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「世界で勝たなければ意味がない-日本ラグビー再燃のシナリオ(岩渕健輔)」という本はとてもオススメ!

2013年07月19日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

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 「世界で勝たなければ意味がない-日本ラグビー再燃のシナリオ」という本は、36歳で日本代表GM(ゼネラルマネージャー)に就任した著者が、2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップへ向けて、世界のラグビーや日本の現状、日本が世界各国相手に勝つための個人・組織のロードマップ等についてまとめたものです。

 実は、スポーツ界ではオリンピックとサッカーワールドカップに次ぐ3番目の規模をラグビーワールドカップは誇り、2011年にニュージーランドで開催された第7回ラグビーワールドカップ大会は観客数135万人、世界207の国と地域でテレビ放映され、視聴者数のべ39億人というビックイベントとなっています。

 そんな中で、日本ラグビーは2012年10月現在の順位は16位で、ワールドカップでの成績は1勝2分21敗と、世界相手には惨敗の状況です。
 しかもワールドカップは20チームで試合が行われ、前回のワールドカップで上位12位に入っていない日本は、予選で負けてしまうと、開催国にも関わらず試合に参加できない可能性もある^_^;)という危機的な状況とのことです。

 そして最近は日本でのラグビーの認知度はサッカーとは逆に、下がる一方と思います。

 そんな状況ですがラグビーファンの私としては、ぜひこれから日本ラグビーが盛り上がり、2019年ワールドカップでは勝利して決勝トーナメントへ進出してほしいと思います。

 そのためには、本書にも書かれている通り、日本選手は野球やサッカーのように世界のリーグで活躍し、力をつけるしかないと思います。
また高校を卒業してすぐに、日本のトップリーグに参加できるような環境作りも必要かとも思います。

 それから、著者はイギリスのケンブリッジ大学へ留学してラグビー部に所属した経験や海外のプロチームに所属した経験があり、そのエピソードはなかなか興味深かったですね。

 この本は、日本ラグビー界の現状がよくわかり、また2019年ワールドカップで日本が活躍するロードマップが描かれていて期待が持て、とてもオススメです!

 以下はこの本のポイント等です。

・2019年のラグビーワールドカップの詳細はこれから決まっていくが、これまでと同じ開催方法であれば、前回大会ベスト12チームに、世界各地区の予選を突破し8チームを加えた合計20チームが、5チームずつ、計4つのプールに分かれて一次リーグを戦うことになる。各プールの上位2チームが決勝トーナメントに進出し、優勝を争う。大会期間は1ヶ月半におよび、計48試合が行われることになる。まだ決まっていないことの1つに、日本代表チームの出場権がある。開催国だから当然出場権があるものと思われているが、過去の大会はいずれも世界ランキング上位の国で開催されており、すべての開催国が前回大会の成績によって出場権を獲得している。2011年のニュージーランド大会で、3敗1分の成績で一次リーグ敗退した日本は、2015年大会に出場できるとはっきり決まっているわけではない。とはいえ、日本は過去のアジア予選では難なく勝ち上がり、すべての大会に出場してきた。問題はなによりも、2019年までにどれだけ日本代表チームが力をつけ、世界ランキング上位に上がっていけるかである。目標は一次リーグの突破だ。それは、自国開催のワールドカップを盛り上げ、成功に導くためであると同時に、日本におけるラグビー文化を育て、未来へとしっかり受け継いでいくことにもつながっていく。日本代表は、なんとしても勝たなければならないのだ。

・現状の世界ランキングをより具体的に見てみよう。1~5位は、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、イングランド、フランス。2011年のワールドカップは、1位がニュージーランド、2位がフランス、3位がオーストラリア、4位がウェールズという結果で大会を終えた。6~10位グループには、頭一つ抜けた感のあるウェールズに続いて、アイルランド、アルゼンチン、スコットランド、サモアが入る。この中で特筆すべきはアルゼンチンだろう。南半球では、1996年から南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国による「トライネーションズカップ」が開催されていたのが、2011年からはアルゼンチンがそこに加わり、4カ国の対抗戦になった。トップ5のチームと戦う機会を得て急速に力をつけている国と言える。このグループの中では、スコットランドやサモアは少し離されていて、イタリアやトンガとともに次の集団を形成している。ここまでで12位だが、この数字は重要な意味を持つ。ワールドカップの一次リーグでは、5カ国ずつ4つのグループに分かれて戦うが、その上位3チームつまり計12チームは、次回大会への出場権を得ることができるのだ。この12チームはその時々の世界ランキングと必ずしも一致しないが、12位内に入るということはラグビーの世界において一つの目安と言える。トップ12のチームには、カナダが続く。日本とほぼ同じ実力で順位を争っているのは、フィジー、グルジア、アメリカなどだ。このあたりが14~17位ということになる。

・ラグビー選手は、普段どこでプレーしているのか。世界ランキング上位の代表選手たちは、それぞれプロリーグのチームで活躍していることが多い。ヨーロッパには大きな3つのリーグがある。イングランドの「プレミアシップ」(12チーム)、フランスの「トップ14」(14チーム)、そしてアイルランド、ウェールズ、スコットランド、イタリアのトップチームが集まった「プロ12」(12チーム、ケルティックリーグとも呼ばれる)である。一方で南半球には、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアから各5チームが集まった「スーパー15」というリーグがある。この4つのリーグが世界のトップリーグだ。世界ランキングで10位までに入る国の代表選手は、ほとんどがこれらのプロリーグのチームに所属している。

・1987年の第1回大会以来、日本代表は7回のワールドカップで24試合を戦ってきた。しかし、成績は1勝2分21敗。一次リーグを突破して決勝トーナメントに進出した経験は一度もないというのが現実だ。日本代表が唯一挙げた1勝は、1991年の第2回大会でのことだった。すでに一次リーグ敗退が決まっていた最終戦だったが、日本は世界ランキング下位のジンバブエ相手に9トライを奪い52:8で圧勝した。しかし、まさかその後ずっと勝つことができないとは、当時、誰も考えなかっただろう。

・日本代表強化という観点だけから考えれば、高校を卒業した選手はすぐに社会人ラグビーのトップリーグのチームに入ったほがよい。ラグビー選手としての能力は、間違いなく早く伸びるはずだ。日本ラグビーのよきアマチュアリズムの伝統の中で、日本代表の強化をどのように位置づけるか。バランスの問題だとは思うが、大きな課題であることには違いない。

・世界を知ったという意味で大きかったのは、1995年の南アフリカ大会で、ニュージーランド相手に145点を取られて大敗を喫したことだ。この試合が日本ラグビー界に与えたインパクトは相当なものだった。1987年にニュージーランド代表が来日して、日本代表が100点以上取られたときもショックだったが、ワールドカップという舞台で失点した145点は、きわめて衝撃的な数字だった。私自身、高校生プレーヤーとしてこの試合を見ていたが、尊敬のまなざしで見ていた日本のスター選手たちがうなだれている姿をいまも覚えている。日本ラグビー協会として、この敗戦からなんとか立て直さなければならないということで、神戸製鋼で活躍し、96年に現役を引退したばかりの平尾誠二氏が代表チームの監督に就任した。当時の協会にとっては、かなり思い切ったカードを切ったのだと思う。日本ラグビー界の最大の人気を誇る平尾氏の登用は、かげりの見え始めたラグビー人気をふたたび盛り上げる意味合いもあった。私はその少し前から選手として日本代表に選ばれていたが、テストマッチが行われる秩父宮ラグビー場にはいつも2万人ほどの観客が詰めかけ、ほぼいっぱいになっていた。1998年には、日本での選手生活が長いニュージーランド出身のアンドリュー・マコーミックを外国人初の主将にするという試みもあった。さらに、アルゼンチンをテストマッチで破り、99年のパシフィック・リム選手権では、アメリカ、カナダ、トンガ、サモアに勝って優勝するなどの成績を残した。しかし、同年にウェールズで開かれたワールドカップでは、やはり1勝もすることができなかった。「ラグビーも世界へ」とのかけ声はあるが、実際に戦ってみるとまったく勝てないのである。急速にファンが離れ、日本代表への期待がしぼんでいったのは、そのころからだったように思われる。いまやテストマッチが行われても、5000人程度の観客しか集まらないこともある。それほどまでに、日本代表への期待感が落ち込んでしまったのだ。さらに、ラグビー界全体への失望感からか、あれほど観客が詰めかけていた早明戦にも空席が目立つようになるなど、どんどん悪い循環に陥っている。平尾監督時代の日本代表は、秩父宮ラグビー場での試合が終わったあと、出口でサポーターたちが待っていてくれた。現在ではそうした熱心なサポーターも少なくなり、雰囲気がガラッと変わってしまっている。こうした光景を目の当たりにして、危機感を抱かないラグビー関係者はいないだろう。

・1980年代を振り返ってみれば、サッカーはそれほど人気があったわけではない。小学生のころの私は、マンガの「キャプテン翼」を読んで胸を躍らせ、日本代表の試合や日本リーグ(当時)を何度か見に行ったことがある。しかし、国立競技場や西が丘サッカー場にはほとんど観客が入っておらず、むしろそのことに驚いたものだった。というのも、当時はラグビーの早明戦を見に行くと、満員で入れない状態だったからだ。ところが、サッカーの試合で読売対日産などの好カードを見に同じ国立競技場へ行っても、あまり人がいない。現在とはまったく正反対の状況だったのである。

・2019年の日本開催のワールドカップを成功させるためには、何よりも日本代表が強くなり、勝つ姿を多くの人に見てもらうことが重要だ。具体的な目標として、2015年のイングランド大会ではトップ10、2019年の日本大会ではトップ8を掲げている。当然、ランキングを上げるためには、自分たちよりも強い相手に勝たねばならない。ラグビーの世界ランキングは非常に明快だ。15~16位に位置する日本が順位を上げるには、ランキング上位のチームに勝てばよい。したがって、トップ10に入るために勝たなければならない国は明確に決まっているのだ。ターゲットとなるのは、現在のランキングで9~14位圏にいるイタリア、スコットランド、トンガ、フィジー、サモアの5カ国だ。幸いにして、トンガ、フィジー、サモアの3カ国とは、毎年行われるパシフィック・ネーションズカップで戦うことができる。この大会で3カ国から勝ち星を挙げることが、世界ランキングを上げる大前提となる。しかし、先々のテストマッチの予定がほとんど決まってしまっているため、イタリアやスコットランドと対戦することは難しい。2015年のワールドカップで当たる以外、基本的に戦うことはできない。世界ランキングポイントは、強い相手に勝たない限り大きな点が加算されることはないので、実際のところ10位圏内に入るのは大変難しいことだ。日本からすると、トンガ、フィジー、サモアは上位国なのえ、勝利すればある程度のポイントを得ることができる。また、2013年に対戦する6位のウェールズに勝つことができれば、かなり多くのポイントが入ることになる。それ以外で日本に与えられたチャンスとしては、ワールドカップの舞台での勝利が挙げられる。ワールドカップでは、一次リーグで必ず上位国と対戦することになっているからだ。ここで強豪国に勝つことが、世界のトップ10入りにつながっていくだろう。

・2015年に世界のトップ10に入るためには、ワールドカップの一次リーグで最低2勝しないといけない。5カ国で戦う各プールには、抽選で第一シードが1カ国、第二シードが1カ国というように割り振られてくる。現在のランキングからすると、日本は4巡目になるだろう。となると、そのプールには日本よりも上位のチームが3つ、下位のチームが1つ入る計算になる。トップ10に食い込むためには、その下位チームに勝つのは当然のこととして、3巡目で入ってくるチームにも勝たなければならない。また、2勝を挙げてプールで3位以内に入れば、次回大会の自動出場権を得ることができる。ワールドカップで2勝というのは、そういう意味があるのだ。トップ10に入ることができれば、その先の4年間に強いチームとマッチメイクできるようになるだろう。それは、日本代表を鍛えることにもなし、日本におけるラグビー人気をふたたび盛り上げることにもつながっていくはずだ。

・伝統校のケンブリッジとオックスフォードは、強いライバル関係にある。両校の間で毎年12月に行われる定期戦は「バーシティマッチ」と呼ばれ、日本ラグビーで言えば早明戦や早慶戦のような国民的行事だ。バーシティマッチにはユニークな習慣がある。試合が近づいて出場選手が決まると、キャプテンが選手の寮や宿舎を1軒ずつ回り、「君はバーシティマッチのメンバーの何番だ」と直接告げるのだ。二軍のバーシティマッチもあるが、その選手にも同様に告げられる。私は一年目のシーズンはウイングで出場予定だったが、直前の怪我で出られず、二年目は一軍のスタンドオフとして出場した。その日の終わりには、選ばれた15人だけでディナーを食べに行く。選ばれた選手たちは「ブルー」と呼ばれ、文字通りブルーのジャケットをつくって着用する。ブルーのジャケットを着てカレッジを歩いていると、バーシティマッチに出る選手だということが一目で分かる。バーシティマッチに注目するのは学生たちだけではない。出場メンバーの名前は町に貼り出され、町の人たちの反応はがらりと変わる。さらには、たくさんあるカレッジのうちの3つで、特殊な夕食会や伝統的なイベントも開かれる。ポート&ナッツと呼ばれるイベントは、全員がタキシードを着て、ポートワインを片手にナッツを食べながらOBたちと歓談するというものだった。試合二日前の晩にはケンブリッジが一望できる丘に選手たち全員で集まって、キャプテンが町の歴史を語る。どれほど伝統的で、格式が高いことか。それは想像をはるかにしのぐものだった。なにせ、試合会場となるロンドン郊外のトゥイッケナムにある競技場は8万2000人の観客を収容できるのだが、バーシティマッチではそれが満員になることもあるのだ。ラグビー発祥の地の伝統の重みだけでなく、ジェントルマンの国であることも見せつけられた。バーシティマッチのメンバーに選ばれると、こうした儀式に出席するにはパートナーが必要なのである。20代前半までずっと日本で生活してきた私は、ケンブリッジには留学している身分である。それがとつぜんファーストレディの世界になって、「おまえ、パートナーはどうするんだ」と言われ、驚いてしまった。まったく考えてもいなかったことだったのだ。ほかの選手たちはみんな当然のことだと思っていて、日本人の私にはそういう情報をくれなかった。突然パートナーが必要だということを聞かされた私は、大慌てで当時つきあっていた現在の妻を日本から呼び寄せ、なんとか事なきを得た。あらかじめ知らされていなかったとはいえ、これは本当に冷や汗ものだった。試合が終わったあとには、競技場の中で簡単な「ファンクション」が開かれる。ファンクションとは、関係者が集まって歓談するパーティーのことだ。そこには両校の選手や監督、コーチ、レフリーなどが一堂に会するが、この場にもやはりパートナーが欠かせない。競技場でのファンクションが終わると、パートナーと選手が同じバスに乗って宿泊先のホテルへと移動する。もちろんパートナーと同室だ。日本の感覚では考えられない習慣だが、それが伝統というもの。そして、タキシードに着替えて、舞踏会で本格的なファンクションが始まるというわけだ。

・ケンブリッジの卒業生でプロのラグビー選手になるのはほんの一握りで、私の同級生や前後の年代を含めても数人だった。もっとも多い就職先は、ロンドン・シティの金融関係やコンサルタント。あとは教員、あるいは法廷弁護士か事務弁護士かは別にして弁護士も多かった。

・代表への意識という点で思い出すエピソードがある。2003年にオーストラリアで開催されたワールドカップは、イングランドが初の優勝をおさめた。サラセンズに所属していた私は、そのときのイングランド中の盛り上がりが忘れられない。優勝を決めるドロップゴールを決めたジョニー・ウィルキンソン選手は、サッカーのベッカム選手らと並び称されるスーパースターとなった。帰国後、選手たちは二階建てバスに乗って目抜き通りのリージェント・ストリートをパレードした。私は当時大きな怪我をしていたため、日本代表として出られず、ワールドカップは現地オーストラリアで観戦した。そこでサラセンズに所属する選手たちとも話をした。たしかにイングランドは優勝候補筆頭だったが、優勝にかける彼らの思いは非常に強かった。イングランドチーム全体がいい雰囲気であることもよく伝わってきた。

・日本ラグビーのGM(ゼネラルマネージャー)は、現場の総責任者ではない。たとえば、15人制日本代表チームの総責任者はヘッドコーチで、いま就任しているのは、前年までGM兼監督としてサントリー・サンゴリアスを率いていたエディー・ジョーンズである。それに対して、組織を全体的にコントロールするのがGMの仕事で、現場をいかにいい形で運営していくか、あるいはしっかりと運営されているかをチェックする役割を担っている。なお、日本代表といっても、年齢制限のない15人制代表チームだけではない。その下には若手選手育成プロジェクトの「ジュニア・ジャパン」、さらには年齢制限のあるU20、高校日本代表(U18)、U17などのユース日本代表がある。そのほか7人制ラグビーでも、セブンズ日本代表やセブンズ・アカデミーが活動している。以上が男子日本代表だが、女子にも同じく15人制日本代表、7人制日本代表、セブンズ・アカデミーがある。私の役割は、これら各カテゴリーにいるヘッドコーチやチームマネージャーとコミュニケーションをとり、彼らとともに日本ラグビー界を全体として底上げし、最終的には15人制・7人制の日本代表をどうやって強くしていくかを考え、そのプランを実行していくことだ。そこにはもちろん、強化計画がどこまで進んだのか、その成果を随時チェックして正確に評価する仕事も含まれる。ちなみに、世界規模のラグビーイベントとしては、本書の大きなテーマである男子15人制のワールドカップのほか、女子の15人制ワールドカップもあり、これは2014年にフランスで開かれることになっている。女子のワールドカップは1991年の初大会から4年ごとに開催され、日本代表は第1回、第2回、第4回に出場しているが、最近の第5回、第6回はアジア予選で敗退し、出場することができていない。このほか、7人制では男女ともに「ワールドカップセブンズ」と呼ばれる大会もある。男子は1993年に第1回大会が始まり、日本は毎回出場を果たしている。女子は2009年に第1回大会が開催され、日本も出場した。そして、2016年にブラジルのリオデジャネイロで開催されるオリンピックから、7人制ラグビーが正式種目になることが決まっている。

・2012年の代表活動期間中はフィジカル面の強化に重きを置き、その結果、多くの選手に大幅なフィジカル能力の向上が見られた。選手の努力に敬意を払う一方で、これまでのラグビー選手はアスリートではなかったのかもしれないと思わされる。というのも、100m走で0.01秒を争うような、ギリギリのところが勝敗を分ける世界で戦うのが代表チームのはずである。選手たちにはそれを自覚してもらい、限界までフィジカル能力を上げきることを課題とした練習を行っている。

・日本人が世界で通用すると言われているものの1つに、瞬発力(クイックネス)がある。たとえば5m、10mの間の加速のことだ。レスリングなどに見られるような、組み合い時のすばやい身のこなしなどとも共通する。したがって、いいパフォーマンスができる範囲の最大限まで筋肉で固めて、それでも足りない重さをクイックネスでどれぐらい補っていけるかが課題となる。「重さ×速さ」なら、重さで足りないぶん、速さが相手よりも上まわってれば、同等の戦いになる可能性は十分あるというわけだ。そのような考えに基づき、まずは一人ひとりのフィジカル能力をアップし、明確に数値として足りない部分を補うという課題に取り組んでいるところだ。重さで言えば、まず食生活とトレーニング環境の要素が非常に大きい。食生活に関しては、日本のチームは以前からかなり細かいレベルまで気を遣ってきた。たとえばプロテインを含めた食事のメニュー管理などは、トップリーグのチームなどでもやっていることだ。では、私がかつて見たイングランドやフランスの選手たちはどうかというと、トレーニングそのものはすごくやるものの、食事管理はほとんど行っていなかった。それでいて、体は日本人の2倍ぐらい厚い。同じ量のトレーニングをやっても、彼らは筋肉が早くつくし、体もすぐ大きくなる。これはどうしたものかなと思ったものだった。そう考えると、日本人は食事の管理などをもっともっと細かくやらないと、彼らには追いつかないのかもしれない。現在、日本代表チームの合宿では、朝の5時半からトレーニングを始めている。選手のアスリート性を上げるために、1日24時間を最大限使っていく方法を考えて、そうした環境を整えていかなければならない。その一方で、代表チームの活動期間は限られているので、選手が所属するトップリーグや大学チームとの連携が欠かせない。各選手の所属チームを代表スタッフが実際に訪れ、考え方を説明し、トレーニング内容を一緒に考えている。先ほど日本人選手の特徴として瞬発力を挙げたが、ほかによく言われることとして持久力がある。マラソンでも暑いコンディションの中で行われると、がぜん日本人が強かったりする。持久系のスポーツで、かつ、かなり厳しいコンディションの中であれば、世界と勝負ができるというのは、日本ラグビーにも言えることだろう。

・若い高校生のU18やU20であっても、同格以上のチームと戦って勝つことができたら、自分たちがワールドカップに出るような年になったときも、自分たちは勝ってきたぞと思えるだろう。だから、どのカテゴリーも勝つことが大事なのだ。そのためには、私が外国の大学チームやプロリーグチームを体験したように、個人で海外に出て、世界を知るという道もあるだろう。外国のチームに長く所属し、高いレベルの中で自分が戦えると感じている選手が日本代表に何人か加わることは、より大きな力になるはずだ。たとえば、現在、パナソニックに所属している田中史朗選手や堀江翔太選手が、ニュージーランド国内のリーグでプレーしている。それは、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3カ国でやっている「スーパー15」の下の国内のトップリーグにあたる。あるいは桐蔭学園高校卒業後に南アフリカのシャークス・アカデミーに入団した松島幸太郎選手は、現在、南アフリカのクワズル・ナタール州のU19代表として活躍している。外国のチームでチャレンジすること自体はよいことだ。日本のサッカー選手もヨーロッパのクラブチームで勝負することで、力をつけてきている。もちろん、本気のチャレンジである以上、本当にステップアップして生き残れる選手は、何割もいないかもしれない。しかし、世界ランキング上位のチームのほとんどの選手は、そうして世界のトップリーグで戦っているのである。外国の舞台で戦った選手たちが日本代表に加わったとき、チームに対する誇りやメンタイティは自ずと強くなっているはずだ。だが、日本の選手が注目を浴びるのは、残念ながらワールドカップぐらいしかない。ワールドカップでどのおうなパフォーマンスを示せるか。そこで認められて初めて、実際に海外のプロチームから声がかかることになる。ラグビーもワールドカップや強豪国とのテストマッチで注目されて、何人かが海外へ行くといったストーリーが生まれてこないと、チーム力は上がってこないだろう。世界トップ10が15年のワールドカップの目標だが、そのトップ10の国のリーグに日本人選手がいないようでは目標達成は難しい。

<目次>
序 日本にワールドカップがやってくる
 世界3位のスポーツイベント
 そのときピッチに立つのは誰か
 世界で勝負したい、世界に勝ちたい
 日本代表GMの役割
第1章 世界への挑戦が日本ラグビーを変える
 日本代表はまだ世界の相手ではない
 世界の勢力図
 負け続けてきた日本代表
 大学ラグビーの功罪
 「勝てない日本」に人気がかげり始めた
 国民的スポーツの条件
 代表選手にロイヤリティはあるか
 代表チームで選手を鍛える
 成果を積み上げてこなかった日本代表
 日本代表である限り絶対に負けられない
 世界トップ8へのロードマップ
 強くなればもっと強いチームと戦える
第2章 世界と戦うということ
 原点はタッチラグビー
 少ないチャンスを生かす発想力
 人生にはオプションが多いほうがいい
 初めての日本代表ジャージ
 ラグビーがうまいだけでは選ばれない
 バーシティマッチのシーズンがやってきた
 勉学か日本代表か
 修士論文を書き上げる
 出場できなかったウェールズ大会
 サラセンズへの入団
 外国人枠の壁
 個性的な選手をまとめる監督たち
 戦略以前の体づくり
 代表チームにかける思い
 挑戦の舞台を日本へ
第3章 戦うための組織をつくる
 日本代表は一つだけではない
 急速に変わりつつある女子代表
 GMの役割はチームの方向づけ
 GMのスケジュール
 練習は強度と密度
 科学的手法を取り入れる
 日本人選手の強みを生かす
 何かで傑出した選手が必要
 teamworkとチームワークはどう違うのか
 激しい議論も辞さない風土
 スポーツにおけるお国柄
 意見を出せば責任が生まれる
 ラグビーのキャプテンに求められるもの
 コーチングが一方的なティーチングになってはいけない
 選手とコーチの間に緊張感はあるか
 活発なコミュニケーションができる環境
 国際試合に必要な力
 ラグビー全体のコミュニケーション
 オールジャパンの体制をいかにつくるか
 コミュニケーション・ラインをシンプルに
 どんな選手を選び、育てていくのか
 スタッフこそ常に評価の対象にせよ
 最後の責任はGMの私にある
第4章 「勝つ文化:の創成
 組織の前に個の戦いで負けない
 日本のラグビー選手はアスリートだったか
 より大きく、強く、速く
 世界の潮流を押さえる
 選手のモチベーションを高める
 チームの力を確認する
 世界一のアタッキングラグビー
 正しい状況判断ができるか
 「そこそこやれた」では意味がない
 「勝って当たり前」のメンタリティ
 ライバルはいてくれたほうがいい
 日本の外でラグビーを経験する
 格下相手の試合をうまく使う
 状況判断力はゲームでしか養えない
 いかにプレーに余裕を持たせるか
終 2020年の日本ラグビー
 目標の先にある大きな理念
 ラグビーは日本に根づくのか
あとがきに代えて-小さくて大きな勝利

面白かった本まとめ(2013年上半期)

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