健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

心筋細胞をペースメーカーにする遺伝子治療

2014-07-30 08:30:46 | 研究
驚きの研究結果が先日発表されていました。心筋に特定の遺伝子を注入して、弱った心臓を強く拍動させることに動物実験で成功したというのです(AFPBB NEWS)。「Tbx18」として知られる遺伝子を、心室の一部にカテーテル注入したそうです。Tbx18は、通常の心筋細胞の一部を、心臓のペースメーカー細胞である「洞房細胞」と呼ばれる細胞に変換するそうです。心筋細胞自身は、通常はペースメーカー細胞が発生する活動電位を伝搬するだけですが、Tbx18遺伝子を心筋細胞に導入して心臓内の特定部位に新たな洞房結節を形成することに成功したというもの。この治療は、「完全ブロック」として知られる疾患を持つブタに対して行われたそうです。この治療法では、開胸手術を行う必要はありません。遺伝子を注入したブタはその翌日には、治療を施していないブタに比べて心拍数が著しく速くなっていたそうです。この治療効果は、研究期間の2週間にわたって続いたそうです。通常は、電子ペースメーカーを埋め込む治療が行われているそうで、米国では毎年約30万件行われ、保健医療制度の費用は年間約80億ドル(約8125億円)に上っているそうです。この治療の最初ターゲットになるに治療の対象になる可能性がある候補としては、ペースメーカー埋め込み術後に感染症を発症する全体の2%の患者が挙げられているそうです。また「先天性心ブロック」と呼ばれる疾患を持つ胎児も候補の一つに挙げられているそうです。先天性心ブロックは、胎児2万2000人に1人の割合で発症し、胎内で不整脈を引き起こすもの。胎児にペースメーカーを埋め込むことは不可能なので、先天性心ブロックを治療するためにできることはほとんどなく、死産という結果に終わる場合が多いそうです。今回のように病気を治す目的で生きた動物の心筋細胞に遺伝子を組み込んだのは初めてだそうです。ただ、人への応用はまだまだ課題が多く、人への臨床試験を行えるようになるにはまだ少なくとも2~3年を要するとも。ペースメーカーの埋め込み手術は必要となる時が意外と早く来るかもしれません。
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