精神機能と能力開発:心理学―教育学―社会学

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反応抑制課題は何を測定しているのか?

2012年08月11日 | 学術論文

<学術論文>

藤田英樹・前川久男・宮本信也・柿澤敏文・二上哲志・藤田直子(2007)Go/No-Go課題における刺激間間隔およびtarget刺激呈示確率の交互作用に関する健常児童の発達的研究―注意欠陥/多動性障害児および学習障害児のための基礎的研究として―.障害科学研究31105-114

http://ci.nii.ac.jp/naid/110007007780

<内容>

 注意欠陥/多動性障害(ADHD)は不注意、多動性および衝動性の3つの臨床症状を示すが、現在のADHD研究はこのうち衝動性に注目している。ADHDの衝動性の原因は反応抑制の困難であるとする仮説が提起され、反応抑制の困難が「反応を遅らせること」の困難を引き起こすとされた。しかし実証的な反証として、ADHD児の反応抑制課題の成績は、刺激呈示の時間間隔(ISI)を短くすると改善し、ADHD児に特異的であることが示された。反応抑制課題における短いISI効果の解明は、ADHD解明の重要な手がかりである。

 本研究は、ADHD児のための基礎研究として定型発達児(小学生)を対象に、従来の研究よりも短いISIの効果を検討した。その結果、反応抑制課題の押し間違いエラーに影響しているのは、「反応を遅らせる」能力よりも、課題に対する「油断(気を抜く)」であることが示された。定型発達小学6年児においてさえも、反応抑制課題の遂行に対して動機づけ(エフォート)が影響していた。このことは、ADHD児においては尚更、反応抑制に対して動機づけが影響していることを示唆している。

 ADHDの反応抑制において、「反応を遅らせること」の困難というよりも、「課題に対する取り組み」の低さが原因となっていることが示唆された。また、本研究はヨーロッパのADHD研究において注目されていた認知エナジェティックモデルという理論モデルを、本邦においてはじめて導入した研究であると思われる。

Mc900423583


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