価格を現状の9,000円のままと見込むのは危険である。また、農水省資料によれば、各国の米価は、米国 2,880 円、中国 2,100 円、オーストラリア 2,640 円(2008年の玄米換算1俵当たり生産者受取価格)となっている。TPPについては、中国産ではなく、米国産との比較が必要だが、米国産でも輸入米は3,000円程度を目安にした方がよいと思われる。
それから、先述のとおり、「ゼロ関税になるまでに10年間の猶予があれば、それまでに規模拡大して生産コストを下げれば、補てんの負担は大幅に縮小される」という議論もあるが、机上の試算を勝手にされても困る。規模拡大やコストダウンの努力はもちろん必要だが、日本のこの土地条件で、10年間で米の生産コストを半分にできるかというと、非常に難しい。
 すると、次に出てくるのは、「補てん財源が足りなければ、補てんの対象を大規模農家などに絞ればいい」という主張である。これでは、日本全国に広がる中山間地の農村はどうなるのか。慎重な配慮が求められる。
 また、以上の試算では、国内生産量を現状水準で維持することを前提としているが、もし「新基本計画」が掲げている食料自給率50%への引き上げ目標も同時に達成するならば、さらに膨大な財政負担が必要になる。関税撤廃が可能かどうか、あるいはどこまで引き下げることが可能かについては、必要な財政負担額とセットで検討する必要がある。そうした検討もなく、所得補償するからゼロ関税でも大丈夫と言うのも、コメ関税は一切手をつけられないと言うのも極論であり、現実的な解は、その中間のどこかに、適切な関税水準と差額補てんとを組合せることによって見いだすことができると思われる。しかし、そうした柔軟性はTPPには望めない。

(8)日本のコメは品質がよいし、米国やオーストラリアの短・中粒種のコメの生産力は
それほど高くないので、関税撤廃しても、日本のコメ生産が極端に減少することはない。
 これは間違いである。カリフォルニア米が比較的おいしいというのは、米国滞在経験者なら、共通認識であり、値段とのバランスを考えれば、広く日本の消費者に受け入れられる可能性は高い。
 確かに、短・中粒種のコメ生産力が世界にどれだけあるのかについては慎重に検討すべきであるが、たとえば、オーストラリアは今、水の問題でコメは5万トンくらいしか生産できていないが、過去には、日本でもおいしく食べられるコメを100万トン以上作っていた。中国では、黒竜江省だけでも日本の全生産量とほぼ同じ800万トンのコシヒカリを作っている。オーストラリアも米国もそうだが、どの国でも、日本でのビジネス・チャンスが広がれば、生産量を相当に増やす潜在力があるし、日本向けの食味に向けての努力も進むであろう。米国も短・中粒種はカリフォルニアしかつくれないわけでなく、日本で売れるビジネス・チャンスが広がれば、アーカンソーでも生産できる。そうなれば、生産力は格段に高まる。だから、供給余力の推定や品質向上の度合いの推定はなかなか難しい。ただ、普段は、ビジネス・チャンスに応じて経営は対応してくることを重視する人達が、こういう場合だけ、現状固定的に、日本の品質はよいし、外国の生産力は小さい、と主張するのは、やや首をかしげる。

 いずれにしても、時間の経過とともに変わってくるし、不確定な要素が非常に多いので、日本のコメ生産が9割減少するとも言い切れないし、ほとんど減らないとも言えない。だからこそ、ゼロか百かの議論ではなく、極端なTPPではなく、アジアにおいて柔軟かつ互恵的な自由貿易協定を拡大する路線が現実的だということである。

(9)貿易自由化して競争すれば強い農業ができる
 これは間違いである。大震災で被災した東日本沿岸部に大規模区画の農地をつくって競争すればTPPもこわくない、という見解もあるが、それでも、せいぜい2ha程度の1区画である。それに対して、TPPでゼロ関税で戦わなければならないオーストラリアは、1区画100haある。農家一戸の適正規模は1万ヘクタールというから、そもそも、まともに競争できる相手ではない。土地条件の格差は、土地利用型農業の場合は絶対的で、努力すればどうにか勝てるという話ではない。車を工場で造るのと一緒にしてはならない。牛肉・オレンジなどの自由化も、牛肉や果物の大幅な自給率低下につながったことを思い起こす必要がある。
 だから、TPPのような徹底した関税撤廃は、強い農業を生み出すのではなく、日本において、強い農業として頑張っている人達を潰してしまうのである。コメで言えば、日本で1俵9,000円の生産コストを実現して大規模経営している最先端の経営も、1俵3,000円のコメがゼロ関税で入ってきたらひとたまりもないのは当然である。欧州の水準を超えたというほどに規模拡大した北海道酪農でも、平均コストは1kg70円くらいであり、1kg19円のオセアニアの乳価と競争できるわけがない。残念だが、これが、土地条件の差なのである。

(10)競争を排除し、努力せずに既得権益を守ろうとしいては、効率化は進まない
 誰も、努力せずに既得権益を守ろうとしているわけではない。TPPのように、極端な関税撤廃や制度の撤廃は、一握りの勝者と多数の敗者を生み、一握りの勝者の利益が非常に大きければ、大多数が苦しんでも、社会のトータルとしては効率化された、という論理の徹底であり、幸せな社会とは言えない。
 医療と農業は、直接的に人々の命に関わるという点で公益性が高い共通性がある。筆者は米国に2年ほど滞在していたので、医療問題は切実に感じている。コーネル大学にいたが、コーネル大学の教授陣との食事会のときに2言目に出てくるのは、「日本がうらやましい。日本の公的医療制度は、適正な医療が安く受けられる。米国もそうなりたい」ということだった。ところが、TPPに参加すれば、逆に日本が米国のようになる。日本も米国のように、高額の治療費を払える人しか良い医療が受けられなくなるような世界になる。地域医療も今以上に崩壊していくことは明らかである。混合診療が全面解禁されれば、歯では公的保険適用外のインプラント治療ばかりが進められ、低所得層は歯の治療も受けられない、という事例(九州大学磯田宏准教授)はわかりやすい。
 TPPの議論を契機に、また市場至上主義的な主張が強まっている。確かに、既得権益を守るだけのルールは緩和すべきだが、だからルールは何もない方がいいというのは、人類の歴史を無視した極論である。経済政策学者が政策はいらないと言うのは、ほとんど自己否定していることになる。All or Nothing(ゼロか100か)ではなく、その中間の最適なバランスを見つけるべきである。

(11)3,000円のカリフォルニア米で牛丼が100円安くなるのならTPPに参加した方がいい
 消費者の立場から見ると、「3,000円のカリフォルニア米で牛丼が100円安くなるのならTPPに参加した方がいい」という意見も当然ある。こうした消費者の目線で問題を見直してみることが重要である。言い換えると、農業サイドの貿易自由化への反対表明は、農家利益、あるいは農業団体の利益に基づいたエゴと見られがちなことを忘れてはならない。
 今こそ、生産者と消費者を含めた国民全体にとっての食料の位置づけというものを再確認することが必要だと痛感する。食料は人々の命に直結する必需財である。「食料の確保は、軍事、エネルギーと並ぶ国家存立の三本柱」で、食料は戦略物資だというのが世界では当たり前だから、食料政策、農業政策のことを話せば、「国民一人ひとりが自分の食料をどうやって確保していくのか、そのために生産農家の方々とどうやって向き合っていくのか」という議論になるのが通常である。ところが、日本では、「農業保護が多すぎるのではないか」といった問題にいきなりすり替えられてしまう。これは、意図的にそういう誘導をしようとしている人がいるということもある。しかし、日本では、食料は国家存立の要だということが当たり前ではないというのは事実である。国民に、食料の位置づけ、食料生産の位置づけについて、もう一度きちんと考えてもらう必要がある。
 まず、2008年の世界食料危機は、干ばつによる不作の影響よりも、むしろ人災だったということを忘れてはならない。特に米国の食料戦略の影響であったということを把握しておく必要がある。
 米国が自由貿易を推進し、関税を下げさせてきたことによって、穀物を輸入に頼る国が増えてきた。一方、米国には、トウモロコシなどの穀物農家の手取りを確保しつつ世界に安く輸出するための手厚い差額補てん制度があるが、その財政負担が苦しくなってきたので、何か穀物価格高騰につなげられるキッカケはないかと材料を探していた。そうした中、国際的なテロ事件や原油高騰を受けて、原油の中東依存軽減とエネルギー自給率向上が必要だというのを大義名分としてバイオ燃料推進政策を開始し、見事に穀物価格のつり上げにつなげた。
 トウモロコシの価格の高騰で、日本の畜産も非常に大変だったが、メキシコなどは主食がトウモロコシだから、暴動なども起こる非常事態となった。メキシコでは、NAFTA(北米自由貿易協定)によってトウモロコシ関税を撤廃したので国内生産が激減してしまったが、米国から買えばいいと思っていたところ、価格暴騰で買えなくなってしまった。
 また、ハイチでは、IMF(国際通貨基金)の融資条件として、1995年に、米国からコメ関税の3%までの引き下げを約束させられ、コメ生産が大幅に減尐し、コメ輸入に頼る構造になっていたところに、2008年のコメ輸出規制で、死者まで出ることになった。TPPに日本が参加すれば、これは他人事ではなくなる。米国の勝手な都合で世界の人々の命が振り回されたと言っても過言ではないかもしれない。
 米国の食料戦略の一番の標的は、日本だとも言われてきた。ウィスコンシン大学のある教授は、農家の子弟への講義の中で、「食料は武器だ。日本が標的である。直接食べる食料だけでなく、畜産物のエサが重要だ。日本で畜産が行われているように見えても、エサ穀物をすべて米国から供給すれば、日本を完全にコントロールできる。これを世界に広げていくのが米国の戦略だ。そのために皆さんには頑張ってほしい」といった趣旨の話をしたという。実はそのとき教授は日本からの留学生がいたのを忘れてしゃべっていたとのことで、「東の海の上に浮かんだ小さな国はよく動く。でも勝手に動かれては不都合だから、その行き先をエサで引っ張れ」と言ったと紹介されている(大江正章『農業という仕事』岩波ジュニア新書、2001)。これが米国の食料戦略であり、日本の位置づけである。
 ブッシュ前大統領も、農業関係者への演説では日本を皮肉るような話をよくしていた。「食料自給はナショナルセキュリテイの問題だ。皆さんのおかげでそれが常に保たれている米国はなんとありがたいことか。それにひきかえ、(どこの国のことかわかると思うけれども)食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ。(そのようにしたのも我々だが、もっともっと徹底しよう。)」という感じである。

(12)過保護な日本農業はTPPでショック療法が必要だ
 日本の農業が過保護だから弱いというのは誤った理解である。日本人は、ルールを金科玉条のように守るというその気質から、WTOルールを世界で一番真面目に受け止めて保護削減に懸命に取り組んできた。その結果、一般に言われているような過保護な農業は、日本にはもう当てはまらなくなっていて、逆に諸外国の農業の方がよほど過保護になっている。もう一度確認しておくと、農業所得に占める財政負担の割合は、日本の場合は平均で15.6%しかない。一方の米国の稲作経営は、巨大な経営規模で、輸出もしていながら、その所得の60%が財政負担である。それから、フランス、イギリス、スイスなど多くのヨーロッパの国々では農業所得の90%以上が財政負担で支払われている。こうした手厚い農業保護の背景には、食料生産や農業は国民の命を守り、国土を守り、国境を防衛してくれる、まさに公益事業だという国家の覚悟があるように思われる。
 農業経営収支は赤字で、それを補助金がカバーして所得を生み出すという構造は、驚くべきことに、EUで最も大規模なイギリスの穀物経営(平均規模は200ha近い)でも同様である。経営収支は△1.5万ポンド(1ポンドは現在120円強)だが、単一支払い4.2万ポンド、環境支払いなど8千ポンドを加えることで黒字になっている。いわば所得の100%が補助金である。もちろん、条件不利地域農業でも同様で、平均的には、経営収支は、△5千ポンドの赤字だが、補助金が単一支払い1.8万ポンド、環境支払いと条件不利地域支払いで8千ポンド加わることで黒字に維持されている。
 また、WTOに登録されている農業保護の総額は、日本は6千4百億円で、米国は1兆8千億円、EUは4兆円で、やはり総額でみても、日本の方がずっと少ない。しかも米国は過小申告をしていて、本当は3兆円以上ある。
 それともう一点、「日本の農産物は高い。その大きな内外価格差こそ、価格支持による保護の証拠だ」という誤った主張が、TPP推進のためにもよく使われる。こういうことが言われるのは、内外価格差によって農業保護度を測るPSE(生産者支持推定量)という誤った指標が国際的に使われているためである。我々のような研究者も、こういう誤った指標をきちんと訂正できていなかったことは申し訳ない。
 ある水準まで価格が下がると政府が無制限な買い取りを行い、補助金を付けて援助や輸出に回して国内価格を高く維持する仕組みは、米国、カナダ、EUなど、世界の多くの国々で維持され、こうした価格支持政策をうまく活用している。一方の日本は、世界に先駆けて、コメや酪農の価格支持政策を廃止した。コメの政府価格はまだ存在するが、数量が備蓄用に限定されているので米価の下支え機能はほとんどない。つまり、実質的にコメにも価格支持政策はない。
 しかし、PSEの計算では、日本には5兆円もの農業保護があり、その95%が価格支持だということになっていて、今の日本の実態とはまったく合っていない。なぜこういう間違いが起きているのかというと、PSEという指標が内外価格差をすべて農業保護とする指標だからである。内外価格差の原因をどう考えるかが重要なポイントである。ややもすると日本の農産物は輸入品よりも高いと思いがちだが、実は必ずしもそうではなくて、品質が良かったり、サービスや安全性が優れているなどのために高い値段が付けられている部分もある。日本の生産者が消費者のみなさんにいい物を食べていただきたいとがんばった努力の結果の「国産プレミアム」が含まれている。たとえば、見かけはまったく同じで、国産のネギが中国産よりも少々高く売られていたとしても、国産の方を買う人は結構多い。それが「国産プレミアム」である。
 しかし、PSEは品質の差をほとんど考慮していない。輸入牛肉を運んでくる輸送費と、港でかかる関税を足してもまだ内外価格差があれば、これは非関税障壁であり、価格支持が原因だという計算になっている。本当なら、日本の霜降り牛肉と、オーストラリアで草で育った肉とが値段が同じだったらおかしい。日本の霜降り牛肉の方が高く売られているのは、日本人なら誰もが納得するはずだが、PSEではこれが非関税障壁や価格支持としてカウントされてしまう。こういう数値に基づくと、世界的にも価格支持制度を最もなくした日本が、「世界で一番価格支持に依存した遅れた農業保護国なので、ショック療法でTPPが必要だ」というような奇妙な議論になってしまう。

(13)強い農林水産業のための対案がないではないか
 農林水産業関係者を中心にTPP反対の運動が進みつつあるのに対して、「日本の農林水産業はTPPを拒否するだけでやっていけるのか。TPPがなくても、日本の農林水産業は、高齢化、就業人口の減少、耕作放棄などで疲弊しつつある。どういう取組みをすれば農林水産業は元気になるのか。TPPがだめだというなら対案を出してほしい」という指摘がある。
 筆者が現場をまわっていて一番心配しているのは、「これから息子が継いでくれて規模拡大しようとしていたのだが、もうやめた」と肩を落とす農家が増えていることである。TPPは農林水産業の将来展望を暗くしている。まず、こういう後向きの思考に歯止めをかけねばならない。そうではなくて、TPPの議論を契機に、農林漁家がもっと元気になるための取組み、現場で本当に効果が実感できる政策とは何かということを、いろいろな方が関心をもってきてくれている今、地域全体で前向きに議論をする機会にしなくてはならない。
 水田の4割も抑制するために農業予算を投入するのではなく、国内生産基盤をフルに活かして、「いいものを少しでも安く」売ることで販路を拡大する戦略へと重心をかえていく必要性は認める。そのためには、米粉、飼料米などに主食米と同等以上の所得を補てんし、販路拡大とともに備蓄機能も活用しながら、将来的には主食の割り当ても必要なくなるように、全国的な適地適作へと誘導すべきである。
 さらに、将来的には日本のコメで世界に貢献することも視野に入れて、日本からの輸出や食料援助を増やす戦略も重要である。備蓄運用も含めて、そのために必要な予算は、日本と世界の安全保障につながる防衛予算でもあり、海外援助予算でもあるから、狭い農水予算の枠を超えた国家戦略予算をつけられるように、予算査定システムの抜本的改革が求められる。米国の食料戦略を支える仕組みは、この考え方に基づいている。
 地域の中心的な「担い手」への重点的な支援強化も必要である。今後農業をリタイアされる方がいる一方で、就農意欲のある若者や他産業からの参入も増加傾向にある。だが、新規参入される方の経営安定までには時間がかかり、長らく赤字を抱える方が多いのが実態なので、フランスのように、新規参入者に対して十年間くらいの長期的な支援プログラムを準備するなど、集中的な経営安定対策を仕組むことが必要である。
 また、集落営農などで、他産業並みの給与水準が実現できないためにオペレーターの定着に苦労しているケースが多いので、状況に応じてオペレーター給与が確保できるシステムづくりと集中的な財政支援を行うことも効果的であろう。20〜30ha規模の集落営農型の経営で、十分な所得を得られる専従者と、農地の出し手であり軽作業を分担する担い手でもある多数の構成員とが、しっかり役割分担しつつ成功しているような持続可能な経営モデルを確立することが関係者に求められている。その一方、農業が存在することによって生み出される多面的機能の価値に対する農家全体への支払いは、社会政策として強化する必要がある。これは、担い手などを重点的に支援する産業政策としっかり区別して、メリハリを強める必要がある。
 被災地の復旧・復興ということを考えるときにも基本になるのは、「コミュニティの再生」である。「大規模化して、企業がやれば、強い農業になる」という議論は単純すぎて、そこに人々が住んでいて、暮らしがあり、生業があり、コミュニティがあるという視点が欠落している。そもそも、個別経営も集落営農型のシステムも、自己の目先の利益だけを考えているものは成功していない。成功している方は、地域全体の将来とそこに暮らすみんなの発展を考えて経営している。だからこそ、信頼が生まれて農地が集まり、地域の人々が役割分担して、水管理や畦の草刈りなども可能になる。そうして、経営も地域全体も共に元気に維持される。20〜30ha規模の経営というのは、そういう地域での支え合いで成り立つのであり、ガラガラポンして1社の企業経営がやればよいという考え方とは決定的に違う。それではうまく行かないし、地域コミュニティは成立しない。これを混同してはいけない。
 こうした政策と、TPPのような極端な関税撤廃とは相容れない。TPPはこれまでの農家の努力を水の泡にする。自由化は、もっと柔軟な形で、適切な関税引き下げ水準と国内差額補てんとの組合せとを模索しながら行う必要がある。つまり、「農業対策を準備すればTPPに参加できる」というのは間違いである。「TPPでは対策の準備のしようがない」のであり、TPPでは「強い農業」は成立できない。
 たいへん多くのものを失った中で、何とか歯を食いしばって、その地で自分たちの生活と経営を立て直そうと必死に奮闘している東日本の農漁家の皆さんにとっても、その復旧・復興の気力を奪ってしまいかねない「追い打ち」になりかねない。

(14)ぎりぎりまで情報を隠し、議論を避け、「不意打ち」的に参加表明すればよい
 大震災によって、6月までの参加表明の決断は先送りされたけれど、情報開示も、国民的議論もしないまま、11月のAPECのハワイ会合に間に合うように滑り込むというような、要するに国民に対する「不意打ち」が起こりかねないと懸念されたが、案の定、10月になって、その事態は表面化した。
 しかし、ここまで、徹底して、情報は出さずに、国民的議論は回避して、強行突破しようとするとは予想以上であった。ぎりぎりまで情報を隠し、議論を避け、「不意打ち」的に参加表明しようとする、この政治姿勢は、もはや民主主義国家の体を成していない。
 全国各地を訪れると、非常に多くの県議会や市町村議会がTPP反対または慎重の決議をし、各道県の地元の新聞は、ほぼすべてが反対または慎重の社論を展開していることが確認できる。日本の国土面積の9割はTPPに反対また慎重であるとの感触である。にもかかわらず、そうした全国各地の民意に反して、拙速な参加表明がなされることは許容しがたい。政治家には民意を代表する政治を実現してもらう必要がある。民意を代表しない政治家には退場いただくことになろう。米国からの要請だから仕方ないというのが誰の目にも明らかでは、結局、日本は、自主性のない従属国家として、米国からも中国からも、世界全体からも冷笑されることになろう。
【参考文献】
鈴木宣弘・木下順子『震災復興とTPPを語る-再生のための対案』筑波書房、2011年
鈴木宣弘・木下順子『TPPと日本の国益』大成出版、2011年

「付録」米韓FTA協定の特徴的な規定 鈴木宣弘氏(東京大学教授)

2011年10月29日 14時57分27秒 | 政治

【第1章(序章)】

省略

【第2章 内国民待遇と物品の市場アクセス】

○ 関税撤廃を、スケジュールに従い、即時又は段階的に行う(概要は別紙)(2条3.2)。

○ WTO協定上の内外無差別の義務を再確認し(2条2)、輸出入に関する規制の禁止を約束(2条8)しているが、以下は例外扱い。
・ 両国共通:WTOの紛争解決機関などで認められる行為(2条付属書A、B(c))。
・ 米国:丸太の輸出規制(米国17州の国公有林からの丸太の輸出を禁止)、海運に関するジョーンズ・アクト関連規則(米国国内の海運交通を、米国内で建造され、米国民が所有し、乗り組む船舶のみに許容)(2条附属書A 、B(a))。

○ 輸出税の禁止を規定(2条11)。

○ 自動車に係る国内税(特別消費税、自動車税)等につき、小型車(排気量小)に対する大型車(排気量大)の負担比率を軽減する方向で改正し、今後、排気量別の負担格差を拡大する税制の導入、改正を行わない旨を約束(2条12)。

○ 米国の「バーボン・ウィスキー」、「テネシー・ウィスキー」、韓国の「安東焼酎」、「慶州法酒」について、それぞれの国内法、国内規制に従い製造されたもの以外は相手国での販売を禁止(2条13)。

【第3章 農業】

○ 関税撤廃までの期間の経過的措置として、以下を規定。
1)農産物に適用できる関税割当制度(関税が撤廃されるまで、割当数量を年々漸増)(3条2)、
2)農産物に適用できる特別セーフガード(輸入量が増大した場合に自動発動。関 税が撤廃されるまで、発動基準数量を年々漸増。関税水準は年々漸減)(3条3)。

【第4章 繊維及びアパレル】

○ 関税撤廃までの期間、繊維・アパレルに適用できる措置として、以下を規定。
1) セーフガード(輸入量の増大とそれによる損害を要件とする数量セーフガード。補償措置も併せ求められる)(4条1)。
2)特別な原産地規則(絹、羊毛、綿など一部の製品で完全生産品基準を適用。)(4条2)。
3)韓国からの輸出に関する協力:(ア)韓国は、米国向け繊維を輸出に係る製造業者の連絡先、雇用者数、操業時間等の情報を定期的に米国に提供、(イ)米国が迂回輸出の疑念を持った場合は、製造業者に対する抜打ち調査等を実施、(ウ)調査が実施できない等の場合には米国は特恵扱いを停止。(4条3)

【第5章 医薬品・医療機器】

○ 米韓両国間の健康保険制度の違いを認識し、医薬品、医療機器の開発を促進し、国民へのアクセスを確保することの必要性を確認した上で(5条1)、以下を約束。
1)医薬品、医療機器の承認、価格、診療報酬の決定に当たり、合理的な無差別の基準に従い、市場競争価格に基づくこと(5条2)。
2)医薬品、医療機器の承認申請については、(ア)合理的な期間内に決定、(イ)明確な基準に基づき判断、(ウ)政府の個別の判断について申請者に十分な情報を与え、(エ)個別の判断について、独立したレビュー手続を設けること(5条3.5)。

○ サイドレター(協定の不可分の一部)では、以下を追加的に約束。
・ 医薬品、医療機器の価格、診療報酬に係る政府の決定について、申請者の要請に基づき、レビューする機関を設置すること。
・ この機関は各締約国の健康保険制度の当局から独立した機関とすること。
・ 申請者に対して、このレビューを求める権利を申請者が有する旨周知すること。

【第6章 原産地規則】

○ 他の多くのEPA協定と同様に、(1)締結国での加工工程により関税番号が変更する、 一定の付加価値が加わるなどの場合に、その締結国の原産と認める旨(6条1)、(2)原産品であることの証明の方法を規定(6条18)。

○ 米韓FTAでは、特に、(1)乳製品、米粉、果実の調製品を除き、輸入原材料を使用した農林水産品を締約国の原産品とすることを認め(6条付属書A PartⅡ)、(2)原産品の自己証明も認めている(6条15.3)。

【第7章 税関手続及び貿易促進】

○ 他の多くのEPAと同様に、各国の税関手続の予見可能性、透明性、効率性を促進するための原則、具体的方法を定めるもの、税関協力(税関間の情報提供)(7条6)、事前教示(関税分類等に関する事前の情報提供)(7条10)の手続を規定。

【第8章 SPS(衛生植物検疫措置に関する規定)】

○ 他の多くのEPA協定と同様に、SPS案件について協議を行う委員会の設置(年1回以上の会合実施)(8条3)を規定。

【第9章 TBT(貿易の技術的障害に関する規定)】

○ 他の多くのEPA協定と同様に、TBT案件について協議を行う委員会の設置(年1回以上の会合実施)(9条8)を規定。

○ 米韓FTAでは、特に、
(1)規格・基準の策定に相手国の国民の参加を認め(9条6.1)、提案された規格・基準の内容に加え、その政策目的、他の代替手法の検討経緯などにつき相手国に情報提供する(9条3.7)。

(2)自動車に関する規格・基準が不必要に貿易阻害的とならないことを義務付け (9条7)、自動車作業部会を設置し、規格・基準の効果に関する事後レビューを実施(附属書9-B)。

○ 2007年のサイドレター(協定の不可分の一部)では、以下を約束。
・ 米国産自動車について、韓国の環境基準(超低排出車両基準)の適用を緩和。
・ 米国車に課せられる排出ガス診断装置の装着義務について移行期間を設定。
・ 安全基準の認証について、基準適合義務を一部免除。

○ 2010年12月のサイドレターで以下を追加的に約束。
・ 基準適合義務の一部免除が適用される自動車の上限台数を引き上げるとともに、米国の基準を満たせば韓国の安全基準を満たしたものと認定。
・ 燃費・CO2基準について、韓国基準を緩和した基準を採用

【第10章 貿易救済措置】

○ 本FTAに基づくセーフガード措置(輸入量の増大とそれに応じた損害の発生を要件とした数量セーフガード。関税撤廃までの経過的措置。)を規定。(10条1〜10条6)

○ 反ダンピング関税、相殺関税について、調査の実施、両国間の協議、これらの関税の回避措置を規定。(10条7)
ただし、これらの規定については、本FTAでの紛争解決手続の適用がない。(10条7.2)

【第11章 投資】

○ 他の多くのFTAと同様に、投資規則について、内外無差別(11条3)、最恵国待遇(11条4)、パフォーマンス要求の禁止(11条8)、役員の国籍制限の禁止(11条9)等を規定。これらの約束の適用除外を別紙で規定(ネガ方式)。

○ 投資家が国内法廷での議論を経ることなく、国際仲裁裁判で相手国政府を訴える(投資家対国家)紛争処理メカニズムを規定(11条15〜11条27)。

【第12章 サービス貿易】

○ 他の多くのFTAと同様に、内外無差別(12条2)、最恵国待遇の原則(12条3)を規定するほか、参入業者数や総雇用者数等の数量制限の禁止(12条4)を規定。これらの約束の適用除外を別紙で規定(ネガ方式)。

○ 特に、以下の分野で追加的な規律を置いている。
(1)職業サービス:
(ア)各締約国は、エンジニア、建築家、獣医師について(12条附属書A.1)、資格、免許の相互に受け入れ可能な規格・基準を策定すべく関連機関を促し、本FTAの下の合同委員会に勧告する(12条附属書A.2)。
(イ)作業部会を設置し、同部会の下で相互認証に関する手続を検討し、合同委員会に報告する(12条附属書A.6)。

(2)エクスプレス宅配サービス:
ア)各締約国は、エクスプレス宅配サービスの独占を乱用しないこと、独占による収益を他の業務の経費に充てないことを約束(12条附属書B.3)。
イ)サイドレター(協定の不可分の一部)で以下を約束。
・国内法を改正し、韓国ポストの独占の例外を拡大すること
・米国の国内、国際のエクスプレス宅配サービスは、USポスタル・サービスの独占の下に置かない。
・韓国の民間エクスプレス宅配サービスが扱う内容を重量、値段、他国の経験なども考慮して、客観的に設定

○ 「人の移動」に関する規定は米韓FTAには置かれていない。ただし、FTA交渉に前後して、以下を米韓二国間で合意。
(1) 企業内派遣(L1)ビザの期間延長:支社設立時の新規派遣(1年→3年)、既存 支社の常駐社員(3年→5年)。2010年12月の韓米FTAの再交渉を妥結した際に発表。
(2)ビザ免除プログラムの新規適用:90日間以内のビジネス、観光目的の滞在にビザ取得を免除するプログラム(日本を含む27か国には既に適用)を新たに韓国に適用。2008年10月に発表。

【第13章 金融サービス】

○ 他のFTAと同様に、外国企業と国内企業との無差別待遇(13条2)、最恵国待遇(13条3)、市場アクセス制限(外国企業による会社設立、他社の買収に係る制限)の禁止(13条4)などを一般的に規定。

○ 米韓FTAでは、特に、以下を追加的に約束。
(1)国境間取引
国内で会社を設立していない外国企業や国内企業と同様の事業許可を受けていない外国企業に対しても、自国民に対するサービス提供(国境間取引)を認める。(13条5.2)
(2)外国企業の本国でのデータ処理
自国での活動で入手した顧客情報を外国企業が本国へ持ち出してデータ処理することを認める。(13条5.1、13条附属書A、B)ただし、韓国は協定発効の2年後から適用。
(3)外国企業の本国での取引
金融取引に必要な業務を自国内の企業を用いて実施することを求めず、外国企業本国で行うことを認める。(13条附属書B)
(4)新サービスの許可
自国企業に新たな金融サービスを認めた場合、相手国企業がその新サービスを自国民向けに提供することを無条件で認める。(13条6)
(5)共済事業
協同組合が実施する共済事業を、同種の民間保険より優遇しない。協定発効の3年後から、農協、漁協、信協共済、セマウル金庫の共済事業を、韓国政府の金融監督委員会(FSC)の規制、監視の下に置く。(13条附属書B、F節)
(6)韓国ポストの保険
韓国ポストが実施する保険業務を、同種の民間保険より優遇せず、同一のルールを適用する、可能な限り、韓国ポストの保険サービスをFSCの規制、監視下に置く。(13条附属書D)

○ サイドレター(協定の不可分の一部)では、韓国ポストにつき以下を約束。
・ 新商品の販売は行わない(SL-5)
・ 既存商品の変更は認められるが、その場合FSCのレビュー、勧告に従う(SL-5)
・ 保険商品の販売限度額を引き上げる場合、事前にFSCと協議する(SL-5)

【第14章 電気通信】

○ 電気通信分野でのサービス自由化について、以下を規定。
・ 公衆通信事業者は、
(ア)事業者の通信網間の相互接続(interconnection)、(14条3.1)
(イ)事業者間桁数の同一番号の持越し(number portability)、(14条3.2)
(ウ)いずれの業者からの接続も同じ桁番号とする(dialing parity)(14条3.3)
を非差別的に提供することを規定。
 ただし、附属書において、韓国は国際電気通信事業者には(ウ)の義務を免除し、米国は地域交換業者に対して、(イ)、(ウ)の義務を免除している。(14条附属書A)
・ 接続料、回線使用料などで、韓国政府が、施設非所有業者に比べた施設所有業者に対する優遇を容認する旨を規定。ただし、施設非所有業者に対して接続事業等に関する紛争解決手続を提示。(14条附属書B)
・ 周波数の割当についての透明で非差別的に配分することを義務づけた上で、効率的で競争促進的な方法、例えばオークションや無免許利用などにより割り当てるべき旨規定。(14条17)

【第15章 電子商取引】

○ 電子的に送信される商品・サービスと実際の取引で提供されるものとの無差別を確保。(15条2)

○ ソフトウェア及びデジタル・プロダクツへの関税不賦課(無税)の確保。(15条3)

○ 電子認証、電子署名に係る法的有効性、法的要件、適合性を確保。(15条4)

【第16章 競争政策】

○ 他の多くのFTAと同様に、各締結国における競争法の執行の義務付け、競争政策の透明性の確保を規定(16条1)。

○ 米韓FTAでは、特に、指定された独占企業が商業ベースで無差別原則で活動すること(16条2)、国家企業が競争法の原則に従うこと(16条3)、消費者保護対策での相手国との協力を確保すること(16条6)などを規定。

【第17章 政府調達】

○ 中央政府、地方政府、その他関係機関のうち、中央政府のみを対象に規定。(17条附属書A)

○ 適用基準をWTO基準の13万SDR(米国:19万3千ドル、韓国:2億1千万ウォン)から、米国10万ドル、韓国1億ウォンまで引下げ。(17条附属書A)

【第18章 知的財産】

○ 他のFTAと同様に、TRIPS等の国際規約の再確認、手続の簡素化、透明性の確保などを、一般的に規定。

○ 米韓FTAでは、特に、医薬品に関連する特許、映画、ソフトウェア関連の著作権等に関して、以下を追加的に規定。

(特許)
(1)特許との関係(patent linkage)
医薬品の後発開発者が市販に向けた許可を当局から得る場合、その製品に係る特許権者に通知する等、特許権の侵害を防止するために必要な措置を当局が実施する。(18条9.5)
(2)特許期限の延長
医薬品の市販に向けた許可の審査に不当に長期間を要した場合には、その分だけ、特許期間を延長する。(18条8.6(b))
(3)データ独占(data exclusivity)
医薬品、農業用化学品の市販に向けた許可を得る際に先発開発者が特許に当たって用いた安全性、効率性関連資料の使用につき、医薬品は5年間、農業用化学品は10年間の使用を認めないなどの制限を課す。(18条9.1,2)

(著作権)
① 著作権保護期間の長期化
著作権の保護期間をTRIPs協定に規定されている50年から70年に延長する。(18条4.4)
このほか、サイドレター(協定の不可分の一部)で、以下の考えを確認。
② 二次的賠償責任(a secondary liability mandate)の明確化
著作権侵害について、著作物を転載した侵害者本人だけでなく、その転載物をインターネットに掲載した業者にも制裁を加える。

(商標)
○ 音声、匂い等の商標としての保護対象化
音声、匂い(例:インテルの効果音、プリンタートナーのレモンの香り)等を商標法の対象とする。(18条2.1)

(地理的表示)
○ 地理的表示(GI)の確保
EU、スイスが主張している厳格なGI保護ではなく、商標制度やその認証制度を活用して地理的な表示を保護する旨規定。(18条2)

【第19章 労働】

○ ILOの加盟国としての義務を確認する一般的な規定に加え、以下を規定。
(1)ILO憲章の下での労働者の権利(結社の自由、団体交渉権の認定、あらゆる形態の強制労働の禁止等)を保護するための規制、措置の実施を約束。(19条1)
(2)労働問題理事会を設立し、本条の下での義務違反につき、専門家等との協議などにより当理事会で問題解決を図る。(19条5)

【第20章 環境】

○ 貿易・投資の促進のため、環境規則を緩和しない旨、確認する一般的な規定に加え、以下を規定。
(1)次の国際環境条約の下での義務の履行。そのために必要な国内規則の実施を約束。
・ 絶滅危惧種の保護に係るワシントン条約。(20条付属書A1-a)
・ オゾン層の保護に関するモントリオール条約。(20条付属書A1-b)
・ 湿地保護に関するラムサール条約。(20条付属書A1-d)
(気候変動に関する京都議定書、生物多様性条約など米国が締約国ではないものは除外されている。)
(2)両国間に環境問題理事会を設置し、国際環境条約の義務違反について、当理事会での解決(各環境条約の下での規制当局・専門家との協議、各国内措置について、各条約に係る当局に条約解釈を求める等)。(20条9)

【第21章 透明性】

他の多くのFTAと同様に、法律、規則の公表、提案段階でのコメント機会の提供を規定。(21条1)

○ 米韓FTAでは、更に以下を規定。
(1)影響を受ける関係者に対して、法律、規則等の評価や修正のため手続を規定。(21条3及び4)
(2)政府関係者の汚職の禁止の明確化(21条5)

【第22章 組織的事項と紛争解決】

○ 他の多くのFTAと同様に、(1)両国の窓口設置(22条1)、合同委員会の設置(22条2)、②両国間の紛争を解決するためのメカニズム(協議、パネル設置、パネル裁定の実施、対抗措置、金銭的賠償等)を規定。(22条3〜15)

○ 米韓FTAでは、特に、自動車に関する紛争解決メカニズム(パネル手続の迅速化、パネル裁定に基づく提訴国の自動車関税の引上げ)を別途規定。(22条附属書A)


リビアは原油で日本は原発

2011年10月21日 18時41分48秒 | 政治
10月21日(金)  

 朝の衛星放送は、リビアのガダフィ大佐死亡がトップニュースとして、海外からの映像を報道しています。リビア国民評議会の発表では、死体頭部に銃弾跡が有ると血まみれになった本人の映像が、生死不明状態で写されております。独裁政権崩壊が独裁者の殺害と言う典型的な形で世界中に電波が流れております。かって大型オイルタンカーでリビアへ原油積みに寄港したのが一九六八年ですから遠いかなたの記憶です。その当時からリビアは産油国で砂漠にある原油積出港の警戒も厳しくて銃を手にした警備員の無表情な顔が今でも記憶に残っております。当時はガダフィ大佐の名前を聴く機会は無かったと記憶しますが、石油にまつわる利権あるいは紛争とはリビア国内でも存在したのか、紛争国にはそれなりの根深い対立があり時間を経ないと見えない部分が有るのでしょう。もう少し述べますと、生前のガダフィ大佐には粗暴とも思われる性格が表情の中に出ており、時として、人間の表情とは末期のサマをも、映し出すのかと思いました。


雲の上までとどいた桜島爆発の噴煙、午前中に車中から眺めた鹿児島県錦江湾の光景

 しかし、便利なもので日本語の解説ながらも世界のニュースが映像と伴に、朝から目と耳に飛び込んでくるのですから、国内ニュースも大切ですが、海外ニュースは英語ニュースをそのまま聴くように心掛けたいものです。日経電子版を中止してから、そろそろ半年は過ぎたか?中止した理由は政治家小沢一郎に関する報道に虚実取り混ぜたのが多いと、つまり偏向ニュースか、何とも自己判断の固まりみたいな理由ですが。新聞を電子版で定期購読するならば外国新聞日本版購読が遙かに見聞が広まることと、そもそも報道を事実と受け止める思考をそろそろ変えるべきか?報道は必ずしも事実を伝えないか、虚構が有り、さてそれは誰の思惑か突き止めるに、不慣れな者は迷路の入り込んでしまいます。

 それから思いを定めた外国新聞日本版をウエブ上で無料購読しておりますが、いざ有料購読申し込みをする段になり、金銭的には月額一千円~二千年内に有りさしたる負担ではないのですが、なぜか?なかなか決心がつきません。理由として、無料記事をネット徘徊していきますと、記事の範囲が広くて関心事に焦点が合いません。こんな状態で記事を読んでも翻弄されるだけで、さて如何したものかと迷ってばかりです。ネット上で有料ウエブに手を出すからには、それなりの成果を上げたいもの!どのような成果か、まだからっきし見えてくるものなんて有りませんが、ウエブから伝わる世界の情報とは何かしら統一したもの、あるいは時間的に空間的に繋がるものが有るのか、この辺も分からない!例え日本語版と言えども外国新聞との出会いに何らかの意義を見出したいもので、そこから新聞は次世代へも引き継がれて行くものなのか、せめてそれ位は目処を立てたいものです。

 先ほど届いた週刊金曜日の表紙中央部に「やっぱり 放射能と食」大きな見出しがあり、五名の方々が執筆されております。東電福島第一原発事故はまだ収束していない中で、放射能と食料の関係が議論されるのは当然の事であり、それが無いようで有ればこの国の原発事故は収束に向かうか疑問が生じます。
リビアの原油、日本の原発、いずれも国の動力源、あつかい方を間違えて国民を苦しめる元凶になってしまった。

石炭埠頭とイタリア国民投票

2011年06月14日 18時14分30秒 | 政治
6月14日(火)  

 まだ小倉駅の余韻が残っておりますので、何かまとめに成らないかと思いを巡らします。北九州市小倉まで出向いた目的の一つはFPの継続教育研修三単位取得がありました。本日現在も東日本大震災や福島第一原発事故などで平成23年度税制改正案が国会を通過しておらず、つなぎ法案も今月末で切れますので、今後の行方が注目されるところです。税制改正案の中で「相続税・贈与税制」、「所得税制」、「土地・住宅税制」など本業に関連しますものが数多くあります。細やかな改正点まで記憶に留めなくても、改正案荒筋を掴んでおきますと業務で大きな過ちをおかす事はありません。申すまでもなく税制は国の屋台骨の一つですので、新年度税制改正案が国会で審議されて採決が出来ないと、何かと不自由な場面が出てきそうです。国会中継も、その様な視点から眺めますと、審議内容がより鮮明に理解できそうです。

さて、小倉駅で眺めたものは何か?それは朝の散歩で雨降る中を駅北側方面を屋根付き歩道部分を約一時間ほど歩き回った感想でもあります。とりあえずグーグルアースで小倉駅界隈を眺めますと、関門海峡を挟んで九州側は北九州港・関門港・小倉港・戸畑港と港名が連なっております。更に写真を拡大していきますと、新日鐵や住友金属など工場建屋がぎっしりと建て込んでいます。ここで、古びた船員手帳を開いてみますと、新日鐵の戸畑港で洋邦丸積載豪州産粉炭をどの岸壁へ着岸し荷揚げしたか?下船前の一九六六年五月下旬が戸畑港入港日でもあります。その岸壁を空から探しますと、新日鐵の石炭埠頭が見えます。どうやらこの広大な関門港界隈が荷揚港でありそうです。空から眺めてもはっきりと映る膨大な石炭が新日鐵埠頭に露天で貯蔵されております。半世紀を過ぎても北九州市は重工業地帯製鉄所の百万人都市、鉄は国の生命線、そんな標語がふさわし空からの眺めです。

当時、豪州粉炭を運んだ他の港湾は岩手県釜石港、北海道室蘭港へと計四航海の履歴を刻みました。両港とも新日鐵の製鉄所がありましたが、思い出をたぐって釜石港へ一飛びしますと、現地は東日本大震災津波の傷跡が港街にも見て取れて、石炭埠頭には粉炭のかけらも見えません。何とも言葉が出ません。北の室蘭港は次回にして、一飛びを東京湾に向けますと千葉港へ飛んできました。ここは新日鐵千葉製鉄所がその後に建設されて国内有数の重工業地帯へと様変わりです。さて、石炭置場、石炭埠頭はいずこと?探しますと千葉港の奥まった岸壁に石炭埠頭が有りました。数万トンの石炭専用船まで着岸しています。空から石炭専用船の見分け方はハッチの形と数と位置で判断します。

〆に本日のハイライトはイタリアの国民投票でしょうか!原子力発電所再開の是非を問う国民投票が十二、十三日と開催されて、その結果が十四日発表で投票率は五四.七九%、原発再開への反対票は九四・〇五%で国民投票が成立したと報じています。これから世界原発の行方が方向付けられたイタリア国民判断です。福島第一原発事故はイタリア国民投票にも大きな陰を落とした事は言うまでもありません。この結果に対する日本政府現閣僚コメントがテレビニュースで報じられていました。空から製鉄所のエネルギー源の貯蔵庫・石炭埠頭の膨大な石炭量を眺めただけに、閣僚発言の内容に思わず吹き出しました。もう少し世界の動きにも目を注ぎ、日本国民へ力強い発言が出来ないものかです。民主党よ!国民を裏切るな。

テレビでながめた菅内閣不信任決議案採決

2011年06月02日 18時38分22秒 | 政治
6月2日(木)  

 正午のNHKニュースは民主党代議士会の場面から入っていきました。冒頭挨拶の中で菅首相は「東日本大震災の復興と東電福島第一原発事故の収束に一定のメドが立った段階」で退陣する旨を表明しました。この後、質疑の中で鳩山前総理と原口前総務大臣が不信任決議案賛成から反対への表明をされて、民主党の流れは一気に不信任決議案反対へと一つにまとまった感があります。小沢氏は出席されていたか否かテレビは映し出す事は有りませんでした。この代議士会の流れは国民の目から見ますと、事前の脚本が有ったのかどうか?菅総理自身が退陣まで本気で考え詰めたのか、これ以上に今は判断する材料を持ち合わせていません。

菅内閣不信任決議案が午後一時過ぎから不信任案に対する討論が賛成議員三名と反対議員一名とであり、その後に採決されるとあり、国会中継は国民として日本政治の現状を知るには良い機会です。菅内閣不信任決議案が本日のハイライト。テレビの前に釘付けになりますと与野党国会議員の顔ぶれがよく見えてきます。テレビ討論会とは別な表情を見て、仲間内で語り合う顔、これも参考になります。それとネクタイを外された議員が多くて、クールビズの影響が出ております。公明党議員には公務員退職者が多いのかな?

議場に設置されたカメラは何台でしょうか、テレビは満遍なく議場を写してくれて、映し出される衆議院議員諸氏を眺めていますと、瞬時の表情が与野党に関係なく良く見て取れます。また顔ぶれを注意深く眺めていますと、与党民主党よりも野党自民党議員の顔ぶれに覚えのある方が多く見受けます。何だこれは?世代交代で若い民主党議員諸氏に顔なじみが少ないせいもあります。菅直人総理の表情も見て取れます。途中、一瞬の居眠り状態まで映し出されており、緊張感から疲れが午後の時間に表れたのでしょう。

賛成討論三名とは自民党副総裁、同幹事長、みんなの党柿沢議員で、反対討論は民主党議員一名で行われて、この間ひたすら聞き入りました。反対討論を述べられた民主党議員が壇上から野党議員へ向かって反対投票を入れるように三回も最敬礼されたのには一瞬驚きました。選挙期間でもあるまいに、最敬礼しか意思表示は出来ないのかと考えましたが、民主党議員にはそれだけ若い議員が多い証であるのかと思い直しました。

民主党の現状を見る場面として、羽田元総理が他議員に抱えられて投票する場面がありましたが、物事の見方は様々でしょうが、この場面で思いました事は民主党にベテラン議員不足を感じました。その事が菅内閣不信任決議案提出の遠因になっているとみます。結果として菅内閣不信任決議案は衆議院本会議の採決で賛成一五二票・反対二九三票で否決されました。この後、国会風景はどのような展開を示して行くのか、菅首相の政策にどのような変化が有るのか、国民へ注意を喚起するものが出てくるのかです。

感想として、どのように纏めれば良いか?今回の不信任案ではほぼ一つの方向でまとまった民主党、辛うじて危機を脱出したと見ますが、若い政党の欠点、総理候補者が少ない事、総理の暴走をいさめる長老がいない事など書き出せばキリがありません。党内事情は何となく拝見させて貰い、政治の流れが民主党に戻ったのかなと思いましたが、今後菅総理の行動で結果は出るのでしょう。マニフェスト「国民生活が第一」を投げ打って政権の魔力に狂ってしまった菅直人民主党。若い民主党議員諸氏、国民を見つめて政治をして下さい。そう、諸氏へ一票を投じるのは国民です。しっかりしろよと言います。

党首討論を拝聴して

2011年06月01日 18時07分20秒 | 政治
6月1日(水) 

 本日から水無月、何かが変化するのかと思っていましたら、最初に目にしたのはテレビ画面、映し出された映像には環境省職員の超クールビズ出勤スタイルが放映されていました。第一印象に何処か真夏向け商品のオンパレードだなと思い、次にそのスタイルで東京の気温にはまだ寒かろうに、風邪など召さぬようにと、外野席の野次馬となりました。


何でもない道ばたの光景

しかし、福島第一原発事故が収束せずに夏場電力不足のかけ声の下で、公務員の夏服スタイルまで影響を及ぼしており、実施に拍手です。夏場とは言えど、今もなお国会や官庁ではクールビズが静かに深く浸透しているのに、国民の感覚は遅れがちな部分があり、まだクールビズが他人事か上の空ごとに思える時があります。それでも世の中、環境省超クールビズスタイル、服装一つとても変化していくものだと意識の中に納めました。


管理人のいす

次に、本日は衆議院における菅内閣に対する不信任決議案が自民党と公明党から合同で提出されると昨日のニュースで知りました。この件は政治に関する、国民必見、メインテーマと捉えて、午前中に新聞のテレビ番組欄に目を通しました。NHK総合テレビで午後三時から衆議院における国会中継「党首討論」が質問者谷垣自民党総裁(持ち時間三五分間)と質問者山口公明党委員長(持ち時間十分間)と答弁者菅直人総理大臣とで衆議院第一委員会室で開催されました。


仕分けされたゴミ

国会の党首討論会をテレビ画面で傍聴しますのは久しぶりで、メモも無しで、ひたすら質疑応答と三者の表情を見比べながら聞き入りました。少し緊張感も持ちました。しかし、野党の立場になった自民党と公明党を、それぞれ党首の表情を介して眺めていますと、どこかすっきりと吹っ切れた面が有るように見受けたのが第一印象です。与党時代は表現が不十分ですが議員諸賢に贅肉が付いていると言った感があり、国民の立場に立った政策であろうか?と疑問に感じる場面が幾つかありました。なるほど、引き締まった野党党首の表情を眺めていますと、つい二大政党時代がやって来るような錯覚に陥ります。


軽トラの準備もしてあります

谷垣自民党総裁の始まりの言葉は、菅総理大臣の退陣要求を「真なくば立たず」と表現して始まります。菅直人氏が総理大臣に就任してほぼ一年間が経過しますが、その間の総理大臣としての実績を「真なくば立たず」と国民からの信頼性欠如をあげています。後に続く言葉として政治のシステムに不慣れである事から始まって全部で四項目と続きます。菅総理が謙虚に受け入れるべき言葉が多いと感じました。


ゴミ置き場の全景

感想として、党首討論が終わってみますと、菅総理答弁にはどこか一貫性が欠けております。内閣の人材不足も感じます。五〇分間の党首討論で見えたものとして、今回は進行中の国難に沿って理路整然とし政策展開を求める野党側に、残念ながら、軍配は上がったと見ました。菅内閣の東日本大震災と福島第一原発事故に対する政策方針と実行力の欠如です。


近くを通る都城市緑道公園

党首討論を糧として、現政権が今ある国難にどのように対処して国民に対して政府の役割をしっかり果たせるかどうか?大いに注目したいところです。しかし、今夕には菅内閣に対する不信任決議案が同二党より提出されるありります。日本の政治が東日本大震災と福島第一原発事故を前に混沌とした状況になりそうですが、311が発生して早八〇日が経過しました。野党側に肩を入れる訳ではありませんが、明日も国会から目が離せなくなりそうです。

SDカードは壊れない・The SD card is not broken

2010年11月16日 18時12分54秒 | 政治
11月16日(火) 

 十四日のライオンズクラブ国際協会シド L.スクラッグスⅢ会長をデジタルカメラで撮影した写真と動画、取り扱いの中で幾つかの操作ミスを重ねてしまいました。プロならば重ければクビになる場面でもあります。一つはシド会長を囲み同じテーブル三名会員諸氏との記念撮影、確かにシド会長を中心に四名を撮影してカメラ画面で再確認をしましたが、翌日にはそのファイルが見つからない。時々ある故障事例です。依頼した会員諸氏にしてみれば国際会長との記念撮影は今後ライオンズクラブ活動を行う上での大きな励み。さて、素人カメラマンとしてどうしたものか、判断に迷う場面でもあります。対策として予備カメラを左手に。



幸いに一枚目のSDカード、セミナー動画で満杯になりました最初のカードには故障は見られません。それでは会長セミナーの写真と動画をコピーして記念写真の代用品として贈って事なきを得るかです。写真のコピーは媒体をCDで済みますが、動画はどうか?音声と動画をコピーするには媒体としてDVDが適応していると電話の向こうから友人の声です。



それでは編集した動画を再度パソコン内でSDにコピーして友人経営するカメラ店へ持参します。その前に念を入れて事後対策として新品のSDカードを近くのショップで求めます。容量が同じ八GB。なお、デジタルカメラの動画設定をHD720pにしてあります。このNikonのカメラで動画の一ファイルあたり記録時間は二九分間が最長です。



ネットで動画掲載が下手くそ故に手間取るのであれば、その手前のDVD編集からお復習いとなります。DVDの注文を三人分+予備を加える事にしました。ここでカメラ店経営の友人にSDカードの故障について経過を説明します。友人は即答。SDカードはまず壊れない。原因はカメラの操作ミスに起因すると。The SD card is not broken. Broken record. This is my friend explained.



さらに友人の次なるアドバイスは、壊れたと思ったら、その状態で修理を求めること、下手に触らない。なるほどの連続。マシーンを取り扱う者に、機器とはまず壊れる事は尋常の段階ではあり得ないと認識すべきです。この辺の認識の差、トラブル発生の原因を即座に判断できれば処置も正確という事です。何かしら、この事にかこつけてブツブツ申したいのは尖閣ビデオ流出事件、事件となる大元が入り組んでいて、中国漁船領海侵犯から船長逮捕と結末は釈放という捜査の流れの中で、数多くの不手際を日本政府は犯しているのに、正確に説明する政府関係者が国民に見えないことが日本の国力を益々下げていると見ました。



何かこじつけを申すようですが、日常生活で手にするマシンは尋常の状態では壊れない。これを例にして申しますと、海上保安官を逮捕立件する事を検察は諦めた。ネット事件を既存の法律で裁くには素人目にもかなり網目の大きさが目立って来ました。法律を壊れないマシーンに例えますと、ソーシャル・メディアが活躍する時代に壊れない法律を制定するにはどのような経緯を踏まえて行くのでしょうか?この道筋が見えない限り日本政府の迷走は続くと判断します。


ネット対策なき官房長官談話は寝言である

2010年11月06日 19時42分41秒 | 政治
11月06日(土)
 
 新たな用語を使うとは使う本人にも新たな環境整備!心の中で一つのまとめが出来上がるのではないかと、この数日間の出来事でたどり着いた一つの結論です。インターネットが日本に初めて登場したのが一九八七年、つまり二三年の経過を経てかなり頑丈ですそ野の広いメディアになって来ました。



インターネットを短く呼んでネットと称して漠然とした範囲を考えておりましたが、LION誌11月号のソーシャルメディアと言う呼び方を覚えますと、何か今までの漠然とした霧がすっきりとした大系を表して来ました。新用語と言うか言葉とは大切なものだと思い知らされました。


都城市柳河原川のコサギとコガモの群れ

さて、尖閣ビデオの流出問題はソーシャルメディアの扱い方、操作手順や法律関係の事柄など学ぶ事が数多くあり、実際に試みてスキルを学ぶ場でもあると見ました。このソーシャルメディアに対して現政権のみならず法令も追いついていないか、現内閣でソーシャルメディアの実務に詳しくて総理大臣や官房長官へリアルタイムでアドバイス出来る閣僚が何人いるのでしょうか?どうかしますと、失礼を申せば、皆無か?


朝の都城運動公園

国民にはほとんど知らされませんでしたが、録画の流出、或いは情報窃盗が比較的に簡単であるか、とても情報を隠し果せるものでは無い事を、そんなネット認識が現政権におそらく今でもあるのかな?何かしら挑発的な事を申しますが、政府の力を買いかぶった所があると思います。簡単に申しますとソーシャルメディアへの認識の差が世代間にあると。国が情報の扱い方を間違えますと時の政権が吹き飛んでしまうと見ます。今も昔も変わらない事です。



さて、前置きが長くなりましたが、本日は午前中に小林市まで出向き物件調査、静かな甍の列びにときおり廃屋も混じっており人様の移動を見ます。小林市から宮崎市へ向かう国道二六八号線、道路は車で満杯です。南九州都市間でも道路網の整備はまだまだ求められます。山間の集落、秋の取り入れを終えた棚田風景、食糧自給率が四〇%とは何が基準になっているのでしょうか?台風来襲の無かった年とは実り豊かな秋を通りすがりのドライバーも感じます。




本日の午後は日本FP協会宮崎支部主催の継続教育研修会三単位、つまり午後一時半から四時半まで三時間に及ぶ講座・講師秋山をね氏「社会責任投資(SRI)と企業社会責任(CSR)」~投資を変えることで社会を変える~をたっぷりと受講しました。午後の眠たい時間帯、なるべくリラックスして睡魔とも戦わねばならず、講義を具体的な事例を自分なりに思い浮かべながら何とか聞き果せました。受講後に三人の質問者の一人にもなりました。



ここでも興味ある新用語に出会いました。サステナビリティ(社会地球環境の持続可能性)です。三四頁の資料は今後日本が進む進路を示していると見ました。その入口がSRI(Socially Reponsible Investment)か!講義の締めくりは二宮尊徳翁の言葉です。「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」と。付け加えますと「ネット対策なき官房長官談話は寝言であり、国民を柱としてこそ政権持続はある」と。


何が大切か

2010年11月05日 18時24分31秒 | 政治
11月05日(金) 

 あまり考え事をし過ぎますと、地方の車社会では危険信号です。交通事故は一瞬にして起こるものだと、本日は気づく場面がありました。大通りに入り込む右折箇所を避けて大回りして、交差点での右折、ハンドルを切り確認の視線を前方へ向けますと、正面から乗用車が直進してきます。思わずブレーキを踏み停車して直進車を通り過ごさせます。交差点中心より右折やや右よりのポイント、鼻の差で通り抜けて行きました。ほんの一瞬の出来事で前方注視がなければ交差点で車どうしの正面衝突、今頃は病院の集中治療室かもしくはです。


都城運動公園の秋風情

運転中は考え事をしない事、スローで心地よい二胡の音色をBGMに聴いて穏やかな心で運転すれば安全運転間違いなしですが、何故か、日常生活の中で一日を振り返り己の愚かさを悟る時間を持ち合わせなかった人生の結果が、折り返し点を過ぎて中程になろうというのに、未だに静け心と縁遠い身となっております。しかし、百寿者を目指すにはまだまだ十年や十五年は現役でいなければなりません。身体機能の衰えと上手に付き合って現役を保つには何が大切か?十年前も同じ答えを出しました。今回も考え事の切り替えが大切ですと。



何を柄にもなく興奮したかと申しますと、先月の尖閣列島魚釣島沖合での巡視船と中国漁船との衝突事件、海上保安庁が撮影したビデオを早々と世界に公表して中国漁船の領海侵犯を周知の事実にすれば良いのにと感じておりました。その上に那覇地検による拘束船長の釈放など、国民として感じますに、検察庁が外交問題にタッチしたケースが過去にあったのかな?と、外交問題に対して何かちぐはぐだと現政権にまで疑問を感じておりました。



その後、政府委員会で録画一部を委員会限定の公開となり、何を勿体付けているのか国民は蚊帳の外だなと思っていました矢先に、今朝の電子新聞によりますとユーチューブへ録画流出です。流出して削除されるまでの半日間で、十万件のアクセスが有ったと言いますから、録画の事件性もさることながら、素人が考える以上にYouTubeと言うソーシャルメディアが広く利用されている事が分かります。



どのような経路で動画流出したのか、いずれ解明されるでしょうが、いろいろな事を考えさせる事件だなと思います。やはり、最初に感じました事は現政権は持つだろうか?国民の信頼を持続させられるだろうかと、録画漏洩の意図にはまり込みそうな考えに落ち込みます。取り敢えず政治的な意図に塡り込まないためには静観して成り行きを監視つづける事です。



情報の機密性保持も大いに大切ですが、新しい時代のメディア、この対応は大いに研究余地がありそうです。むしろ各界で世代交代を促すのかもしれません。それだけ日本の若者世代がタフであればですが!しかし、タフにならざるを得ない状態にあるのかなと思いました。思いすぎて交差点で正面衝突を起こしたのでは身も蓋もありません。にっちもさっちもならないように頭の切り替えは大切です。


立川市議会場を見学して

2010年11月02日 18時17分52秒 | 政治
11月02日(火)  

 本日は昨日の続きで本業がスムーズに捗り、後は流れに沿った作業が続くだけで、一段落ついて午前十時前には本日の業務は完了です。こんな時には取りこぼした作業の一つを選択して霧島山麓へ自然水採水へと出掛ける事にします。乗用車に積めるだけの水タンクを詰め込んで新燃岳のすそ野へ出掛けますが、途中、山間部西岳地区の県道三一号線を走りますと、片側道路通行箇所が数カ所あり、大雨災害の後遺症が復旧しておりません。土石流の流れ込んだ水田には土砂は有りませんでしたが、今年の収穫はほとんど皆無に近い水田が西岳川沿いに広がっています。
日々の生活に飲用に使う自然水を求めて山地まで採水に出掛ける訳ですから、食生活や健康管理に敏感な人々が増えて来た!自然水の効能が如何ほど有るのか、体で感じる敏感さが目安になっております。日常に使います水・米・野菜と農薬と無縁なものが求められているのが現状で、愚妻は友人へ依頼した西岳米の到来を待っております。田舎の米として娘たちへ秋のプレゼントです。


議長席より眺めた立川市議会場内

さて、本日は先月二五日に現地視察しました立川市議会場の感想を書こうと、写真の整理をして見ました。資料などで確認しますと五月六日に立川市役所新庁舎がオープンして市議会場は新庁舎三階部分に有ります。ネットで調査して見ますと、広大な米軍基地跡の返還を受けて跡地の都市計画に沿った一環に古くなった立川市役所の建替工事がなされたのでしょう。


議長席の机

立川駅北口で乗車したタクシーを市役所玄関前で降りて立ちますと、まず建物の印象がシンプルと言う言葉が浮かび上がります。市庁舎の設計は時代の流れ、或いは雰囲気を取り込む部分が多いのかもと、城市役所庁舎を思い出して感じます事は、何か重々しさを醸し出そうとした要素があります。


議員席よりながめた市議会場内

これからも人口移動が地方から都市へと進む事が考えられます。そう言う時代はシンプルと言う事が共通のキーワードになるのかな?と思います。地上三階地下一階と言いますからさほど大きな建物にも思えません。それでも人口は十七万人ほぼ都城市と同じ。市議会場の見学が終わればそれで良しとする個人視察ですから事前準備もさほど行わず自分の目で確認した事が成果です。



一階受付で市議会事務局を訪ねて、三階までエレベーターで上り事務局で見学のお願いを告げますと女性職員の案内で鍵の掛かった市議会場を開場して頂き議場内を見学させて頂きました。一番の注目点は議会場と傍聴席が同じフロアで有る事の確認です。なるほど、確かに同じフロアあり百二〇席ある傍聴席は階段席になっており、議場内が観やすい状態にあります。各席に机とイヤホンジャックは有りませんが、車椅子席が記者席の両サイドにあり身障者の傍聴に配慮がなされております。



http://www.youtube.com/watch?v=y9l5o3m71Q4

短い市議会場見学の時間ですが、電子表決板が議員用と傍聴者用と二枚設置されているのが印象に残ります。それと電子表決板へ採決の折りに賛否の市議名が表示される事です。表示される内容はそれなりの数種類あると観ました。その辺は、つまり電子表決板の使われ方を立川市議会開会中に確認に出向きたいものです。女性職員の言葉に、青梅市と立川市両市議会場を視察の来られる前項市議会関係者が多いと。


天井部分に設置された天窓

最後に議場内の雰囲気はこれもシンプルその様な表現でしか印象を語れませんが、重厚感はありません。これは市議会の本質を良く表しておるとみました。また建物最高階に有る故に採光に天窓を設置している事など、議会場を心理的にも明るいものにした設計とみました。天がのぞき込む立川市議会場です。