西日本新聞記事。
新型コロナ特措法 「乱用」の歯止めは厳格に
いかに緊急事態とはいえ、憲法が保障する国民の権利を制限することも可能になる法律の改正案である。「乱用」を防ぐ歯止めは厳格にすべきだ。
衆院内閣委員会はきのう、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案を、与党や立憲民主、国民民主両党などの賛成多数で可決した。この特措法は民主党政権時代の2012年に制定され、最大の特徴は首相が強制力を伴う「緊急事態宣言」を発令できることだ。改正は新型コロナウイルス感染症も特措法の対象に加える内容である。
緊急事態宣言は、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがあり、全国的かつ急速なまん延で国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある場合、首相が諮問委員会に意見を求めた上で発令できる。
首相が緊急措置の期間と区域を定め、対象となった都道府県の知事は外出自粛や興行施設の利用を制限する要請のほか、臨時医療施設のために土地や建物を所有者の同意がなくとも使用できるようになる。
何より危ぶまれるのは、国民の私権を制約するほど強力な権限を認めている割には、発令の要件が抽象的であり、恣意(しい)的な決定や運用を招くことはないか、という点だ。
この認識は濃淡こそあれ、与野党で共有している。安倍晋三首相が宣言について「どのような影響を及ぼすか十分に考慮しながら判断したい」と慎重な姿勢を示すのも当然だ。
野党は国会の事前承認を求めていたが、「やむを得ない場合を除き、国会へ事前に報告する」との文言を付帯決議に盛り込むことで与党と折り合った。
実は、この付帯決議にこそ重要な事柄が盛り込まれている。緊急事態宣言は専門的な知識に基づいて慎重に判断する▽施設の利用制限を要請する際は不利益を受ける者へ十分配慮する▽政府対応の客観的、科学的検証を行う-などだ。
首相による唐突な一斉休校の要請や中国、韓国からの入国制限など、国内外で困惑や批判を招いた一連の対応の反省と教訓に基づく内容と言えるだろう。問題は、それが改正案本体ではなく法的拘束力のない付帯決議でいいのか、ということだ。
改正案はきょう衆院を通過して、あす参院で可決、成立する見込みという。残された時間は短いが、政府に白紙委任するわけにはいかない。将来に禍根を残さないためにも、与野党の充実した審議を強く求めたい。
新型コロナ特措法 「乱用」の歯止めは厳格に
いかに緊急事態とはいえ、憲法が保障する国民の権利を制限することも可能になる法律の改正案である。「乱用」を防ぐ歯止めは厳格にすべきだ。
衆院内閣委員会はきのう、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案を、与党や立憲民主、国民民主両党などの賛成多数で可決した。この特措法は民主党政権時代の2012年に制定され、最大の特徴は首相が強制力を伴う「緊急事態宣言」を発令できることだ。改正は新型コロナウイルス感染症も特措法の対象に加える内容である。
緊急事態宣言は、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがあり、全国的かつ急速なまん延で国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある場合、首相が諮問委員会に意見を求めた上で発令できる。
首相が緊急措置の期間と区域を定め、対象となった都道府県の知事は外出自粛や興行施設の利用を制限する要請のほか、臨時医療施設のために土地や建物を所有者の同意がなくとも使用できるようになる。
何より危ぶまれるのは、国民の私権を制約するほど強力な権限を認めている割には、発令の要件が抽象的であり、恣意(しい)的な決定や運用を招くことはないか、という点だ。
この認識は濃淡こそあれ、与野党で共有している。安倍晋三首相が宣言について「どのような影響を及ぼすか十分に考慮しながら判断したい」と慎重な姿勢を示すのも当然だ。
野党は国会の事前承認を求めていたが、「やむを得ない場合を除き、国会へ事前に報告する」との文言を付帯決議に盛り込むことで与党と折り合った。
実は、この付帯決議にこそ重要な事柄が盛り込まれている。緊急事態宣言は専門的な知識に基づいて慎重に判断する▽施設の利用制限を要請する際は不利益を受ける者へ十分配慮する▽政府対応の客観的、科学的検証を行う-などだ。
首相による唐突な一斉休校の要請や中国、韓国からの入国制限など、国内外で困惑や批判を招いた一連の対応の反省と教訓に基づく内容と言えるだろう。問題は、それが改正案本体ではなく法的拘束力のない付帯決議でいいのか、ということだ。
改正案はきょう衆院を通過して、あす参院で可決、成立する見込みという。残された時間は短いが、政府に白紙委任するわけにはいかない。将来に禍根を残さないためにも、与野党の充実した審議を強く求めたい。