今日から「えべっさん」です。
有間神社の「初戎」と西宮戎神社の近くに住んでいたので必ず両方お参りに行きます。
「ささ福」をお返しして新しいのを貰って帰らなければ落ち着きません
商売をしている人たちはその気持ちわかるでしょ~
西宮戎神社にまつわる民話
犬塚(いぬづか)
むかし、西宮のえびす神社の森の中に、猿とも狼とも正体のわからないけものが住みついていました。このけものは、夜な夜な村や町へやってきては、人々を苦しめていました。家をこわされたり、田畑をあらされたり、子どもや老人がさらわれたりしました。
このあたりの人たちは、すっかり困り果ててしまいましたが、自分たちの力だけではどうすることもできません。何とかこの災(わざわ)いから少しでものがれることができればと、おもだった者が集まり、ひたいをよせて相談をしました。そして、毎年一人ずつ若い娘を選んで、さし出すことにしました。
「とうとう、おらたちの家のかわいい娘を、さし出さねばならなくなった。村や町の人のためだといっても、こんなことがあってもいいものか・・・。」
その年娘をさし出すことになった家の人たちは、なげき悲しみ、泣く泣く白木の箱に娘を入れて、えびすの森に運ばなければなりませんでした。いかに村や町のためとはいいながら、聞くもあわれなありさまでした。同じ悲しみが、毎年毎年続きました。
ある年のことです。なんでも四国の方に、ヒョウタンという名の強い犬がいて、あたりのもうじゅうたちをふるえあがらせているという話が、どこからともなく伝えられてきました。その話を聞いた人々は、小おどりして喜びました。
さっそく、庄屋さんの屋敷に集まり、えびすの森のけもの退治について、ひそひそと相談を進めました。
「四国に、ヒョウタンという強い犬がいるそうな。この犬を借りてきて、けもの退治をしてはどうだろう。」
「わしらでもかなわぬものを、たかが犬一匹にまかせてだいじょうぶだろうか。」
「しかし、毎年娘をさし出さねばならんようなことを、いつまで続けるのか。ヒョウタンは、かいじゅうをたおした強い犬だそうだな。」
相談がまとまり、今年は、若い娘の代わりにヒョウタンを箱に入れて、えびすの森にさし出すことにしました。
いよいよお供え物をさし出す日がやってきました。
若い娘の代わりにヒョウタンを入れた箱が、大ぜいの人々にかつがれてえびすの森に運ばれて行きました。お供え物をそっとおくと、人々は手に手にかまやくわや棒を持って、まわりの草むらにかくれました。息をひそめ、じっとようすをうかがいました。
だんだんと夕やみがせまり、あたりがうす暗くなってきたころ、一匹のおそろしいけものがおどり出て、よだれをたらしながらお供え物に手をかけました。箱が開かれたとたん、ヒョウタンが「ウォッ」と一声、すさまじいさけび声をあげ、もうぜんとけものにとびかかりました。たちまち、ヒョウタンとけもののはげしい取っ組み合いが始まりました。大きなうなり声が、村や町中にひびきわたりました。
ヒョウタンが死にものぐるいになって、そのおそろしいけものにくらいつくと、草むらにかくれてうちふるえていた人々も、どっといっせいにうちかかりました。くわや棒で打ちのめし、とうとうたおれてしまいました。
どれほどたったでしょうか。
ふと我にかえった人々は、けものにくらいついたまま息たえているヒョウタンを見つけました。
人々は、涙を流してヒョウタンの手がらをたたえ、手厚くほうむり、そこに大きな塚を建てました。みんなで力を合わせて災いをたつことができた喜びと、命のかぎり人々のために戦って息たえたヒョウタンへの感謝の気持ちが、この塚にこめられたのです。
この塚は「犬塚(いぬづか)」とよばれ、西宮の町はずれの田んぼの中にあったそうです。
*「西宮ふるさと民話」より