安倍晋三の福島復興:医師・看護師不足から見えてくるハコモノ先行に追いつかない復興に於ける政治の役目不足

2018-12-03 11:49:27 | 政治
                                     

 安倍晋三が2018年11月24日に被災地福島を訪問した。この被災地訪問は2018年8月2日の宮城県石巻市と東松島市以来だという。今回の訪問ではどのような立派な発言をしているのだろうか。

 「首相官邸Facebook」

 安倍晋三「産業・生業(なりわい)の復興なくして再生ない。ここ双葉町でも国の立地補助金を活用して未来に繋がる新たな企業立地が進んでいることを嬉しく思います。

 また富岡町ではですね、この春から救急医療のための医療施設が動き出しました。医療は生活の根幹です。住民のみなさんが安心して帰還して頂くためにも医療始め生活インフラの整備に国としても全力を上げていきたいと考えています。

 2020年にはオリンピック・パラリンピックが開催されます。日本が、福島が復興した姿を世界に発信していきたいと考えています。福島の復興なくして日本の再生なし。福島の復興が成し遂げられるその日まで国が前面に出て、全力を尽くして参ります」

 双葉町の国の立地補助金活用の新たな企業立地にしても、富岡町の救急医療のための医療施設にしてもハコモノに過ぎない。ハコモノが単なる構造物であることから免れるためには地域住民の生活を維持・向上させていくシステムの一部として十全に機能していかなければならない。

 安倍晋三が「富岡町ではですね、この春から救急医療のための医療施設が動き出しました」と言っている医療施設とは東京電力福島第1原発事故で休止した四つの拠点病院に代わって今年4月に開院したふたば医療センター附属病院のことだと、安倍晋三の福島訪問を同じく伝えている2018年11月24日付「上毛新聞」が紹介している。

 紹介しているだけではない。〈首相は救命救急用のヘリコプターを見学した後、院長らと意見交換した。医師や看護師の確保に苦労している現状を聞き「医療は住民の帰還になくてはならない重要なインフラだ」と述べ、国として支援していく考えを示した。〉との遣り取りを伝えている。

 ヘリコプターにしてもカネを出せば手に入るハコモノに過ぎない。ヘリコプターの運行に過不足ない医師・看護師の確保があって初めてハコモノでは終わらない救急医療用のヘリコプターとしての機能性を持ち得る。病院側がいくら救急医療優先を第一としていても、医師・看護師不足が如何なる場合に於いてもヘリコプターを用いた救急医療と救急搬送に影響を与えない保証はない。医師・看護師の確保こそが救急医療に関わらない、医療全般に於ける危機管理となる。

 しかも医師・看護婦共にカネを出せが集まるという代物でもない。カネに上限をつけなければならないからだ。

 ふたば医療センター附属病院は福島県立医科大から医師20人と看護師(何人か調べたが分からない)の派遣を受け、2018年4月に開院。自前確保の医師・看護婦も何人かはいるはずだが、安倍晋三がふたば医療センター附属病院を訪れたのは11月24日。約8ヶ月経過した時点でも医師や看護師の確保に苦労している。

 要するに病院をハコモノで終わらせないためには医療機能の役目を担って欠かすことのできない主たる存在である医師や看護師の確保は福島県や病院側の手に余っていた。と言うことは、病院はハコモノであることから完全には脱しきれていないことになる。

 安倍晋三が機会あるごとに「福島の復興なくして日本の再生なし」とご託宣してきている以上、医師不足・看護師不足のこの情報は政府側が早くからキャッチし、共有していなければならない政治の役目となる。

 だが、キャッチも共有もしていなかった。政治の役目不足以外の何ものでもないが、例えキャッチし、共有していたとしても、不足状況を解消できていないのだから、政治の役目不足であることに変わりはないことになるが、それを棚に上げて、「医療は生活の根幹です」と正論で遣り過ごす。

 あるいはこれまで国が前面に出て医師と看護師の確保に全力を尽くしていなかったことになるにも関わらず、こういったことへの政治の役目不足には触れないままに「住民のみなさんが安心して帰還して頂くためにも医療始め生活インフラの整備に国としても全力を上げていきたいと考えています」と、今後の復興の一つの課題で片付けることができる。

 見えてくるのは福島復興でのハコモノの先行に追いつかない政治の役目不足のみである。

 2011年の東日本大震災の際、被害が広範囲に亘ったことから被災地の自治体自体が満足に機能せず、各避難所での必要な物資や数量の十分な把握と主としてこのことが原因した被災者への物資の確実な搬送とが混乱したことへの反省に立って、2016年4月の熊本地震と2018年7月の西日本豪雨では政府は避難所に避難した被災者に被災した自治体からの要請を待たずに必要不可欠と見込まれる物資を独自に調達・緊急輸送するプッシュ型支援を行って被災者の要望に応え、政府の成果の一つとした。

 だが、食料や飲料水、トイレットペーパー、衣類、石鹸等々はどこで生活しようと必要不可欠とする生活必需品であり、被災地以外から調達可能であるゆえに避難所で物余りが起きない以上、他の場所に存在する物を手配して届けるだけのことだから、誰がプッシュ型支援を行おうと間違えることはない支援方法であろう。だが、医師・看護師はモノとは違って給与を選ぶ・場所を選ぶ。当然、そのような人間相手に対する政治の役目はより困難となり、より重要となる。

 そしてふたば医療センター附属病院の医師不足・看護師不足は前々から言われていて、現在も言われ続けている医師・看護師の都市勤務集中・地方勤務忌避も影響している状況でもあるはずだ。

 いわば福島富岡のふたばに限らず、全国的に見ても、病院というインフラを埋めるためのより重要な政治の役目を安倍晋三は果たし得ていない。言葉巧みな立派な発言に誤魔化されてはいけない。


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