風に吹かれて

人生、ちょっと一服。日々の見たこと聞いたこと。

城崎にて

2012-02-25 12:58:33 | Weblog

 

  
西村屋本館(私達は新館泊)                          三木屋(志賀直哉の泊っていた宿)

志賀直哉 「城崎にて」の冒頭・・・

 谷あいにくの字にひらけた湯の町。川沿いの柳が芽吹き、木造の旅館街にぼんやりと灯がはいる。
外湯を巡る浴客たちの下駄の音がなつかしい。山陰の城崎はゆっくりと遅い春を迎えていた。

 昨年の秋に決めてまだまだと思いながら楽しみにしていた 「香住・城崎」への旅・・・・50年来の友人と
1泊2日の短い旅でしたが、思いのほか内容充実、しっとりとしていい旅でした。

京都を出発、その昔訪ね歩いた「太秦」やトロッコに乗ったり保津川下りも楽しんだ嵐山 
「保津峡」を抜けて山陰本線の私がまだ知らない地へ列車はぐんぐん走って行きます。


次第に雪景色が多くなってきました。
コウノトリが生息しているという「豊岡」を通り、 丹後半島の付け根の辺りから日本海が見え隠れしながら
列車は西へ急カーブしながら城崎を経て日本海沿いの「香住」へ3時間弱で到着しました。

今年の山陰地方も大雪でした。 真っ白な銀世界!

でも私は雪景色ほど「春」を身近に感じさせるものはないと思います。
厚く積もったその雪の下には、フキノトウの緑の新芽が,つくしんぼの芽がじっとその重みに耐えて
今かと出番を待っているでしょうし、木々の雪をかぶった枝枝には小さな梅の蕾や新芽が
赤く色を染めて顔をのぞかせています。

香住の大乗寺。(応挙寺)
以前、東京の美術館で円山応挙の絵を観に行ったことがありました。
応挙が世話になったお寺の住職さんに絵の才能を見い出され、江戸でさらに腕を磨き
お礼にそのお寺の襖絵として描かれた作品で、子犬やあどけない童子の表情や、クジャクの
水墨画が印象に残っていましたが、香住にある大乗寺ってどんな所?一度行ってみたい・・・
とずっと思っていました。
山陰の雪深いこの季節に静かで立派な古寺を訪れ、印象深い絵と再び出会えて嬉しく思いました。

 

  

餘部鉄橋
大乗寺を出て、香住駅へ戻るべく、タクシーを待ちました。
孫の顔を思い浮かべてでしょうか?有さんはせっせと可愛い雪だるまを作っていました。
一人が「以前、強風で橋が崩れて事故があった餘部鉄橋ってこの近くではないかしら。海面から40メートル
日本一高い鉄橋はどうなったか見てみたい!」
早速迎えのタクシーの運転手さんと交渉して城崎行きの列車に間に合うようにと、急きょ餘部鉄橋へ。
風情ある元の赤い橋脚を少し残し、もう新しい橋に代わっていました。

 

城崎温泉 (兵庫県豊岡市所在)

昔から多くの文豪が訪れたゆかりの地であるこの温泉街。
また、その昔近くに住むコウノトリが傷を癒すためにつかっていたのが始まりともいわれ
1300年もの歴史があるそうです。

1日目は曇り、2日目は小雨で、比較的暖かく感じられました。
でも用心のため、ブーツに厚手の着衣でほぼ完全武装で出かけていました。
川沿いの柳が芽ぶき、桜の頃はきっとまた別の風情のあるいい所だと思います。
まだまだ”食”にも興味ある私達。勿論 「かに」も念頭においてこの時期を選びました。
若くはないと、少ない量の食事を選んで宿泊しましたが、かにと溢れる海の幸には、最近では
一番の食事となりました。
50年来の思い出話と、沢山のお料理に遅くまでのんびりゆったりの時を過ごしました。

翌朝は、お昼抜きで帰るくらいの感じで朝食をしっかり頂こう!ということでしたが、
民芸館、資料館、宿泊した宿の本館の展示品を見たり、歩いたりしているうちに小腹がすいてきた~。


そこはしっかり主婦の発案で、レストランの看板で「但馬牛のサンドイッチ」のメニューを見ただけで、
「あれを駅弁にしよう!決まり。さあ、幹事さん(5人のところ)2人前を頼み食べやすく切り分けて
テイクアウト用にパック詰めにして買ってきてください。」  「飲み物は駅売店で用意しておくから」

素晴らしい!何と逞しいアイディア!
1センチ強もある但馬牛の柔らかい出来たてステーキを挟んだサンドイッチ、列車の中で最高に美味しく、
アイディアに感心しながら皆笑顔でいただきました。
ほんとに、美味しかったですね!

また1年後の出会いを楽しみにしています。
幹事のおかださん、お疲れさまでした。ありがとうございました!
西村屋新館にて