地方創生担当相山本幸三の「獣医学部新設計画は自らが決断」は「総理の意向」文書を事実と見做す墓穴発言

2017-05-23 11:14:51 | 政治

 昨夜のNHKの7時からのニュースで国家戦略特区を担当する地方創生担当相の山本幸三が愛媛県今治市に加計学園獣医学部新設を認めたのは「安倍晋三の指示ではなく、担当大臣として私が指示、指揮し」たのだと国会で答弁したニュースを伝えていた。

 既に記事になっているかなと思ってNHKのサイトにアクセスしてみると、《地方創生相 獣医学部新設計画はみずからが決断》という題名の記事になっていた。  

 記事から昨日2017年5月22日の参議院決算委員会での共産党小池晃に対する山本幸三の答弁を取り上げてみる。

 山本幸三「感染症に対する水際対策を担う獣医師の確保が困難な地域もある一方、獣医師会などからの慎重論があることも踏まえ、まずは地域を限ったものだ。今治市や加計学園ありきで制度を変えてきたわけではない。

 安倍総理大臣からの指示は全くない。担当大臣として私が指示、指揮しており、特区ワーキンググループでの議論などから総合的に判断して、私が決断した」

 朝日新聞が公表した文科省が作成したとする文書の一枚には加計学園獣医学部新設は「総理の意向」と書いてある。山本幸三がそれを否定した発言に見えるが、実際には否定しながら「総理の意向」を認めた発言となっていることに気づいた。

 YouTubから遣り取りの動画をダウンロードして発言個所を文字に起こしてみた。小池晃は報道機関からではなく政府関係者から入手したとする新資料に基づいて追及した。

 文飾は当方。

 小池晃「結果としてまさに総理の意向を錦の御旗として内閣府は来年の4月に開校だと推し進めたわけですね。もう一点、重大な問題が国家戦略特区諮問会議の決定であります。

 11月9日に安倍首相を議長とする国家戦略特区特別区域諮問会議が開かれ、今日配布資料の3枚目にありますように『現在広域的に獣医系養成大学等の存在しない地域に限り、獣医学部の新設を可能にする』ことが決まります。そう書いてあります。

 我々はこの原案を入手しました。内閣府が示した原案であります。この原案には『広域的に』という言葉と、『限り』という言葉はないんです。原案にそれがなかったことは認めますか」

 山本幸三先ず初めに総理の指示とか何とか、全くありません。私が決めているわけでございます。あのー、あのー、内閣府特命担当大臣として自主的に私が責任を負っています。私が指示して、指揮してやっているわけであります。

 昨年11月の諮問会議取り纏めの原案に至る経緯、原案から示された経緯でございますけれども、昨年10月の下旬頃、特区ワーキンググループでの文科省と農水省との議論が獣医師会などから提出された慎重意見などから、総合的に判断して、先ずは地域を限定することで意見を十分に配慮することが適当であると私が判断、決断致しました。その上で、内閣府の事務方にそれまでの原案の作成を指示致しました。

 昨年の12月28日、内閣府の事務方が文科省の高校教育局、12月31日に農水省の消費安全局に原案を提示致しました。農水省からは原案についてのコメントはございませんでした。

 文科省からは昨年10月31日に内閣府に対し、意見の訂正がございました。翌11月1日に内閣府から文科省に最終提案を提出致しました。翌11月2日に文科省から意見なしの回答があり、特区ワーキンググループとして関係省庁間での事務局の調査を終えたわけであります。

 最終的に私共が確認をして事務局の間の諮問会議の取り纏めに至ったというわけであります」

 小池晃「私が聞いたことに一切答えていないんですが、最初の原案が内閣府が作られたことは認められました。その原案には『広域的に』という言葉、『限り』という言葉はありませんでしたね」
 
 山本幸三「各省の案は色々ございます。しかしその途中の段階にですね、そのことをお出しすることは将来の色々な決定事項に影響しますので、そういうことは途中段階のものは協議は差し控えたいと思います」

 小池晃「否定出来ないわけですよ。私共が入手したのには『広域的に』と『限り』という言葉はないわけですよ」(以上)

 山本幸三は「各省の案は色々ございます。しかしその途中の段階にですね、そのことをお出しすることは将来の色々な決定事項に影響しますので、そういうことは途中段階のものは協議は差し控えたいと思います」と言っているが、決定に至る各過程での議論に不当な取引や誰かの意見で妥当性が曲げられるといった事実はなく、公平且つ公明正大に推移したな議論であるなら、何も隠す必要はない。

 各省庁間の取り決めは各省庁共に自らの縄張りや省益・庁益の利害優先から入り、そこに駆引きや取引が生じることが往々にしてある。当然、それらを国民の目から隠すために議論の途中段階は明らかにできない、結論のみ明らかにできるということはあり得るが、獣医学部新設に安倍晋三の政治的関与があったのでなないのか、加計学園の利害を代弁しているのではないのかとの疑惑が持たれている以上、前者の理由からではなく、後者の理由から途中段階の議論は公にできないのだとの勘ぐりを否応もなしに誘い出して、却って安倍晋三の疑惑を膨らませかねない。

 当然、山本幸三の立場からしたら、途中段階の議論を明らかにして、併せて安倍晋三の疑惑を晴らさなければならないはずだが、隠して安倍晋三の疑惑を膨らませる逆効果を選んだことになる。

 その必要性は議論の途中段階で安倍晋三の政治的関与や利害代弁が介在していなかったなら、多少の不都合が持ち上がったとしても、それらの議論を明らかにできない理由はないはずだから、前者を明らかにした場合、後者の疑惑を事実として明らかにすることになる以外の理由を見つけることはできない。

 このことは加計学園獣医学部新設決定はいわば、「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と答弁していることからも説明できる。

 朝日新聞が安倍晋三の意向で首相官邸が主導した獣医学部の新設だとする趣旨の文科省が作成したとする内容の文書を入手、朝刊で報じたのは2017年5月17日である。

 もしその文書に書いてあることが事実だとしたら、安倍晋三の名誉に関わる。首相というその地位も失いかねない。安倍晋三に地方創生と規制改革担当の内閣府特命担当大臣に任命され、そして内閣府特命担当大臣としての責任に於いて加計学園獣医学部新設決定に自主的に指示・指揮してきたのであって、「総理の指示ではない」ということが事実なら、朝日新聞が報道したその当日に「総理の指示ではない」ということを当事者が最も知り得ている事実として、その事実を明らかにするためにだけでも記者会見を開いて証言しなければならなかったはずだ。

 だが、そういった記者会見すらしなかった。朝日新聞報道の5月17日から当日を含めて6日も経過した5月22日に国会で「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と証言する。

 当事者が最も知り得ている事実でありながら、5月17日から5月2日の参議院決算委員会開催時間前までに証言しなかった余りにも遅きに逸している理由は「総理の意向」こそが当事者が最も知り得ている事実であることを物語ることになって、5月22日の国会で「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と証言したこと自体が自ら墓穴を掘る発言となる。

 朝日新聞報道が文科省作成だとする「総理の意向」文書を報道したのは2017年5月17日。

 文科省がその文書の存在の調査に取り掛かったと明らかにしたのは5月19日の午前。

 文科相の松野博一がその存在は確認できなかったと明らかにしたのは2017年5月19日の夕方の記者会見。

 余りにも早過ぎる調査終了も疑惑を浮き立たせることになるが、内閣府特命担当大臣の山本幸三が「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と当事者が最も知り得ている事実として国会で証言したのは2017年5月22日。

 文科省が文書の存在の調査を開始して、そのような文書は確認できなかったとした。いわば怪文書に過ぎないと認定したことになり、「総理の意向」も含めて文書に書いてある事実をすべて否定したことになる。

 このような否定を前提にして初めて山本幸三は「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」と当事者が最も知り得ている事実として証言できる。

 文科省の調査の結果、文書が存在していたなら、そのことを前提に「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」などとは口が裂けても言うことはできない。

 いわば文科省の調査結果を待ち、調査結果が引き起こすかもしれない結果に反する事態の発生の有無を様子見してから、何事も起こらないようだからという経緯を取った証言であるはずはずだ。

 繰返しになるが、「総理の指示ではない、私の指示・指揮だ」が当事者が最も知り得ている真正な事実であったなら、山本構造を大臣に任命した安倍晋三の名誉を守るために朝日新聞が報道した当日の内に「総理の意向」を全否定していただろうし、全否定しなければならなかった。

 全否定することに胸を張ることさえできはずだ。

 だが、当日の内にそういったことは一切できずに日を置かなければならなかった。このような関係性によって口にした事実が現実の事実に反する虚偽に過ぎないことを浮かび上がらせることになった。

 まさに自分から墓穴を掘ることになった発言そのものとなっている。

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