老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1465; 慣れぬ死

2020-03-22 21:04:26 | 読む 聞く 見る
慣れぬ死


昨日逝去された葭田克さん(69歳)に会って来た。
声をかけると、今にも目を覚ましそうな感じであり、
穏やかな表情で寝ておられた。

余りにも突然の死であっただけに
妻は死んだことが受け入れられない気持ちにあった。

佐久総合病院の内科の臨床医であり作家でもある
南木佳士さんは、『からだのままに』文春文庫 のなかで
「たくさんの亡くなる人たちを見送ってきたのに、いまだ死に
関する定まった視点を持ち得ないでいる」 152頁
「他者に起こること(死)はすべてわたしにも起こりえるのだと
肌身にしみた」 152頁

「みんな、きょう死ぬかもしれない朝にも、自分が死ぬとは
思っていない。なぜなら、死のそのときまでは生きているの
だから。」 154頁

老い齢を嵩ねて来ると
他者の死を意識するようになりながらも、
自分は今日死ぬとは思っていない。

人間は生きている限りいつか死ぬ、
「死のそのときまでは生きている」
只今臨終、の言葉が浮かんだ。
いまのいままで生きていたが、いま生を終えました。

死も含め、自然のままに、生きていくことを
南木佳士さんは『からだのままに』のなかで述べられている。

多くの人の死に立ちあっても
慣れぬ死
他人の死に慣れてはいけない



1464;突然の電話

2020-03-22 06:14:11 | 老いの光影 第6章 「老い」と「生い」
突然の電話

昨日、蒲団に入り
時計の針は22時を回っていたたどうか
スマホが耳もとで鳴りだした。

葭田婆さんの息子嫁の名前が表示され
「どうしました?」と話しかけると
「夫が亡くなった・・・・」

思いがけない知らせに吃驚し
「ご愁傷様」の言葉もでなかった。
突然脳梗塞に襲われ、手術をしたが
回復に向かわず老母親より先に逝ってしまった。

彼女は「まだ信じられない、夫が死んだなんて・・・・」
「そうですよね。自分も信じられないです」
夫の死を受け入れることができない彼女。
姑には息子の死をまだ話せない、と。

人間の死はいつ訪れるかわからない。
人間は、「死」を前にすれば、無力な存在であり
ただ悲しむだけである。
死を悼み悲しみ
その悲しみ(喪失感)を乗り越えて欲しい、と
心密かに願うことしかできない。

その夜、なかなか眠りにつけなかった・・・・