菅首相が小沢元代表に衆院政治倫理審査会(政倫審)への自発的出席を求めたところ、例え議決をしても応じない意向を示したため、国会招致を実現するために強制力のある証人喚問の検討に入ったと、今朝の「asahi.com」記事――《首相、小沢氏喚問を検討 政倫審出席拒まれ》(2010年12月21日5時1分)が伝えている。
小沢元代表(地方選の連敗や内閣支持率の低迷に触れて)「(国会招致で)国会がうまくいくのか」
菅首相「トゲの一つは減ります」――
首相周辺「落としどころは政倫審だったが、小沢氏が拒否した以上、首相は証人喚問は不可避というスタンスだ」――
菅首相は合理的認識能力を欠いているだけあって、何が問題となっているか、いわば何が内閣運営の“トゲ”となっているか、厳格に理解できていない。
確かに小沢元代表に関して世論は「政治とカネ」の問題と把えて、70~80%の国民が国会で説明すべきだと世論調査で示している。だが、小沢元代表が最近指摘し、菅首相との会談でも触れた地方選の連敗や内閣支持率の低迷は多少の影響はあったとしても、本質的には小沢氏と結びつけた「政治とカネ」の問題ではなく、菅首相自身の政治的資質、政治的能力が主原因となっている事態であって、小沢氏の問題を「トゲの一つ」として、それを例え抜いたとしても事態は殆んど変わらないにも関わらず、そこに問題点を見て、自身の資質に問題点を見ないのは地方選連敗及び支持率低迷の責任を「政治とカネ」、あるいは小沢元代表に転嫁する狡い遣り方と言わざるを得ない。
問題点がどこにあるか、世論調査を見ている。菅首相はこれまでは「国民の皆さんに伝える発信力が足りなかった。今後は色々な機会に国民の皆さんに積極的に私の考え方を伝えていきたい」と発言、発信力不足が支持率低迷の原因であるかのように言っていた。このことは5月7日(2010年)の当ブログ《首相が言う「発信力が足りなかった」は偉大にして愚かな勘違い》にも書いたが、菅首相は指導力や人事、政策運営、国会答弁、その他の発言、そして人柄・人格等々、自身の諸々の姿を常に発信してきたのであり、国民は国会中継や記者会見中継も含めて各種マスメディアを通してその発信を受け止め、その評価を世論調査等を通じて逆に発信し返していたのだが、政治家と国民との関係をそうと把えることができず、「発信力が足りなかった」などと認識を欠いたことを平気で言う。
特に尖閣諸島沖中国漁船衝突事件に於ける菅内閣の対中対応は首相を陣頭に仙谷官房長官、前原外相、馬淵国交相党の内閣の主だった連中が連日のマスメディアの報道で不足どころか有り余る発信を行ってきた。
言ってみれば世論調査や選挙に於ける投票行動は首相自身の国の政治に関わる諸々の発信に対して国民が突きつけた通信簿でもある。それを「発進力が足りなかった」と言うのは自身の政治能力を誤魔化すだけではなく国民をも欺く誤魔化しに過ぎない。
ここに菅首相の狡さがある。
12月11、12両日実施の朝日新聞世論調査。(問題点としていない箇所は省略)――
《菅内閣支持21% 比例投票先自・民逆転 朝日新聞調査》(asahi.com/2010年12月13日16時55分)
◆内閣支持率21%(前回11月27%)
◆ 不支持率60%(前回52%)
◆できるだけ早く衆議院を解散して総選挙を実施すべきだと思いますか。急ぐ必要はないと思いますか。
総選挙を実施すべきだ34(31)
急ぐ必要はない53(60)
◆仮にいま、衆院選の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか。
▽民主党23(28)
▽自民党27(27)
▽公明党4(4)
◆菅首相のこれまでの仕事ぶりをどの程度評価しますか。(択一)
大いに評価する1(1)
ある程度評価する25(28)
あまり評価しない51(51)
まったく評価しない22(18)
◆菅首相に今後、どの程度、期待しますか。(択一)
大いに期待する6(8)
ある程度期待する28(33)
あまり期待しない43(39)
まったく期待しない22(19)
◆菅さんに今後、どれくらいの間、首相を続けてほしいと思いますか。(択一)
長く続けてほしい8
しばらく続けてほしい49
早くやめてほしい39
◆いまの自民党は政権を任せてもよい政党だと思いますか。そうは思いませんか。
政権を任せてもよい26
そうは思わない57
◆政権交代で政治はよくなったと思いますか。悪くなったと思いますか。変わらないと思いますか。
よくなった8
悪くなった22
変わらない66
◆小沢さんは強制起訴されることになりましたが、政治資金の問題について、国会で説明するべきだと思いますか。裁判の場で説明すれば十分だと思いますか。
国会で説明するべきだ68(65)
裁判の場で説明すれば十分だ24(27)
◆小沢さんの政治資金問題をめぐる民主党のこれまでの対応を評価しますか。評価しませんか。
評価する8
評価しない83 |
この世論調査ではすぐに辞めろとは言っていないが、「長く続けてほしい」はたったの8%に過ぎない。「しばらく続けてほしい」の49%は菅直人を首相に推した主たる基準が指導力に期待を置いたからではなく、「首相がコロコロ変わるのは良くない」に置いた手前の早急な基準変更の拒否感が混じっていると見るべきだろう。
基準変更は自身の価値観の変更をも迫ることにもなるからだ。「しばらく続けてほしい」の49%のうち指導力や期待度から判断して3分の1が基準変更にためらっていると低めに見ても、16%+「早くやめてほしい」39%=55%以上の半数を超える国民が辞任を求めていると見ることができる。
この辞任期待度57%との菅首相の政治能力に対する否定的期待度73%、否定的評価度63%共に小沢元代表のいわゆる「政治とカネ」の問題とは何ら関わりのない菅首相自身の政治的資質の問題である。
いわば国民はこの点を菅内閣の“トゲ”と見ている。
次に10月10日から3日間行った「NHK」の世論調査(問題点としていない箇所は省略)――
《NHK調査 内閣支持率25%》(NHK/2010年12月13日 19時15分)
菅内閣を「支持する」 ――25%
「支持しない」――58%
菅内閣を支持する理由
▽「他の内閣より良さそうだから」――41%
▽「支持する政党の内閣だから」 ――22%
支持しない理由
▽「実行力がないから」 ――46%
▽「政策に期待が持てないから」――33%
菅内閣に最も期待すること
▽「年金や医療などの社会保障政策」――23%
▽「景気・雇用対策」 ――17%
▽「税金の無駄遣いの根絶」 ――17%
発足から半年たった菅内閣の実績への評価
▽「大いに評価する」 ――1%
▽「ある程度評価する」 ――20%
▽「あまり評価しない」 ――49%
▽「まったく評価しない」――26%
(4人に3人が「評価しない」)
菅総理大臣が政権運営で指導力を発揮してきたと思うか
▽「大いに発揮してきた」 ―― 1%
▽「ある程度発揮してきた」 ――15%
▽「あまり発揮してこなかった」 ――51%
▽「まったく発揮してこなかった」――29%
民主党の小沢元代表が政治資金を巡る事件について国会で説明する必要があると思うか
▽「必要がある」 ――76%
▽「必要はない」 ――11%
▽「どちらともいえない」――10% |
最後を除いた質問項目はどれを見ても菅首相個人の政治的資質を問う項目となっていて、「政治とカネ」に関係しない事柄となっている。
実績に対する評価度に関しては否定的評価度が75%。肯定的評価度が21%。指導力に関しては否定的評価度が80%、肯定的評価度が16%。これらは小沢氏に対する対応も含まれているだろうが、殆んどは菅首相個人の政治能力を直接問い、それに答えた通信簿であろう。
国民のこの菅首相に対する評価は菅首相が「トゲの一つは減ります」と言っているようにその“トゲ”を抜くことに成功したとしても、本質的な問題――菅首相の極めて個人的な政治指導力、言葉の軽さ、ご都合主義な発言――の解決にはならないことを情け容赦なく教えている。
にも関わらず支持率の低迷、地方選挙の無残な連敗の「トゲの一つ」としている。
どう見ても、大騒ぎをして小沢元代表に責任転嫁する狡猾な政局行動にしか見えない。
このズルさ、狡猾さが菅首相のすべてを物語っているのではないだろうか。
最後に参考までに12月4、5日行った普天間に関わる朝日全国世論調査を掲載しておく。
《普天間日米合意「見直しを」6割 朝日新聞世論調査》(asahi.com/2010年12月15日23時0分)
日米合意に関して。
「見直して米国と再交渉する」――59%
「そのまま進める」 ――30%
「見直し」
民主支持層――61%
無党派層 ――62%
自民支持層――47%
「そのまま進める」
自民支持層――41%
「日米合意を見直しの移設先」(三つの選択肢)
「国外に移設する」 ――51%
「沖縄県以外の国内」 ――32%
「沖縄県内の別の場所」――12%
沖縄に米軍の基地や施設が集中している現状について「沖縄に犠牲を強いていることになり、おかしいと思うか。それとも地理的、歴史的にみてやむを得ないと思うか」
「おかしい」 ――48%
「やむを得ない」――45%
「おかしい」――
「日米合意を見直して米国と再交渉する」――76%
「やむを得ない」――
「そのまま進める」――45%
「見直し」 ――46%
沖縄の米軍基地などを整理縮小するため、一部を国内の他の地域に移すことについて
「賛成」――57%が
「反対」――28%
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