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豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

理学療法士の大学院進学(その1)

2014-07-03 08:30:07 | 研究
理学療法士の方、あるいはこれから理学療法士になる方で、大学院への進学について興味を持っている方も多いでしょう。
でも、大学院に進学してどうなるのか?という疑問を持っている方も結構いると思います。
そこで、理学療法士が大学院に進学することについて少し私の考えを書いてみたいと思います。あくまでも私の個人的な考え方ですので、特定の大学や組織の考えを代表するものではありませんので、予め承知してください。

(Q)大学院に進学する理由は?
理学療法士は国家資格で、この国家試験をに合格して資格を取得すれば就職できます(現在は)。そうした理学療法士が大学院に行く理由は何でしょうか?それは、理学療法士になるために学んできたことでは、ヒトの身体のことをすべて理解したとは決して言えません。教科書に載っていないことの方が多いのです。効果的なリハビリテーションや予防介護を行うためには、なぜその介入が必要なのか?なぜその介入が有効なのか?ということを意識すべきですね。でも、そもそものなぜそうした状態に陥ってしまったのか、そのメカニズム機序)が分かっていないといけません。ですが、残念ながら、骨格筋の廃用性萎縮でさえ、現象的には明らかなのですが「どうしてそうなるのか?」については未だに研究が行われているのです。「どうしてそうなるのか?」が明らかになって初めて、予防方法が確立し、効果的なリハビリテーション技術の開発も可能になります。実際、多くの疾患の治療薬や治療法というものは、多くの場合その基には発症メカニズムの解明があるのです。ですが、残念ながら・・・・・。

例えば、廃用性症候群に骨格筋の萎縮があります。骨格筋の萎縮は、筋タンパク量の減少に起因する筋細胞サイズの低下が原因です。筋タンパク量は、タンパクの合成と分解のバランスにより変化します。仮に、タンパク合成が分解に比べて増加すれば筋タンパク量は増加しますので、筋細胞サイズは大きくなり、筋は肥大します。筋トレなどはこうしたことが筋細胞内で起こっていることになります。逆に、タンパク分解が合成より多くなれば、筋タンパク量は減少して筋細胞サイズは小さくなります。これが骨格筋の萎縮です。ここで注意しなければいけないのは、筋萎縮時にも筋タンパク合成は行われているだろうということです。ですが、安静時のどの程度のレベルのタンパク合成が行われているかわかっていません。
仮に、タンパク合成には安静時と変化がないとするならば、筋タンパク合成を増加させるかあるいは筋タンパク分解を抑制すれば筋萎縮は回復することになります。
あるいは筋タンパク合成が抑制されているならば、筋タンパク合成を刺激するような理学療法が萎縮筋の回復には効果的ということになります。あるいは、筋タンパク合成を刺激するような薬品の開発も視野に入ります。この時、タンパク合成には多くの分子が関与しているので、廃用性萎縮時に特に影響を受けてタンパク合成を抑制している分子特異的な薬品を開発できれば、副作用が少なくなると考えられます。

以上は一例ですが、まだまだメカニズムが明らかになっていないことがたくさんあります。現象が明らかなものほど、メカニズムが解明されていないことが多いような印象を受けます。

ですので、大学院に進学して、自ら研究することで「骨格筋はなぜ萎縮するのか?」「萎縮した骨格筋の回復はどのような仕組みなのか?」について追究することは、臨床の現場で役立つエビデンスを求めることになります。もちろん、たった1つのことかもしれませんが、でも何もエビデンスがないより良いことですね。


(Q)大学院では何をする?
大学院では、自ら課題を見つけて、その課題解決に最適な手法を見出して、解決するというプロセスを学びます。このプロセスこそ「研究」です。
大学院は修士課程(博士前期課程)や博士後期課程に大別されます。修士課程は、研究への導入部分です。研究のやり方、論理的なものの考え方(ロジック)を学びます。もちろん、研究もします。ですが、多くの場合は、教員などが全面的にバックアップして研究は行われます。なぜなら、本格的に研究をするのは初めてな上、修学期間が2年間と短いからです。
博士後期課程で行うことは、ズバリ研究です。ここで研究して結果を残すことで、研究者としての仲間入りをします。


(Q)大学院を修了するとどうなる?
修士課程を修了すると「修士号」が授与されます。でも、この修士号は、特に役に立ちません。おそらく給与や昇進にも反映されません。ではなぜ修士号を取得するのか。それは、研究ということを通して真理を追究するロジックを身につけるためです。これが身につけば、分野が異なったとしても研究活動を行うことができます。ですので、いろいろな状況で発生する諸問題に対する問題解決能力が養われることになります。
そして、もう1つは博士後期課程へのステップです。博士課程を設置している大学院の中には、5年間一貫教育を行っていることころ、前期課程と後期課程を分けているところがあります。いずれの場合も、修士号を持っていれば、受験資格が得られます。
博士後期課程を修了すると「博士号」が授与されます。この博士号は、職場によっては、給与や昇進に影響するケースもあると思います。また、理学療法分野の大学の教員や研究所の研究員などを目指したい方は、この博士号は必須になりつつあります(理系の分野では、まず必須です)。また、博士号を取得すると、米国など外国の大学への留学という選択肢も大きく広がります。というのは、博士号取得者を研究者として言って期間雇うというシステムが広く普及しているからです。


(Q)大学院で何を研究していいかよくわからないけど、でも進学には興味があるが・・・・・
こういう方、結構いると思います。
こういう方に対するアドバイスについては、次回書くことにします。
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