1608 重松清『とんび』(角川文庫)
昭和37年、ヤスさん(29歳)は生涯最高の喜びに包まれていた。
愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、
家族三人の幸せを噛みしめる日々。
しかし、その団らんは、突然の事故(悲劇)によって奪われてしまう・・・・。
(カバーより)
雪降る寒い海辺で
ヤスさんは両手でしっかりとアキラ(年長)を抱きしめた。
「アキラ、これがお父ちゃんの温もりじゃ。お父ちゃんが抱いてくれたら、
体の前のほうは温うなる。ほいでも背中は寒い。そうじゃろ」
アキラは、うん、うん、とヤスさんの胸に頬をこすりつけるようにうなずいた。
「お母ちゃんがおったら、背中のほうから抱いてくれる。そうしたら、背中も寒うない。
お父ちゃんもお母ちゃんもおる子は、そげんして体も心も温めてもろうたる。ほいでも、
アキラ、おまえにはお母ちゃんおらん、背中はずっと寒いままにゃ、お父ちゃんが
どげん一生懸命抱いていても、背中までは抱ききれん。その寒さを背負うということが、
アキラにとっての生きるということなんじゃ」(前掲書103~104頁)
「背中が寒いままで生きるいうんは、つらいことよ。寂しいことよ。
恋しゅうて、悔しいことよ」(前掲書104頁)
とんびが鷹を産んだ。
とんびが鷹に話す名セリフの場面である。
深夜、眼を覚ましトイレに行ったあと、
なかなか寝付けず。
wifeとbeagle genkiは隣で寝息、いびきをかき
気持ちよさそうに夢をみている。
いびきが気になり、90分ほど起きだし
居間で『とんび』を読み始めた。
3時になり眠くなってきたので、蒲団に入る。
朝寝坊し、時計を見たら6時半だった。
外は雨が降っている。