安倍晋三の「読売新聞を読め」は一応成功しているが、自民憲法改正案が国家主義を纏っていることに変化なし

2017-05-16 09:11:06 | Weblog

 安倍晋三が憲法記念日の2017年5月3日都内開催の「公開憲法フォーラム」に憲法9条の1項と2項は手を付けずに合憲性を示すために自衛隊を明文化する内容のビデオメッセージを送った。

 そのことは同日付読売新聞朝刊にも安倍晋三のインタビュー記事として載ったということである。自衛隊明記については9条1項、2項の後に9条の2を設けて、そこに書き込むということが述べられているらしい。

 2017年5月8日の衆院予算委員会で民進党議員長妻昭がその真意について質問すると、安倍晋三は自民党総裁として述べたもので内閣総理大臣として述べたものではないとの趣旨で答弁を拒否し、挙句の果てに「自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてありますから、是非それを熟読して頂いていいと思います」と答弁、野党は安倍晋三のこの態度を国会軽視だと問題視した。

 安倍晋三はビデオメッセージで次のように述べている。

 先ず、「憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是」だと言い、「その歴史的使命を果たしたい」なといったことを前置きしてから、自衛隊について「災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしてい」て、「国民の信頼は9割を超えてい」ること、だが、「多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在して」いることなどを理由に挙げて、「9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければなりません。そこで9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」(「日経電子版」)という憲法改正の考え方を示し、施行時期を五輪・パラリンピックが開催される2020年に置いた。  

 自衛隊に対する「国民の信頼は9割を超えている」と言っていることについて2017年5月5日の当「ブログ」に、〈その9割の多くは災害救助活動の自衛隊についてであって、戦争する自衛隊に対してではない〉と書いて、その根拠として世論調査を挙げた。         

 世論調査は国内外の災害救助活動に対する期待値は高いが、戦争に関係する質問項目についての回答はおしなべて低い数値となっている。

 だが、自身の憲法改正の考え方を示すとき、災害救助の点で広く市民権を得ている自衛隊に言及し、施行時期を国民の多くが心待ちしている2020年の東京オリンピック・パラリンピックに置いたのは9条自衛隊明記に対する国民の抵抗感を薄めて、自身の改正意思を受け入れやすくする狙いからだろう。

 高等教育の無償化を憲法に盛り込むとしたことも、憲法改正に対する国民の抵抗を薄める役目を持たせていたはずだ。なぜなら、9条を如何に扱うかが焦点であって、高等教育の無償化は焦点を微妙にずらす効能なきにしもあらずだからだ。

 9条の1項と2項に手を付けないというのも同じく国民の抵抗を薄める狙いからの提案であるはずだ。なぜなら、自民党憲法改正草案は9条の1項の戦争放棄(「国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない」)は現憲法のままだが、現憲法2項の戦力不保持と交戦権の否認は削除し、自衛権の発動を認め、9条の2を付け足して、国防軍の創設を謳っている。

 国防軍を用いた自衛権の発動による戦争が9条1項の「武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない」戦争放棄とどう考えても整合性を持ち得るとは思えないが、そこに整合性を置くことができるのは戦争放棄はタテマエで、実際は自衛権の発動を優先させることにしているからだろ。

 その第一歩が安倍晋三の新安保法制による集団的自衛権の行使容認であり、最小限の武力行使を付与した自衛隊の海外派遣であったはずだ。

 だが、9条1項と2項に手を付けなくても、9条の2を設けて自衛隊を明文化することに成功すれば、自衛隊が憲法違反だと誰もが言うことができない状態にすることができて、憲法に例え国防軍の創設を謳わずとも、新安保法制で如何ようにも自衛隊を駆使できる。

 要するに自衛憲法改正草案が9条1項の戦争放棄は手を付けずに2項を削除、自衛権の発動を認め、国防軍の創設を謳っている9条に関わる憲法改正の考え方と安倍晋三の9条1項と2項は手を付けずに9条2を設けて自衛隊の合憲性を明文化する9条に関わる憲法改正の考え方とは軌を一にしていることになる。

 そしてこの安倍晋三のビデオメッセージと新聞インタビューで発信した9条改正の考え方が一応成功していることは安倍発言後の新聞の世論調査に現れている。

 「読売新聞」の5月12日~14日世論調査。    

 「自衛隊の根拠規定を追加する考えに賛成か否か」

 「賛成」53%
 「反対」35%

 「施行時期2020年とすることについて」

 「賛成」47%
 「反対」38%

 「産経・FNN合同世論調査」の5月13、14日実施の世論調査   

 「自衛隊の明文化」

 「賛成」55・4%
 「反対」36・0%

 「施行時期2020年とすることについて」

 「評価する」46・9%
 「評価しない」46・9%

 「NHK」の5月12日~14日世論調査。

 「憲法を改正して2020年の施行を目指す意向についての評価」

 「大いに評価する」10%
 「ある程度評価する」34%
 「あまり評価しない」25%
 「まったく評価しない」20%

 「自衛隊明記についての賛否」
 
 「賛成」32%
 「反対」20%
 「どちらとも言えない」41%

 これ以前の各新聞の戦争放棄や戦力不保持を明記した憲法9条改正についての賛否を問う世論調査では賛成に対して反対が上回る傾向にあったが、安倍晋三の9条の1項と2項は手を付けずに9条に2を設けて自衛隊を明文化する改正案を示してからの上に示した世論調査は反対が賛成を上回っている。

 安倍晋三が自民党総裁として憲法改正の考え方をビデオメセージと新聞インタビューで示し、国会では総理大臣の立場からの発言ではないからと答弁を拒否したことは一応成功していると見なければならない。

 だとしても、自民党憲法改正案は「前文」で、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」と規定している。

 以前にもブログに何度か書いたが、「戴く」という言葉はそれが地位上の存在に対して言うとき、「崇め(あが)仕える」という意味を持つ。

 自民党憲法改正草案は「第1章天皇 第1条」で、「天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定して、天皇を「元首」の地位に置いているが、国民主権と言いながら、この「元首」は国民が天皇を「戴く」(=「崇め(あが)仕える」)関係、天皇を上に置き、国民を下に置いた「元首」と言うことになる。

 例え改正憲法で現憲法通りに国民主権を謳い、基本的人権の保障を謳っていたとしても、自民党や保守の面々が憲法の背後に見えない形で天皇と国民を上下の関係に置き、そのような考えに基づいて改正した憲法ということになら、国民主権も基本的人権も憲法が保障する形式ではなく、天皇が保障する形式を取ることになる。

 天皇に対するこのような存在形式は戦前の大日本帝国憲法に於ける天皇の存在形式を限りなく薄めているが、考えている上下関係は本質のところでさして変わりはない。

 天皇を特別な存在として国家を代表させ、国民の上に置く考え方は個人よりも国家を上に置く国家主義の考え方に他ならない。

 安倍晋三が狙う改正憲法が自民党憲法改正草案通りの前文と天皇元首の形を取るところまでいかなくても、安倍晋三自身が天皇主義者であり、国家主義者であることに変わりはないから、その改正憲法が国家主義ばかりか、天皇主義を纏った憲法となることを必然視しなければならない。

 単に9条1項と2項を手を付けずに9条に2を設けて自衛隊を明文化するだけでは片付かない安倍晋三の憲法改正意思だということに他ならない。

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