jurgen's Heurige Blog (ゆるげんのブログ)

I will, I will いっぱい足りないの切なくて
I feel, I feel いっぱい会いたいのボクだって

働くことがイヤな人のための本/中島 義道

2010年10月31日 | 読書
「仕事とは何だろうか?」
「人はなぜ働かねばならいのか?」
「生きることがそのまま仕事であることは可能か?」
引きこもりの留年生:Aさん、
三十過ぎの未婚OL:Bさん、
中年サラリーマン:Cさん、
元哲学青年の会社経営者:Dさん
の架空の人物が架空の対話を通して人間が生きることの意味を探求する。

その中年サラリーマンCさんの悩みが自分の悩みとそっくり。
驚くのを通り越して呆れてしまうほど。


金のため妻子のため
(わしは独身です)
それに社会から落後することが恐ろしいため、
気乗りのしない仕事を続けてきた。
それに生き甲斐も喜びも感じないまま、ずるずる続けてきた。
すでに人生半ばを過ぎ、これからもこの仕事をダラダラ続けていってもいいのだろうか
(わしはイヤだ)
あと20年このつまらない仕事にしがみついて、
さらに精気のない老後を迎えるのだろうか?
考えれば考えるほどイライラはつのり
「どうにかしなければならない」
と思うのだが、
何をどうしていいかわからない。
今まで真の意味でみずから決断したことがないので
(ただみんなのする通りにしてきただけなので)
ことここに至ってさえ、
自分の本当の望みがわからないのだ。

私は自分が何をしたいのかわからないままに会社に就職してしまい、
気がついたら充実しない時を20年もおくっていたのです。

いままで自分をたましつづけて会社員をしてきましたが、もう限界です。
自分を騙し続けるのは、
実は容易なことではありません。

これまでの人生に何も賭けずに来た自分から見ると、
何かに賭けても成功しなかった人、
それにもかかわらずその仕事を続けている人もまた羨ましい。
彼らは敗北感をもって生きていける。
そして死んでいけるのですから、
それさえせずに、自分がこの歳までダラダラ来てしまったことに、
はなはだしい自己嫌悪を覚える。

作家、スポーツ選手、ピアニスト、画家、料理人、
どんな小さい分野でもいい、
個人として自己実現している人が私はたまらなく羨ましい。
でも、そうしようたって私にはその才能がない。
これも認めざるを得ない。

私は完全に失敗者ですから、
我が身に照らしてその残酷さは身に沁みてよくわかります。
私は仕事ができず何ごとにも自信がないので、
自分でも魅力に欠けていると自覚しています。
はじめは、
自分に魅力がないから仕事ができないんだと思っていましたが、
どうもこの歳になると、そうとは言えません。
むしろ逆ですね。
私の無能力が私をますますつまらない人間にしていますよ。

組織に属していることが嫌でしょうがないと思いながらも、
いまさら組織を離れられない。
ただ、無性に怖いからなんです。


100%まったく同じというわけではないけれど、
最近自分が考えてきたことものすごく似ているので、
まるで自分の心を読まれているような気さえした。
ジョナサン・ケイナーの占いでもたまにそんな気にさせられることがある。

働くのがイヤな人はどうすればいいか?
結論は「半隠遁=人生を半分降りる」に行きつくらしい。
わしはそう読んだのだが、
読む人によっていろいろな解釈があるだろう。

「よく生きる」とは?
幸福を求めることは第一の目標ではない。
第一に真実を目指して生きる。
外的・内的真実を含む。
死を見据えて生きる。
どうせ死んでしまうことの意味を問いつづける。
生まれた時から不条理な世界にいることの意味を考え続ける。

う~む。
わかったような気もするけれど、よくわからない。

「どうせ死んでしまう」のは確かにそうなのだが、
それを言っちゃオシマイだし、
何をやっても虚しくなってしまう気がする。
死を考えると怖くなってくるし、気が滅入ってしまう。

「命は永遠じゃない・どうせ死んでしまう」を前提に、
「生きているうちにやりたいことをやるにはどうしたらいいか」
を考えたほうが、正気でいられそうだ。
こうなってくると著者の意図とベクトルがかけ離れていってしまうが、
この本の通りにしろと誰かに命令されたわけでもない。

ワシ的には今までブログに書いてきた通り、
自分にとってもっとも大切なもの、優先すべきものを
自分の心と正直に向い合って考え続ける。

『人生を「半分」降りる』に書いてあったように、
決して妥協せずに自分の内部の声を聞き分ける。
自分はいったい何をしたいのか、
自分にとって何がもっとも重要な問題なのか、追求しつづける。
ニーチェの言葉をかりますと、
「いかにして自分自身になるか」
と問いつづける。

問いつづける上で
思考の内的・外的ヒントを得るためにある程度長い期間をかけて旅に出たい。
今とは違う環境に身をおいて、いろいろ考えたい。
そして、ある程度答えが見えてきたら、それを実行に移すときがやってくる。
自分を貫き通すには「みんな一緒の暴力」と戦うことになるだろう。

いや、それ以前に「長期間の旅」を実現するには、会社を辞める必要がある。
この時点で自分を貫き通すために「みんな一緒の暴力」と戦わなくてはならない。
常識的なレールからドロップアウトする不安と恐怖とも戦うことになる。
後戻りはできない。
そんな未来像がおぼろげに見えてきた。



働くことがイヤな人のための本
中島 義道
出版社: 新潮社 (2004/04)
ISBN-10: 4101467234
ISBN-13: 978-4101467238
発売日: 2004/04