自然学校に、通称「開拓ハウス」と呼ぶ家があります。戦後すぐに建てられた築60年近い木造住宅です。外観は傷んでいますが、見かけによらず室内は意外と広くしっかりとしています。「寿都吹き出し」と称される強い風雪が吹く地に建ち続け、根が生えたような存在感がある家です。
晴れた日に、古ぼけた窓から陽光に輝く残雪の山々が見えるのですが、風景が窓枠に切り取られ、目まいがするくらいに、眩しく感じます。そんな年代物の家は、今年も、自然や農水産業、田舎の暮らしを学びに本州からやって来た実習生の住みかとなりました。
都会育ちの若者には、汲み取りトイレも初めての経験。口には出さないが、カルチャーショックもあるでしょう。
半径100m以内に住宅やマンションが密集し、あまりにも住民が大勢過ぎて、その数がわからない都会から、人影が見えない広い風景の中に何人が住んでいるのかわからない田舎に転居した当初は不安もあったでしょう。
でも、毎日窓から見ている山の木々が少しずつ色づいていることに気がつく余裕が出たようです。木の芽が柔らかに膨らみ幼葉が現れ初めているのです。「萌黄色」です。現代人にとって、この色は意識して見ないと、なかなか感じることができない色のようです。
45
5月に入り、北国の森の色合いはどんどん増えてゆきます。自然は、住人達の感性をきっと美しく磨いてくれるでしょう。
(2006年5月7日 北海道新聞掲載)
晴れた日に、古ぼけた窓から陽光に輝く残雪の山々が見えるのですが、風景が窓枠に切り取られ、目まいがするくらいに、眩しく感じます。そんな年代物の家は、今年も、自然や農水産業、田舎の暮らしを学びに本州からやって来た実習生の住みかとなりました。
都会育ちの若者には、汲み取りトイレも初めての経験。口には出さないが、カルチャーショックもあるでしょう。
半径100m以内に住宅やマンションが密集し、あまりにも住民が大勢過ぎて、その数がわからない都会から、人影が見えない広い風景の中に何人が住んでいるのかわからない田舎に転居した当初は不安もあったでしょう。
でも、毎日窓から見ている山の木々が少しずつ色づいていることに気がつく余裕が出たようです。木の芽が柔らかに膨らみ幼葉が現れ初めているのです。「萌黄色」です。現代人にとって、この色は意識して見ないと、なかなか感じることができない色のようです。
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5月に入り、北国の森の色合いはどんどん増えてゆきます。自然は、住人達の感性をきっと美しく磨いてくれるでしょう。
(2006年5月7日 北海道新聞掲載)