飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

(続) 連載小説「幸福の木」 275話 空中の神殿?

2021-07-31 17:17:08 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや、連日おりんぴっくもタケナワ、日本の金メダルもたくさん獲得したようで、何はともかく目出度いです!
ウチの先生も種目が多過ぎる!って言って、テレビを見てません。結果だけ知りたい!って。
はい、理由は心配症ですので、見ていると負ける!そうです。
そうそう、各家庭に壁かけの巨大画面テレビで、試合だけでなく家庭で応援している人の姿や声も見えるようにすれば、完全リモート観戦になるんでは? なんて言ってます。
もちろん試合会場にも巨大画面で応援者の姿や声も届くようにして、ですが・・
はい、てな訳で、何はともかく原稿が届きましたので、早速、小説に参りたいと思います。
はい、では、開幕、開幕!

275 空中の神殿?

太郎やハナ達は花園の美しい女性に案内されて大きな池の前に立った。
その池の中央には小島があり、手前と向こう側が赤い橋で繋がっているのが見えた。
池の向こう側には、寝殿造りのような紅い木造りの邸が建っていた。
「あちらのお邸に木花咲姫様がいらっしゃいます。あなた方をお待ちになっておられます。どうぞ、この赤い橋を渡ってあちらのお邸までお歩きください。わたくしのご案内はここまでです」
女性は、前方の赤い橋に手を差し伸べて、太郎と皆に言った。
「えっ、ここまでって?あの、あそこまで案内してくれるんじゃないの?
太郎が即座に言った。
「いえ、わたくしは花のお世話がありますから・・・」
女性は太郎に首を横に振って答えた。
しばらく若者どうしの何やらまずい雰囲気になった。
長老と修験者が黙ったまま待っていられなかった。
「おいおい、タタロ、これからお前が先頭に立って皆を案内しろ、ウチの大将はもしかしたらここに残る事になるかも知れんからな」
突然、長老がタタロの肩を叩いて言った。
「えっ?・・・?でっ、おれが?」
タタロは不意の指示に驚いた。
「そうじゃ、ウチの大将はここで婿入りする事になるかも知れん、まあ、その時は皆で祝って追い出してやろうな、そう盛大にな」
今度は修験者が真面目な顔で答えたが、目は笑っているようだった。
「えーっ?婿入りって?ここに残るって?いったい何の話?」
ハナナとハナが驚いた。
「これこれ、そんなに追求するものじゃない、やはり娘達はまだ子供じゃのう、こう言う事は大人になったばかりの若者同志の微妙な話じゃ、ほれほれ、皆、そんなに注目するものじゃない」
と長老は皆が二人に目を向けるのを止めさせた。
「そうそう、その通りじゃ、放っておいて遠くから見守るものじゃ。ほれほれ、タタロよ、何をしている?早く皆の先頭に立って、あの赤い橋へ向わんかい、これからお前が大将じゃ、しっかりせい!」
修験者が思いっ切りタタロの尻を叩いた。
「痛い!」
タタロは叩かれた尻を撫でながら先頭に立って、赤い橋を渡り始めた。
ケンやゴクウはその先を行き、長老達やグー太やハナ達も続いた。
「太郎兄ちゃんは、どうするのかしら?」
時々ハナが後ろを振り向いた。
が、放っとけ!とばかりに長老達は先を急がせた。
一行は、赤い橋を渡ろうと足を踏み入れた。
橋の上から見る池の水は澄み切っていた。
そして、見た事もない鯉のような様々な色の魚達が群れをつくっているのが見えた。
皆はしばらく見とれていた。
「おい、タタロ、もういいじゃろう、出発しろ!」
また長老達が先を急かせた。
赤い橋を渡ると、小島に着いた。
小島には景色を見渡せる長椅子のよおうな休憩所があった。
それを見た長老達が、
「おお、せっかくじゃ、ここで休んで景色をじっくり味わおう、何か飲み物でも出て来れば言う事はないがのう、はっはっはー」
と大喜びで長椅子に座った。
しばらくすると、遠くの景色を見ていたハナナが言った。
「あっ、あっちの母屋の方から誰かが来るわ」
見ていると三人ほどの娘達が、何かを持って、赤い橋を渡ってきた。
そして、爺達の前に立つと、
「どうぞ、よくいらっしゃいました、これは粗茶とお供ですけど、どうぞお召し上がりください」
と和服のような着物の娘達が、茶碗と皿のお菓子を出してくれた。
「ああ、言ってみるもんじゃのう、思いがけず言った通りになってしまったぞ、やはり、言葉の力、言霊の力じゃ、はっはっはー」
願った事がすぐに叶って長老達はご機嫌だった。
皆が茶を飲み干すと、長老達の心を察して、娘達がすかさずお替りを入れてくれた。
その上品な和服の娘達は気が効くのに加えて、三人とも美人揃いだった。
「タタロよ、ほれっ、よく見ろ!この娘達もえらく美人の娘達じゃ、太郎は少し早まってしまったかも知れないのう、こちらの娘達の方が美人じゃと想うが、どうじゃ?たたろよ?はっはっはっはー」
長老達が大笑いした。
娘達も嫌な顔もせず、皆を見守るように立ったまま笑顔で聞いていた。
やがて皆が十分に休憩できたと見るや、娘達が促がして言った。
「あちらのお邸で木花咲姫様がお待ちでございますから、どうぞお出かけください」
「おお、そうじゃ、そうじゃ、あまり待たせるのも失礼じゃ、さあ、たたろよ、早く出かけようぜ」
またタタロを先導に皆が一列になって赤い橋を渡り始めた。
今度の赤い橋はより長い太鼓橋で、真ん中がかなり盛り上がっていた。
「わっ、いい景色、池全体が遠くまでよく見えるわ」
ハナ達は喜んで、踊るように足踏みしてはしゃいだ。
「あの、申し訳ありませんが、この橋はそれほど丈夫ではありませんので、静かにお渡り願います、たぶんこんなに大勢の人が渡るのは初めてですので少し心配してます」
と後ろを歩いていた女性達が心配顔で言った。
ハナ達は足踏みをピタッ!と止めて、顔を真っ赤にした。
橋を渡り終えると、前方の邸の前にお供を連れた木花咲姫の姿が見えた。
「おお、わざわざ木花咲姫様がお出迎えじゃ、こんなワシ等にはもったいない事じゃ」
長老達が恐縮した。
その時、ハナは何か違う!と違和感を感じた。
太郎の事でもなかった。
「ああ、そうだ!」
と大声を出した。
「思い出したわ、そうよ、私達じゃないのよ、主は私達じゃないのよ、私達は単なるお供なのよ、元々この旅はグー太のためにいろいろな人達が案内してくれるのよ。私達はグー太のお供なのよ、皆はグー太のために、あっつ失礼、かぐや太郎様のためにいろいろ便宜を計ってくださるのよ、長老さん、間違わないで、私達はグー太、いえ、かぐや太郎様のお供なのよ、主役はグー太、いえ、かぐや太郎様なのよ」

ハナはそう言い切ると、グー太を前に押し出した。
そしてハナナと共に、自分達はお供のようにぴったりと寄り添って歩くようにした。
「おやおや、お姉ちゃん達って、急に態度が変わったね、別に、おいらはどちらでもいいんだけど、・・・」
とグー太は、ハナ達二人が侍女のように従う前を、1人だけ悠々と偉そうに歩く事になった。
「タタロ兄ちゃん、あんたは案内人だから、そのままそこにいてもいいわよ。でも、木花咲姫様の近くへ行ったら、グー太、いえ、かぐや太郎様の後ろに回るのよ、私達の主人はあくまでもかぐや太郎様なんだからね、そう、爺さん達は、もう後ろにいた方がいいわ、あんた達も単なるお供の1人なんだから」
ハナナがはっきり言うと、さすがの長老達も黙ってしまった。
タタロを先導にグー太とお供のハナ達が近づくと、木花咲姫が、
「あらあら、皆様方の様子も前とはずいぶん違うのですね、かぐや太郎様もようやく子供扱いされなくなったようですのね、皆様方がそれだけ賢くなられた証拠で、それはそれは良かったですね、おやっ、あの太郎様の姿が見えませんが、どうかなさったのでしょうか?」
木花咲姫が不思議そうに聞いた。
「ええ、ちょっと、兄は道草をしてまして美しい女性が多いので少し 夢中になってしまいまして・・・」
ハナが恥ずかしそうに答えた。
「おやおや、そう言う事ですか?それはそれは、もし希望ならば、ここに婿入りしてお住みになっても大丈夫ですのよ、ねえ、皆さん?」
と傍の侍女達に言うと、侍女達にわっと歓声が沸いた。
「それでは皆さん方も十分休憩を取られたようですので、早速これからかぐや太郎様初め皆さん方をレムリアの一番尊い聖なる御神殿へ案内いたします」
と言うと、木花咲姫は侍女を伴って歩き始めた。
しかし、その行く先は池の前の赤い寝殿風の木造りの建物ではなかった。
その横を通り抜け、そのずっと奥の深い森のような山奥だった。
ハナ達や長老達は、あれっ?と思った。
「おやっ、はて?ワシは宮殿と寝殿と聞き違えたかのう? そもそも宮殿と寝殿は何が違うんじゃ?」
長老達が小声で囁き合った。
そんな声が聞こえたのか、
「先ほどの赤い木造りの宮殿は、わたくしが住んでいる宮殿です。これから行く所はレムリアの神様方が住んでおられる神殿です。
わたくしは木花咲姫と言う名の通り、ずっと昔にこの地球に初めて花の咲く木々を持ち込んで育ててきた女神です。
それまで地球には花の咲く樹木はありませんでした。
他の惑星から地球の環境で育ちそうなしかも花の美しい樹木を選んで、試行錯誤しながら懸命に育んで参りました。
なので、この先にはいろいろな珍しい木の花が咲いています」
やがて、木花咲姫が言った通り、路の両側には、種々の背丈の高い樹木が育っていて、様々な美しい花を咲かせていた。
また林の中の木陰には、色々なランの花々が咲き乱れていた。
「それでは、これからはツル性の樹木の森になります。藤や 葡萄やもその仲間です」
やがて路の両側には垂れ下がった美しい大きな藤の花がアチコチに見られた。
そんな藤の花にも立ち止まる事なく、皆は歩き続けた。
不思議な事に、ツル性の樹木は、何本かが互いに絡み合って、巨樹のように空高くまで伸びていた。
標高が高くなったためか、霧が出て来た。
その水分を吸うように、歩いている路にも樹木の根やツルが網みたいに覆うようになってきた。
そしてとうとう地面が根やツルで隈なく覆われてしまった。
霧に囲まれた両側には、藤や他の樹木のツルが勢いよく伸び、まるで熱帯の密林のようだった。
「霧のため根やツルは濡れて滑りやすくなります、でも大丈夫です。これから路は今までの坂道でなく階段になりますので心配ありません」
木花咲姫の言った通り、不思議な事に、路を覆っていた樹木の根やツルが隈なく絡み合って階段状になっていた。
そして皆が乗ると、その重さのためか、ゆっくり沈んだ。
「何だか空中を登っていくみたいだね」
グー太が気に入ったのか、久々に声を出した。
皆は、その樹木の根やツルでできた網目状の階段の珍しさに目を奪われた。
そして皆で面白がって登っていたが、その階段は延々といつまでも続いていた。
その内、フとゴクウが、不思議な事に気づいた。
それは、そんなにも長く高い階段路なのに、誰ひとり音を上げなかった事だ。
休憩もしないのに高齢の長老達でさえ息ひとつ切らしていなかった。
その時だった。
「おーい、おーい、待ってくれ!」
霧の中、下方の遠くから声がした。
太郎の声だった。
しかも、霧の中の、かなり下の、かなり遠くからの声だった。
「あっ、太郎兄ちゃんの声だわ、どうしたのかしら?」
真っ先に妹のハナが反応した。
「ひょっとして、あたい達を追い駆けているのかしら?もしかして彼女にふられたとか?」
ハナナが笑った。
(それは、大いに有り得る)
とでも言うように皆は顔を見合わせた。
「太郎兄ちゃーん、私達はここよー!」
ハナが振り向いて、霧の下遠くに向って叫んだ。
「おーい、お前達は、いったいどこへ向ってるんだーい?今まで歩いてきた路とは全然違ってるぞー!」
また太郎の声が聞こえた。
「太郎兄ちゃーん、大丈夫よー、間違ってなんかいないわー、木花咲姫様が案内してくださってるのよ、大丈夫よー!」
ハナが大声で答えた。
すると、今度はたまり切った疲れを振り絞ったような太郎の声が、聞こえた。
「おーい、あのな、お前達が登っているのは山じゃないぞー、空中だぞー」
「えっ?空中?・・・??」

(つづく)

ハイハイハイハーイ、いやいや、空中って?はてはて、いったいどうなっているの?それに、太郎の恋はどうなったの?
はいはい、それにオリンピックもころなも何もかもゴッチャ混ぜで、おまけに雷や台風や豪雨まで!
これから金メダルの数も気になりますが、コロナの数も気になります、果たしてどのくらいまで?
はい、てな訳で、「金増えコロナ減れ!」とまたのお運びを願いまして、バイバイ バーイとさせていただきまーす!