私立高校の授業料が無料となる、という。政府がそのカネを肩代わりするのだそうだ。
その政策、すでに大阪府が大阪維新の会により実行されている。その結果、大阪の公立高校への入学者が減り、大胆な統廃合が行われている。廃校となった高校の跡地は売られ、タワマンが建設されているらしい。
これが全国に拡大すれば、当然、公立高校の統廃合は進んでいく。
公教育が、公ではなく、私立学校により担われていく。公より民へ、というのは、新自由主義の特徴である。
大都市の私立高校のなかでは、有名大学への進学率が高い高校があり、そこに子どもを入学させるために、激しい競争が行われ、塾、通信教育など教育産業が成長する。そのような、民間の営利企業をもうけさせる政策が展開されている。
本来、公が担うべき教育を、民間へと移していく施策が、すすめられている。
さて本書は、新自由主義に基づく「教育改革」を推進してきた大阪でどのような事態が起きているかを、教育社会学者が報告するものである。
大阪は、生活保護受給者も多く、また被差別部落もあり、「大阪の教育関係者は、格差や差別をなくしてすべての子どもに教育を受ける権利を保障しようと努力してきた」のだが、大阪維新の会の「教育改革」により、その伝統が崩されようとしている。
新自由主義的な教育は、教育を民間にやらせると同時に、競争を重視する。そして企業や国家に役立つ人間を育成することが目的とされる。
だが、「競争的な環境は、できる・できないという差異でもって、子どもたちのつながりを断つおそれがある。学力形成にはむしろマイナスである。」(44頁)という指摘に同感である。
本書は、大阪の実態について詳しく書かれているわけではないが、教育的な観点から、「教育改革」による大阪の現在の教育の問題点が指摘されている。
わたしは、大阪の実態を知りたくて本書を購入したが、その目的のためには他の本を買わなければならないようだ。