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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】花房敏雄・恵美子『関釜裁判がめざしたもの』(発売:現代書館)

2021-02-10 21:37:29 | 

 日本においては、戦後補償裁判は「歴史」となってしまった。韓国や中国など、戦時下、日本軍による蛮行で苦しめられた「慰安婦」とされた女性たち、戦時下、日本本土の労働力の不足を補うために強制的に連れてこられた朝鮮人や中国人。

 戦後、日本は平和憲法の下で、平和で一定の豊かさのなかにあったとき、「大東亜共栄圏」のなかに入れられた地域では、まだまだ安定した生活はなかった。

 しかしやっと一定の安定的な生活が生まれたとき、戦時下に日本国家や日本軍にひどいことをされたことが想起された。彼らは日本で裁判を起こそうとした。未払い賃金を払って欲しい、強制的に連行され働かされたからその責任をとってほしいと日本の裁判所に訴え出た。

 もちろん、そうした人びとの声を聞くことができる日本人がいてこそ裁判はできる。その日本人のなかに、福岡に住む花房夫妻がいた。

 本書は、戦争で被害をうけた者、戦時体制下に労働を強いられた韓国の人びとの訴えを真摯に受けとめ、活動した花房夫妻の軌跡をみずから執筆したものだ。

 日韓関係が厳しくなっているからこそ、なにゆえに花房夫妻がそうした支援活動を行ったのか、そしてまた戦後補償問題にどうとりくんできたのかを丁寧に記している。

 私は読んでいて、ふたりの人柄に今更ながらうたれた。私は花房夫妻を存じているので、よけいに心を動かされた。「世のため、人のため」ということばにふさわしい活動をされたのである。