「からだにやさしい感情」 ~題詠100首から5首~
同じ土から生えた百合になりそういつしか匂うように親しい
感情がチョウチョのように放たれる流行り病 に浮かされている
アパートの窓辺にいつも富士山がいる 幸福なふたりの陣地
ひとさじの豆乳プリンをくちにふくむ からだにやさしい感情らしい
地下道にこだましている歌声と同じリズムで揺れるピアスで
いつも心の中の冷たさには敏感で、まるで固形物のようにそこにあるのがわかるのに。
心の中の温かさに関しては、ぼんやりとしたままくっきりと形をもたない。
孤独や痛みを言葉にするより、幸福な言葉を紡ぐほうがずっと難しいのではないかと思う。
今回、自分の詠んだ100首のなかで、幸福な感情の歌はとてもとても少なかったので挙げてみました。
中村成志さんの五首選会に参加します。
本来は、選んでいただくために100首のリストを作成するべきなのですが、いろんな思いがありまして、リスト作成は見送りました。
もし5首選してくださる方がいらっしゃいましたら、ご面倒ですがカテゴリ「題詠2006」からご覧ください。ごめんなさい。
よろしくお願い致します。
同じ土から生えた百合になりそういつしか匂うように親しい
感情がチョウチョのように放たれる流行り病 に浮かされている
アパートの窓辺にいつも富士山がいる 幸福なふたりの陣地
ひとさじの豆乳プリンをくちにふくむ からだにやさしい感情らしい
地下道にこだましている歌声と同じリズムで揺れるピアスで
いつも心の中の冷たさには敏感で、まるで固形物のようにそこにあるのがわかるのに。
心の中の温かさに関しては、ぼんやりとしたままくっきりと形をもたない。
孤独や痛みを言葉にするより、幸福な言葉を紡ぐほうがずっと難しいのではないかと思う。
今回、自分の詠んだ100首のなかで、幸福な感情の歌はとてもとても少なかったので挙げてみました。
中村成志さんの五首選会に参加します。
本来は、選んでいただくために100首のリストを作成するべきなのですが、いろんな思いがありまして、リスト作成は見送りました。
もし5首選してくださる方がいらっしゃいましたら、ご面倒ですがカテゴリ「題詠2006」からご覧ください。ごめんなさい。
よろしくお願い致します。
ほどかれるものなのだろう指切りを生み出したのはきっと大人で
045:コピー
反芻をせざるをえない脳内でコピー ペースト コピー ペースト
054:虫
この指のてっぺんで飛び立つんでしょ (てんとう虫は嫌い) ばいばい
087:朗読
(はじめからシナリオが用意されていてセリフを朗読するだけでいい)
097:告白
いつかするはずでいた告白はもう春の野原に溶けてひさしい
はじめから意識していたわけではないのですが、100のお歌を読んでいるうちに、「別れ」をイメージさせるものを選んでいる自分がいました。
実際にはそんな歌ばかりではないのに、花夢さんの歌を読むとなんだかかなしい(哀しいでも悲しいでもなく)気持ちになります。
そしてそれは、決して不快ではありません。
わたしの五首選は、こちらです。
020:信号
信号が青になるのを待つうちに君は自由になってしまった
040:道
むせかえるほどの香りの沈丁花なのに道順ばかり気にして
051:しずく
にんげんのすくえるものはかぎられていててのひらにまたひとしずく
057:鏡
鏡台のまえの私よ はっきりと愛を諳んじられるくらいに
064:百合
満員の電車のなかがくるしくて花束からは百合がこぼれる
くるしいくるしいうたを選びました。
くるしいのは、かがやいているから。
花夢さんのおうたには、悲しさとか苦しさがありありと詠みこまれていて、
見つめるほどにシンクロしてしまいます。
見つめ続ければ光がさしてくるだろうという希望を、わたしたちは持っていますね。
五首選「指の先まで」
ほどかれるものなのだろう指切りを生み出したのはきっと(002:指)
I was born 憎しみという感情がわたしの脳に刻まれている(014:刻)
とぷとぷとぷ牛乳をつぐ まっくらなよるにわたしがひろがってゆく(024:牛乳)
反芻をせざるをえない脳内でコピー ペースト コピー ペースト(045:コピー)
滑らかな舌触りばかり求めては自分勝手というものだろう(092:滑)
心臓から指の先までひろがる「痛み」。
複雑に混じりあった感情が。
ろ過されて。ろ過されて。ろ過されて。
不純物をとり除かれた純粋な「痛み」。
純粋な「痛み」は花のように。美しく。棘。
純粋な「痛み」は夢のように。心地よく。眩暈。
純粋な「痛み」は僕たちの「痛み」として伝染していく。
花夢さま、今後とも宜しくお願い致します。
うつくしい夜にかぎってレコードの針が壊れてうまく泣けない
082:整
そうなっていくしかなくて冬のよるわたしの棚のなかは整う
083:拝
体温がわたしらしさをなぞらない拝むかたちで寒いって言う
088:銀
もう望むことはできないけれどやさしく銀色の嘘がつきたい
090:匂
同じ土から生えた百合になりそういつしか匂うように親しい
後ろから読んで好きな歌を選んでいったらたくさんになってしまいました。
なかでもはじめに選んだ5首がとても好きだったので、それにしました。
そうなっていくしかないその姿は、常に美しい。
凛とした感性はいつ根絶やしにされるのだろう翔べ翔べとんぼ
曲線をえがかないただ真っ直ぐとできそこないの夕顔になる
真実がうまく縁取れない五月オペラグラスで月を見上げる
人間は忘れるもの、という命題 どうか流れる星に名前を
お邪魔します。5首選、させていただきました。
生きてると、いろんなものが剥がされ零れ落ちていくようで、それでも細いいっぽんの蔦を必死に握り締め、なにかを紡ごうしている。
花夢さんの繊細な言葉たちをこぼさないように、てのひらでそっとすくって集めてきました。
054: この指のてっぺんで飛び立つんでしょ(てんとう虫は嫌い)ばいばい
062: 裏山の竹藪のことよく知らないけれどさわさわざわざわとなく
066: なふたりんのにおいをはなつ箪笥にはおもいだせないものがいっぱい
097: いつかするはずでいた告白はもう春の野原に溶けてひさしい
ほかのみなさんのもだけど、花夢さんのお歌はとくに五首選ぶというのがむずかしかったです。100首全体がひとつのおおきな歌(交響曲、みたいな)としてつながっているようで。
この五首選をするまで見逃していたのが62・66でした。どちらもふしぎな説得力。そして66のお題詠み込みのみごとさ!(思わずワンコ山田さんに推薦してしまいました。)
また、(時間と心に余裕があれば)別の会を催してみたいと思います。
そのときは、どうぞ参加してやってください。
(拙ブログに、個人的感想を書いております。よろしければご覧ください。)
ハンドルがよけたその花夢にいた犀の目尻のひかりのような
100首リストを作成しなかったため、ご面倒をおかけしました。申し訳ありませんでした。
こんなに選が別れるものとは思いませんでした。
意外な作がいっぱい選ばれました。(笑)
へぇ~へぇ~と、皆さんのコメントを楽しく読ませて頂きました。ありがとうございます。
実は、この題詠をはじめるときに、連作のようなテーマをもって詠もうと考えていました。
「世界剥離」
ぱらぱらと世界が剥がれる音がしてまた朝焼けがくるの、と思う
もともとは、これをテーマにしようと考えていました。
このコンセプトで100首貫くことはできませんでしたが、皆様には、どこかこの片鱗を感じていただけたような思いがしています。
(とくに、みち。さんのコメントにはどきっとしました)
響さん、中村さんには、私の名前を含んだコメントや作品を頂いてしまって、ときめきました。
ありがとうございました。
また、今後ともよろしくお願いします。
今年度の題詠ではお世話になりました。
中村さん発案の選歌会にも出席したかったのですが、あいにく折り合いがつかず欠席となってしまいましたところ、私のほうのブログにコメントを寄せていただき、本当にありがとうございます。
短歌って私なんかでもできるかなあ。
とりあえず31文字にしておけばいいか……ぐらいの気持ちで始めたのが、ちょうど昨年の今頃でした。
ネットサーフィンしているうちに、この題詠を知り、「じゃあ、来年はこそっと参加してみようかなあ」と思ったのです。
ところが題詠マラソンで検索をかけても、いっこうにひっかからず(笑)、散々探しまくって辿り着いたのが「題詠100首blog」でした。
出遅れました……完全に。(笑)
完走できるか、すごく不安で、最後「誰か、酸素を……」状態でしたが、途中皆様とお茶する機会にも恵まれて、有意義な時間でした。
沢山のご指導をいただき、本当に感謝しております。
短歌という詩型が私にとって何なのか、まだそれすら突き詰めることのできない処におりますが、何かの機会にまたご一緒させていただけたら嬉しく存じます。
ありがとうございました。
指導などとはとんでもない!
こちらこそいろいろお勉強させてもらいました。
ご一緒できてよかったです。ありがとうございました。
私は短歌以前は詩を書いていました。
短歌をはじめた理由は、憧れの詩を書かれていた方が、短歌に転向されたからです。
その方の三十一文字の広がりに目を見張り、自分も興味を持ちました。
題詠100首ブログ参加については、ほんとうに偶然で、枡野浩一さんのかんたん短歌のためにはじめたブログで遊んでいたら、偶然、見つけた。という感じでした。
こんなに多くの皆様と出会えることは全く想像しておらず、楽しませていただきました。
ありがとうございました。
今回、yururyさんの5行詩にも惹かれ、ブログのほうに書き込ませていただきました。
とても心地よい言葉で、繊細ななかにしっかりと芯を持ち、嬉しいドキドキを頂きました。
短歌も、詩も、こころを紡ぐ言葉には変わりはない。と思っています。
そこに三十一文字という制約があることで表現できるこころもあれば、また、自由に言葉を綴ったなかで表現されるこころも真実です。
ほんとうに、「空に抱かれることは」の5行詩に心が震えたのですよ~。
そういう、共有、共感できるこころを見つけられることは、とても嬉しいことです。
これからも、yururyさんのこころの言葉を楽しみにしています。