望みは何と訊かれたら小池 真理子新潮社このアイテムの詳細を見る |
いつだったかNHKの週刊ブックレビューで紹介されているのを見て、
「お!読んでみたい」と思った。
小池真理子は私と同世代の女流作家。名前は知っていたが読んだ事はない。
学生運動を経験し、その最中の人間模様を描いているらしい。
私は、小説などはほとんど読まないが、昔、学生運動の経験もあり、引きつけられた。
そして、本屋で見つけて買ってあったが読む暇がなかった。
しかし、休みが取れたらこの本を読もうと決めていた。
(そのような本が、実は、山とあるのだがーー)
最後まで、読者を引きつけてやまないサスペンス調で展開しつつ、終わりはない。
なぜなら、まだ続いているからである。小池真理子が八十にになれば、更に書けるのかもしれないが。
貫かれていることは、
日常の安定の安堵と、非日常の不安定の緊張の恍惚の狭間で強く揺れる人間の性である。
この生き様は、あの時代に青春を経験した者でなければ理解不能かもしれない。
読んでいて私はふと、第二次世界大戦の時に青春を過ごし、いま人生を終えようとしている世代のことが頭をよぎった。
それは命を強制的に中断させられるという、非日常の中で過ごした青春、そしてその後の時間的には圧倒的に長い安定的な日常の人生(もちろん相対的にという意味でしかなく、私には想像でしかないのであるが)の対照があった。
そして、いま本当に命の灯火が消えようという時に、その非日常の青春の意味を確認し、後世に伝えたいという叫びが心を打つ。
あの揺れ動いた時代の青春は、このような世代に比べれば、ひよっこ程度のものでしかないかもしれない。
しかし、人生の中の、命をかけた非日常であったことだけは間違いない。
そういえば、私も「日常性から脱却せよ!」には引きつけられたな。いまでも、「非常識」が好きだ。