通訳案内士の気ままな生活

現役通訳ガイドのブログです。プライベートから気になる収入などの話まで!?包み隠さずお話します!

プロを作ることの重要性

2010-06-26 14:08:30 | 通訳案内士のあり方
日本代表も大活躍のワールドカップ。
我が家でも大画面でプチパブリックビューイングしています

日本でプロのサッカーリーグJリーグが誕生したのは1993年。
そして、初めてのワールドカップ出場は1998年フランス大会。
2002年の自国開催の大会ではベスト16の快挙。
国内にも多くのスタジアムができ環境面でも整い
その後多くの日本人選手が海外に移籍する。
2006年のドイツワールドカップでは成果を残せず、
2010年南アフリカ大会では予選突破の快挙。

実にここまで来るのに17年。
Jリーグができる前の日本代表にとって
ワールドカップ出場は夢のまた夢。
日本がここまでこれたのはやはりプロ化というのが大きいだろう。
プロになるということはそれだけに集中できるということ。

実業団でサッカーをやっていた頃は
仕事をして、練習をして、試合して。
さぞかし大変だったことだろう。
しかし、人間は生活をしていかなければいけないので
お金の不安があったらサッカーどころではない。
プロ化することで生活が安定し
さらにビックマネーを手にするチャンスも手に入れた。
そして名誉や誇りも手に入れつつある。

川渕氏を始め、Jリーグの発足
日本代表の強化に取り組んだ
熱きリーダー達の取り組みのおかげだ。
スポンサー名をチーム名に入れることを頑として拒んだ。
チームは地域のサポーターのもの。
そしてお金持ちチームだけが強くなっても
日本代表は強くならない。
壮大な理念を持ち、歩み続けてきたことが今の日本代表につながっている。



サッカー日本代表とは全く異なる世界ではあるが
プロと言う点ではガイドの世界にも通じるところはある。
ガイドはボランティアでも、バイトでもできる。
でも、プロであればその技を磨くことに集中できるのだ。
普段からの情報収集や、下見、語学のブラッシュアップや
専門分野の開拓など。
時間とお金に余裕があればどんどん向上する。
だが、兼業となればそれだけガイドに使えるエネルギーも減少し、
アルバイトなら時給の払われる時間内だけのエネルギーしか使えない。
そんな状態ではロクなガイドが育たなくても仕方が無い。

ガイドとして良いポテンシャルを持っている人は数多くいるが
就業機会に恵まれず、ガイドとして育たない状況。
それが今の通訳ガイド業界だ。
業界の人たちは口を揃えてガイドの役割は重要と言うが
それに反して、待遇は向上しない。
どちらかと言えば価格競争に巻き込まれ
悪化の一途をたどる。

でも、ここが頑張り時だろう。
いままでは、成長もせず停滞していたガイド業界も
これからは表舞台に出て活躍しなければならない。
自分達の職業を守ることにさえ無頓着だった結果
自由化をされてしまう流れになってしまった。
この流れを止めるのは難しそうだが
きちんと声をあげて
自分達の意見を反映させて
新たに発展していかなければならないだろう。

ただ、これはガイドだけの問題ではない。
あくまでガイドは旅行業界に関わる一人一人のプロとして
業界の将来を案じているだけなのだ。
個人任せで業務委託を繰り返し
プロを育成することを怠り
目先の価格競争に走ったツケはいずれ業界に返ってくるはず。
その時にいざプロを育成しようと思っても
通訳案内士の資格自体が崩壊していたら修復不能だ。

観光庁は資格を自由化しても
通訳案内士の資格はそのまま需要は減らないというが、
過去の政策で散々失敗し、
あっさり方向転換しているわけだから
読みの甘さは否めない。

まあ、やりたいようにやってみるのもいい。
ガイドとして自分達の生活が急に変ることはないだろう。
変ったとしても、時代に合わせて動くのみだ。
時代がプロの通訳案内士を必要とすればこの世界で生きるし
必要なければ他の世界で生きる。
いたってシンプルだ。
それが個人事業主という生き方だ。

今にもガイド廃業寸前の人たちはいっぱい居る。
せっかく合格人数を増やし、優秀な人材が流れ込んできたのに
みすみす手放すとはなんとももったいない。
だが、他のフィールドで活躍できる人材ほど
すぐに流れ出ていくものだ。
残るのは行き場の無い人材のみ。

むしろ、旅行業界に勤め
定年まで勤務を目指すサラリーマンの方々の方が
もっと目先の数値目標よりも
業界の未来を考えて動いた方がいいと思うのだが。
まあ、四半期ごとの数値目標達成に目を奪われていたら
17年先のことなど見えないだろうが。

まあ、この業界自体変化や入れ替わりが激しく
そんな先のことまで考えられる人材は
いないのかもしれないとも思う。

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通訳案内士のあり方検討会とは

2010-06-18 21:08:41 | 通訳案内士のあり方
通訳案内士のあり方検討会というのが
観光庁主催で行われているのは何度かご案内しました。
次回で第7回になります。
興味がある方は是非傍聴してみてください。

通訳案内士にとって苛立たしいのは
この会は特に議論を交わすことなく観光庁の描いた筋書きによって進んでいることです。
いきなり法案を出したら反発されるだろうから
事前に意見を聞いたと言う証拠を作るためと言っても過言ではありません。
当会には通訳案内士団体のJGA、JFGからも代表が1名づつ出ていますが
発言の機会は毎回3分程度しか与えられず、
その意見に対する十分な議論も行われないまま
観光庁が意見を取捨し勝手にまとめて次回の検討会へと進んでいきます。

この検討会に限らず、
皆さんの意見を広く聞きますよーと言いつつ
最初から結論の決まっている検討会というのは
霞ヶ関ではよくある話しなのかもしれません。


この検討会では通訳は自由競争でやっているから
通訳案内士も自由競争でやるべきだ。
そういう乱暴なことを言う人が居ます。

通訳と通訳案内士という2つの仕事は
響きさえ似ていますが全く異なるものです。

通訳は言葉を正確に訳すことが仕事です。
正確に訳すために多少自分の言葉を加えることが必要なときもあるかも知れませんが、
基本的には話者の言葉に忠実に訳すのが仕事です。

一方通訳案内士は
自分の言葉で自分の考えを外国語で話すのが仕事です。
日本は最低だと思えば、最低と言ってもいいのです。
そういった意味で人間性や資質と言うのは重要になります。
まして、外国人観光客と一番身近でコミュニケーションを取れる日本の代表です。
ガイドの言うことはほとんど信じてもらえます。
外国からのお客様を接待するのがメインと言ってもいいでしょう。
だからこそむやみに自由競争させるのは危険なのです。
日本の国が信用を与え、日本から海外に発信したいメッセージを託すべきなのです。

まあ、こういったガイド側からの反論の機会も与えられず
どんどん規定路線にむかって進行しているありかた検討会ですが
その委員の一人として参加されている
JFGの山田理事長がありかた検討会についてお話しされているインタビューを見つけました。
是非お読み下さい。


今でこそ教養の高い方々が誇りを持ってやっている通訳案内士ですが
自由競争になればガイドをやる人達の質も変ってくるでしょう。

北米ではガイドは自由です。
低賃金でチップをもらいながら給料を補完しています。
ガイドをする人は社会的地位の低い移民が中心です。
もしくは車を運転しながらドライバーがガイドを兼ねています。
もちろん、それでもガイドを確保するのは可能です。
ただ、移民がほとんど居ない日本では
外国語を流暢に話す人材は貴重ですから
同じようには行かないでしょう。

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規制緩和の問題点の検証

2010-06-16 21:36:11 | 通訳案内士のあり方
さて、通訳案内士法の規制緩和反対というと
ただ自分達の利益を守るためと思われてしまいそうなので
具体的に現状の問題を検証してみましょう。

観光庁は悪質ガイドの取り締まりに関して
苦情ベースで対応しようとしています。
つまり苦情が出なければ対応しないと言うことです。
この対応では下記のような問題は野放しになり解決されないでしょう。

事例①
例えば、お客さんが神戸牛ステーキを8000円で販売されて
神戸牛は美味しいなぁ~と食べた。
そしてガイドには2000円の手数料が支払われた。
お客さんは偽物の神戸牛を食べたけど気づかないから
苦情にはなりません。
本人はそれで満足しているからいいのかもしれませんが
日本の観光ブランドを守るという観点からそれでいいわけはありません。

事例②
本来なら静粛な雰囲気の中で
静かに案内しなければいけない美術館の中で
違法ガイドが大声で案内をする。
そのガイドが連れているお客さんは特に何も感じないでしょうが
他のお客さんには迷惑ですし、雰囲気も壊れます。

事例③
レストランが混雑していました。
違法ガイドは自分のお客さんを早く席につかせるために
前の団体にプレッシャーをかけていました。
直接その団体には声はかけませんが、明らかに聞こえる声で
店員を怒鳴りつける。早くしろと。
そしてそのお店はビュッフェスタイルでしたが
自分のお客さんにいい思いをしてもらおうと
違法ガイドは列に横入りしまくる。

事例④
皇居の二重橋の見学には通常はお客様に駐車場で下車していただき、
5~10分ほど歩いていただき二重橋まで行きます。
これは通訳ガイドも、日本人の添乗員も誰でも守っているルールです。
しかし皇居の目の前の歩道に進入し駐車して
そこで乗り降りさせている外国人団体のバスが居ました。
しかも乗車が修了するとバックで交差点に進入し去っていきました。

事例⑤
日本ではドライバーガイドはほとんど居ません。
なぜなら個人タクシーと通訳案内士の両方の資格が必要だからです。
なので、通訳ガイドも自家用車でお客様を乗せて
ご案内するようなことはありません。
白タク行為にあたります。
ですが、観光地では外国人による観光白タクをよく見かけます。
しかもそういう白タクは通常は車が乗り入れない施設の目の前に堂々と横付けします。

以上は私自身、もしくはガイド仲間が目撃した事実です。

このように違法ガイドの横行は
彼らのお客さんにとってはクレームにならないものも多いのです。
どちらかと言えば特別扱いしてもらって嬉しいことでしょう。
こういった行為を野放しにすることが
日本の観光資源を荒らしているという事実に気づいていただきたいものです。
ツアー参加者のクレームベースの対応ではこういった横行はなくなりません。

また法律を遵守し納税義務を果たしている通訳案内士が
日本国内で納税しない外国人違法ガイドと
不当な価格競争をさせられていると言うのもおかしな話です。
通常はこういった外国人の横行を取り締まり
一定の歯止めをかけるのが
独立した法治国家としてあるべき姿ですが
どうも、外国人に好き勝手にさせることを
おもてなしと勘違いしている方がお役所の中にはいるようです。

私達は普段から外国人のお客様を相手にお仕事をしています。
外国人への対応では時には毅然とした態度を取ることも必要なのは
ガイドのみなさんなら承知していることでしょう。

今は670万人の外国人観光客が
ルール無視のガイドに引き連れられて3000万人やってくる。
恐い話だと思いませんか?
安易な規制緩和にはそれなりの代償が伴います。

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JGA臨時総会

2010-06-16 00:23:13 | 通訳案内士のあり方
昨日はJGAの臨時総会がありました。
現在観光庁が実施している通訳案内士のあり方検討会において
通訳案内士側の意見が取り入れられず、規制緩和の動きがあることに対し
危機感を持った会員の要望に応えるべく緊急総会となりました。
今後はJGA全体で法改正の動きを牽制していく事が決まりました。

観光庁が実施しようとしていることは
政府の掲げる外国人観光客3000万人に向けた受け入れ体制を作ることなのですが
受け入れ側の人的体制つくりの一環として通訳案内士法の規制緩和があります。
現行法の元では通訳案内士以外が外国語を用いて報酬を得て外国人を案内してはなりません。違反の罰則は50万円ですが取り締まり事例はありません。
基本的には日本の企業はこの法律に従い商売をしているのですが、
外国からのツアー特にアジア圏のツアーに関しては
取り締まりの前例が無いのをいいことに完全無視されています。

実態としては無報酬でガイドを請負い、
お土産屋の販売コミッション等で
収入を得ているようです。
ある意味、ガイド自体では報酬を得ていないので合法なのかもしれませんが。。。
そういったお土産は原価は安く、
利益が乗りやすいものでぼったくり商品もあるのです。

アジア言語のガイドさんたちはそういう相手と価格競争を強いられているのです。
その上で、仕事が回ってこない→生活ができない→試験合格者を増やしても稼動者が増えない。
という悪循環にはまっているのです。

通常であれば、違法ガイドやぼったくりツアーを取り締まり
その上で正規のガイド利用推進を試みるのが政府として正しい対応だと思いますが、
安価なガイドを利用できるように通訳案内士法を改悪して
誰でもガイドできてしまうようにしようと言うのが今回の規制緩和です。

ぼったくりなどを防ぐため、外国人旅行者の保護を元に作られた法律なのですが
今は個人旅行の時代なのであまり保護が必要がなく、時代遅れの法律と観光庁は言います。
ですが中国から大量に団体観光客が訪れていて
実際一番保護が必要な人たちが保護されずにぼったくられていて
国内の旅行市場も荒らされているという現状。

通訳案内士として職域を確保するというのはもちろんですが
日本の観光資源を守るため、安易な規制緩和は許すべきではありません。
国が認める観光ガイド制度と言うのは
どこの国でもあるものなのです。

この問題は通訳案内士以外の方々にも日本国民全体の問題として
考えていただければと思います。
観光箇所でよく「ガイドさん、○○を注意してください」などと言われます。
それは通訳案内士がついてるから言えることなのです。
海外からのルール無視のガイドはマナーも守りません。

改悪法案が国会に提出されれば、
色々な形で世の中にこの問題を訴えかけ
国民の皆さんの是非を問うことになるでしょう。
是非3000万という見かけだけの素晴らしい目標に踊らされること無く
国益、日本の観光ブランドを守った、
中身の伴った改革に
なっていくことを望みます。
みなさんも注目していてください。

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氷山の一角

2010-03-30 00:38:25 | 通訳案内士のあり方
こんな記事が産経新聞に載っていました。

中国人添乗員の募集に不備

これは氷山の一角です。
違法な格安ガイドの対策で
日本の大手企業までが
法を侵し価格競争に走っています。

ガイドの皆さんはもちろんのこと
旅行業界の方も
一般の皆さんも考えてみてください。
価格競争に走り
日本ブランドをおとしめることで
観光大国になりえるのか。
ブランド力を高め
ファンやリピーターを増やさないと
観光大国への道のりは厳しいのではないでしょうか。

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