厚生労働省が公表した「平成23年簡易生命表」によると、2011年の日本人の平均寿命は男性が79.44歳、女性は85.90歳(メディカルトリビューン)。人間の場合、一般的に女性は男性より5~6年は長生きするといわれており、この傾向はほとんどの動物にも当てはまるそうです。その原因は?細胞内でエネルギー産生をつかさどる小器官、ミトコンドリアは、わずかながら精子にも存在するものの、多くは卵子を経由して、母から子へと伝えられます。ミトコンドリアには、その機能を維持するための遺伝子が乗ったDNAが存在し、ミトコンドリアDNAと呼ばれています。ミトコンドリアDNAは母からしか伝わらないので、女性が子を残すのに障害となるような突然変異は、通常の核DNAの変異と同様に世代を経るごとに淘汰されていくそうです。これに対し、男性が子を残すのに障害となるような突然変異は女性に無害なため、母から娘へと伝わって蓄積され、蓄積された変異を母から息子が受け継ぐと、息子にはその影響が出てしまうことになるそうです。これは「母の呪い(Mother's Curse)」として、以前から予想されていたことだそうです。今回、この変異の蓄積が男性の平均寿命や老化に大きく影響を及ぼすことが明らかとなったというのです。共通の核DNAを持ち、ミトコンドリアDNAだけが異なる13系統のショウジョウバエ1万1,049匹を使った実験を実施した結果、オスの平均寿命と老化速度に関する系統間の差がメスに比べて著しく大きく、それがミトコンドリアDNA上の突然変異の数と関係することが分かったそうです。つまり、母親から受け継いだミトコンドリアDNAの突然変異はオスだけに影響を及ぼし、平均寿命と老化速度を大きく変化させていた可能性が示されたことになるそうです。一方、オスだけに有害なミトコンドリアDNAの突然変異がどんどんと蓄積されると、最終的に、メスの数が多くなる可能性が考えられるとも。しかし、実際にそうならないのは、突然変異の影響をいくらか回避するメカニズムがオス側にはあるからだと考えられているそうです。
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