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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】大塚茂樹『「日本左翼史」に挑む』(あけび書房)

2023-04-02 09:01:31 | 

 社会運動史に関して研究したことがある者にとって、日本共産党の歴史には関心を持たざるをえない。その関係で『日本共産党100年 理論と体験からの分析』(かもがわ出版)も読み、また本書も読んだが、中北浩爾『日本共産党ー「革命」を夢見た100年』(中公新書)がもっとも学問的でまとまっていた。前二者は日本共産党を知るに際しては読む必要はないと思った。かもがわ出版のそれは、4人の文を集めただけで、それらに有機的な関連はない。ばらばらの内容で、あまり参考になるものではない。

 本書を読んでいて、まとまりのない内容であると判断した。長い文を書く際には、全体の構成を最初に設定し、それをもとに書いていくはずであるが、本書はそうした意図のもとに書かれてはいない。著者はまずみずからの生育歴を書いておくべきであった。

 著者は学生時代、日本共産党系の日本民主青年同盟の活動家であったことが記され、しかしそこから去っている。にもかかわらず、なぜか日本共産党に対して異常な関心と愛情を持ち続けている。なぜなのかと思いながら読み進むと、最後のところにもと日本共産党の国会議員であった松本善明が伯父であり、また父親も弁護士であり、また共産党員であったことが記される。著者の周辺には日本共産党員が多くいる、ということである。

 また日本共産党に関わる一定の知識がないと理解できない個所があり、また著者が私的な関わりのあった人びとの名がいろいろ書かれているが、時に著者との関係が不明な個所もあり、はっきりいって岩波書店の編集者であったという経歴がありながらも、文章はうまくはない、理解できない表現もあった。

 たとえば、「この党とは北斗七星ではない。無数の流れ星、星くずとしてみつめたい。」という表現であるが、「この党は北斗七星ではない。」とすべきである。

 また著者の文の運びは緻密ではなく、思いつくままに書き綴っているという感じである。そう考える根拠についての記述もあまりなく、客観性のない叙述になっている。なんらかの主張をする際には、その主張がなぜ妥当であるのかをきちんと立証すべきなのに、簡単に書いてそれで終わりとしている。

 読みながら、これは買う必要はなかったなあと思いながら読んだ。それはかもがわ出版の『日本共産党の・・・・』と同じである。

 本書の価値は、著者が折に触れて紹介している文献だけが(私が知らなかった本が多い)よかった。

 日本共産党が結党100年ということから、昨年こうした本が出されているのだが、あまりよい本がない。中北浩爾の本だけがしっかりしている。

 なお著者は、佐藤優、池上彰による『日本左翼史』三部作を意識しながら書き進めているが、佐藤も池上も、私が見る所バックボーンがなく、様々な文を書き散らしているという印象を持つ。したがって私は、彼らの本は読んでいないし、読むつもりはない。


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