<金曜は本の紹介>
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この「アフリカビジネス入門」という本は、筆者が始めた東アフリカのケニア共和国へのベンチャー投資プロジェクトの経験を通じて得た情報を基に、アフリカの現状等についてまとめたものです。
アフリカ各地では、携帯電話が爆発的に普及してSNSや送金サービス等がライフスタイルを大きく変え、世界的なIT企業が進出し、ベンチャービジネスを次々と立ち上げ、世界中のPE(プライベート・エクイティ)ファンドはアフリカ大陸への投資に熱い視線を注ぎ、従来の資源や農業だけでなく、サービス産業が大きく躍進している姿を詳しく分かりやすく説明してあります。
実体験を基にアフリカの真実に迫った良書だと思います。
各章の主な内容は以下の通りとなります。
第1章:アフリカ市場の特徴と成長のメカニズム、注目すべき市場動向
第2章:携帯電話と金融
第3章:アフリカ市場を席巻する中国・インド・韓国企業の動向
第4章:アフリカ現地で活躍する起業家の紹介
第5章:PEファンドの実状
第6章:日本経済にとってのアフリカ
とてもオススメな本です。
以下はこの本のポイントなどです。
・ケニアの中間層の中でも、特筆すべきは「チーター世代」といわれる若者たちだ。チーター世代の特徴は、携帯電話を駆使し、欧米型のライフスタイルを積極的に取り入れていることだ。なかには日本や欧米で留学や就労の経験を持ち、自国に戻ってアフリカという成長市場で起業し、果敢にビジネスにチャレンジしている若者も少なくない。彼らがチーター世代と呼称される理由は、彼らのライフスタイルが従来のそれと全く異なるからだ。これは実際にアフリカの大地に足を踏み入れるとよくわかるが、都会の喧騒から離れてサファリに出かけると、そこに流れている時間は恐ろしく違う。サファリの朝、ホテルで起きて、鳥のさえずりを聞いて朝食を取るときの時間の流れと、ナイロビのような都会で携帯を片手にビジネスを展開するアフリカン・ビジネスマンの速さが「カバ」と「チーター」ほどスピードが違うから、彼らはチーター世代なのだ。
・南アフリカの2009年の実質GDP総額は約21兆円で、日本の25分の1程度しかないが、一人当たりのGDPな中国よりも約1.6倍高い。また、南アフリカの株式市場(ヨハネスブルク市場)の株式時価総額は、日本の株式市場の約4分の1強の規模を誇り、かつアフリカの株式市場全体の6割は南アフリカ市場である。南アフリカ共和国の経済規模がアフリカ諸国の中でいかに突出しているかがわかる。アフリカの消費市場を大きく支える中間層という意味では、南アフリカの中間層から富裕層は「ブラック・ダイヤモンド」といわれ、アフリカの消費市場を強力に牽引しているのは有名な話だ。
・東アフリカエリアは、日本人がイメージしやすい、自然、動物、サファリ、マサイ族といったキーワードのエリアだ。本書でこのエリアに注目する理由としては、大きく3つある。まず初めに、このエリアの多くの国が、資源国ではないにもかかわらず、われわれの想像以上に経済が発展していることである。東アフリカの雄、ケニアを例に詳細を見てみると、GDPにおける農業の割合は25%、次いで観光12%、情報通信11%、製造業10%、農業と観光で4割近く、逆に資源への依存は非常に低いにも関わらず、めざましい経済成長をしている。2つ目に指摘したいのは、この地域はITサービスと金融サービスが、非常に発展していることだ。ケニアの通信会社サファリコムの携帯送金サービスはアフリカの他の国でも非常に注目されている。また大量虐殺の記憶が残るルワンダは、今や「アフリカのシンガポール」とも呼ばれ、小国でありながらも外国資本を積極的に誘致している。3つ目に指摘できるのは、これらの経済成長ドライバーを背景に、消費市場が急速に拡張している点である。この地域の全体の経済規模は、アフリカ全土の中でGDPの大きさを比較すると、名目GDPベースで見た場合には、2009年度ベースで南アフリカ(2870億円)、エジプト(1870億円)に対して、ケニア(320億円)は南アフリカの約9分の1、エジプトの約6分の1の経済規模でしかない。しかしながら、この規模であったとしてもケニアの首都ナイロビは富裕層から中間層が確実に伸びていて、消費市場の拡大が見込めるエリアとなっている。
・中国には消費ボリュームはかなわないが、アフリカはBRICSのロシア、インドよりも消費市場は大きく、2008年におけるアフリカの域内消費規模は、8600億ドル(約84兆円)と計算される。また、2000~2008年の消費規模の拡大幅を見ると、この期間に消費規模は2兆7400億ドル(約250兆円)増えており、この消費の伸びはブラジルやインドより大きい。この旺盛な消費市場は、2020年にかけて1.4兆ドル(約130兆円)に拡大すると予測されており、2008年対比では、アフリカの消費市場は現在の約1.6倍に拡大することが予測されている。
・アフリカという市場の定量データとして着目すべきポイントとして挙げられるのが、アフリカの人口規模と豊富な若年労働層である。ナイジェリア、南アフリカ、ケニアの人口動態はきれいなすり鉢型をしていることがよくわかる。また、人口の規模からいっても、アフリカ全土の人口は現在10億人弱ではあるが、同じ規模の中国やインドよりも人口の増加率が高く、世界で一番高い増加率を誇る。この結果、世界人口におけアフリカ人口の割合が現在の14%から2050年には20%を占めるといわれる。人口数と経済規模にある一定の相関関係があることはいうまでもないが、アフリカ人口の増加を考えると、その潜在的な市場の成長力に期待が集まるのを理解してもらえるのではないだろうか。2050年の予想人口を見ると、西アフリカの雄ナイジェリア(5位289百万人)をはじめとして、中央アフリカのコンゴ民主共和国(10位148百万人)、それにエチオピア(9位174百万人)、タンザニア(16位109百万人)、ウガンダ(20位91百万人)といった東アフリカの国々が名前を連ね世界的に有数の人口大国となってくる。
・中国とアフリカ諸国の関係は、資源と食料を確保したい中国と、インフラを整備したいアフリカとの思惑のうえに成り立っている。アフリカは、資源供給とインフラ整備のための中国からの直接投資で、多くの外貨を中国から獲得している。2008年には中国からアフリカへの直接投資(FDI)総額は、50億ドルを超え、日本からの直接投資額約38億ドルをしのぐ規模になっている。これに加えて注目すべきは両者の貿易取引額で、中国商務省国際貿易経済協力研究院によれば、2000年当時、中国アフリカ間の双方の貿易額は年間100億ドルであったのが、その後、年率平均30%で増加し、2007年に730億ドル、2008年には1068億ドルにまで達している。参考までに日本と比較すると、アフリカの2007年度取引額は、日本からアフリカへの輸出額が116億ドル、アフリカから日本への輸入額が148億ドルで、合計約260億ドル。これと比較すると、中国は日本の約4倍もアフリカと貿易上の接点があるという計算になる。アフリカに足を運ぶとわかるが、市場には多くの廉価な中国製の衣服、電化製品、日用品が流れ込んでおり、それまで高価だった欧米や日本の 日用品から中国製品が市場に流通して市民の生活を変えている。もはやアフリカ各国での日用品の約8割は中国製品ではないだろうかと思われるほど、中国経済はアフリカ諸国の日常に浸透している。
・インドとアフリカの関係は、やはり資源という側面が非常に大きいものの、中国の資源外交とはスタンスを異にしている。もちろん、石油の70%を海外からの輸入に頼っているインドにとって、アフリカは資源産出国として非常に魅力的である。2008年に開催された「インド・アフリカ首脳会議」では、アフリカ53カ国のうち15カ国の首脳がインドの首都ニューデリーで開かれた会議に出席した。この会議の場でインドのシン首相は、今後5年間でそれまでの倍の54億ドルの借款と、インフラ整備の5億ドル拠出を宣言し、アフリカ重視のスタンスを打ち出した。インドとの関係が、中国とアフリカのそれと違うのは、特に東南部アフリカは同じ旧宗主国を持つ関係から、歴史的にも古くから経済的、人的交流が多いということだ。同じ赤茶けた大地、低い物価レベル、激しい価格競争を見てきているため、インド人は中国人よりも昔から広くアフリカ各地に移り住み、ビジネスを手がけてきた。
・2007年のインドとアフリカ諸国間での取引額は年間300億ドルであった。この数字は中国の同年の730億ドルから比べると半分以下であるが、日本の260億ドルよりも多い。しかも印僑の彼らはすでにアフリカ経済に広く根ざしているので、インド経済がこれからさらに発展してきた際には、この取引ボリュームが容易に大きくなるのは想像に難くない。インドのタタ財閥も自動車市場としてのアフリカを重要視しており、自動車以外の産業でもアフリカ市場への進出を狙っている企業が数多く存在する。中国、インドのいずれも自国内に10億以上の国民を抱える大国であるが、この両国が自国の資源と食糧確保のためにも、アフリカという大陸を重視し、また、積極的な直接投資を推進している。これに加えて、自国産業の消費市場としてアフリカを位置づけ、さまざまな形で経済活動を行っていることから、この両国の経済的成長がよりアフリカ経済を牽引している構造は押さえておきたい。
・重要なのは、資源や農産物を必要とするアジア、中東の新興国、中国やインドといった人口大国が、資源開発や物流整備といった社会インフラや、関連施設に莫大な資本を投下しているということだ。このことによってアフリカ各地では、資本が現地で回り始め、その結果、そこには雇用が生まれ、国内消費が活性化していく、という構造となっている。もちろん、そこに莫大な資本が流れ込む背景には、人口的にも今後ますます拡大することが予測されるアフリカ市場の果実を獲得しようとする思惑も相まっての投資であることはいうまでもないだろう。こういった資金流入は当初、資源開発などのプラント開発や道路といった社会インフラの整備が主であったが、最近では情報通信、金融、農業といった産業にも広がっている。アフリカというと、これまで開発を目的とした資金の流入が多いイメージであるが、現在では民間企業による事業投資の側面からの資金が増えているのだ。
・驚くことにアフリカの耕作可能な農地の総面積は、全世界の農地面積の約6割を占めると計算されている。ここでの未開拓耕作可能農地の定義は、少なくとも土地のうち60%以上が、5種の穀物(小麦、パームヤシ、サトウキビ、大豆、メイズ)のいずれかが栽培可能であるにもかかわらず栽培されていない土地」であり、かつ「森林でない」土地を指している。
・アフリカで最もホットなビジネスは何かと聞かれたら、私は「携帯電話」と答えるようにしている。事実、アフリカ大陸では驚くべきスピードで携帯電話が普及し、彼らの生活を大きく変えている。これまで農村部では、情報がないために生産者は買い付けの行商人に言われるままの金額で作物を販売していたのが、携帯電話の普及により、彼らは都市部で自分たちの作物がいくらで売られているかを確認し、場合によってはインターネットで世界の相場を確認する。また、携帯電話による送金サービスが広く普及していることから、携帯電話1つで公共料金の支払いや親族への送金ができ、街で買い物をする際のお財布代わりに携帯電話を使っている。都市部では、日本と同様、iPhone、ブラックベリー、アンドロイド端末といっtスマートフォンのような高機能携帯も普及をし始め、データ通信も日常化し、一部の地域ではLTE方式による携帯サービスの試験運用が進められている。これが、今のアフリカの携帯サービスである。
・2010年のアフリカ全土での携帯電話の契約者数は推定約4億4800万人、アフリカ全土の人口が約10億人であることを考えると浸透率は約45%前後と、中国やインドの携帯電話の加入動向から見ると、アフリカ市場の成長余地は大きい。現段階でナイジェリアの携帯利用ユーザーは8800万人を超え、この数字はイギリス国内の契約利用ユーザー数より多く、市場の成長速度としては世界最速ともいわれている。2005年のボーダフォンによるレポート「アフリカ 携帯電話の衝撃」にあるように、当時のアフリカでの携帯契約者数が8200万人強であったことを考えると、この5年間で実に約6倍に爆発的に利用者が伸びた計算だ。国別の携帯普及率を見てみると、リビアとガボンでは100%を超え、リュニジアとコンゴ民主共和国が98~99%強と、ほぼ飽和に達しており、続くアルジェリア、南アフリカも90%強の高い普及率になっている。
・アフリカの主要国には光ファイバーが続々と陸揚げsれており、多容量データ通信を可能とする環境が整いつつある。光ファイバーは大きく4系統あり、1つはイギリスから、次にフランス、北部にインドからモナコに抜けるラインに、東側を絡む1本が接続されている。この結果、アフリカでの携帯電話のデータ通信サービスも、日本と同様、3GからWiMax、そしてLTEサービスの提供へと急速に広がっている。
・携帯電話が普及したもう一つの理由は、アフリカ市場に合致したサービスモデルの提供にある。SMSと携帯送金サービスが、彼らのライフ・スタイルを大きく変えている。これはアフリカの携帯事情では有名な話だが、アフリカで携帯電話が普及し始めた当時、それでも通信料を削減したい利用者は携帯電話を合図の代わりに使っていた。例えば、仲のいいカップルで彼氏が、仕事が終わった際に彼女の携帯を一度だけ鳴らす。着信を受けたほうはこれを仕事が終わった合図と理解し、待ち合わせの場所に向かう。これにより二人は通信料を払うことなく連絡を取り合うことあできるというわけだ。一方で、通信会社からすると、こういった利用方法を取られると設備敷設費だけが膨れ上がってしまうため、SMSの利用料を一部無料にした。これにより、現地の利用者は着信による合図からSMSによるコミュニケーションへと移行していった、といわれている。もう一つ注目すべきが、携帯送金差ビスの普及だ。アフリカでいう携帯を使った送金サービスというのは、日本でいうFelicaチップが埋め込まれたようなおサイフケータイ、もしくは銀行各社が提供しているモバイルバンキングサービスとは、本質的に全く異なる。概要から先に説明すると、アフリカでいう携帯送金サービスとは、携帯電話のプリペイド形式の通話料を買うのと同じ方式でお金を受け渡しすることによって、料金の支払い、送金を可能とするサービスのことである。このサービスはアフリカ全土に普及し、各地にサービス提供会社が存在している。なかでも有名なのが、南アフリカ共和国のウィジット(WIZZIT)、ザンビアのセルペイ(Celpay)、ケニアのM-PESAである。M-PESAを例に実際の活用シーンを説明すると、日常生活に必要な電気、光熱費の支払いから、路面店での買い物、友人間あるいは都市部に出稼ぎに出た若者から地方の親族への送金まで、広く使われている。
・実際、私がケニアで現地のオンライン媒体などの広告の関係から、現地でのネットの利用状況をヒアリングしている際も、誰しもが最も使っているサイトとしてフェイスブックを挙げるほど利用が多い。その多くは、携帯電話からフェイスブックを利用しており、これはツイッターも同じだが、SMSとの補完関係でソーシャルメディアを活用している。そのため、利用シーンとしては、検索をする際はグーグルかヤフーを使い、動画はYouTube、コミュニケーションメディアとしては、メールかフェイスブック、ツイッターを利用していると理解してもらってよい。よくよく考えると、これはある意味、必然的なところがある。それは一つは旧宗主国との関係である。南アフリカとケニアの場合にはどうしてもイギリスの影響が強く、イギリスで人気のウェブサイトは必然的に、これらの国においても認知度は高くなってしまう。また、旧宗主国やその他の国に出稼ぎに出ている親族・友人とコンタクトする際も、フェイスブックとツイッターは便利ということもある。
・2008年のリーマンショック以降、新興諸国の株式が先進国各国に比べて好調なのはご存じのとおりだ。アフリカの株式市場も好調で、南アフリカの株式市場は、過去3年間の平均上昇率で20%を記録している。情報がないと、「アフリカ=リスクが高い」となるが、誤解を払拭するためにも、アフリカの株式市場について言及しておきたい。アフリカの株式市場というと、海外の株式市場に詳しい人なら、南アフリカの株式市場を思い浮かべるかもしれない。実際にはサブサハラのアフリカ諸国、例えばタンザニアやウガンダにも電子取引に対応した証券取引所があり、上場企業が存在する。アフリカ全土には北部、南部、東部、西部、中央部の各地域全部で29の証券取引所がある。アフリカの証券取引所協会の2009年の資料によれば、加盟する主要な証券取引所だけでも1500近くの上場銘柄が存在する。そのうち売り上げが100億ドル以上の企業が100社以上あるとされる。時価総額と上場企業数で一番大きいのはヨハネスブルク証券取引所で、上場銘柄で410社、時価総額規模ではアフリカ全土の上場銘柄の時価総額の約65%を占める。次に上場企業数が多いのは、エジプト証券取引所で上場銘柄306社、ついでナイジェリア証券取引所257社と続く。アフリカ証券取引所協会に加盟の時価総額の合計は2011年5月集計で9722億ドル。同じ時期の日本市場の時価総額を300兆円で計算すると、時価総額規模にして日本の4分の1強に匹敵する市場がアフリカに存在している。
・アフリカで繰り広げられている資本提携による市場の争奪戦は、いくつかのカテゴリに分類することができる。
1 アフリカ経済を牽引する中国・インド企業主導によるケース
2 旧宗主国の企業が主導するケース
3 経済共同体を軸にしたアフリカ諸国間のケース
4 アフリカ市場に進出している企業への間接的なケース
最初の中国・インド企業による大型のケースから見てみると、中国国営の中国工商銀行による南アフリカのスタンダード銀行への資本参加の事例が最も顕著だ。中国商工銀行は、今や時価総額の規模で、アメリカのシティグループを抜いて世界一大きな金融機関といえるが、アフリカで資産規模最大、かつ収益面においては最優良のスタンダード銀行の株式20%、金額にして367億ランド(約6350億円)を2007年に取得し、筆頭株主となている。この背景には、アフリカ各国との経済的な協力を強化したい中国とアフリカ各国の思惑がある。この資本提携によりスタンダード銀行は、アフリカに積極的に進出する中国企業に対しても融資枠を広げることができ、かつ中国商工銀行というグローバル銀行の仲間入りを果たした形だ。
・バーティ・エアテルは、インドで有数の携帯通信会社であるが、注目すべきは、筆頭株主で32%を保有するシンガポール・テレコムである。つまりシンガポール・テレコムは、自国内の経済発展規模の限界をインド企業エアテルに資本参加し、さらにエアテルを通じてアフリカ市場に参入していることになる。日本企業によるアフリカ進出も、このケースが散見される。2010年8月、NTT持株会社が南アフリカのネットワークシステムの構築会社のディメンジョン・データをイギリスの親会社から21.2億ポンド(約2860億円)で買収してい。この買収は正確には、親会社であるイギリス企業か南アフリカに事業拠点を置く企業の買収ではあるが、この買収によりNTTは世界のグローバル企業に対してネットワークの保守運用から、システム開発のためのサービスを提供できる範囲を一挙に広げることができた形になる。また三井住友銀行は、イギリスのバークレイズに資本参加しているが、2010年3月にはバークレイズの子会社でもある南アフリカの大手銀行アブサと業務提携をしえ、アフリカ市場の主にインフラ投資のプロジェクトファイナンス事業を拡張しようとしている。このように実際には、現地に進出している企業への間接的な投資もしくは買収によって市場参入を行うか、ウォールマートの事例のように、現地で買収によって規模が大きくなった企業も買収するかといった形で市場の争奪戦が繰り広げられている。
・ここの面白いデータがある。家庭において主要な電化製品、室内エアコン、冷蔵庫、カラーテレビが、各国から何台アフリカ諸国に輸出されているかを集計したものである。これを見ると、アフリカ諸国の市場において中国製品が驚異的なシェアを持っていることがよくわかる。出荷台数ベースでの試算では、中国は室内エアコンの91%、冷蔵庫73%、カラーテレビ84%とほぼ寡占状態にある。地理的にも歴史的にも関係の深いEU15カ国も、意外にシェアを持っており、集計では室内エアコンを除く冷蔵庫とテレビではいずれも10%台となっている。この数値は台数比較であるため、単純には比較できないが、売上ベースという意味ではEU地域のメーカーは比較的健闘しているといえる。そして、次に市場シェアを持っているのがインドだ。室内エアコンや冷蔵庫といった生活必需品の分野でシェアを有しており、中国と同様、経済的な関係性が強いことが家電製品の出荷状況に表れている。一方で、日本の数字を見ると、日本の電化製品メーカーにとってアフリカ大陸は、いまだ遠いフロンティア(未開の地)のままのようだ。
・アフリカ諸国において中国の存在感を見ることができるのは、日用品や家電製品だけではない。道路、空港、病院、鉄道といった社会インフラの整備においても、中国は、サブサハラのアフリカ諸国に絶大な影響力を持っている。中国の社会インフラの投資先を、国別で見てみると、第1位、第2位はナイジェリアとアンゴラで、アフリカの石油産出国となっている。もっとも規模が大きいナイジェリアは、最大230億ドル(約2兆円)がコミットメントラインとして設定されており、サブサハラ地域の全体の34%、これにアンゴラの20%を加算すると、中国によるアフリカ向け投資の約半分は、この2カ国に集中している。参考までに、2008年の第4回アフリカ開発会議による日本が宣言したアフリカへの拠出額の総額が25億ドルであったことを考えると、この金額がいかに桁外れの規模であるかがわかる。他にも、トップ3には入っていないが、コンゴ民主共和国と中国との契約も象徴的だ。中国はコンゴに対して、鉱山、道路、鉄道、病院、学校といった社会インフラの開発資金として60億ドルを拠出する代わりに、銅1000万トン、コバルト200万トンといった天然資源を獲得している。
・インド人もしくはインド系資本がアフリカに強いのは、何もアフリカを自国製品を売り込むための市場としてだけ捉えていないところである。サブサハラの消費市場として一番大きい南アフリカは、南アフリカ出身の白人系のビジネスマンに市場を取られているが、東アフリカは、印僑が小売市場を牛耳っている。ケニアをはじめとする東アフリカエリアに行くと必ずといってよいほど目にする、ナクマットと呼ばれる大型のスーパーマーケットがある。店内には5万点を超える豊富な品揃えで、何か欲しいときにはナクマットに向かえというほどの大型店だ。このナクマットグループは、ケニアだけでなくウガンダやルワンダなど東アフリカを中心に、29店舗を展開している印僑のスーパーマーケットだ。このスーパーマーケットは、現地では比較的高級スーパーとしての位置づけになるが、海外で就労経験のある洗練された現地の中間層を中心に人気を集めており、南アフリカの小売大手グループのケニア市場への進出を阻んでいる。インド人ビジネスマンにとって、今のアフリカ市場は15年前のインド市場と同じに見えるという。インド市場と同様、低コストを徹底して消費者が欲しい仕組みを作れば巨大な需要ができると彼らは期待する。実際、インドの大企業でなく中堅企業が、アフリカ各地で事業買収を進めているといった記事やニュースも少なくない。
・韓国製品は、アフリカで、中国製品より質が良く、日本製品より安価で手が届きやすい、というポジションを確立しており、消費を楽しむ中間層から広く受け入れられている。
・それにしてもサムスンとLGの両者に共通してすごいところが、いくら携帯電話の市場が伸びているからといって、実際に市場を獲得できていることだ。そのためには、まずは現地で受け入れられる価格帯で現地のニーズに合致した製品を提供できること。そして、現地に根ざした営業体制が取れることが必要だ。先のサムスンの戦略的スマートフォンの価格も見ればわかるように、ファーウェイといった中国製の廉価製品との熾烈な価格競争がある中で、低価格からある程度価格がするものまで幅広いラインナップで市場を攻めている。このことが可能なのは、一つにはウォン安という貿易上の追い風もあるだろうが、もちろんそれだけが理由ではない。かねてから台湾、中国といった世界のITの生産拠点との厳しい価格競争を行い、徹底したコスト管理、海外への生産拠点の移動、サプライチェーンの垂直統合などを積極的に行うことによって、追い上げてくる中国メーカーと必死に世界で戦ってきた結果と見るのが妥当であろう。また、韓国メーカーが現地で受け入れられているのは、製造工程の合理化による価格戦略だけでなく、徹底した現地化主義だろう。
・日本国内の中古車の流通数は約500万台といわれるが、このうち20%の約100万台前後が海外への輸出に回っているといわれている。日本中古車輸出業共同組合が財務省通関統計から集計した数字によると、2009年度は前年のリーマンショックの影響を受けて通年で約68万台であるが、その前年まではロシアへの輸出規制がかかる前ということもあり、2008年には年間134万台が輸出されていた。そして現在、中古車輸出の主戦場となっているのが、アフリカである。2009年の集計で見てみると、アラブ主張国連邦が輸出先のトップで年間約9万台、次いでニュージーランドが5万7000台、その次に南アフリカが5万3000台で3位にランクインしている。しかもその下のケニアが4万4000台で6位にランクしており、南アフリカ(ダーバン港)とケニア(モンバサ港)は、日本からの中古車の主要な陸揚げ拠点となっている。南アフリカとケニアが中古車の陸揚げが多いのは、宗主国がいずれもイギリスで右ハンドル圏だからだ。そのため、南アフリカに陸揚げされた日本の中古車は実際にはその隣国ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、ナミビアへと陸送されていく。同様にケニアのモンバサ港に陸揚げされた車両も隣国のタンザニア、ウガンダ、マラウィ、ルワンダ、コンゴ民主共和国、南部スーダンへと陸送されていく。
・実際、ナイロビで毎週開催されているカーバザールと呼ばれる合同展示場、もしくは路上を走っている車を見ると、トヨタ車が実に多い。感覚値で約8~9割トヨタ車と言ってもよい。走っている車のほとんどは日本から輸入された中古車で、現地の豊田通商経由での新車の販売が年間1万台といわれるので、95%以上は中古車という計算になる。
・自社製品の需要に基づいてという意味では、アフリカで真剣に日本製品を売り込んでいる企業の1つは、トヨタ自動車と豊田通商であろう。アフリカでは、日本車の中古車が非常に人気がある。特にトヨタブランドは、右ハンドル圏の東から南アフリカ地域ではきわめて強く現地では自動車といえば、「トヨタ」とイメージするくらいにブランドが浸透している。現地でトヨタをはじめとする日本製の自動車メーカーが人気があるのは、あれだけの悪路下の環境において安心して走らせることができるからだろう。
・ケニア共和国がインドの発展を見て自国の産業の柱の一つとしてITを強化しようとしているのを見ると、アフリカ諸国では第一次産業の次に、雇用を大きく産み出す第二次産業が発展するのではなく、資源もしくは農業や観光で外貨を獲得して、そのまま第三次産業の発展につながるのではないかとも見て取れる。その意味では、ポスト中国工場として労働力の開拓という意味でのフロンティア性は薄い。
・日本にとってアフリカ市場にはもう1つの武器がある。それは日本のこれまでの国際協力の積み上げと過去の膨大なODAである。過去の地道なこの活動が、「Made in Japan」ブランド以外のブランドをアフリカで築き上げている。一部の例外を除くほぼすべての国で在留邦人の日本人は、民間よりも政府系人材のほうが多い。実際に、エチオピアのアディスアベバでトランジットをするような場合には、会う日本人といえば、民間企業であることはほぼなく、JICAなどの公的機関の方ばかりだ。それぐらいアフリカ各地にはJICA関係者(開発コンサルや協力隊)が散在しており、彼らはアフリカ各地で開発に従事している。
・アフリカには次のような言葉がある。「友人の中国人、配偶者の日本人」。この言葉は、確かに中国のおかげで、アフリカ各地でインフラの整備が進み、経済も潤い始めたが、それでも配偶者は日本人だ、というのである。中国政府はこの言葉を聞き、せっかくアフリカ経済の発展にさまざまな投資をしているのに、なぜ金額ボリュームが小さい日本が評価が高いのだ、と激怒したともいわれている。日本の公的機関によるアフリカの開発支援のあり方については、所属する立場やスタンスによって大きく異なるものと思われるが、こういった評価が今なおアフリカであるということは、日本の過去の援助活動はある程度の成果はあったというべきではないだろうか。
<目次>
はじめに
第1章 地球上最後の市場アフリカ
1 急成長する中間層とチーター世代
2 アフリカ市場を読み解く5つのエリア
3 巨大に成長するアフリカの消費市場
4 アフリカ経済を牽引する中国とインド
5 市場成長のメカニズムと農業の可能性
6 アフリカ各地の経済共同体の発足
第2章 成長を後押しするICTと金融
1 爆発的に拡大する携帯市場
2 先進的な携帯サービスの普及
3 グーグルも注目するアフリカのICT
column アフリカのフェイスブックとツイッター
4 市場拡大を後押しするアフリカ型金融サービス
5 日本の4分の1強に匹敵するアフリカの株式市場
6 東アフリカの証券市場のキーバーソン ロバート・マシュー
7 M&A・資本参加による市場の獲得競争
第3章 アフリカ市場に挑むアジアの国々
1 市場にあふれ返る中国製品
2 世界銀行を圧倒する中国のインフラ投資
3 印僑にとってのアフリカマーケット
4 アフリカ市場を席巻する韓国メーカー
5 アフリカに殺到する日本の中古車
6 アフリカは最後のフロンティアなのか?
第4章 アフリカの偉大なアントレプレナーたち
1 ベンチャーと中小企業が主導するボトムアップ型の経済発展
2 モ・イブラヒム〔モ・イブラヒム財団〕
3 ジェフ・ガサーナ〔SMSメディア〕
4 ニコラス・ネビット〔ケンコール〕
5 ブライアン・リチャードソン〔ウィジット〕
column 南アフリカの巨大インターネットカンパニー ナスパース
6 佐藤芳之〔ケニア・ンッツカンパニー〕
第5章 アフリカに殺到するPEファンド
1 アフリカで活動するPEファンド
2 PEファンドの主要ポートフォリオ
3 援助から投資という新しい潮流
4 忍耐強い資本とインパクト・インベストメント
5 アフリカ型のベンチャー投資
6 投資市場としてのアフリカ
column 東アフリカ・ソーシャルベンチャープロジェクト
第6章 アフリカ市場の可能性
1 日本企業にとってのアフリカ市場
2 グローバル企業にとってのアフリカ
3 友人の中国、配偶者の日本
4 BOPマーケットとしてのアフリカ
5 グローバル企業と人材育成
column グローバル人材の育成のモデル
6 貧困と希望の明日
参考文献・ウェブサイト
アフリカ情報のリンク一覧
面白かった本まとめ(2011年下半期)
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第2章:携帯電話と金融
第3章:アフリカ市場を席巻する中国・インド・韓国企業の動向
第4章:アフリカ現地で活躍する起業家の紹介
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以下はこの本のポイントなどです。
・ケニアの中間層の中でも、特筆すべきは「チーター世代」といわれる若者たちだ。チーター世代の特徴は、携帯電話を駆使し、欧米型のライフスタイルを積極的に取り入れていることだ。なかには日本や欧米で留学や就労の経験を持ち、自国に戻ってアフリカという成長市場で起業し、果敢にビジネスにチャレンジしている若者も少なくない。彼らがチーター世代と呼称される理由は、彼らのライフスタイルが従来のそれと全く異なるからだ。これは実際にアフリカの大地に足を踏み入れるとよくわかるが、都会の喧騒から離れてサファリに出かけると、そこに流れている時間は恐ろしく違う。サファリの朝、ホテルで起きて、鳥のさえずりを聞いて朝食を取るときの時間の流れと、ナイロビのような都会で携帯を片手にビジネスを展開するアフリカン・ビジネスマンの速さが「カバ」と「チーター」ほどスピードが違うから、彼らはチーター世代なのだ。
・南アフリカの2009年の実質GDP総額は約21兆円で、日本の25分の1程度しかないが、一人当たりのGDPな中国よりも約1.6倍高い。また、南アフリカの株式市場(ヨハネスブルク市場)の株式時価総額は、日本の株式市場の約4分の1強の規模を誇り、かつアフリカの株式市場全体の6割は南アフリカ市場である。南アフリカ共和国の経済規模がアフリカ諸国の中でいかに突出しているかがわかる。アフリカの消費市場を大きく支える中間層という意味では、南アフリカの中間層から富裕層は「ブラック・ダイヤモンド」といわれ、アフリカの消費市場を強力に牽引しているのは有名な話だ。
・東アフリカエリアは、日本人がイメージしやすい、自然、動物、サファリ、マサイ族といったキーワードのエリアだ。本書でこのエリアに注目する理由としては、大きく3つある。まず初めに、このエリアの多くの国が、資源国ではないにもかかわらず、われわれの想像以上に経済が発展していることである。東アフリカの雄、ケニアを例に詳細を見てみると、GDPにおける農業の割合は25%、次いで観光12%、情報通信11%、製造業10%、農業と観光で4割近く、逆に資源への依存は非常に低いにも関わらず、めざましい経済成長をしている。2つ目に指摘したいのは、この地域はITサービスと金融サービスが、非常に発展していることだ。ケニアの通信会社サファリコムの携帯送金サービスはアフリカの他の国でも非常に注目されている。また大量虐殺の記憶が残るルワンダは、今や「アフリカのシンガポール」とも呼ばれ、小国でありながらも外国資本を積極的に誘致している。3つ目に指摘できるのは、これらの経済成長ドライバーを背景に、消費市場が急速に拡張している点である。この地域の全体の経済規模は、アフリカ全土の中でGDPの大きさを比較すると、名目GDPベースで見た場合には、2009年度ベースで南アフリカ(2870億円)、エジプト(1870億円)に対して、ケニア(320億円)は南アフリカの約9分の1、エジプトの約6分の1の経済規模でしかない。しかしながら、この規模であったとしてもケニアの首都ナイロビは富裕層から中間層が確実に伸びていて、消費市場の拡大が見込めるエリアとなっている。
・中国には消費ボリュームはかなわないが、アフリカはBRICSのロシア、インドよりも消費市場は大きく、2008年におけるアフリカの域内消費規模は、8600億ドル(約84兆円)と計算される。また、2000~2008年の消費規模の拡大幅を見ると、この期間に消費規模は2兆7400億ドル(約250兆円)増えており、この消費の伸びはブラジルやインドより大きい。この旺盛な消費市場は、2020年にかけて1.4兆ドル(約130兆円)に拡大すると予測されており、2008年対比では、アフリカの消費市場は現在の約1.6倍に拡大することが予測されている。
・アフリカという市場の定量データとして着目すべきポイントとして挙げられるのが、アフリカの人口規模と豊富な若年労働層である。ナイジェリア、南アフリカ、ケニアの人口動態はきれいなすり鉢型をしていることがよくわかる。また、人口の規模からいっても、アフリカ全土の人口は現在10億人弱ではあるが、同じ規模の中国やインドよりも人口の増加率が高く、世界で一番高い増加率を誇る。この結果、世界人口におけアフリカ人口の割合が現在の14%から2050年には20%を占めるといわれる。人口数と経済規模にある一定の相関関係があることはいうまでもないが、アフリカ人口の増加を考えると、その潜在的な市場の成長力に期待が集まるのを理解してもらえるのではないだろうか。2050年の予想人口を見ると、西アフリカの雄ナイジェリア(5位289百万人)をはじめとして、中央アフリカのコンゴ民主共和国(10位148百万人)、それにエチオピア(9位174百万人)、タンザニア(16位109百万人)、ウガンダ(20位91百万人)といった東アフリカの国々が名前を連ね世界的に有数の人口大国となってくる。
・中国とアフリカ諸国の関係は、資源と食料を確保したい中国と、インフラを整備したいアフリカとの思惑のうえに成り立っている。アフリカは、資源供給とインフラ整備のための中国からの直接投資で、多くの外貨を中国から獲得している。2008年には中国からアフリカへの直接投資(FDI)総額は、50億ドルを超え、日本からの直接投資額約38億ドルをしのぐ規模になっている。これに加えて注目すべきは両者の貿易取引額で、中国商務省国際貿易経済協力研究院によれば、2000年当時、中国アフリカ間の双方の貿易額は年間100億ドルであったのが、その後、年率平均30%で増加し、2007年に730億ドル、2008年には1068億ドルにまで達している。参考までに日本と比較すると、アフリカの2007年度取引額は、日本からアフリカへの輸出額が116億ドル、アフリカから日本への輸入額が148億ドルで、合計約260億ドル。これと比較すると、中国は日本の約4倍もアフリカと貿易上の接点があるという計算になる。アフリカに足を運ぶとわかるが、市場には多くの廉価な中国製の衣服、電化製品、日用品が流れ込んでおり、それまで高価だった欧米や日本の 日用品から中国製品が市場に流通して市民の生活を変えている。もはやアフリカ各国での日用品の約8割は中国製品ではないだろうかと思われるほど、中国経済はアフリカ諸国の日常に浸透している。
・インドとアフリカの関係は、やはり資源という側面が非常に大きいものの、中国の資源外交とはスタンスを異にしている。もちろん、石油の70%を海外からの輸入に頼っているインドにとって、アフリカは資源産出国として非常に魅力的である。2008年に開催された「インド・アフリカ首脳会議」では、アフリカ53カ国のうち15カ国の首脳がインドの首都ニューデリーで開かれた会議に出席した。この会議の場でインドのシン首相は、今後5年間でそれまでの倍の54億ドルの借款と、インフラ整備の5億ドル拠出を宣言し、アフリカ重視のスタンスを打ち出した。インドとの関係が、中国とアフリカのそれと違うのは、特に東南部アフリカは同じ旧宗主国を持つ関係から、歴史的にも古くから経済的、人的交流が多いということだ。同じ赤茶けた大地、低い物価レベル、激しい価格競争を見てきているため、インド人は中国人よりも昔から広くアフリカ各地に移り住み、ビジネスを手がけてきた。
・2007年のインドとアフリカ諸国間での取引額は年間300億ドルであった。この数字は中国の同年の730億ドルから比べると半分以下であるが、日本の260億ドルよりも多い。しかも印僑の彼らはすでにアフリカ経済に広く根ざしているので、インド経済がこれからさらに発展してきた際には、この取引ボリュームが容易に大きくなるのは想像に難くない。インドのタタ財閥も自動車市場としてのアフリカを重要視しており、自動車以外の産業でもアフリカ市場への進出を狙っている企業が数多く存在する。中国、インドのいずれも自国内に10億以上の国民を抱える大国であるが、この両国が自国の資源と食糧確保のためにも、アフリカという大陸を重視し、また、積極的な直接投資を推進している。これに加えて、自国産業の消費市場としてアフリカを位置づけ、さまざまな形で経済活動を行っていることから、この両国の経済的成長がよりアフリカ経済を牽引している構造は押さえておきたい。
・重要なのは、資源や農産物を必要とするアジア、中東の新興国、中国やインドといった人口大国が、資源開発や物流整備といった社会インフラや、関連施設に莫大な資本を投下しているということだ。このことによってアフリカ各地では、資本が現地で回り始め、その結果、そこには雇用が生まれ、国内消費が活性化していく、という構造となっている。もちろん、そこに莫大な資本が流れ込む背景には、人口的にも今後ますます拡大することが予測されるアフリカ市場の果実を獲得しようとする思惑も相まっての投資であることはいうまでもないだろう。こういった資金流入は当初、資源開発などのプラント開発や道路といった社会インフラの整備が主であったが、最近では情報通信、金融、農業といった産業にも広がっている。アフリカというと、これまで開発を目的とした資金の流入が多いイメージであるが、現在では民間企業による事業投資の側面からの資金が増えているのだ。
・驚くことにアフリカの耕作可能な農地の総面積は、全世界の農地面積の約6割を占めると計算されている。ここでの未開拓耕作可能農地の定義は、少なくとも土地のうち60%以上が、5種の穀物(小麦、パームヤシ、サトウキビ、大豆、メイズ)のいずれかが栽培可能であるにもかかわらず栽培されていない土地」であり、かつ「森林でない」土地を指している。
・アフリカで最もホットなビジネスは何かと聞かれたら、私は「携帯電話」と答えるようにしている。事実、アフリカ大陸では驚くべきスピードで携帯電話が普及し、彼らの生活を大きく変えている。これまで農村部では、情報がないために生産者は買い付けの行商人に言われるままの金額で作物を販売していたのが、携帯電話の普及により、彼らは都市部で自分たちの作物がいくらで売られているかを確認し、場合によってはインターネットで世界の相場を確認する。また、携帯電話による送金サービスが広く普及していることから、携帯電話1つで公共料金の支払いや親族への送金ができ、街で買い物をする際のお財布代わりに携帯電話を使っている。都市部では、日本と同様、iPhone、ブラックベリー、アンドロイド端末といっtスマートフォンのような高機能携帯も普及をし始め、データ通信も日常化し、一部の地域ではLTE方式による携帯サービスの試験運用が進められている。これが、今のアフリカの携帯サービスである。
・2010年のアフリカ全土での携帯電話の契約者数は推定約4億4800万人、アフリカ全土の人口が約10億人であることを考えると浸透率は約45%前後と、中国やインドの携帯電話の加入動向から見ると、アフリカ市場の成長余地は大きい。現段階でナイジェリアの携帯利用ユーザーは8800万人を超え、この数字はイギリス国内の契約利用ユーザー数より多く、市場の成長速度としては世界最速ともいわれている。2005年のボーダフォンによるレポート「アフリカ 携帯電話の衝撃」にあるように、当時のアフリカでの携帯契約者数が8200万人強であったことを考えると、この5年間で実に約6倍に爆発的に利用者が伸びた計算だ。国別の携帯普及率を見てみると、リビアとガボンでは100%を超え、リュニジアとコンゴ民主共和国が98~99%強と、ほぼ飽和に達しており、続くアルジェリア、南アフリカも90%強の高い普及率になっている。
・アフリカの主要国には光ファイバーが続々と陸揚げsれており、多容量データ通信を可能とする環境が整いつつある。光ファイバーは大きく4系統あり、1つはイギリスから、次にフランス、北部にインドからモナコに抜けるラインに、東側を絡む1本が接続されている。この結果、アフリカでの携帯電話のデータ通信サービスも、日本と同様、3GからWiMax、そしてLTEサービスの提供へと急速に広がっている。
・携帯電話が普及したもう一つの理由は、アフリカ市場に合致したサービスモデルの提供にある。SMSと携帯送金サービスが、彼らのライフ・スタイルを大きく変えている。これはアフリカの携帯事情では有名な話だが、アフリカで携帯電話が普及し始めた当時、それでも通信料を削減したい利用者は携帯電話を合図の代わりに使っていた。例えば、仲のいいカップルで彼氏が、仕事が終わった際に彼女の携帯を一度だけ鳴らす。着信を受けたほうはこれを仕事が終わった合図と理解し、待ち合わせの場所に向かう。これにより二人は通信料を払うことなく連絡を取り合うことあできるというわけだ。一方で、通信会社からすると、こういった利用方法を取られると設備敷設費だけが膨れ上がってしまうため、SMSの利用料を一部無料にした。これにより、現地の利用者は着信による合図からSMSによるコミュニケーションへと移行していった、といわれている。もう一つ注目すべきが、携帯送金差ビスの普及だ。アフリカでいう携帯を使った送金サービスというのは、日本でいうFelicaチップが埋め込まれたようなおサイフケータイ、もしくは銀行各社が提供しているモバイルバンキングサービスとは、本質的に全く異なる。概要から先に説明すると、アフリカでいう携帯送金サービスとは、携帯電話のプリペイド形式の通話料を買うのと同じ方式でお金を受け渡しすることによって、料金の支払い、送金を可能とするサービスのことである。このサービスはアフリカ全土に普及し、各地にサービス提供会社が存在している。なかでも有名なのが、南アフリカ共和国のウィジット(WIZZIT)、ザンビアのセルペイ(Celpay)、ケニアのM-PESAである。M-PESAを例に実際の活用シーンを説明すると、日常生活に必要な電気、光熱費の支払いから、路面店での買い物、友人間あるいは都市部に出稼ぎに出た若者から地方の親族への送金まで、広く使われている。
・実際、私がケニアで現地のオンライン媒体などの広告の関係から、現地でのネットの利用状況をヒアリングしている際も、誰しもが最も使っているサイトとしてフェイスブックを挙げるほど利用が多い。その多くは、携帯電話からフェイスブックを利用しており、これはツイッターも同じだが、SMSとの補完関係でソーシャルメディアを活用している。そのため、利用シーンとしては、検索をする際はグーグルかヤフーを使い、動画はYouTube、コミュニケーションメディアとしては、メールかフェイスブック、ツイッターを利用していると理解してもらってよい。よくよく考えると、これはある意味、必然的なところがある。それは一つは旧宗主国との関係である。南アフリカとケニアの場合にはどうしてもイギリスの影響が強く、イギリスで人気のウェブサイトは必然的に、これらの国においても認知度は高くなってしまう。また、旧宗主国やその他の国に出稼ぎに出ている親族・友人とコンタクトする際も、フェイスブックとツイッターは便利ということもある。
・2008年のリーマンショック以降、新興諸国の株式が先進国各国に比べて好調なのはご存じのとおりだ。アフリカの株式市場も好調で、南アフリカの株式市場は、過去3年間の平均上昇率で20%を記録している。情報がないと、「アフリカ=リスクが高い」となるが、誤解を払拭するためにも、アフリカの株式市場について言及しておきたい。アフリカの株式市場というと、海外の株式市場に詳しい人なら、南アフリカの株式市場を思い浮かべるかもしれない。実際にはサブサハラのアフリカ諸国、例えばタンザニアやウガンダにも電子取引に対応した証券取引所があり、上場企業が存在する。アフリカ全土には北部、南部、東部、西部、中央部の各地域全部で29の証券取引所がある。アフリカの証券取引所協会の2009年の資料によれば、加盟する主要な証券取引所だけでも1500近くの上場銘柄が存在する。そのうち売り上げが100億ドル以上の企業が100社以上あるとされる。時価総額と上場企業数で一番大きいのはヨハネスブルク証券取引所で、上場銘柄で410社、時価総額規模ではアフリカ全土の上場銘柄の時価総額の約65%を占める。次に上場企業数が多いのは、エジプト証券取引所で上場銘柄306社、ついでナイジェリア証券取引所257社と続く。アフリカ証券取引所協会に加盟の時価総額の合計は2011年5月集計で9722億ドル。同じ時期の日本市場の時価総額を300兆円で計算すると、時価総額規模にして日本の4分の1強に匹敵する市場がアフリカに存在している。
・アフリカで繰り広げられている資本提携による市場の争奪戦は、いくつかのカテゴリに分類することができる。
1 アフリカ経済を牽引する中国・インド企業主導によるケース
2 旧宗主国の企業が主導するケース
3 経済共同体を軸にしたアフリカ諸国間のケース
4 アフリカ市場に進出している企業への間接的なケース
最初の中国・インド企業による大型のケースから見てみると、中国国営の中国工商銀行による南アフリカのスタンダード銀行への資本参加の事例が最も顕著だ。中国商工銀行は、今や時価総額の規模で、アメリカのシティグループを抜いて世界一大きな金融機関といえるが、アフリカで資産規模最大、かつ収益面においては最優良のスタンダード銀行の株式20%、金額にして367億ランド(約6350億円)を2007年に取得し、筆頭株主となている。この背景には、アフリカ各国との経済的な協力を強化したい中国とアフリカ各国の思惑がある。この資本提携によりスタンダード銀行は、アフリカに積極的に進出する中国企業に対しても融資枠を広げることができ、かつ中国商工銀行というグローバル銀行の仲間入りを果たした形だ。
・バーティ・エアテルは、インドで有数の携帯通信会社であるが、注目すべきは、筆頭株主で32%を保有するシンガポール・テレコムである。つまりシンガポール・テレコムは、自国内の経済発展規模の限界をインド企業エアテルに資本参加し、さらにエアテルを通じてアフリカ市場に参入していることになる。日本企業によるアフリカ進出も、このケースが散見される。2010年8月、NTT持株会社が南アフリカのネットワークシステムの構築会社のディメンジョン・データをイギリスの親会社から21.2億ポンド(約2860億円)で買収してい。この買収は正確には、親会社であるイギリス企業か南アフリカに事業拠点を置く企業の買収ではあるが、この買収によりNTTは世界のグローバル企業に対してネットワークの保守運用から、システム開発のためのサービスを提供できる範囲を一挙に広げることができた形になる。また三井住友銀行は、イギリスのバークレイズに資本参加しているが、2010年3月にはバークレイズの子会社でもある南アフリカの大手銀行アブサと業務提携をしえ、アフリカ市場の主にインフラ投資のプロジェクトファイナンス事業を拡張しようとしている。このように実際には、現地に進出している企業への間接的な投資もしくは買収によって市場参入を行うか、ウォールマートの事例のように、現地で買収によって規模が大きくなった企業も買収するかといった形で市場の争奪戦が繰り広げられている。
・ここの面白いデータがある。家庭において主要な電化製品、室内エアコン、冷蔵庫、カラーテレビが、各国から何台アフリカ諸国に輸出されているかを集計したものである。これを見ると、アフリカ諸国の市場において中国製品が驚異的なシェアを持っていることがよくわかる。出荷台数ベースでの試算では、中国は室内エアコンの91%、冷蔵庫73%、カラーテレビ84%とほぼ寡占状態にある。地理的にも歴史的にも関係の深いEU15カ国も、意外にシェアを持っており、集計では室内エアコンを除く冷蔵庫とテレビではいずれも10%台となっている。この数値は台数比較であるため、単純には比較できないが、売上ベースという意味ではEU地域のメーカーは比較的健闘しているといえる。そして、次に市場シェアを持っているのがインドだ。室内エアコンや冷蔵庫といった生活必需品の分野でシェアを有しており、中国と同様、経済的な関係性が強いことが家電製品の出荷状況に表れている。一方で、日本の数字を見ると、日本の電化製品メーカーにとってアフリカ大陸は、いまだ遠いフロンティア(未開の地)のままのようだ。
・アフリカ諸国において中国の存在感を見ることができるのは、日用品や家電製品だけではない。道路、空港、病院、鉄道といった社会インフラの整備においても、中国は、サブサハラのアフリカ諸国に絶大な影響力を持っている。中国の社会インフラの投資先を、国別で見てみると、第1位、第2位はナイジェリアとアンゴラで、アフリカの石油産出国となっている。もっとも規模が大きいナイジェリアは、最大230億ドル(約2兆円)がコミットメントラインとして設定されており、サブサハラ地域の全体の34%、これにアンゴラの20%を加算すると、中国によるアフリカ向け投資の約半分は、この2カ国に集中している。参考までに、2008年の第4回アフリカ開発会議による日本が宣言したアフリカへの拠出額の総額が25億ドルであったことを考えると、この金額がいかに桁外れの規模であるかがわかる。他にも、トップ3には入っていないが、コンゴ民主共和国と中国との契約も象徴的だ。中国はコンゴに対して、鉱山、道路、鉄道、病院、学校といった社会インフラの開発資金として60億ドルを拠出する代わりに、銅1000万トン、コバルト200万トンといった天然資源を獲得している。
・インド人もしくはインド系資本がアフリカに強いのは、何もアフリカを自国製品を売り込むための市場としてだけ捉えていないところである。サブサハラの消費市場として一番大きい南アフリカは、南アフリカ出身の白人系のビジネスマンに市場を取られているが、東アフリカは、印僑が小売市場を牛耳っている。ケニアをはじめとする東アフリカエリアに行くと必ずといってよいほど目にする、ナクマットと呼ばれる大型のスーパーマーケットがある。店内には5万点を超える豊富な品揃えで、何か欲しいときにはナクマットに向かえというほどの大型店だ。このナクマットグループは、ケニアだけでなくウガンダやルワンダなど東アフリカを中心に、29店舗を展開している印僑のスーパーマーケットだ。このスーパーマーケットは、現地では比較的高級スーパーとしての位置づけになるが、海外で就労経験のある洗練された現地の中間層を中心に人気を集めており、南アフリカの小売大手グループのケニア市場への進出を阻んでいる。インド人ビジネスマンにとって、今のアフリカ市場は15年前のインド市場と同じに見えるという。インド市場と同様、低コストを徹底して消費者が欲しい仕組みを作れば巨大な需要ができると彼らは期待する。実際、インドの大企業でなく中堅企業が、アフリカ各地で事業買収を進めているといった記事やニュースも少なくない。
・韓国製品は、アフリカで、中国製品より質が良く、日本製品より安価で手が届きやすい、というポジションを確立しており、消費を楽しむ中間層から広く受け入れられている。
・それにしてもサムスンとLGの両者に共通してすごいところが、いくら携帯電話の市場が伸びているからといって、実際に市場を獲得できていることだ。そのためには、まずは現地で受け入れられる価格帯で現地のニーズに合致した製品を提供できること。そして、現地に根ざした営業体制が取れることが必要だ。先のサムスンの戦略的スマートフォンの価格も見ればわかるように、ファーウェイといった中国製の廉価製品との熾烈な価格競争がある中で、低価格からある程度価格がするものまで幅広いラインナップで市場を攻めている。このことが可能なのは、一つにはウォン安という貿易上の追い風もあるだろうが、もちろんそれだけが理由ではない。かねてから台湾、中国といった世界のITの生産拠点との厳しい価格競争を行い、徹底したコスト管理、海外への生産拠点の移動、サプライチェーンの垂直統合などを積極的に行うことによって、追い上げてくる中国メーカーと必死に世界で戦ってきた結果と見るのが妥当であろう。また、韓国メーカーが現地で受け入れられているのは、製造工程の合理化による価格戦略だけでなく、徹底した現地化主義だろう。
・日本国内の中古車の流通数は約500万台といわれるが、このうち20%の約100万台前後が海外への輸出に回っているといわれている。日本中古車輸出業共同組合が財務省通関統計から集計した数字によると、2009年度は前年のリーマンショックの影響を受けて通年で約68万台であるが、その前年まではロシアへの輸出規制がかかる前ということもあり、2008年には年間134万台が輸出されていた。そして現在、中古車輸出の主戦場となっているのが、アフリカである。2009年の集計で見てみると、アラブ主張国連邦が輸出先のトップで年間約9万台、次いでニュージーランドが5万7000台、その次に南アフリカが5万3000台で3位にランクインしている。しかもその下のケニアが4万4000台で6位にランクしており、南アフリカ(ダーバン港)とケニア(モンバサ港)は、日本からの中古車の主要な陸揚げ拠点となっている。南アフリカとケニアが中古車の陸揚げが多いのは、宗主国がいずれもイギリスで右ハンドル圏だからだ。そのため、南アフリカに陸揚げされた日本の中古車は実際にはその隣国ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、ナミビアへと陸送されていく。同様にケニアのモンバサ港に陸揚げされた車両も隣国のタンザニア、ウガンダ、マラウィ、ルワンダ、コンゴ民主共和国、南部スーダンへと陸送されていく。
・実際、ナイロビで毎週開催されているカーバザールと呼ばれる合同展示場、もしくは路上を走っている車を見ると、トヨタ車が実に多い。感覚値で約8~9割トヨタ車と言ってもよい。走っている車のほとんどは日本から輸入された中古車で、現地の豊田通商経由での新車の販売が年間1万台といわれるので、95%以上は中古車という計算になる。
・自社製品の需要に基づいてという意味では、アフリカで真剣に日本製品を売り込んでいる企業の1つは、トヨタ自動車と豊田通商であろう。アフリカでは、日本車の中古車が非常に人気がある。特にトヨタブランドは、右ハンドル圏の東から南アフリカ地域ではきわめて強く現地では自動車といえば、「トヨタ」とイメージするくらいにブランドが浸透している。現地でトヨタをはじめとする日本製の自動車メーカーが人気があるのは、あれだけの悪路下の環境において安心して走らせることができるからだろう。
・ケニア共和国がインドの発展を見て自国の産業の柱の一つとしてITを強化しようとしているのを見ると、アフリカ諸国では第一次産業の次に、雇用を大きく産み出す第二次産業が発展するのではなく、資源もしくは農業や観光で外貨を獲得して、そのまま第三次産業の発展につながるのではないかとも見て取れる。その意味では、ポスト中国工場として労働力の開拓という意味でのフロンティア性は薄い。
・日本にとってアフリカ市場にはもう1つの武器がある。それは日本のこれまでの国際協力の積み上げと過去の膨大なODAである。過去の地道なこの活動が、「Made in Japan」ブランド以外のブランドをアフリカで築き上げている。一部の例外を除くほぼすべての国で在留邦人の日本人は、民間よりも政府系人材のほうが多い。実際に、エチオピアのアディスアベバでトランジットをするような場合には、会う日本人といえば、民間企業であることはほぼなく、JICAなどの公的機関の方ばかりだ。それぐらいアフリカ各地にはJICA関係者(開発コンサルや協力隊)が散在しており、彼らはアフリカ各地で開発に従事している。
・アフリカには次のような言葉がある。「友人の中国人、配偶者の日本人」。この言葉は、確かに中国のおかげで、アフリカ各地でインフラの整備が進み、経済も潤い始めたが、それでも配偶者は日本人だ、というのである。中国政府はこの言葉を聞き、せっかくアフリカ経済の発展にさまざまな投資をしているのに、なぜ金額ボリュームが小さい日本が評価が高いのだ、と激怒したともいわれている。日本の公的機関によるアフリカの開発支援のあり方については、所属する立場やスタンスによって大きく異なるものと思われるが、こういった評価が今なおアフリカであるということは、日本の過去の援助活動はある程度の成果はあったというべきではないだろうか。
<目次>
はじめに
第1章 地球上最後の市場アフリカ
1 急成長する中間層とチーター世代
2 アフリカ市場を読み解く5つのエリア
3 巨大に成長するアフリカの消費市場
4 アフリカ経済を牽引する中国とインド
5 市場成長のメカニズムと農業の可能性
6 アフリカ各地の経済共同体の発足
第2章 成長を後押しするICTと金融
1 爆発的に拡大する携帯市場
2 先進的な携帯サービスの普及
3 グーグルも注目するアフリカのICT
column アフリカのフェイスブックとツイッター
4 市場拡大を後押しするアフリカ型金融サービス
5 日本の4分の1強に匹敵するアフリカの株式市場
6 東アフリカの証券市場のキーバーソン ロバート・マシュー
7 M&A・資本参加による市場の獲得競争
第3章 アフリカ市場に挑むアジアの国々
1 市場にあふれ返る中国製品
2 世界銀行を圧倒する中国のインフラ投資
3 印僑にとってのアフリカマーケット
4 アフリカ市場を席巻する韓国メーカー
5 アフリカに殺到する日本の中古車
6 アフリカは最後のフロンティアなのか?
第4章 アフリカの偉大なアントレプレナーたち
1 ベンチャーと中小企業が主導するボトムアップ型の経済発展
2 モ・イブラヒム〔モ・イブラヒム財団〕
3 ジェフ・ガサーナ〔SMSメディア〕
4 ニコラス・ネビット〔ケンコール〕
5 ブライアン・リチャードソン〔ウィジット〕
column 南アフリカの巨大インターネットカンパニー ナスパース
6 佐藤芳之〔ケニア・ンッツカンパニー〕
第5章 アフリカに殺到するPEファンド
1 アフリカで活動するPEファンド
2 PEファンドの主要ポートフォリオ
3 援助から投資という新しい潮流
4 忍耐強い資本とインパクト・インベストメント
5 アフリカ型のベンチャー投資
6 投資市場としてのアフリカ
column 東アフリカ・ソーシャルベンチャープロジェクト
第6章 アフリカ市場の可能性
1 日本企業にとってのアフリカ市場
2 グローバル企業にとってのアフリカ
3 友人の中国、配偶者の日本
4 BOPマーケットとしてのアフリカ
5 グローバル企業と人材育成
column グローバル人材の育成のモデル
6 貧困と希望の明日
参考文献・ウェブサイト
アフリカ情報のリンク一覧
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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